躯体工事

棟を見ると一条工務店の住宅生産システムの凄さがわかる

基礎工事の次は土台据え~上棟~屋根の雨仕舞までの工事をご紹介します。上棟は見学される方も多いと思いますが、フィリピンの工場で生産されるの家の部品を指導員の指示の元にフィリピン人を含むの上棟チームが組み立てます。

ここが凄いところで、事前に訓練されているとはいえ、外国人労働者を使って、C値が1cm2/m2以下の高気密な家を全国どこでも作れるという事はそれだけの工場生産技術と現場で組み立てる工法を持っているという事です。

私はコツコツと柱と梁を組み上げる工法しか見た事がなかったため、このパネル工法による家の建設にはビックリしました。床・壁・天井・屋根のすべてが工場からパネルで運ばれてきて、家の形になるまで2~3日で終わってしまいます。

一条工務店の気密処理は床・壁・天井パネルの構造用合板に取り付けた気密パッキンで行われますから、完全なボード気密工法という事になり、この気密施工の簡略化が高気密を安定して出せる要因になっていると思います。

上棟の時は家の部品を積んだトラックが何回も来ます。それをクレーンで釣り上げて家を建てて行くのですが、クレーン車の騒音が大きい事と、クレーン車が道路で作業をする場合は通行の邪魔になってしまうのですよね。

工事の数日前に一条工務店から工事案内のチラシがご近所さんにポスティングされてましたし、上棟日の工事開始前にもご近所さんに声かけしていました。家を建てる時はお互い様とはいえ、なんとも心苦しい限りです。

土台据え~基礎断熱

上棟前の工程です。一条工務店ではここから後工程の現場監督さんが担当されます。

玄関土間・ユニットバス下土間

基礎工事の後は床を貼る前に基礎断熱になる部分を先に工事する必要があります。一条工務店では床板を張らない玄関土間の下とユニットバスの下が基礎コンクリートの部分に断熱材を設置(基礎断熱)され、それ以外は床板の下に断熱材が設置されます。

これは玄関土間です。コンクリートを流す前に断熱材を基礎立上り部分に設置(底盤には断熱材は無い)して、中に土か砂利を入れて高さを合わせてから、表面にコンクリートを流し込みます。寒冷地仕様では玄関土間にも床暖房が入りますが、温暖地仕様では玄関土間より上の基礎の立上りには断熱材が付かないため、温暖地でも寒い地域だと結露する事があるそうです。

 

次にユニットバス下の基礎立上り部分に断熱材を設置します。断熱材にシーリング材を塗ってから基礎の側面に張り付けています。基礎の底盤にも断熱材を設置して欲しいものですが、現状の標準工事では設置されていません。

 

これはユニットバス下の人通口に設置される点検口です。点検口自体に断熱材が付いていますが、この上からさらに断熱材を斜めにカットして人が出入りできるようにしたものを嵌めていました。基礎断熱する部分の土台の下は通気パッキンではなく、気密を取るために隙間がスポンジ状になっている気密パッキンを用いていました。有り得ないと思いますがパッキンの種類を間違えた場合は後で現場発泡ウレタンで埋めれば問題ないと思います。

土台据え

まずは、基礎コンクリートの上に土台と大引きを乗せます。土台は基礎コンクリートの上に乗る木材で大引きとは土台より内側に設置される木材で床を受ける役割があります。アンカーボルトを土台に貫通する穴は現場で開けてましたから、今後はその穴までの防蟻処理を強化して欲しいものです。

一条工務店のiシリーズは土台の外周は4×6、土台内部と大引は4×4です。ツーバイ工法なのに土台同士の接合に継ぎ手が用いられていて、ここは在来工法と同じに作り方になっています。

土台等にはACQの加圧注入材が用いられています。防腐剤としては塩化ベンザルコニウムという成分になりますが、揮発もしないですし、おしぼりや昔はコンタクトレンズの防腐剤としても利用されていたので、安全性はいまさら言うまでもないでしょう。

基礎コンクリートの防蟻

青色の塗布されているものは、コシコートという防蟻塗料です。右側の配管周りの隙間を埋めているものはコシシーラーという防蟻シーラーです。左の穴はダンボールのような屑が見えるのは基礎を打設する際に設置したボイド管です。コシコートは広範囲の面積を担当し、コシシーラーはシーラーですから、穴を塞ぐ防水部分に利用されています。

釘は耐震性の向上に重要な役割を果たします。いまは少ないと思いますが、大工さんが釘を自前で持ち込む場合は釘を間違える可能性があります。画像のアンカーボルトの横に写っていますが一条工務店では釘を含めた資材を全部支給していますし、ツーバイ工法の場合は種類毎に釘に付いている色が違いますから、まず釘の種類を打ち間違う事はないでしょう。

