はじめに
北海道の一条ブロガーとして有名なとりさんが全館冷房についてのまとめ記事をブログにてリリースされました(祝)
なかなかの大作になっていて、さらぽか空調とエアコン全館冷房の両方を取り上げています。とりさんは現在はブログ村には登録していませんが人気のある一条ブロガーです。
さらぽか空調とエアコン全館冷房の両方とも導入して利用している私が今回のとりさんの記事を拝見いたしましたが、非常に分かりやすいと共に正しい解釈をしていらっしゃると思いました。
私のブログやInstagramをみて、とりさんは自宅のエアコン全館冷房に取り組んで下さっていますが、説明が下手な私のブログの内容がうまく伝わっているのかが心配なところでした。
そして、四苦八苦しながらも、エアコン全館冷房を想定していなかった間取りにおいて、入居後に設置した6畳用のエアコン(三菱のJXV)を使って何とかエアコン全館冷房を実現されました。
福島在住の一条ブロガーである、まぼこさんに続いてエアコン全館冷房の仕組みをこんなにも理解してくれる人が現れるなんて、ブログを書いてて良かったと思いました。
女性目線のエアコン全館冷房
とりさんのブログは数値を語るような性能マニアなブログではなく、シンプルなインテリアや生活に便利なアイテムの紹介などを基本としたオシャレなブログです。
私の家もマネをさせて頂いたトイレの照明などシンプルかつオシャレな情報が満載のブログです。
男性目線のエアコン全館冷房の説明は数値や専門用語がならんでしまい、そういうブログは読む気になれないという人も多いと思います。
とりさんは、最初はむしろ専門用語や数値の話には若干アレルギーを起こすような人ではなかったかと思います(実はもともとのご職業はシステムエンジニアのようですが)。
そんなとりさんが「誰にでもできるよ」、「完璧でなくてもいいんだよ」といった感じでエアコン全館冷房を解説してくれたことは非常に意義があることだと思います。
そして、とりさんのことを主婦とお呼びすることは失礼かも知れませんが、お仕事はされておらず子育て中のようですから、家事と掃除を全般的に担当されている方の意見は重要だと思います。
私は常々、エアコン全館冷房は除湿がメインで冷房はオマケだと言っています。これは高温多湿な日本ではカビやダニを抑制するための家事の負担が大きいためこれを改善したいからです。
男はアホなので「エアコン1台で家中を冷房できるなんて凄いだろ」というような自己達成が目的になってしまうケースも多いと思いますが、女性目線の場合ちょっと違うのかなと思いました。
逆に女性目線のエアコン全館冷房は「それが使えるのか使えないのか」といったユーザーとしてのシビアな評価なのではないかと思います。
とりさんは以下のような、全館冷房の実施による湿度の低い生活によって実利を取りに行っているのだと思います。
- 部屋が蒸し暑くないため小さなお子さんがグズらない
- 天気を気にせず洗濯物が梅雨でも部屋干しで乾く
- ダニが繁殖しないため布団を外に干さなくて良い
- カビの発生が減るためお風呂やトイレの掃除が楽になる
- 水とりぞうさんのような除湿剤が不要になる
エアコン全館冷房を計画すると「エアコンの設置台数が減りますよ」なんて言うよりも家事が大変な人には「布団を干さなくて良くなります」といった方が心に響くのかもしれませんね。
だって、堂々と布団を干さなくても家族に対して後ろめたさが無くなるのですから(・∀・)
オフィスでは「働き方改善」が叫ばれる中、家事の「生産性向上」も必要だと思いますが、そのネックとなっているのが夏季に高温多湿な日本の気候にあると私は考えています。
日本家屋はこれまでもカビやダニとの闘いのために窓を開けた通風やふとんの日干しをしてきましたが、高気密な家は夏季に家中を除湿すればカビやダニとの闘いに終止符を打てるのです。
袋をあけたパンケーキなどの粉もの中にダニが繁殖して、それを食べたことによって起こるアナフィラキシーショックなどもダニが繁殖しない家を作れば予防できます。
家事の時間を減らして余暇を楽しみ勉学に勤しむというような文化的な生活をするためにも、高温多湿な日本では高気密住宅を使って家中の湿度をコントロールすることが重要だと思います。
また、家事を積極的にしない夫と家事の分担をすること自体がストレスという場合は家事の時間を短縮してしまって自分で全部の家事やった方が気が楽だという考え方もありかも知れません。
