本日はこれから一条工務店で家を建てる方は必見の空調に要点を絞った設計ポイントをご紹介します。あくまで私の個人的な感想ですから情報の判断は自己責任でお願いします。
過去にブログに書いた内容をまとめているだけなのですが、高性能な一条工務店の家の空調の弱点は3点だけだと思います(冬季の加湿は個人差があるため除く)。これだけで、四季を通じて温度と湿度がコントロールできる家になると思います。
ポイントは3つだけ
設計士さんや営業さんに薦められるがままに家を設計すると冬重視の設計になってしまい、冬以外の家の住み心地が冬の床暖房ほどに感動するものではなくなってしまう可能性があります。
これは高気密高断熱住宅の冬以外の住み方が日本ではまだ確立していないからで、「家は性能」の一条工務店でさえも冬以外の家の設計方針が明確ではありません。
日本ではビルなどの空調管理は進んでますが、家庭で温度と湿度が管理できる家は贅沢であると思われているのか普及していません。それは湿度の高い季節に大活躍する「さらぽか空調」がまだモニター扱いのオプションであることからも分かります。
各家庭での空調管理は極一部の設計事務所などが実現している最先端の技術であり、まだ多くの高気密高断熱住宅においては各家庭の空調(温度と湿度)管理まで出来ている状況までには至れていません。
しかし、高性能な一条工務店の家は設計時に高気密高断熱住宅に合った設計を考慮すれば各家庭で空調管理ができる家になります。そのポイントは以下の3点だけで、この3点を一条工務店の家に取り入れれば、四季を通じて住み心地に感動する家となるでしょう。
1.コールドドラフト対策をする(冬季対策)
2.南以外の窓は小さく、南の窓には日除けを付ける(中間期、夏季、冬季対策)
3.さらぽか空調かエアコン全館冷房を採用する(夏季対策)
コールドドラフト(冷気)対策をする
一条ハウスにおいてコールドドラフトを抑えるための具体的な対策としては、床暖房のエリア分けを日陰と日向で分けるということと、玄関ホールの冷気対策をするということが有効です。
家の中に温度差が3℃以上あると、室温が高いにも拘わらず寒いと感じる家になります。
家の中の温度差には縦方向と横方向があります。縦方向は省エネのつもりで二階の室温を下げると二階から冷気が一階に下りてきて一階が寒くなる現象ですから解決方法は簡単です。
冷気の正体はたかだか数℃の温度差の空気なので、できるだけ家全体の温度差を1℃以内にするようにしましょう。空気が対流しないようにすれば劇的に住み心地が良くなります。
ここでいう住み心地とは低断熱低気密住宅との比較ではなく、高気密高断熱住宅同士の比較においても、住み心地に違いが発生するということです。
トリプルサッシの家でも家の中の温度差は発生します。そして、床暖房は床の表面が高温になるわけではないため、床暖房では温度差がある冷気は殺しきれない場合があります。
一階と二階の温度差を作らないようにするには、二階の室温が一階よりも低くならないようにすれば良いだけですから簡単ですが、同じフロアの横方向の温度差にも注意が必要です。
横方向の温度差は、家の日陰の部屋と断熱が弱い玄関から発生する冷気が主要因です。玄関ドアはできるだけ断熱性能の高い、K=1.5のプロセレーネ(2018年12月追記:K1.0のプロノーバ)を選択するようにしましょう。
さらに、玄関土間は基礎コンクリート立ち上がりに無断熱の部分があることと、玄関土間は温暖地では床暖房が標準では入らず(オプション)、断熱材も底盤には設置されないため、玄関ホールは一条ハウスの断熱の弱点です。
玄関土間に床暖房を採用するか、玄関ホールに床暖房のヘッダーボックスを設置して大量の床暖房の温水が通過するようにすることで玄関ホールの室温低下を予防すると良いでしょう。
家の横方向に温度差を作らないようにするには、床暖房は家の日当たりが良い部分と日当たりが悪い部分で区画を分けると良いでしょう。
日当たりの悪い側から冷気が日当たりの良い方向に流れてきますが、床暖房の設定温度を上げるのは日当たりの悪いほうです。そうすることで室内の温度差が少なくなります。
特に日当たりが悪い方向の大きな窓は少なくしたほうが良いでしょう。そして、玄関土間が大きい時や掃出しの大窓を採用した場合は冷気の発生源となるため、冷気を殺せる位置にエアコンを設置すると良いでしょう。
昨年に入居された、まぼこさんの考察が非常に分かりやすいです。
南以外の窓は小さく、南の窓には日除けを付ける
高気密高断熱住宅の窓については南側は日射制御をした上で大きくし、それ以外の方角は窓を少なく小さく高くが良いと思います。
これまでの日本家屋では窓を大きくすることが好ましいと思われてきましたが、高気密高断熱住宅では、大きな窓から入った日射熱が家の中に籠るため大きな窓は春と秋といった中間期の住み心地を大きく悪化させます。
日中の不在時は窓を閉め切っている家が多いと思いますが、窓に日除けがない高気密高断熱住宅であれば、日射熱が家の中に籠って、帰宅してから窓を開けても室温が下がらずに春から熱帯夜になってしまいます。
全部の窓を小さくする必要はありませんが、日射は南だけでなく東西からも同じぐらい侵入してくるため、方角に応じた窓の大きさを検討する必要があります。
