インフルエンザと湿度は関係ない?
インフルエンザ対策として冬季における室内の相対湿度(%)は60%程度を世間では推奨されていると思いますが、室温が高い家の場合、60%まで加湿すると、トリプルサッシと言えども窓が結露する可能性が高まります。
(出典:一条工務店HP)
上記グラフはアメリカ空調学会の有名な湿度とウィルスの相関図であり、これがインフルエンザウィルス対策は加湿が重要といった根拠になっています。しかし、その相関は全館暖房の高気密高断熱住宅の普及に伴い疑いを持たれ始めています。
高気密高断熱住宅は室温が高くなるため、空気が膨張して相対湿度が下がります。もし湿度がインフルエンザウィルス流行の主要因であるならば、高気密高断熱住宅はウィルス天国の不健康住宅ということになりますが、実際はそうなっていません。
しかし、日本ではテレビで盛んにインフルエンザ対策は加湿だと「定説」を刷り込まれるため、湿度計が40%を切っているとヤバイと思って加湿する人が多く、この加湿が高気密高断熱住宅の場合は窓の結露を招きます。
暖かい空気は水蒸気を沢山含む事ができるため、同じ相対湿度であっても含んでいる水蒸気の量が異なり、暖かい部屋において湿度を上げるには沢山加湿する必要がある=結露しやすくなるという事になります。
- 室温22℃ 相対湿度60% 絶対湿度11.7g/m3
- 室温15℃ 相対湿度60% 絶対湿度7.7g/m3
高気密高断熱住宅は保温性が高い事と一条工務店の施主は床暖房を使った全館暖房を実施する方が多いため、乾燥している外気を室内に換気のために取り入れると、空気が暖められて膨張し、相対湿度がさがり、乾燥する現象が起きます。
高気密高断熱住宅は加湿をしないと、冬季は室内の相対湿度が20%~40%程度になります。ここで加湿をして相対湿度を上げようとすると、室温が高いため、沢山の水分が必要になる事から、断熱が一番弱い窓において結露が発生する事になります。
トリプルサッシと言えども、加湿をし過ぎれば結露する事が分かっています。生活様式にもよりますが、室内の生活排湿は4人家族で10リットル/日程度あるようですから、沢山結露すると窓を拭く作業が煩雑ですし、カビの原因になります。
温度に注目が集まる高気密高断熱住宅ですが、温度だけでなく湿度のコントロールが四季を通じて重要になってきます。
高温多湿な熱帯や沖縄県でもインフルエンザは流行している
なにを馬鹿な事をと思うかも知れませんが、室内の湿度を高めるという常識とも言えるインフルエンザウィルス対策には説明が付かない現象があります。高温多湿な熱帯・亜熱帯地域では通年若しくは夏季に流行しており、もし湿度が対策になるなら流行しないはずです。
日本では沖縄や鹿児島においては夏にインフルエンザが流行しています。これがなぜ本州に広がらないのかわかりませんが、私は季節変動が人間の免疫力に影響を与えているのではないかと考えています。
厚生労働省のHPによると、インフルエンザの予防には適度な湿度の保持が効果的であると以下のように記載されています。
空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つことも効果的です。
その根拠となるのが、よく見るこのグラフの湿度とインフルエンザウィルスの生存関係です。画像は東京都健康安全研究センターからお借りいたしました。
これをみると、インフルエンザウィルスは低温と乾燥状態で生存率が高いと読み取れます。でも、高温多湿な熱帯の沖縄(鹿児島も)では夏にもインフルエンザが流行するので、この読み取り方が間違っているのかも知れません。
そして、世界では熱帯や亜熱帯でインフルエンザが発生しているのです。厚生労働省のHPには以下のように記述があります。
「熱帯・亜熱帯地方では国や地域により様々で、年間を通じて低レベルの発生が見られる地域や、複数回流行する地域もあります。」
私の仮説なのですが、インフルエンザは人間が体調を崩しやすい、夏の暑い時期や冬の寒い時期に流行しているだけではないかという事です。海外では湿度よりも日照時間(紫外線量)が影響しているのではないかと言われています。
いくら沖縄県民とはいえ暑い時期には夏バテをすると思いますし、本州の寒い時期には体調を崩す人が多いと思います。体調が良くて免疫力がある状態では病気になり難いという単純な事ではないでしょうか。
沖縄県民は夏にクーラーを多用するため、夏の室内は低温で乾燥しているからインフルエンザが流行すると言う説がありますが、絶対湿度の理解が不足していてあまりにも的が外れています。夏に室内の相対湿度が40%を切っているなんておかしいです。