それとちょっと最近家を設計している人で心配に思うのは、部屋干しスペースを設けて干すだけでは梅雨の洗濯物の生乾きは防止できませんよ。洗濯乾燥機か除湿が必要です。
そして部屋干しスペースを設けて除湿機や洗濯乾燥機を稼働させる以外にも、さらぽか空調やエアコンを使って家中を除湿してしまうという選択肢もあるので検討して頂きたいですね。
さらぽか空調とエアコン全館冷房の違い
さらぽか空調とエアコン全館冷房の違いについて両方を採用している私から補足をさせて頂きます。
さらぽか空調は快適だけど初期の設備費と電気代および将来のメンテナンス費用が心配だという意見があります。これはその通りです。
また、床冷房は急な室温変化に対応できないため、結局エアコンが必要になるという意見もありますが、「さらぽか空調は結局エアコンが必要」という言葉が一人歩きしてしている感があります。
窓から入る日射熱を考慮した家作りをせずに、さらぽか空調があればエアコンは必要ないという判断をすると猛暑日にオーバーヒートした時に後悔することになると思います。
さらぽか空調を採用した場合はエアコン全館冷房と同じく2階の階段ホールに6畳用のエアコンを1台設置して猛暑日などの急な室温上昇に備えるべきですが、全部の部屋にエアコンは不要です。
エアコンはQ値が10Wの無暖房住宅に合わせて畳数が表示されていることから、Q値が1.0W程度の一条ハウスにおいては6畳用のエアコンは60畳用(30坪)のエアコンとなるわけです。
一条ハウスで6畳用のエアコンを各部屋に設置して運転すれば寒くて仕方がないためエアコンをON・OFFしたり、窓をあけて室温を調整したりと面倒な運用が必要になります。
さらぽか空調の良さは床暖房と同じです。さらぽか空調と床暖房は間取り作りにおいて全館空調の設置場所など面倒なことを考慮しなくて良い完成度の高いシステムだと私は考えています。
耐震等級3が必須で間取りの制約の多いと言われる一条ハウスですが、床暖房と床冷房なら全館空調設備の設置場所を考えなくて良いため間取りが自由になる面もあることは知って欲しいですね。
ただ、グランセゾンなど軸組工法の商品には、さらぽか空調の設定がないことからエアコン全館冷房を計画される場合は間取り作りの最初からエアコンの位置を考慮してください。
完璧な全館冷房でなくてもいい
とりさん邸は間取りは非公開ですが家が大きいようです。また、2階のエアコンは階段から離れた2階の奥の寝室に設置されていますから、エアコン全館冷房の条件としては余り良くありません。
一般的に多い1階リビングの間取りでは、リビングに熱源となる人や家電が集中することから、2階のエアコンからリビングが離れているとリビングが暑いという状態になります。
とりさんも最初は2階のエアコンで家中の湿度は下がるけど1階のリビングの室温が下がらない事に悩んだと思いますが、途中から1階リビングのエアコンは最低限使えば良いと気付いたようです。
無理にエアコン1台の全館冷房に拘るよりは、2階のエアコンをしっかり運転して家中を除湿して、1階の補助エアコンはサーモオフさせても良いから最低限利用することが正解ですね。
多くの人はサーキュレーターを回したり1階と2階のエアコンを28℃のような高い設定温度で運転することで室温を均一化させることが快適につながると考えると思いますがそうではないのです。
冬は家中の室温差を3℃以内(できたら1℃以内)にすると足元の空気が動かなくなって快適です。ただ、これは室温が20℃というような快適温度ギリギリの状態だから正しいと言えることです。
反対に夏季はエアコンを利用していても室温は26℃前後と高いため、風があると快適だと感じると思いますが、これが空気を攪拌すると快適になるという誤解の始まりではないかと思います。
夏季にエアコンを効率的に利用するには、むしろ家の中の空気をかき混ぜずに1階と2階に温度差を作って自然対流で空気を動かすことで2階のエアコンから発生する冷気が家中に行き渡ります。
それでは足元が寒いではないかと思う方もいると思いますが、夏は室温が高いため足元が涼しくても快適温度内であれば不快に思わないのです。冬と夏で考え方を変える必要があるでしょう。