床パネル

基本的に3尺×3尺の構造用合板にウレタン断熱材が接着された状態で納品されてました。床パネルには気密パッキンが付いた状態になってますから、この床パネルを土台と大引の間に嵌めて釘を打てば気密処理と剛床が同時に完成します。

 

床パネルが設置された状態です。上棟までの間はビニールシートが掛けられますが、このままの状態でも特類の合板であるため、雨が降っても大丈夫です。穴が開いている部分はキッチンの給排水管であとで現場発泡ウレタンかシーリング材で気密処理がされてました。

 

床パネルの設置が終わりブルーシートが掛けられた状態です。次はいよいよ上棟です。

上棟

住宅建築では最も危険な工程だと思います。ケガ人を出さないように上棟中は工事監督も張り詰めた空気の中で指示を出していますから、見学をする際に施主は工事の説明を聞きたいと思いますが安全第一ですから、じっと休憩時間まで待っている必要があります。

家の中を見学ができるのは通常は10時、お昼休み、15時の休み時間という事になり施主用のヘルメットの着用を求められます。お茶出し等に関しては気持ちの問題なので、してもしなくても良いと思いますが、そんな事で工事の手を抜かれることはないでしょう。

トラックで運ばれてくる家の部品を大型のクレーン車を使って敷地内に運び込むため、クレーン作業は操作中に風の影響を受ける事がありますし、何かトラブルが起きれば工事がストップする事もあるでしょうから施主も上棟には心の準備が必要ですね。

クレーン操作の技術は素晴らしいものがありましたが、中には強風に壁パネルが煽られて足場と接触して破損しまい、後日補修するケースもあるようです。枠組みの木材が壊れておらず、外壁材が割れる程度であれば問題はないと思います。

トラブル発生です。上棟前に説明がありましたが、足場を組んでいる時に単管ハイプが落下して床パネルを貫通してしまいました。床のパネルは外壁が乗らない部分と交換して暫定対応です。パネルは交換すれば済みますがケガ人が出なくて良かったです。

 

上棟チームの到着です。日本人の指導員の方とフィリピン人の方4名のチームになります。フィリピンでの訓練の後に来日し、上棟に特化したチームであるため、作業には慣れているようです。

 

トラックで壁パネルが運ばれてきました。近くの広い道路で部品を積んだトラックが何台も待機しています。窓や外壁までついた状態で壁パネルが搬入されてきます。ハイドロテクトタイルは壁の接合部分を除いて設置されています。

 

壁パネルがクレーンで空を飛びます。クレーンの作業は風の状態を見ながら進められていました。電線を跨いで壁パネルが飛ぶ姿は圧巻でした。

 

壁パネルを土台に隅だしされた線に合わせて設置されています。工事中は転倒防止のつっかえ棒を壁と床部分の大引がある部分にビスを打って仮固定していました。

 

休み時間に家の中をみた状態です。壁の断熱材は現場で土台や壁同士を接合する作業がある部分は後で現場で嵌め込みます。釘を打つ部分には、釘を打つ場所すべてに色で釘の種類とピッチ(間隔)がマーキングされてますから間違うことはないでしょう。

 

配線が通る部分は断熱材が3センチ程、切り欠かれています。これもすべてフィリピンの工場で加工されています。

 

現場で嵌め込んだ断熱材は壁との隙間が最大2ミリ程度ありました。グラスウール断熱材と違って隙間があるから壁内結露するという訳ではなく、結露計算をすると室内から熱が逃げるためむしろ結露し難くなります。この隙間は若干の熱損失になります。

 

気密は壁の合板部分で取っているため、断熱材に隙間があったとしても気密に影響はありません。外部への配管がある部分の断熱材を外すと合板部分で気密処理している事がわかります。なるべく断熱欠損がないように壁パネルには小さな断熱材が諸々付いてます。

 

土台のアンカーボルトの穴にはこの後、気密処理のためにテープが貼り付けられます。土台と壁は釘やボルトで接合され、気密パッキンが付いていますが、接着剤も塗布されているため気密化に貢献すると思います。

 

壁パネル同士の防水処理は壁同士に付いている防水パッキンでのジョイント処理でした。さらに、その上から接合部分に透湿防水シートを被せていました。

 

壁の左側の穴に差圧感応式換気口が設置されます。そして右上の穴がキッチン換気扇の穴です。ここの距離が離れているとキッチンで調理している人は冬は外からの冷気を感じて寒い思いをします。

一条工務店では差圧式給気口のデフォルトが冷蔵庫の上のようなので、キッチン換気扇と距離が長い場合、その間に立って調理する人は常に冷気にさらされる事になりますから、同じ壁に付けた方が良いです。

