内覧会♯08 蔵

内覧会

本日の内覧会はミサワホームで有名な「蔵」を一条工務店で実現できるかについてです。

一条工務店の課題は収納力


上記は一条工務店のリーズナブルな小屋裏収納オプションです。一条の小屋裏収納はミサワの「蔵」に匹敵する収納力がありますが、小屋裏収納は気密エリア外であるため室内から簡単にアクセスができないという問題があります。

さて、一条工務店はスキップフロアができず、天井断熱と床断熱を採用していていることから収納を増やすのであれば床面積が増えてしまいますから、家作りの予算が少ないご家庭は収納不足に陥りやすいと言えます。

ミサワホームによると床面積に対して10%は収納は必要とのことですが、「蔵」を採用すると床面積に対する収納率は30%を超えることも可能だとのことです。

一方、一条ハウスは狭い気密点検口を開ければ広大な小屋裏空間があるものの、気密の蓋の取り外しと共に昇降には2m程度の梯子が必要であるため非常に不便で、小屋裏空間を収納として活用していない方も多いでしょう。

一条ハウスでは天井点検口からの小屋裏空間の利用は非常に不便であるため、より簡単にアクセスできるロフトや小屋裏収納のオプション設定がありますが、これについてもまだ昇降が快適ではありません。

まずロフトについては、標準の梯子の場合は急勾配で踏板が狭いため正面を向かって降りることができず、後ろを向いて降りる形となりますから、昇降が固定階段ほどスムーズではありません。

そして、小屋裏収納はコストパフォーマンスに優れますが、天井に設置された折り畳み式の梯子の上に、重たい断熱材が付いた蓋が乗っていて、それを開けて小屋裏収納にアクセスする必要があります。

男性であればそれほど大変な作業ではないと思いますが、力ないない女性や子供では気軽に小屋裏収納にアクセスすることは難しいと思います。

そんな訳で、気軽に安全にアクセスできるコストの安い収納が一条工務店で出来ないのか考えました。

 

 

一条ルールを逆手に取ろう

まず、ロフトや小屋裏収納の床面積については建築基準法で下の階の半分まで、天井高さは1.4mまでと決まっています。そして、基本的には居住区域ではなく収納という位置づけです。

さらに、施主を悩ませる一条ルールが関係してきますが、大半はツーバイフォーのルールを一条ルールと誤解している施主が多いと思います。

家のパーツが工場生産であるため工場生産ではできないという面の一条ルールは確かに存在します。しかし工場生産であるがゆえに、オプションの選択方法次第で非常に安くできることもあって、ロフトがその一例です。

自治体によってはロフトへの固定階段を認めていますが、一条工務店では固定階段を設置すると平屋の場合であっても、二階建てと同様に階段部分は施工面積のダブルカウントがなされます。これがコスト的に痛いです。

固定階段を設置すると階段スペースは施工面積のダブルカウントされますが、梯子であれば施工面積のダブルカウントの対象外となります。つまり、一条の固定階段を設置せずに簡易な梯子扱いの階段を設置すればよいのです。

そして、階段や梯子を設けるにあたり、昇降の天井を高さを確保するために勾配天井のオプションが必要になってきますから、普通にロフトを設置するとトータルで高額になってしまいます。

 

上記の図では、赤枠のロフトの正面に固定階段や梯子を設けた場合、一条工務店の生産ルールでは階段等を設けた部分の側面の空間は全て勾配天井にする必要があります。こちらは解放感がありますね。

ただし、青枠のロフトの側面に階段等を設置した場合はその階段幅だけの天井勾配で済みますから、コストを抑えるには解放感は下がりますが階段等の位置はロフトの側面がお薦めです。

天井勾配を採用するには3.5寸屋根が基本ですが、太陽光パネルを乗せると陸屋根が標準のi-cubeの場合であっても1.5寸勾配屋根が無料になり、天井勾配も1.5寸が例外的にOKとなります(詳しくは設計士さんにご確認ください)。

一条工務店のルールや価格設定は非常に面白くて、太陽光パネルと屋根勾配の関係やオプションの自在棚を選択すると取り付ける下地材は無料になるなど、おまけで付いてくるものを活用するとお得になりますね。

 

 

一条工務店でも「蔵」は作れる

ミサワホームの売りである「蔵」。この実態は階として見做されない天井高さ1.4mまでの収納スペースなわけですが、この「蔵」に憧れてミサワホームを選択する方も多いのではないでしょうか。

一条工務店ではミサワホームのようにスキップフロアを織り交ぜた「蔵」を作ることは出来ないものの、似たようなものを安く作れないかと考えてみました。その答えはこちらです。

私が考えた方法は、コストを抑えるために高額なロフトの面積は少なくして、ロフトに設置した窓(トリプルサッシ)を出入り口として、費用の安い小屋裏収納にアクセスするという方法です。

また、標準のロフトの梯子から施主支給の簡易階段に変更することで、ロフトから下の階へ正面を向いて降りることが可能となったことと、ロフトの側面に階段を設置することで勾配天井オプションの面積を最小化しています。