エアコン全館冷房の基本中の基本は「暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降する」という空気の自然対流を利用して吹抜けや階段の空間を通じて1階と2階の空気を循環させることです。
2階のエアコンからの冷たい空気が階段の床を流れて1階に落下すれば、2階の空気が足りなくなりますから代わりに1階の天井付近にある暖かい空気が2階に補充されるという非常に簡単な話です。
よって、2階建てのエアコン1台による全館冷房がうまく設計されている場合は、サーキュレーターとシーリングファンが必要なくなるという話は自然対流を意図的に利用しているからです。
とりさんはエアコン全館冷房においては間取りの条件が良くなかったからこそ、空気の自然対流と再熱除湿機能を駆使しながらエアコン全館冷房の基本を完全に理解できたのかも知れません。
エアコンから発生する冷気はドライアイスの煙のように静かに床に流せば良いのだということに気が付けば全館冷房は簡単なのですが、冷気は目に見えないためここの理解が難しいようです。
とりさんは、サーキュレーターの利用は平屋や2階建ての1階部分の横方向の室温均一化に有効であっても2階建ての上下方向の熱移動には有効でないことも理解されていました。
そして、窓から入る日射熱を抑えるための窓の日除けはまだ付けていないようで、一番暑くなるリビングの室温を低下させるために1階のエアコンも必要に応じて利用しています。
それでも2階の奥にある寝室の6畳用のエアコン1台を使って家中の湿度を低く抑えていますから、エアコンと空気の動きが見える感覚を身に着けたのだと思います。
この独特の感覚はガンダム的な話ではニュータイプのようなもので、この感覚に覚醒するとエアコンが寝室などの居室の中にある家を見ると違和感を覚えてしまうようになるでしょう。
また、エアコン1台での全館冷房に取り組む際に年ごろのお子さんがいるご家庭ではドアを開けっぱなしにするなんて考えられないと思ってしまうでしょう。
でも、違うのです。もし、各居室にエアコンを付けたれば入居後に付けても結構ですが、その前に2階の階段ホールの設置したエアコンだけで過ごしてみて快適性を確かめてみてください。
エアパスファンはあると便利ですが、無くてもドアを少し開けておくか、不在時にドアをあけて部屋を冷やしておけば良いでしょう。湿度が低ければ扇風機を使えば概ねOK牧場でしょう。
そして、これから初めて家を建てる方は、現在のお住まいでエアコン1台で全館冷房をしてみてください。性能の低い家であっても除湿された空間がどんなものか理解できるでしょう。
エアコン全館冷房は除湿がメインで涼しさはオマケです。この意味は家中がしっかり除湿されていれば温度面の全館冷房が完璧でなくても対応方法はあるということが分かると思います。
最後に
今回とりさんが少しでも多くの方に全館冷房を知っていただけるようにご自身の全館冷房に至るまでの道を解説してくださいました。
入居してからエアコン全館冷房に気が付き、エアコン全館冷房に向いていない間取りであったと思いますが、全館冷房を実現したことは、入居済みの施主にとっても非常に参考になると思います。
また、これから家を建てて全館冷房を計画される方は最初は分かり難い私のブログを読むより、とりさんのブログから読んで頂いた方が良いと思いました。
家作りにおいて数値や性能などを重視して頭でっかちになってしまうと間取りやインテリアなどの重要な要素が落ちてしまう人がいますから、家作りはバランスが大事なわけです。
そして、家作りは家事の負担をどれだけ減らせるかが重要であり、とりさんのような家事を多く担っている方が実現したエアコン全館冷房は多くの方に共感して頂けるのではないかと思いました。
「エアコン1台で家中を冷房できる」といった腕自慢には「興味がない」と思う方が多いのではないかと思います。そんなことより「何の役にたつのか」といったことが重要でしょう。
ただ、数値計算の裏付けがないと家作りが都市伝説だらけになって間違った方向に進んでしまうので数値の話は必要なのですが、難しい野暮な話は抜きにして考えることも大切だと思います。
でも、私には女性の共感をどうやって得れば良いのか分からないので、そこはとりさんにお願いして、今後も家中を除湿するとどんな効果があるかレポートして頂けたら嬉しいですね。
本日は以上でございます。