あまりに近いとショートサーキットを起こして排煙を吸い込んでしまいますので、我が家は90cm程度離れた設置としています。改良要望にも書きましたが通気層から給気してくれたら解決するのに。。

 

所要があるため、昼前に現場を離れ15時の休み時間に再度現場に来たところクレーン車は帰っており、本日の大まかな工事は終わっていました。二階部分は翌日の作業となります。

初日で階段が設置されていました。階段も4つの部品を現場で接合してあっという間に完成です。私の経験からは階段はプレカットされた踏板と蹴込板を1段ずつ現場で組み立てると思ってましたが、一条工務店では階段ごと部品化されてました。

 

一日目にして二階の床まで設置されています。

 

構造用合板に特類と書いてあります。クレーンが無かった昔を考えれば、ツーバイ工法は屋根が付くまでにもっと時間が掛かる工法であり雨に濡れる事が当然ですから、特類という雨が降っても接着性が落ちない合板の使用が義務付けられています。

 

上棟二日目の二階部分および屋根パネルの設置は仕事があるため見学できませんでしたが、工事報告書の写真をみると、天井のパネルも断熱材が入った状態で納品され壁の上に設置していました。

天井パネルは断熱材の上に構造用合板が設置されており、三階の床がある状態とも言えますが、一条工務店ではこの構造を「ツインモノコック」と呼んでいます。まさに、一階の箱の上に二階の箱が乗っかった状態です。

この三階の床の合板部分で天井の気密を取っていますから、工場で生産された段階で天井の気密施工は終わっている事になります。二階の壁パネル同士を頭つなぎして屋根パネルその上に乗せれば、天井と壁の取り合いの気密処理も終わってしまいます。

さらにその三階の床の上に小屋組みの部品が設置され、屋根パネルを設置しますが、床があるわけですから安全に短時間で屋根までが完成してしまいます。この工法は気密処理の簡略化と共に作業する方の安全性が高まるため非常に好感が持てます。

私の経験では、小屋組はプレカットされた木材を現場で組み立てると思ってましたが、全く想像と違いました。小屋組み自体がパネル化されており、現場では三階の床の上にそれを立てて設置し、その上に屋根パネルを乗せるだけで、垂木や野地板などは現場での組み立てはありませんでした。

これは屋根パネルを下から見た状態です。縦材は垂木になりますが、大きな屋根パネルとして納品されてくるため、接合のために2×4材が重なっている部分がある事がわかります。二日目の工事はここまでだったようです。

 

 

ルーフィング工事

ルーフィング工事とは屋根の雨漏りを防止する工程です。上棟時点では屋根にはブルーシート掛けられていましたが、いよいよ本当の防水工事がされ、この日も上棟チームが来ていました。

屋根の防水は屋根瓦が行っているのではなく、その下のルーフィングと呼ばれる防水シートが担当しています。屋根瓦はそれを保護している役目です。私の家で使われたのはガムスター社の改質アスファルトルーフィング(ゴムアス)でした。

ゴムアスは工事の際に切れ端を貰うと分かりますが、1ミリ程度の厚さのシートですが手で切れるようなものではありません。シートというと紙だと思う方もいると思いますが、紙とゴムの中間のようなシートであり、釘を打っても止水性があり、50年程度は防水機能を果たすと言われています。

一条工務店では安全のために足場に施主が登る事は禁止していますから、この画像は上棟チームの指導員の方に撮影して頂きました。

さて、ゴムアスを設置する前に雨樋がない屋根の方向から雨水が流れないように部品を取り付けます。

 

この銀色に見えているシートがゴムアスです。屋根に接する面は接着剤が付いていて、屋根に張り付きます。屋根の下側(下がっている方)からシートを重ねて設置していくことで雨漏りせずに水が下方向に流れる事になります。工事する方にはシートの手順は常識だと思いますがこれが逆だと雨が排出されません。

 

無事に事故もなく雨仕舞までの工事が完了しホッしました。これは後日に付いた垂れ幕です。

 

 

工事中の雨について

上棟中に雨が降ったらどうしようと考える方は多いと思います。しかし、乾燥している木材は雨に当たっても2~3日程度で乾くという実験がありますから心配しなくて大丈夫だと思います。ただ、一階の床に近い部分は乾くのが遅れると思いますが、それも私には問題がないと思えます。

着工承諾書の裏面に「建物全体への防水用シート掛け等の養生は行いませんので、ご了承下さい」と記載があります。理由についても、柱や構造用合板(特類:完全耐水合板)等には雨に強い材料を使ってあると記載されています。

