本日は一条工務店がトリプル防火サッシの認定を取得した可能性について言及します。
(2018年12月加筆)トリプルサッシの防火認定は取れており性能は0.8Wです。ただ、現状では防火のトリプルサッシは追加費用が必要で、さらに三階建てについてはまだ防火認定が取れておらず防火のペアガラスとなります。
最近、防火認定を受けた窓がある
(出典:国土交通省 構造方法等の認定に係る帳簿)
認定の詳細は開示されないため、具体的内容はわかりませんが、今年に入ってから一条工務店関連のH.R.D社が防火窓の認定を複数取っています。この認定に関して現時点では一条工務店からオフィシャルな発表は何も出ていないと思います。
また、実際に防火トリプルサッシが発売されたとして、その断熱性能が現状のトリプルサッシと同じになるかはわかりませんが、今回は同じ断熱性能として考察します。
どれだけすごい事か
一条工務店が防火トリプルサッシを搭載した家を発売すれば、住宅業界に衝撃が走るでしょう。
都市部には準防火地域と言って、窓に一条工務店標準のトリプルサッシの採用が困難な地域が多く、防火ペアサッシをオプションで選択した場合は、お金を払って断熱性能が約半分の窓を採用することになります。
準防火地域においても、道路や隣家との距離があれば延焼ラインから外れた範囲には標準のトリプルサッシが採用できます(我がi-cubeも一部に採用)が、二階はほぼ無理で一階の一部だけに採用することになると思います。
一般には防火ペアサッシはトリプルサッシの倍の値段がすると言われており、トリプルサッシの外側に防火シャッターを付けてコストダウンを図っている工務店もありますが、それでもトリプルサッシの1.5倍はコストが掛かると言われています。
私が準防火地区に自宅を建てた7年前にはトリプルサッシ自体が出回っていなかったため、外窓のアルミ樹脂複合サッシ(U値=2.3W)の室内側に樹脂の内窓を設置して窓の断熱性能を高めました。これは外窓と内窓の間に日除けの設置を狙ったという別の意味もあります。
このように、都市部に多い準防火地域には窓の高断熱化が過去からの課題であり、それに終止符を打てるのが、一条工務店が認定を取った可能性がある、防火トリプルサッシなのです。
準防火地域以外にお住まいで、一条工務店で家を建てて苦も無くトリプルサッシを手に入れたという幸運な方にはわからないと思いますが、準防火地域においてはトリプルサッシの採用は悲願なのです。
そして、一条工務店はさらに防犯ガラスを採用すると思いますので、世界的にみても画期的な窓だと思います。性能を重視して家を選ぶ人は、ますます一条工務店を選択するのではないでしょうか。
躍進する一条工務店を苦々しく思っている、ライバル社からみれば温暖地には過剰装備と反論すると思いますが、それは全くの的外れであり、これから建てる高気密高断熱住宅にはトリプルサッシは過剰どころが最優先に採用すべき装備と言えます。
トリプルサッシの必要性は?
高気密高断熱住宅は冬季の室温が上がります。ということは相対湿度が下がって乾燥しますから、多くの方は加湿器で加湿をすると思います。そうなると、断熱の弱い窓では結露が発生するという方程式が成り立ちます。
このように家の温度だけでなく湿度までを考えるとトリプルサッシの価値がいかに高いかが良くわかります。それは、トリプルサッシとペアサッシの家ではライフスタイルが変わると言えるほどの差がでるからです。
冬季に窓の結露が抑制できる
あくまで私的な計算になりますが、温暖地において、ペアサッシでは湿度を40%程度に保たないとハニカムシェードを閉めれば結露すると計算されます。これがトリプルサッシの場合はハニカムシェードを閉めても湿度が50%程度まで結露しないと計算されます。
ペアサッシの場合(室温22℃、湿度42%で窓の結露が起きる)
トリプルサッシの場合(室温22℃、湿度51%で窓の結露が起きる)
必ず全ての窓が結露するというわけではなく、日中に日射が当たらない窓が特に結露すると思います。寒冷地においてはさらに湿度が10%下がり、ペアサッシで30%を超えると結露、トリプルサッシの場合も40%を超えると結露と計算されます。これは私的な計算ではありますが、複数と方を意見を交わさせて頂き、この計算が概ね妥当であると認識しております。
そして、冬季は加湿しなければ全館暖房の家の相対湿度は通常は30%台になるでしょう。加湿をしたいと思っても窓の結露に伴うカビの発生と掃除を気にして加湿できない家と結露をあまり気にしなくて良い家では大違いだと思います。
コールドドラフトが抑制できる
解放感を求めて大窓を採用する方が多いと思いますが、窓の結露を回避しようとしてハニカムシェードを開ければ、ペアサッシの場合は窓から発生する冷気が床の上を流れます。それはペアサッシとトリプルサッシの断熱性能が倍以上違うからです。
- 一条工務店ペア樹脂サッシ U値=1.72W(ハニカム全閉時 U値=1.09W)
- 一条工務店トリプル樹脂サッシ U値=0.80W(ハニカム全閉時 U値=0.60W)
- 3.5寸柱(105mm)のグラスウールHG16Kの外壁 U値=0.32W
単体の断熱性能を表すU値は小さいほうが性能が良いのですが、トリプルサッシは一般的なグラスウールの壁の半分程度の性能ということになり、壁並みの性能とまでは言えませんが、どれだけ性能がよいか一目瞭然です。