南方で発生したウィルスを持った渡り鳥が沖縄県には飛来しやすいという説もありますが、沖縄と本州の人の移動は活発であるため、この説が正しければ本州の夏にも流行するはずですから説明が付かないです。要因は複合しているのだと思います。
冬季に室内があまりに乾燥して、湿度は20%未満だとドライノーズ(乾燥性鼻炎)になるようなので、湿度が20%以上は必要だと思っていますが、我が家は冬季は加湿していないため、室内の相対湿度は概ね30%台です。
ただ、家族がインフルエンザに罹った事がありません。偶然からもしれませんが、普段から手洗いとうがいを徹底し体調管理に努めています。よって、冬季の湿度を過剰に気にするよりも免疫力を高める事が有効だと思います。
我が家は夏は全館冷房により寒くなく低湿度な状態で熟睡しています。冬季は全館暖房で暖かく寝る事ができます。こういった高気密高断熱住宅の特性を利用した生活が免疫力を高めているのかも知れません。
インフルエンザと湿度の関係については一部の専門家が疑問を持ち始めています。今後何十年か掛けてこの疑問が解決されると思いますが、天動説と地動説のように常識が覆る日がくるのかも知れません。
絶対湿度がインフルエンザに影響しているという専門家がいますが、インフルエンザ=絶対湿度説に従って「みはりんぼうW」は警戒アラームを出す仕様になっています。
この説は熱帯でのインフルエンザの流行の説明にはならないですが、私は一部に合理性がある考えています。人が呼吸をするときに、喉や鼻腔内の相対湿度がどの程度になるかという点が論点なのかもしれません。
乾燥した一定以下の絶対湿度の空気を呼吸した場合、体温に暖められて喉や鼻腔内の相対湿度は40%以下となり、インフルエンザにかかりやすい状態になる可能性があります。
つまり、空気中の相対湿度が重要なのではなくて、喉や鼻腔内の相対湿度が重要だということであれば、空気中の絶対湿度を見るべきであるという説は一理あります。この考え方であればアメリカ空調学会の湿度とウィルスの相関図と矛盾しません。
皆さんも常識に縛られず、高気密高断熱住宅に住んで、自分の目で見た事を自分の頭で考えてみてください。高気密高断熱住宅が普及するにしたがって、過去の定説が成り立たないことが色々と見つかるはずです。
湿度をコントロールすれば結露は防止できる
ここからは結露の仕組みを理解すれば高気密高断熱は窓の結露を予防することができるという話をします。ただ、そこでネックとなるのがインフルエンザ対策としての加湿です。インフルエンザ対策に拘らなければ冬季の相対湿度は温暖地で40%、寒冷地では30%が結露予防とのバランスが良いと思います。
建築初年度の冬は結露しやすい
建築初年度は建材の含水率が高いため、冬季に窓が結露しやすくなります。4人家族の場合は9.5リットル/日ほど生活から排湿され、さらに建築初年度はこれに木材等からの排湿が加算されます。
一例として、外気が5℃50%(絶対湿度3.4g/m3)、室内が22℃55%(絶対湿度10.7g/m3)の場合、天井高さ2.4m・床面積100m2の家であれば、21リットル/日も加湿されている事になります。
これは、生活排湿が9.5リットル/日だとすれば、建材から11.5リットル/日も排出されている事になり、いかに初年度の建材からの排出が多いと言う事がわかると思います。
家を建てた季節にもよりますが、暖かい家は乾燥すると思い込んで、加湿器で加湿してしまうと窓が大量に結露してしまう事になり兼ねません。絶対湿度をみて加湿するかしないかを判断すると良いでしょう。
放射温度計を使えば、窓の表面温度が分かります。表面温度から露点を求める事ができますから、どこまで加湿する事ができるか知ることができます。ぜひ、放射温度とみはりん坊Wをお求め下さい。
結露の種類は二種類ある
結露には建物を腐らせる壁内等の内部結露と室内のカビの原因となる表面結露があります。断熱材が入る前の昔の家は結露しなかったですよね。結露は断熱材や構造用合板を用いるようになって気密性能が上がってから起きている現象です。
結露の原因は断熱不足による温度差の問題か加湿による水蒸気量の増加の2つの要因であり、高断熱化が進めば室内の空気は暖められ膨張して相対湿度が下がり乾燥するため加湿が必要という循環になります。
この状態ではさらに高気密化をしないと結露が起きやすくなってしまいます。空気が漏れる箇所は断熱が弱く水蒸気が沢山通りますから、結露をしない暖かい家を目指すのであれば、C値1.0cm2/m2以下の隙間が少ない家が良いでしょう。