一条工務店の窓ガラスは北東北(Ⅱ地域)より南は遮熱ガラス、寒冷地は断熱ガラスです。ただ、遮熱ガラスにおいても、大きな窓だと日射熱がかなり侵入するため対策が必要です。
本来は温暖地においても冬季に日射熱が取れる断熱ガラスを採用すべきだと思いますが、南以外の方角の窓は日射が斜めに侵入することから、窓の日射制御が容易ではありません。
この対策として、南側以外の方角の窓は日除けを付けることが困難な場所であれば窓を小さくすることです。そして、南の窓は大きくして窓に日陰を作ることです。
二階は南側の屋根の軒を標準の範囲で結構ですから出来るだけ伸ばしましょう。
一階の南側の窓にはアーバンルーフを付けるかシェードを設置するフックを取り付けると良いでしょう。窓が日陰になればOKです。
まぼこさんは窓にシェードを設置されていました。
また、腰高の窓は子供が窓から転落する危険性があるため特に二階への設置は要注意です。明り取りが目的の窓であるならば、窓は小さくても高い位置につけると室内は明るくなります。
さらぽか空調かエアコン全館冷房を採用する
これは8月のさらぽか空調を利用した室内の状態ですが湿度が50%程度と快適です。湿度の低い室内空間にはメリットが沢山あります。
- ダニやカビが発生しにくくなる
- 熱帯夜や熱中症の対策となる
- 洗濯物が部屋干しで良く乾くため夜でも洗濯ができる
- お風呂場が良く乾く
- 窓を開けない生活はホコリが少なく掃除が楽
上記のように室内を低湿度に保つとかなり良いことが起きます。さらぽか空調の電気代は月1万円程度ですが、この快適さは冬の床暖房に匹敵します。
現在、さらぽか空調は人気オプションで枠が少ないことと、i-seriesのみの設定で軸組工法では採用できないため、その場合はエアコン1台での全館冷房も自己責任ですが可能です。
全館冷房用のエアコンは二階の階段ホールや吹き抜けなどに設置します。エアコン1台での全館冷房は多少のノウハウが必要ですが冷房運転の場合の電気代はさらぽか空調の半分以下と非常にリーズナブルです。
必ず再熱除湿付きのエアコン(RAYエアコンは付いている)を使う必要があります。そして、一条工務店がオプションの設定品としている、ダイキンと三菱のエアコンには再熱除湿の機能が搭載されていないことから、そこからエアコンを選ばないでください。
(2018年6月追記)新型のRAYエアコンからは再熱除湿機能がなくなり、オプション設定品として三菱のエアコンに再熱除湿が付いているモデルがラインナップされました。超断熱の一条ハウスでは少しの冷房エネルギーで室温が低下してしまうため、この再熱除湿付きのモデルを選択すると住み心地が格段に良くなるでしょう。
再熱除湿機能のあるエアコンを一条工務店に設置してもらうには機種を伝えて見積もりを取ってください。設定品のエアコンで取引のある三菱の上位機種がお求めやすいと思われますので確認してみてください。
全館冷暖房を導入すると使わなくなるもの
夏は全館冷房というよりは全館除湿といったほうが正解だと思いますが、1年を通じて湿度が低い我が家では、今までの住宅で使っていたもので使わなくなるものが発生しています。
- バルコニー 洗濯物や布団を外で干さなくなるため
- 浴室乾燥機 家中の湿度が低いためドアを開けておくと浴室は乾く
- 浴室換気扇 上記と同じ理由
- 除湿機 上記と同じ理由
- 網戸 窓を開けなくなるため(要、窓の日射対策)
- エアコンの台数が減る 各部屋のエアコンは不要になる可能性が高い
浴室換気扇は標準で付いてきてしまいますが、それ以外は設計時にカットすることができます。これだけ不要になればイニシャルコストが100万円程度は削減になるでしょう。
住んでから電気代を少しづつ削減するよりも最初に不要な設備をカットした方が遥かに効果が大きいですし、将来の設備メンテナンスの費用も節約できます。
高気密高断熱住宅でも網戸は必要だと実感している人は多いと思います。住み方はひとそれぞれであるため、高気密高断熱住宅には網戸が不要とは一概に言えませんが、窓を開けなくても快適に過ごせる家も一方で存在することは知っておいて損はないでしょう。
最後に
私の述べている内容は随分と変わった設計方法だと考える方も多いと思いますが、家庭での空調(温度と湿度の管理)は最先端の技術であり、まだ普及していません。
しかし、一条工務店はさらぽか空調という形ですでに取り組んでいますし、技術力のある設計事務所や地場工務店ではすでに温湿度管理できる家を販売しています。
地場工務店の中にはC値を0.2cm2/m2程度まで高気密化して一条工務店に対抗している工務店もありますが、湿度がコントロールできなければ商品としての訴求力は低いでしょう。
そういった意味で、さらぽか空調を搭載した一条工務店の家は究極の高気密高断熱住宅に近づいていますが、床暖房やさらぽか空調を搭載してもまだ窓の日射制御が十分ではありません。
一条工務店の家は窓ガラス(断熱と遮熱の選択ができない)、窓のサイズ(展示場の窓のサイズは大きい)、窓の日射制御(基本的に日除けが考慮されていない)だけが高気密高断熱住宅のセオリーから外れてますが、これは上記の通り施主が工夫することで対策ができます。
高気密高断熱住宅として、一条工務店の家に不足しているものは、ズバリ「窓の日射制御」です。そして、これらの3点に留意して設計すれば間違いなく住み心地の良い家ができると思います。
本日は以上でございます。