はじめに
家は三軒建てないと満足しないという言葉があります。この意味は家作りは失敗を繰り返して学ぶという意味の他に「子育て期」・「中年期」・「老後」に応じた間取りという意味もあります。
つまり、家を三回建てるという意味と三回リフォームするという意味があります。
本日は将来に子供が大きくなって出ていったら二階の間取りをリフォームで変えることまで踏まえて住宅依頼先を検討するべきかという話です。
増改築しやすい工法とそうでない工法がありますが、そこまで含めて住宅依頼先を考えるべきなのでえしょうか?
また、子供の人数が想定外に増えてしまった場合などは仕方がないと思いますが、老後までに何回も間取りを変更する予定であれば相当な出費を覚悟する必要があるでしょう。
一条工務店の人気の間取りの中に、二階の子供部屋の二つを最初は間仕切りなしで作成して、将来間仕切り壁を入れるというものがあります。
間仕切りなしで構造計算しているため間仕切りを追加してもまったく問題ありませんし、間仕切り壁は木材で枠を組んで石膏ボードと壁紙を貼るだけですから費用は10万円程度のようです。
一方で本格的な増改築をする場合は、新築時にコストパフォーマンス良く建てても、増改築やリフォームをしたらコストパフォーマンスが悪くなるという考え方もあります。
かくゆう私は屋根や外壁などの劣化に対するメンテナンス以外のリフォームや増改築は老後の資金難を招く可能性があるのでやりたくないと思っています。
リフォームの難易度
よくある話として、地場工務店が大手ハウスメーカーの家は特殊な型式認定だから、増改築をするのは建てたハウスメーカーでないとできないとできないし高くつくという話です。
これは自社を有利に見せるためのポジショントークだと思うのです。私はハウスメーカーと地場工務店の両方で家作りをしているためどちらの肩を持つ者でもないという前提で話しています。
確かに特殊な耐震工法や鉄骨住宅などは家を建てた住宅会社でしかリフォームは難しいでしょう。ただ、そういった家を建てる人は資金に余裕があるのではないでしょうか。
また、軸組工法の住宅業者はツーバイフォー工法はリフォームがし難いと言いますが、半分は間違いだと思います。
日本ではツーバイフォー工法の事業者は少ないですがツーバイフォー工法自体はもともとオープン工法ですからツーバイフォー協会はツーバイフォーこそリフォームがしやすいと言っています。
一条工務店は軸組工法も枠組工法も非常にオーソドックスな工法を採用していると思います。一条工務店の上棟を二回見ましたが生産の合理性には驚くものの特殊な工法はありませんでした。
また、増改築して基礎コンクリートを増設する場合などは、耐震性や気密性能など考慮すべき点は多々あります。特に構造計算をしている建物については増改築は注意が必要でしょう。
増改築をしない家を作るには
平屋や二階が小さい家など居室と水周が一階にある家は老後が生活しやすいと思います。二階リビングの場合であってもストレート階段で昇降機が付けれるのであれば問題ないでしょう。
ただ、地価が高く土地が狭い都市部では平屋や下屋のある二階の小さい家は難しいため、総二階の家かそれに近しい家が大半だと思います。
新築時にコストパフォーマンスに拘った人が老後は改築したいと言っている話を聞くと、えっ?それではコスパ最悪やんかと感じます。まぁ何にお金を使うかは人それぞれですけどね。
ただ、一般的には子育て期と老後は必要な間取りが違うと言われますが、そんなのは世間の噂話に過ぎないので私は新築時に老後まで見据えた間取りを作れないものかと考えてしまいます。
どのような間取りにすれば老後を過ごせるのかという事を考えると、水周りと居室を一階に配置するということでしょうか。
老後は気を使って夫婦で一緒の部屋に寝るご家庭も減ると思いますし、どちらか片方が寝たきりや足が悪くなったと想定して、4.5畳でも3畳でも良いので一階に居室があるといいですね。
土地が安い地域の場合は一階にLDKと客間があることが普通だと思いますが、土地の狭い都市部ではそのような間取りはなかなか作れません。
一階に居室を作るには
一条工務店のi-seriesは総二階のルールがあって総二階にせずに坪単価半額のバルコニーや吹き抜けを設けた場合は建築費用が増えてしまいます。
ただ、地価が高く土地が狭い都市部では総二階にしないと建ぺい率がクリアできないため、そもそも総二階になってしまうケースが多いと思います。
バルコニーや吹き抜けを無理して設置するよりは、一階のお風呂などの水周りを二階に上げてしまった方がムダなバルコニーや吹き抜けが減って総二階にできるためコスト的には安くなります。
しかし、老後を考えると水周りを二階に上げるのは注意が必要だと思います。老後にはリフォームするから良いのだと考えるのであれば水周りを二階に上げても良いでしょう。
では、どうするかというとリビングとダイニングのテーブルと椅子を統合すれば、削った面積で一階に居室を作れると思います。ただ、これだとLDKが小さくなりすぎてしまうかも知れません。