中途半端な隙間は結露の元ですが、最近の建物であっても、冬に窓を開けて換気をして結露を防止している家があります。中途半端な隙間ではなく、窓を開けて外気と室内を同じ温湿度にすれば結露はおきません。でも、これでは換気が必要な昔の石油ストーブを使っているようで、何のために高断熱住宅にしたのか分からなくなりますよね。
また、闇雲に室温を上げて結露を防止しようとすれば、相対湿度が下がり過乾燥になります。ここでウィルス防止のために加湿すれば結露して当然です。高気密高断熱住宅は冬に結露するという認識は間違っていて、設計の問題と生活方法の両面から結露は起きています。
暖かくて、湿度が高い家は絶対湿度が高い訳ですから結露しやすくなります。冬に暖かい家を望む人はなぜ結露が起きるのかを理解して、防湿をした上で断熱強化をするか室温を下げる工夫をした方が良いと思います。
内部結露の対策は透湿抵抗比の理解から
壁や屋根など建物内部で起きる結露は腐朽菌を発生させ建物を腐らせる可能性があるため注意が必要です。EPSやウレタンなどの水蒸気をあまり通さない断熱材を使っている場合はあまり考慮しなくて良いのですが、グラスウール等の透湿する断熱材を使う場合は室内の水蒸気が壁から外に抜けるスピードが速いと大量の水蒸気が通過する事になり結露が起きます。
この水蒸気の動く速度は各建材の水蒸気が通る抵抗値を計算すると分かります。これを透湿抵抗比といい、結露防止には「外に向かって開放するという」格言があります。これは透湿抵抗の高い建材を室内側から配置し、水蒸気の動く速さをゆっくりさせ結露を防止するという意味です。闇雲に断熱を強化してはならず、室内側から透湿抵抗の高いものを順に置く必要があります。
室内側に水蒸気が通り難い防湿フィルムを張ってその次にグラスウールを充填するのはそのためです。興味のある方はF式結露計算シートにて計算してみてください。
結露は絶対湿度で考える
一般的な温湿度計に表示されているのは%である相対湿度です。これは現在の水蒸気量である絶対湿度を飽和水蒸気量(相対湿度100%)で割った現在の水蒸気量の割合を表します。
以下の表は同じ相対湿度50%であっても、温度によって空気が含んでいる水蒸気の量(絶対湿度)は異なるという事を表しています。居室の湿度が低いから結露しないだろうと油断していると、断熱の弱い部分では結露する可能性があります。
絶対湿度は7グラムを目途に10グラムにもなると窓等の断熱の弱い部位の結露が心配になってきます。
温度 | 飽和水蒸気量 | 相対湿度 | 容積絶対湿度 | 重量絶対湿度 | 露点温度 |
℃ | g/m3 | % | g/m3 | g/kg | ℃ |
15.0 | 12.84 | 40% | 5.14 | 4.26 | 1.53 |
16.0 | 13.64 | 40% | 5.46 | 4.55 | 2.42 |
17.0 | 14.49 | 40% | 5.80 | 4.85 | 3.32 |
18.0 | 15.38 | 40% | 6.15 | 5.17 | 4.21 |
19.0 | 16.32 | 40% | 6.53 | 5.51 | 5.11 |
20.0 | 17.31 | 40% | 6.92 | 5.88 | 6.00 |
21.0 | 18.35 | 40% | 7.34 | 6.26 | 6.90 |
22.0 | 19.44 | 40% | 7.77 | 6.67 | 7.79 |
23.0 | 20.58 | 40% | 8.23 | 7.09 | 8.68 |
24.0 | 21.79 | 40% | 8.72 | 7.55 | 9.58 |
25.0 | 23.05 | 40% | 9.22 | 8.03 | 10.47 |
26.0 | 24.38 | 40% | 9.75 | 8.54 | 11.36 |
27.0 | 25.77 | 40% | 10.31 | 9.07 | 12.25 |
28.0 | 27.23 | 40% | 10.89 | 9.64 | 13.14 |
29.0 | 28.77 | 40% | 11.51 | 10.24 | 14.03 |
30.0 | 30.37 | 40% | 12.15 | 10.87 | 14.93 |
家の中の水蒸気量はほぼ一定ですから、断熱の弱い窓などで室内の空気が冷やされると露点に達して結露してしまいます。温度によって湿度が変化すると分かり難いため、温度ではなくその空気に何グラム水蒸気があるかというものが絶対湿度です。絶対湿量といった方がわかりやすいかもしれません。
絶対湿度には容積絶対湿度(g/m3)と重量絶対湿度(g/kg)がありますが、換気量がm3であるため通常は容積絶対湿度で考えた方がわかりやすいでしょう。重量絶対湿度は空調計算で利用するものです。
