はじめに
一条工務店の新商品であるグランセゾンは商品の中で最高価格帯であるにも関わらず、さらぽか空調が採用できないという現状です。
営業さんからは結露するからという説明があるようですが、どんな条件でどこが結露するのか具体的な説明がないため納得感のない状態が続いていると思います。
私の自宅であるi-cubeにも設置されているさらぽか空調については、梅雨に家が冷えることなく相対湿度が40%台に落とせる凄い装置でありながら誰でもボタン1つで操作が可能です。
湿度が低い空間は梅雨の洗濯物の部屋干しでしっかり乾きますし体感的にもサラサラしていて快適です。家に帰って玄関を開けた時にムワっと感じない点も良いところですね。
全館空調は温度ばかりに目が行きますが、室温が高くても湿度が低いと結構快適ですから暑がりの人お寒がりの人も同じ空間にいられると思います。
本日はグランセゾンを含む一条工務店の軸組工法でなぜさらぽか空調が採用できないかについて考察してみます。
結露するのは床
さらぽか空調を採用した場合、入居時にさらぽか空調の床冷房における推奨設定温度は25℃と注意書きがトイレに張ってあると思います。
i-seriesにおいて床冷房の設定温度を20℃といったような極端に低くした場合、床が結露する現象が報告されています。
私の自宅であるi-cubeにはさらぽか空調が設置されていますが、私は窓の日射遮蔽をしているため床冷房の設定温度を25℃以下にしたことはありません。
具体的にどのような条件でどこが結露するのか明確な説明がないため、ダクト内が結露するとか、壁が結露するなどといった情報が流れてしまっています。
デシカント除湿方式による24時間換気装置については除湿をされた空気が各部屋に供給されるものの、デシカント換気装置は空気を冷やしているわけではありません。
なぜ、空気を冷やさず除湿している状態でダクト内が結露すると思うのか不思議ですが、確かに他の空調システムのように冷たい空気をダクトで送る方式である場合はその懸念があります。
また、床が結露しないようにデシカント方式で除湿をしているといった話もあり、間違えではありませんが、そのために除湿をしているわけではないでしょう。
確かに室内を除湿すれば結露はし難くなりますが、それ以前に一般的な室内の温湿度で露点に到達するのかしないのかをまずは考えるべきでしょう。
そもそもの原因は窓の日射遮蔽不足
なぜ、床冷房の設定温度を25℃以下にしなければならないのでしょうか?
答えは簡単で窓から入る日射熱が室温を上げてしまうからです。
さらぽか空調の床冷房だけでは暑くて結局エアコンを運転しているという方がいますが、窓の数が多く窓のサイズが大きいと思います。
保温性の高い高気密高断熱住宅のセオリーでは冬季に日射熱が取れる南側の窓は軒やアウターシェードなどをつけて、窓を大きくして、南側以外の窓は小さく少なくします。
南側以外の窓を大きくしたい場合はアウターシェードを設置できるなら窓を大きくしても良いでしょう。
窓はたくさん付けたいし大きくしたいし間取りは自由に考えたいから、さらぽか空調を採用しようなんて思うと床が結露してしまう可能性が高まります。
床冷房の露点温度は?
「i-seriesよりグランセゾンは断熱性能が低いため結露するからさらぽか空調は採用できない」という、しっくりこない説明を受けている施主は多いのではないでしょうか。
では、断熱材の違いや厚みによって床が結露するのか結露計算をしてみましょう。
この計算に当たっては、日本最高気温である41.1℃を観測した2018年7月23日の埼玉県熊谷の場合、13時40分に40.1℃27%でしたから絶対湿度では13.9g/m3しかありません。
よって、絶対湿度が最大級となっている同じ熊谷の2018年7月25日10:10の30.4℃71%(絶対湿度22.0m/g)を採用します。
室内については26℃55%の状態から床表面を何度まで低下させれば結露するか計算します。
i-series ウレタン140mm
床が17℃になると結露しました。なお、i-seriesにおいても寒冷地にはさらぽか空調の設定はありません。
グランセゾン EPS90mm
グランセゾンはⅢ地域以南の床断熱はEPSの90mmです。床の温度は20℃で結露しました。
グランセゾン ウレタン90mm
グランセゾンは最寒冷地のⅠ地域では設定がなくⅡ地域の床断熱はウレタンの90mmです。床の温度は17℃で結露しました。
結論
以下のようにi-seriesとグランセゾンでは結露する温度(=露点温度)に3℃の差がでました。
地域 | 床断熱の仕様 | 露点温度 | |
i-series | 全地域 | ウレタン140mm | 17℃ |
グランセゾン | Ⅲ地域以南 | EPS90mm | 20℃ |
Ⅱ地域 | ウレタン90mm | 17℃ |
ただ、i-seriesにおいても床冷房の設定温度を20℃とした場合、室外機に近い一階の床や日当たりの悪い場所のみが結露すると想定され、私は二階の床が結露した話は聞いたことがありません。
結露計算の結果からみても、断熱材の断熱性能の違いによって結露が起きるというよりは断熱材の水蒸気の通しやすさ(透湿抵抗)の違いによって結露が起きることは明らかです。
つまり、グランセゾンで床冷房をリリースするにはウレタン断熱材を採用した方が良いという計算結果でした。まぁ、これぐらいは一条工務店の開発者は分かっていると思いますけどね。
床結露防止の対策は?
窓の日射遮蔽が弱くてオーバーヒートしてしまう家については、床冷房の設定温度は20℃以下にはせずに、扇風機やエアコンを併用すれと良いと思います。
ただし、各部屋にエアコンを設置して運転する必要はなく、二階の階段ホールなどに6畳用のエアコンを設置して運転すれば家中が涼しくなるでしょう。
しかしながら、さらぽか空調を採用しながら二階の階段ホールにエアコンを設置するという周到な設計をしている人は、そもそも窓の日射遮蔽を知っているような気がします。
二階の階段ホールや吹き抜けにエアコンがない場合は二階の使ってない部屋のエアコンを運転すれば家中が涼しくなるでしょう。
さらぽか空調を採用せずに夏季に家中を除湿したいという方については、間取りの考慮は必要になりますがエアコン1台による全館冷房(除湿)というローコストな方法があります。
最後に
さらぽか空調については初期コストや電気代が少し高くなるといった面がありますが、一般的な全館空調システムを導入すれば150万円~ですから価格的には高くはないと私は思います。
また、さらぽか空調については窓の日射遮蔽に注意して建てた家についてはエアコンを運転する必要はなく床の結露の問題も起きないと想定します。
いつか、グランセゾンにも床冷房が採用できるようになると思いますが、机上の計算だけでなくテスト期間が必要だと思います。
i-seriesの床冷房も長いテスト期間を経て現在においてもまだモニターという位置づけで提供されていていますから採用した方にはアンケートが来ます。
基本的にはハウスメーカーの営業さんからの情報が施主のとって正しい情報なわけですから、さらぽか空調が採用できない件については、もう少し具体的な情報を提供して欲しいところですね。
本日は以上でございます。