エアパスファンの設置方法を公開します

全館冷房

本日は問合せの多いエアパスファンについてです。

エアパスファンとは

エアパスファンとは書斎などのエアコンがない非空調ゾーンに、空調をしているゾーンから冷暖房の風を送り、非空調ゾーンの空調をアシストするための換気扇のことです。

エアコン1台全館冷房では廊下等に設置したエアコンの冷気を室内側に送るという役目です。

三菱の商品名ではエアパスファンといい、Panasonicではルームツーファンという商品名ですが、三菱製の方が消費電力が少ないです。

一条ハウスは床下断熱+天井断熱であるため、床下や小屋裏は室外空間ということになりますから換気扇を設置することができません。よって、室内の空気循環にはこのような室内空気の循環装置が必要になってきます。

二階の階段ホール等に設置したエアコン1台で全館冷房をする際に、各居室へ冷気を送り込む方法は、単純にドアをある程度は常時開けておくか、エアパスファンを利用した廊下側から室内への通気が必要になります。

エアコン1台での全館冷房において各部屋へエアコンからの冷気を送る際にロスガードの換気を利用しようと考える方がいますが、計画換気量だけでは風量が足りなくて各部屋は快適な環境にはならないでしょう。

なお、二階のエアコンから一階への冷気の移動については、空気に温度差があれば冷たい空気は自然に下降し、暖かい空気は上昇するため、シーリングファンを吹き抜けに設置して空気を循環させる必要はありません。

エアパスファンの設置方法を公開する理由

昨日、四代目のi-smatⅡの二か月点検で営業さん、設計士さん、監督さんがお見えになって、色々と話しを聞かせて頂いたのですが、設計士さんのお話ではエアパスファンの問い合わせが多いとのこと。

これまでエアパスファンを含めて構造が関わる稟議案件は工場生産や現場の混乱を招くと考えて公開してきませんでしたが、私が設計段階で色々と構想をブログに書いていたものは概ね施工しています。

そして、他の施主がエアパスファンを設置しようとすると、前例があるのかという話になり、結局は一条工務店の社内において我が家の設計士さんに問い合わせが行ってしまい余計にご迷惑をお掛けしているようです。

一方でエアコン1台で全館冷房をするにはエアパスファン等の室内空気を循環させる換気扇の話は避けて通れません。また、先日に一条工務店の展示場に行った際に入口の立て看板にエアコン1台で全館冷房が可能と書いてありました。

つまり、施主と一条工務店の現場の双方がエアコン1台での全館冷房を必要としていると判断し、エアパスファンの設置について、今回公開に踏み切ることにしました。

ただし、エアパスファンを設置できない場所があることや、計画換気の流れに逆らうという点があるため、これから設置を検討する施主の方々は必ず自己責任で実施してください。

エアパスファンの設置について

エアパスファンには風量ごとに製品があり風量が大きい方が換気量が稼げますが音が大きくなるため、設置場所には注意をしてください。

壁が少しふけます

上記の画像は2017年に引き渡しを受けた三代目i-cubeの廊下側から撮影した画像で、ドアの上にエアパスファンが設置されています。なお、エアパスファンの設置場所は必ずしもドアの上である必要はありません。

壁がふけている(膨らんでいる)理由は防火ダンパーをエアパスファンの間に挟み込んで設置したことから、室内の壁厚(2×4)に収まらなくなったからです。

なお、上記の画像のようにエアパスファンを設置した部分だけでなく壁全体をふかしたほうが、スッキリとした外観になると思います。

施工連絡表

エアパスファンの施工連絡表です。エアパスファンの間に防火ダンパーを設置するように指示がされています。

 

こちらは使用した防火ダンパーです。私がエアパスファンを計画した段階では、一条工務店側は壁に穴をあけることに難色を示していて防火対策を厳しく要求されたため、防火ダンパーを設置することになりました。