もう1つある案はLDKを分割して二階の廊下スペースを削る案です。ダイニングキッチンは一階としてリビングのみを二階に配置することで一階に居室を作るスペースを生み出します。
リビングを二階にあげて二階の廊下をリビングの中に取り込むと床面積が減ります。一階のダイニングでもテレビを見れるようにしておけば老後には困らないと思います。
減らせるもの必要なもの
一階に居室を確保するにはムダなものをカットして予算を確保する必要があるでしょう。
また、家を小さく建てれば固定資産税も少なくて済みますし外壁等の修繕のコストも減りますから、老後に備えて家は小さく建てた方がコストパフォーマンスに優れると思います。
家を小さく建ててなおかつ老後まで暮らせる間取りとなると相当に考えないと難しいと思いますが、以下のように減らせるものと必要だと思うものに仕分けてはと思います。
減らせると思うもの | 必要だと思うもの | 備考 |
広い子供部屋 | 狭くても良いので書斎 | 在宅勤務・在宅学習に対応 |
ダイニング+リビング | ダイニングかリビングの片方 | |
バルコニー | 部屋干しスペース | 洗濯物は干したまま畳まない |
洗濯物を畳む習慣 | オールハンガー収納 | 洗濯物は畳まない生活 |
居室の収納 | 小屋裏収納や床下収納 | 居室の収納は割高 |
高気密高断熱住宅の悩ましい論点として洗濯物の乾燥機を導入するかしないかということがあり、パワフルなガス乾燥機である「乾太くん」やヒートポンプ式の「洗濯乾燥機」があります。
洗濯物を乾燥機で乾かせば部屋干しスペースも不要という考え方もありますが、乾太くんなどのガス乾燥機はプロパンガスの場合は割高ですしオール電化の場合はガスの基本料金が発生します。
都市部の住宅では専用の部屋干しスペースなんてない家も多いですから部屋干しスペースを無くして建築費用を削減した場合には乾燥機を導入するコストメリットはあると思います。
ただ、乾燥機から出して畳むのであれば見えない人件費が発生しているため、乾燥機を使わずに洗濯物を干したまま畳まないオールハンガー収納という考え方もあります。
これらは洗濯物を毎日何回洗うかという事が判断材料だと思います。一日一回しか洗濯機を回さない家は部屋干しで十分対応できると思います。
老後は田舎に小屋を作れば良し?
男性に良くある意見として、家は建て替えずに売却して老後は土地の安い場所に平屋でも建てたいといった話をよく聞きます。
実際に前倒しして田舎に平屋を建てた私から言わせて頂くと、この前提条件として最初に家を建てた土地が売りやすい土地でないと老後に資金難の恐れがあると思います。
また、最近は宅配便で色々な生活物資を届けてくれますが、老後に自動車が運転できなくなることを踏まえると、奥深い山の中に土地を買って生活するのはリスクが高いと思います。
最近、不動産屋さんと話す機会があったのですが、コロナウィルスの影響によって郊外で土地の動きが活発なようです。
都心のサラリーマンが田舎に移住するという言葉も出てきていますが、コロナウィルスのワクチンが開発されたら在宅勤務は非効率だとして出勤を求める企業が増えてくるかもしれません。
最後に
本日は「子育て期」・「中年期」・「老後」に応じた間取りの話をしました。ただ、老後に子供が出ていくかと言えば、最近はそうでもないケースも増えていると思います。
昔とは違い大半が結婚する時代でもなくなってきたため、子供はいつか出ていくから子供部屋は狭くて良いという意見についても何とも言えないと思います。
建築家の人たちは自分たちの時代をもって夫婦二人の老後の生活というものを語っていると思いますが、子供が家から出ていかないという時代の間取りとはどうあるべきなのか悩ましいです。
そういった意味で「子育て期」・「中年期」・「老後」に応じた必要な間取りという問題は、対応する必要がなくなるというか、分けることができなくなるのかも知れません。
子供が家を出ていかないことを想定して耐久性が60年以上ある長く住み続けられる家の方が世代を跨いだコストパフォーマンスが高いため長期優良住宅という制度は意味があると思います。
建ぺい率一杯に家を建てた場合、増築することすらできませんから狭い土地に家を建てる場合はある意味、一発勝負なわけです。
そういった意味で増改築しない前提で家を建てるのであれば新築時にどの住宅依頼先に頼んでも良いと思います。
一発で老後まで暮らせる間取りの家が作れればコスパ最強だと私は思いますが、それは何軒か家を建てた今だから言えることであって一軒目の家を建てた時には知識不足で無理でした。
ただ、これだけ情報が沢山ある時代なのでうまく情報を拾える人は一回で満足のできる家が作れるかもしれませんね。
もちろん、同じ場所にずっと住み続けて将来の増改築を楽しみにしながら最初の家の間取りを考えても良いと思います。
本日は以上でございます。