一条工務店の軸組工法では下屋がある部分に気密の壁点検口を設置して、収納を設置することができます。ただ、壁厚の違いから、軸組工法の壁点検口はi-seriesには転用できませんでした。

気密が取れて高断熱で人が出入りできて一条本社の許可が下りるものとなると頭を悩ませましたが、一条工務店が誇るトリプルサッシがあるじゃないかという結論に至りました。難しく考える必要はなかったのです。

最も格安な「蔵」を作るには、簡易階段の設置に1.5畳+窓の設置にロフトを1畳として、後は小屋裏収納をできるだけ広くするという手段が考えられますが、建物の構造的に可能であるかは、間取り次第と言えます。

3.5寸勾配屋根は9マスまでであり、9マス目には強度的に窓は設置できないことから、今回はロフトを若干広くして窓の位置を強度が確保できる場所にする必要がありました。

そして、窓については一条工務店の本社の判断では、鍵がかかってしまう窓は閉じ込められる可能性があることからNGで、引違窓を設置して現場で鍵(カムラッチごと)を外すことで許可が下りました。

一条工務店版の「蔵」は稟議の内容を含みますが、現場対応は施主支給の簡易階段の設置だけで、あとは工場生産されるものであることから難易度は高くなく、なにより一条の販売に貢献すると判断し公開することにしました。

ミサワホームと一条工務店を比較していた人の中から、一条工務店でも「蔵」と似たようなことができるのであれば、一条工務店を選択する人が増えるのではないでしょうか。

 

 

広大な空間が実現します

こちらが一条工務店版の「蔵」です。我が家の場合は手前の4.5畳のロフトと奥の10畳の小屋裏収納が窓を出入り口としてつながっているため簡単に小屋裏収納にアクセスすることが可能です。

21坪(42畳)の床面積の平屋に対して、4.5畳のロフトと10畳の小屋裏収納は広大なスペースで、居室の収納と合わせた四代目の家全体の収納率は床面積の4割にも達しました。

10畳の広い小屋裏収納としたため、強度の関係から柱(束)が3本設置されていますが、それほど邪魔ではありません。床についてはオプションで高耐久のフローリング仕上げとしています。

ロフトは気密エリア内であるため、居室同様に快適ですが、ロフトの窓を開けた先にある小屋裏収納は低気密住宅の家の中と同じで夏は暑く冬は寒いです。

つまり、一条工務店の小屋裏収納は断熱材は設置されているものの気密エリア外であるため、気密測定をしないハウスメーカーの建てる家の部屋と同じ環境だということです。

 

 

一条工務店版「蔵」の費用

価格(税抜き)は各戸によって異なりますのが、我が家の事例を参考までにどうぞ。

天井勾配(ロフト階段を含む2.5マス分)103,000円
ロフト(階段スペース込みで6畳) 603,000円
標準梯子減額+施主支給梯子設置費用差額 ▲1,000円
ロフトへの引き違い窓設置(J5930窓) 86,000円
小屋裏収納(10畳、フローリング仕上げ5万円含む)321,300円
天井点検口(二か所)14,000円
ロフト階段(施主支給品)47,250円
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合計 1,173,550円(照明やコンセント代は別途)

小屋裏収納の壁と天井はオプションでクロス仕上げにすることも可能ですが、今回は標準の石膏ボード仕上げです。床は標準では合板仕上げですが、木のささくれが足に刺さると困るためフローリング仕上げにしました。

「蔵」の天井高さは1.4mしかないものの、14.5畳(7.25坪)の収納が、16万円/坪で実現していますから、通常の居室の坪単価60万円前後の半分の天井高さの収納として考えてもリーズナブルな収納となっています。

一条ハウスの狭小住宅の場合、坪単価が80万円近くになる場合もありますが、ロフトと小屋裏収納は施工面積の大小による価格の違いはないため、狭小住宅の収納を増やす方法として「蔵」はコスト面で優れているとも言えます。

そして、ご予算に余裕のない方はロフトを出来るだけ小さくして小屋裏収納を広く取るとさらにコストパフォーマンスに優れる家作りとなるでしょう。

ただし、小屋裏収納の空間は気密エリアの外であり、夏季に全館冷房を実施した際における湿度管理が対象外の空間であることから、ダニなどの虫が発生する可能性はありますから衣類などの保管には注意が必要です。

 

 

天井点検口を設置してさらに収納力を高めました

ロフトと小屋裏収納は壁と屋根に断熱材が入っていますが、床から1.4m以上の部分は天井が設置されます。つまり、天井と屋根の間にはまだ空間があり、特に3.5寸勾配屋根の場合は天井の上にはかなりの空間があります。

 

この空間は勿体ないので、天井点検口を設けて収納として使えるようにしました。ただ、ロフトや小屋裏収納の天井は吊り木で吊ってあるだけなので、重量物の収納には向いてません。

私はロフトと小屋裏収納に一箇所づつ天井点検口を設置しましたが、もっと天井点検口を設置した方が、さらに天井上を収納として最大活用できるようになるなと感じました。

小屋裏収納には外部に向けた窓や換気扇を設置する方がいますが、換気が目的であれば、この天井点検口を開けることで小屋裏換気に直接つながりますから、天井点検口にはそんな使い方もあります。