ただ、現在はエアパスファンを設置した方が増えてきていると思いますから、設置の仕様は変わっているかもしれません。

設置できない場所

エアパスファンはS垂れ壁などの梁が入っている部分には設置できません。また、耐力壁についても同様で耐力壁が足りない場合はオプションのタイガーグラスロックを使って全体の必要耐力を調整する必要が出てくると思います。

上記の画像は三代目i-cubeの工事中の風景です。ドア枠上部に巻いてある電気ケーブルはエアパスファンを設置するためのものです。

このように梁が入っていない場所や耐力壁でない場所であればエアパスファンを設置することができます。エアコンのある廊下と通じていればエアパスファンの設置場所はどこでも良いです。

例えば、廊下に出入り口を設けたドア無しのウォークインクローゼットがある場合は、ウォークインクローゼット内にエアパスファンを設置しても良いと思います。

運転音がします

カタログには静音と記載がありますが、エアパスファンを運転するとトイレの換気扇ほどの音がしますから気になる人は気になると思います。

よって、取り付け位置は高い場所が望ましく、さらに出来るだけ居室の中で、人が常駐する場所から離れた場所への設置が望ましいです。

音漏れについて

エアパスファンを設置すれば壁に穴が開いている状態になるため、居室の音が廊下側に漏れることを懸念する方が多いようです。

しかし、そもそもドアの下は排気のためのアンダーカットがあり、引き戸についても隙間があるため、音漏れについてはエアパスファン設置以前の問題だと思います。

ただ、最近、気密シャッター付きのV-08PFEというモデルが発売されたようですから、音漏れが気になる方については小部屋であればこちらのモデルを検討されると良いでしょう。

価格は?

V-08PF7の機器代は15,000円/個でした。こちらに電気配線代とスイッチ代が入りますから、2万円程度/個でした。再熱除湿機能の付いたエアコンを各部屋に設置するよりはずいぶんとお安く済むと思います。

なお、高性能な一条ハウスでは部屋などの狭い空間に再熱除湿機能がないエアコンを設置すると少しの冷房運転で空間が冷えすぎると共に除湿もされなくなるため、低温高湿度という状態に陥ります。

標準で設置されるRAYエアコンについては14畳以下の部屋への設置は禁止となったそうです。高気密高断熱住宅ではエアコンは各部屋ごとに計画せずに家全体を1つの空間と考えて計画してください。

必要な換気量は?

エアサイクル系住宅の考えでは家中の空気を計画換気量の5倍以上で回す必要があると言われています。風量は多いほど良いのですが、一方で大風量になるほどに消費電力と運転音が大きくなります。

1時間当たりの計画換気量は床面積×天井高さ÷2です。つまり、部屋の気積(空気の量)に対して二時間で空気が全部入れ替わる計算になります。

8畳(4坪)の部屋の計画換気量は、4坪×3.31m2×2.4m(天井高さ)÷2=15.9m3/hですから、エアパスファンに必要な風量を計画換気の5倍とすれば、80m3/hということになります。

エアパスファンには70m3/h、135m3/h、245m3/hがありますが、風量が大きい方が換気がしっかりできるため、135m3/h以上のモデルをおすすめします。

超猛暑日に備えた補助冷房は必要

2018年の夏のように、災害クラスといわれる猛暑日が連発する日については、お住まいの地域や窓の大きさによっては小型エアコン1台では空調が賄いきれない場合があります。

私が小型エアコンでの全館冷房を推奨していますが、その理由は夏季および冬季の家中の温度ムラを解消することと、不測の事態に対応するためにエアコンは一階と二階に各1台必要だと考えています。

大型エアコン1台を二階に設置すればよいではないかと考える方もいると思いますが、小型エアコンの方が省エネ性能が良いということと、温度ムラを解消するにはエアコンが分散している方が運用しやすいのです。