相対湿度と絶対湿度の使い分けに関しては、例えばダニはその空間にある水蒸気量が減れば(=割合の問題)干からびて生きて行けないため絶対湿度ではなく割合である相対湿度(%)を基準に考えた方が目的に合っています。
部屋の除湿量や加湿量を判断する場合は絶対湿度、人間を含めた生物へ与える影響を判断する場合は相対湿度と使うと考えると分かりやすと思います。
表面結露対策は3通りある
- 断熱の弱い部分に断熱補強する。
- 窓・・・ハニカムシェードは結露する場合がある。リフォームでは真空ガラスに交換や二重窓にする方法がある。
- 玄関ドア・・・玄関ドアは断熱性能がペア樹脂サッシ程度であるが、断熱補強は困難。
- 玄関土間・・・施工不良ではないが無断熱の部分があるが、断熱補強は困難。
- 室内の絶対湿度を低くする
冬の高高住宅は過乾燥になりますが、加湿しないで相対湿度を上げるには室温を下げる方法があります。高い室温は乾燥するからと言って加湿すると断熱の弱い窓や玄関での結露を招きます。室温が高くなくても暖かいと感じる家を作る事(=コールドドラフト対策)ができれば加湿量が減り結露し難くなります。 - 結露する部分の表面温度を上げる
基本的には上記の断熱補強と絶対湿度の抑制の方が効果が大きいですが、室温が高いと窓などの表面温度が上昇し結露し難くなります。玄関にエアコンを設置したり、窓に専用のヒーターを付ける方法もあります。
調湿建材は部分的な効果しか期待できない
エコカラットや漆喰などの調湿できる建材があっても、飽和(満タンになる)してしまえば水分を吸収できません。脱衣所などの一時的な結露防止には役に立つと思いますが、冬季に窓の結露を調湿建材で防止するには相当の施工面積が必要になり、室内を過乾燥状態にするほどの施工面積が必要です。
エコカラットのHPでは条件が細かく示されておりませんが、3m2の施工面積で窓の結露量が15時間で448グラムから27グラムに減少したとあります。仮にm2当たり140gの吸湿量としましょう。
例えば浴室の隣の脱衣所の壁の1面をすべてエコカラットにしたとしましょう。1坪(1.82m)、天井高さ2.4m、1面の場合、4.368m2の施工面積ですから611gの吸湿量になります。これぐらいの吸湿量ではお風呂場が乾燥する事はないと思います。
エコカラットは6畳間で3m2もの施工面積を想定していますから、結露防止として施工するには相当の施工面積が必要になってしまいます。調湿建材は基本的には結露対策ではなくお部屋をオシャレにするものと理解した方が良いと思います。
調湿建材の中には防カビ剤が練り込んであるものがあり、調湿機能による防カビではなく防カビ剤の効果が発揮されていると思われますので、調湿建材を使わなくても防カビ剤を散布するのも手だと思いますが、健康被害にはお気を付けください。
では、どうやって結露を防止するのか?
対策は室温を上げ過ぎない事です。室温を24℃にしないと若干寒い若しくは物足りないという家は暖房設定温度により家の中に温度差があるか、窓や玄関の面積が大きくて冷気が発生していると思います。
設計時点で大きな窓や広い玄関がある場合は、そこの暖房設計に注意して、エアコンをそちらに向ける事や床暖房の区画を別にして、冷える区画を高めの温度設定にするなどが考えられます。
結露を防止には窓用のヒーターがありますが、COPが1である場合は消費電力が大きくなります。冷える区画のドアを締めるという手段もありますが、開けた瞬間に冷気が流れ込んで来ますから良し悪しがあります。
人にもよりますが、家の中の温度差が1℃程度の家は体感温度が高くなるため、室温を20℃~22℃で生活しても寒くなく、室温が下がれば相対湿度が自然と上がりますから、加湿器での加湿量を抑える事ができます。
まず、温暖地の冬季は室温20℃相対湿度40%=絶対湿度7g/m3を基準に考えた方が良いと思います。これ以上絶対湿度を増やすと家の中で冷える方角のペアサッシと組み合わせたハニカムシェードスクリーンが結露すると思います。
しかし、我が家では加湿をしていないため室温20~22℃で湿度30%台が普通です。あまり湿度が低くても気にらないので、結露予防になっているのだと思います。エアコンの温風が顔に当たるような設置の家は乾燥が気になるのかもしれません。
もっと、室温を上げて冬も家の中で半袖で過ごしたいという方は、湿度が30%台でも気にならないのであれば良いでしょう。室温が24℃で相対湿度60%では絶対湿度は13.1g/m3にもなるため、トリプルサッシと言えども、結露の発生はやむを得ないでしょう。