 

 

小屋裏収納を気密化するのは止めました

小屋裏収納には89ミリのEPS断熱材が設置されています。普通のハウスメーカーのグラスウール断熱材よりはるかに高性能な断熱がされているため、隙間を塞いで高気密高断熱な部屋にしたいと当初は考えました。

設計士さんも私のリクエストには困ったようですが、自己責任ということで小屋裏収納の標準仕様書における断面図を見せて頂くと屋根パネルに断熱材が嵌め込んであることが想像できました。

つまり、小屋裏収納の隙間を塞いて気密化した部屋にしてしまうと、軒の換気口からつながる小屋裏の換気が止まるという結論に私は至り、小屋裏収納の気密化は止める事にしました。

湿度を完全にコントロールするために室内の窓を開けた風通しを否定している私ですが、湿度をコントロールできないエリアについては日本家屋の伝統の通り、結露を軽減するためには風通しに頼るしかないと理解しています。

また、小屋裏収納は石膏ボードによって小屋裏空間と間仕切りされているため、小屋裏換気によってほこりが大量に入ることはないですが、やはり隙間があるため、長期的には埃がたまると思います。

でも、よく考えるとこれまでの日本家屋は窓を閉めていてもほこりが入る程度の気密性能しかないため、一条工務店の小屋裏収納は気密測定をしないハウスメーカーの高断熱低気密住宅と同等の快適性の空間とも考えられます。

小屋裏収納にはテレビの端子やコンセントなどを設けることもできますし、何とか娯楽室として利用することもできなくはないですが、冬は寒くて夏は暑い空間であるため、高気密な居室と比較すると快適とは言い難いです。

 

 

施主支給のロフト階段

上記はロフト階段を上から撮影したものです。固定階段では最低3マスはスペースが必要ですが、こちらは1.5マスという狭いスペースで設置することが可能です。

コストをセーブするために私は簡易的なロフト階段を採用しましたが、予算に余裕のある方は固定階段を設置されたとしてもトータルでは十分にリーズナブルな「蔵」になると思います。

ロフト階段の計画にあたり、最初は設計士さんがロフト階段を一条工務店経由で購入しようとしてくれたのですが、取引口座がある問屋を通せないとのことで、施主支給となりました。

ロフト用の階段に興味のある方は私の楽天ROOMをご覧ください。デンマークにあるヨーロッパ最大手階段メーカーDOLLE(ドーレ)社が制作するデザインステップという名称の商品です。

 

今回選択したロフト階段は互い違い階段であるため、少ないスペース(1.5マス)ながら昇り降りがしやすくなっています。手摺は標準で付いていましたが、一条工務店の階段手摺を設置しても良いと思います。

 

階段下は床暖房が設置できないため、そもそも床暖房が設置できない床下点検口を配置しましたが、階段の下の床下点検口にアクセスできるように階段の横の部屋の出入り口には2枚の引き違い戸を採用しました。

ロフト用階段についてはスプルース材の白木の階段であり、壊れるようなことはないと思いますが、本当に簡単な作りなので、一条工務店のフィリピン工場で作ってオプション設定品にして欲しいところです。

 

 

最後に

一条工務店版の「蔵」の計画に当たっては、間取りに応じて耐震性を確保するための色々なルールが課されると思いますから、設計には苦労するでしょう。そして、お住まいの自治体のルールによっては不可能かもしれません。

特に都市部の二階建てでは道路斜線や北側斜線を回避しながら小屋裏空間に「蔵」をつくるのは至難の業でしょう。ただ、屋根は片流れの1.5寸勾配であっても、最も屋根が高い場所ならそれなりの小屋裏空間はあります。

現状では「蔵」の設置は稟議という形で自己責任ではありますが、私は後輩施主が採用しやすいように、コストを抑えた上で、一条工務店の現場や工場生産に迷惑を掛けない稟議の下りやすい方法を検討したつもりです。

ロフトの設置に当たってはロフトの下部は3面に壁が必要であるとか、ロフトに窓を設置するに当たり、スパンが長いと強度的に窓を設置する場所が限定されるなどの制約がありますから設計士さんとよく相談してください。

一条工務店は天井断熱ですが、二階を天井勾配にした際には屋根断熱を採用していますので、標準工法を天井断熱から屋根断熱に変更して頂いて、収納スペースを増やして頂きたいものです。

ただ、現状では一条工務店の家は最近特に性能の向上に比例して坪単価が高騰していますから、小屋裏や床下を収納として活用していかないと、家の建築費用がどんどん膨らんでしまいます。

また、一条工務店は設計の自由度が低いなんて言われますが、そんなことはないと思います。耐震性の確保と工場生産という制約はありますが、むしろ一条ルールを逆手に取ればコストを抑えて色々なことができます。

ただし、稟議が絡む案件については一条工務店側でも保証の問題から積極的に勧めない担当者もいると思いますから、施主側から自己責任で良いからやりたいという姿勢を示さないと積極的に協力してくれないと思います。

 

以上、蔵でした。

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