そして、外気に接している室内の壁の表面温度が夜間においても28℃を超えるような超熱帯夜に、エアパスファンの換気量では居室の快適さが保てない場合は居室のドアを開けてください。居室のドアは10センチ程度あけておけば涼しくなります

さらぽか空調を採用した場合においても、床冷房だけでは超猛暑日に対象できないため、二階の階段ホールや吹き抜けに1台は小型エアコンを設置して、家全体の室温を下げる必要があるでしょう。

なぜ、エアパスファンがオプション設定されないのか

計画換気の考え方では、(綺麗な)外気を居室に給気して居室から廊下に汚染空気を排気する考えですから、廊下から居室への空気の流れはこれと逆行します。

ただ、24時間の機械換気が導入された経緯としてはホルムアルデヒドなどのシックハウス対策であり、現在では建材の低ホルムアルデヒド化が進んでこの懸念は低くなっています。

後は二酸化炭素濃度と匂いの問題がありますが、よく考えるとリビングなど人が集まる空間については空気は汚染されていますから、汚染の程度を気にするかしないかの問題だと思います。

私が二代目の自宅を建てた時に参考にしたエアサイクル系の住宅は大量の空気を循環させて家中の温度ムラを解消していたため、少ない空調機器で全館冷暖房を行うとどうしても計画換気と逆行してしまうのです。

通常の計画換気を学んだ設計士さんからみるとエアサイクル系の住宅は理解に苦しむと思います。私は匂いや二酸化炭素濃度が気になったことはありませんが、ここは自己責任でご判断ください。

正式にオプション設定してほしい

一条工務店ではエアパスファンを設置するには稟議となります。エアコン1台での全館冷房が展示場という現場レベルでも要望されている現状では、ぜひエアパスファンをオプション設定して欲しいと思います。

エアコン全館冷房を計画しない場合においても、狭い書斎などのエアコンをつけない部屋への空調アシストとしても必要です。

高気密高断熱住宅は熱が籠るため、非空調ゾーンはあまり快適とは言えません。よって空調をするのであれば、24時間全館を空調すべきで、一条ハウスの性能であれば安い電気代でそれが実現できます。

施主においても効果については各家の日当たり等の問題もありますから、エアパスファンの設置は自己責任だと思って設置してください。

窓の日射制御を忘れずに!

一条ハウスほどの高気密高断熱住宅においては窓から入る日射熱が住み心地を悪化させる最大の原因となります。

多くの方は一条ハウスに引っ越して快適だと感じると思いますが、それはこれまでの快適ではない低気密な日本家屋との比較であって、高気密高断熱住宅にはさらに高いレベルの世界があるのですよ。

ノーマルの設計では一条ハウスの性能を冬季以外は十分に引き出しているとは言えず、四季を通じて一条ハウスの圧倒的な性能を引き出すには発想をこれまでの日本家屋の設計から切り替える必要があります。

日本人は大きな窓を設置することが好きですが、風通しの計画はもはや古い設計方法だと言えます。外気が高湿度な夏季においては窓をあけて換気をしても室内の湿度は高湿度のままです。

昔は風通しをすることしかカビやダニの発生を抑制する手段がありませんでしたが、現在では高気密を利用して窓を閉めてエアコン等で除湿をした方がカビやダニの発生を劇的に抑制できることが分かっています。

つまり、風通しを目的とした窓の設置は最先端の家作りでは不要であり、全館空調を省エネに実現させるには冬以外は窓から余計な日射熱を入れないということがポイントになってきます。

一方で冬季の暖房代を下げるには窓から日射は取り入れたいところです。このすべてを両立させるためには、日射制御の難しい南側以外は窓を少なく小さくして、南側の窓は大きくして日除けを設置することがセオリーです。

多くの方が理解に苦しむ話だと思いますが、一条工務店以外で高気密高断熱住宅を建てたことがある私からすれば、一条工務店の外の世界の最先端の高気密高断熱住宅では私の書いていることの方がむしろ常識なのです。

 

以上、エアパスファンでした。

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