私は雨に強い材料を使ってない(無垢の木材)としても、あまり影響はないと思ってますが、施主を安心させるために、雨に強い材料を使っていると書いてあるのでしょう。特類の合板などは雨対策よりは水蒸気による経年劣化対策だと認識しております。

雨が建物内に入ると後で排出する手間が増えるためにブルーシート等を掛けるのであり、雨に建物が濡れたからと言って建物にダメージを与えるとは思えません。北米で開発されたツーバイ工法は屋根が最後に設置されます。そして、昔はクレーンやビニールシートなんてありませんでしたから、工事中に雨に濡れるを想定している工法であるということは理解する必要があります

雨は目に見えるからショッキングに感じる訳ですが、雨よりも空気中の水蒸気の膨大な量を気にした方が良いと思います。逆に言えば、工事中は晴天であっても、夏に室内を低湿度にコントロールできない家であれば、工事中の雨を心配しても意味がないかも知れません。

ただ、カビのアレルギーをお持ちの方にとってはガビが工事中に生えたら相当に心の負担になると思いますから、心配な方は雨季を避けて、秋から春までの外気が乾燥している期間に建築されると良いと思います。

雨季に高温多湿な日本では程度の問題はありますが、目に見えない部分を含めてカビの発生を工事中に防ぐ事は困難だと思いますし、エタノールを散布して除去(漂白はされない)したとしても、カビの胞子はどこにでもいるため再発はするでしょう。

もし、カビが大量に発生してしまったら、雨仕舞まで行って、室内の石膏ボードを閉じる前に、除湿器をずっと可動させて一定期間工事を止めるしかないと思います。カビの菌糸は湿度が下がれば消滅しますが、シミは拭いてもある程度残ると思います。

カビを気にされる方はその後の生活においても室内の湿度を上げないように注意する必要がありますが、全館冷房が出来るように設計しておかないと、室内の湿度は高いものとなるでしょう。

床下にカビが発生した場合は、住宅の周囲の環境が高湿度でない限りは、基礎コンクリートから水分が抜ける2~3年を待たないと対策の打ちようがないと思います。

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基礎パッキンの隙間から大量に通風しているため、いくら乾燥剤を床下に置いても、外部から水蒸気が入ってきますから、対策のしようがないと思いますので、工事途中で床下に水が溜まってないか確認すると良いと思います。

 

 

終わりに

初めて家を建てる方は手抜き工事をされるのではないかと心配されると思いますが、一条工務店の場合は家の部品が大きな単位で工場生産され、現場ではその部品同士の接合がメインとなり、手抜きができる部分は基本的にはないと感じました。

あるとすればボルトの締め忘れと釘の打ち忘れだと思いますので、心配な方は休憩時間に確認されると良いと思います。釘を打つ場所は色ですべてピッチ(間隔)までマーキングで指示されていますから、素人でも分かります。

また、後日に気密測定を実施するため、部品の設置に当たってのズレに関しては気を使って実施しているはずです。合板部分での気密工法になっている事から、大きな気密性能のバラつきは起き難いと思います。

ただ、上棟までをみて感じた事は、小さな工務店で家を建ててきた私にとっては、ここまでパネル工法になっていると、一条工務店の施主は家の構造を学ぶ機会がなくなってしまうと言えるほどに、現場での作業は少なかったです。

そして、フィリピン工場と上棟チームという、高気密でありながらコストダウンを図る製造方式は他のハウスメーカーにはマネが出来ないと思います。これをただの安普請と見るか技術革新と思うかは人によると思いますが、私には凄いシステムに見えます

上棟工程に関して最も合理的だなと感心した工法は天井・小屋組み・屋根をパネル化していた事です。二階天井パネルを設置した瞬間に三階の床が出現する訳ですから、これなら小屋組みと屋根の設置が安全に作業できます。

一条工務店が天井断熱を採用していて屋根断熱を標準採用しない理由が良く分かります。屋根断熱の場合は垂木や妻壁部分の取り合いの気密処理が面倒なため、それよりは工場生産時に三階の床で気密処理をした方が簡単だと判断しているのでしょう。

世間の二階建てでは通常は三階の床に合板は張らないと思います。一見、材料のムダに見える三階の床がある事で二階部分までもがモノコック構造になりますから、耐震性の向上にも繋がるこの工法は素晴らしいです。

さらに、工法を合理化するとすれば、床断熱を止めて基礎断熱に変更する事でしょうか。また、全体のQ値に与える影響は軽微ですが玄関やユニットバス下の土間の断熱欠損があるため、住み心地向上のために今後は断熱補強される事を期待しています。

いずれにしても一条工務店が住宅業界で躍進している理由が良く分かる合理的な上棟の風景でした。

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