コールドドラフト対策において重要な考え方は、断熱性能が悪い部分をなるべく作らないということであり、部分の熱損失が家全体の熱損失の大きさからみて少ないから良いのではなく、大きく熱損失のある箇所は冷気が発生するという感覚が必要だと思います。
オーバーヒートが抑制できる
トリプルサッシになったからと言って完全にオーバーヒートが回避できるわけではないと思います。
しかし、高気密高断熱住宅は春先などの中間期の室温調整が苦手と言われます。外気温が上がる春先に窓から日射熱が入ると室温が上昇して暑くなりますが、エアコンを利用すると室温がすぐに下がり、寒いためエアコンを切るとすぐに室温が上昇するといった、温度が上がったり下がったりという状態になるからです。
多くの方は窓に網戸を設置して外気を取り込んで室温調整をしていると思いますが、春は花粉が多く舞う季節でもあり窓を開けなくても、エアコンを使わなくても室温調整する方法があれば最も良いわけです。
答えは簡単で窓からの日射侵入を減らせばよいのですが、眺望を求めない窓は小さくする事と共に、窓ガラスを日射の入りにくいものにするという方法があります。トリプルサッシはペアサッシよりガラスが1毎増えることによって、春の夜の室温が1℃ほど下がると計算されます。
就寝する際に、ペアサッシで室温が28℃の家とトリプルサッシで室温が27℃家では住み心地が大きく違いますが、もう1℃室温が下がって26℃になれば快適ですから、さらに窓の大きさや日射遮蔽を検討すると良いでしょう。
”http://wp.me/p7NRPv-Ww″そして、さらにもう一歩踏み込んで、窓ガラスで遮熱するのではなく窓の外側に日除けを設置する方法で遮熱したいものです。なぜなら、窓ガラス自体で遮熱してしまうと冬季に窓から得られる日射熱が減ってしまうからです。
一条工務店では寒冷地は断熱ガラス、温暖地は遮熱ガラスと地域によってガラスの種類が決まっていますが、ガラスを選択できるようにしてほしいものです。
ライバル社の状況は
現状の一条工務店は防火ペアサッシにハニカムシェードを加算してU値は1.09W(単体では1.72W)ですが、冬季にハニカムシェードを全閉すると窓の結露が懸念されることから、単純に比較ができません。
現状では数が出ている防火サッシという観点でみると、以下の2個が比較対象だと思います。ライバル社も頑張っていますが、一条工務店の防火トリプルサッシのU値がもし単体で0.8Wの場合はその凄さがわかると思います。
リクシル
レガリスという4層5枚ガラスの怪物のような製品がありますが、あれは防火対応ではない事と高額過ぎて流通するものではないでしょう。
(出典:リクシル社)
ただし、準防火地域の場合は防火戸サーモスX(1.58W)という商品が最高性能ということになり、一条工務店の防火トリプルサッシと比較すると性能がかなり低くなります。
スウェーデンハウス
スウェーデンハウスは「家は窓から」という標語を掲げていますが、木製のおしゃれな窓が特徴です。木製のトリプルサッシはかなり前から採用していて防火対応もしていますが、性能で言うと1.61Wのようです。
(出典:スウェーデンハウス社)
ハニカムシェードスクリーンはレスオプションにして欲しい
トリプルサッシであっても、寒い地域や室内を加湿し過ぎればハニカムシェードを締め切ると窓が結露する場合があることは既に知られています。
結露防止のためにハニカムシェードの下側を開けるのであれば、断熱効果が低減してしまうため、防火トリプルサッシが出た段階で、ハニカムシェードはレスオプション(減額可能)にしたようが良いと思います。
理由として温暖地においてはトリプルサッシが採用できればハニカムシェードがなくても、冬季に十分に窓際の断熱性能が良くなるからであり、ハニカムシェードがない方が窓の結露を気にせずに生活ができるからです。
我が家を含めてハニカムシェードがあるからカーテンを設置しなかったという家もあると思いますが、ハニカムシェードに加えてカーテンを設置している家に関してはレスオプション化は良いのではないでしょうか。
最後に
準防火地区においてはトリプルサッシの採用ができれば住み心地が大きく変わると思いますが、防火トリプルサッシのオプション採用をした場合に価格が急上昇するのは避けて欲しいものです。
最近の一条工務店の坪単価の上昇は施主には大きな負担となっているため、対応策として減額オプションを増やしてほしいです。そして温暖地のこれ以上の高断熱化は窓の日射制御をもっと徹底しないと春先から室内がさらに暑くなってしまいます。
温暖地においては、ハニカムシェードとウレタン断熱材に関してはレスオプションにしてほしいものです。
- ウレタン断熱材+トリプルサッシ+ハニカムシェード
- EPS断熱材+トリプルサッシ+ハニカムシェード
- EPS断熱材+トリプルサッシ
上記であれば、住み心地とコストを考慮して3を選択したいですし、ガラスは遮熱ではなく断熱ガラスを選択したいところです。
本日は未確定な情報をもとに色々と考察や要望を書きましたが、一条工務店が防火トリプルサッシを開発したとなれば、驚くべき快挙です。はやくそれを見る日が来ることを期待しています。
本日は以上でございます。