はじめに
高気密高断熱住宅でガスを使ってはダメなのか?
ハウスメーカーによっては「当社の建物はガスコンロや開放型ストーブを使っても大丈夫です。安心してください。」といった余計に不安になる説明をする場合があるそうです。
私は給湯に都市ガスを使うことは悪くないと思います。ただ、ガスコンロを使うことに関しては、ガス調理に拘りがどうしてもある場合以外はやめた方が良いでしょう。
ガスを室内で燃焼させることは室内で焚火をするようなものですから大きな換気量が必要になり、空調が必要な期間においては冷暖房した空気を家の外に捨てることになります。
また、ガス併用をしている人が空気質にこだわって内装に自然素材を使っているという場合があって、何がやりたいのか良く分かりませんが気持ちの問題なのでしょう。
ガス調理はおいしいと良く言われますが、外に出て七輪などで炭火料理しませんか?とお勧めしたいところですが、こればっかりは好みの問題なので何とも言えません。
ただ、一般的な電気とガス併用議論は計算に基づいていないと感じます。
※冒頭の画像のようにIHコンロの上にガスコンロを載せて利用すると、IHコンロの誤操作によるガスボンベの過熱の危険性があるため注意が必要です。
災害リスク分散のためのガス併用
ガスを利用すると基本料金がかかることからガス併用はランニング費用が高くなります。しかし、ガス併用にしておけば、災害時に電気が止まっても安心だという話があります。
しかし、東京ガスのホームページをみるとガスコンロの一部とガス給湯器は停電時に電気がないと利用できないと記載されています。
ガス給湯器の中には「停電モード」搭載という商品もあるようですが、自動車のバッテリーから電気を取る必要があるなど使い勝手がよくありません。
ガスコンロについては災害時はカセット式のガスコンロを利用すれば良いのではないかと思うため、果たして災害対策としてのガス併用は意味をなしているのか疑問に思います。
災害時はこれではだめでしょうか?これなら毎月の基本料金は発生しませんよ。
電気代の高騰に備えるためのガス併用
電気代が上昇しているからガス併用にしてリスク分散しようという意見がありますが、太陽光パネルを搭載しているのであれば太陽光発電を自家消費した方がお得だと思います。
また、一条工務店の太陽光パネルは屋根一体型(現在は不燃材設置済み)であるため、全面に施工できれば半永久的に屋根を吹き替える必要はなくなるためさらにお得です。
最近の一条工務店は電力革命と称して蓄電池付き太陽光パネルが13.75kWの場合、16.8万円/kWで販売していますから、ここまでくると他社は対抗できないと思います。
そして、深夜電力の単価が売電単価より高い場合は、太陽熱の余剰発電を利用して昼間にエコキュートでお湯を沸かした方が有利になりますから、この環境の人はオール電化が良いでしょう。
我が家は東京電力のスマートライフプランの深夜電力が17.78円であり売電価格よりも高いため、以下の様にエコキュートの時計を12時間ずらして昼間に太陽光発電でお湯を沸かしています。
私のセカンドハウスのi-smartⅡは太陽光パネルを15kW乗せていて東京電力では基本料金が高いため、Looop電気という基本料金のない電力会社に変更しました。
給湯と家事の大半を昼間に行えば夜の電気代はテレビ・PC・照明(LED)・換気装置程度になってしまうためコロナの影響でほぼ滞在していましたが、5月は以下の電気代になってしまいました。
ビジネスプランとは10kW以上の契約の場合で上記はオール電化の余剰発電でガスなどの他の光熱費は一切ございません。売電も一条工務店のシュミレーション金額を超えている状態です
そして、買電単価が高騰しても電気を使わない生活はできないため、電気を極力使わない生活をした方が省エネになります。つまり、自家消費量が大きい家は有利です。
上記の電気代をみても電気代の高騰に備えてガス併用という話は、高性能な家で太陽光パネルを搭載して自家消費を行うと真逆の結果になるということが分かると思います。
売電単価が下がるほど太陽光パネルの価格は下がっていく傾向にあるため、買電単価が高騰しても太陽光パネルを搭載して自家消費を増やした方がお得です。
ガスを燃焼させれば窓が結露する
プロパンガスが完全燃焼するとき、プロパンガス1に対して水蒸気が4倍発生します。これは空気中の酸素と結合するからです。都市ガスにおいてもほぼ同じです。
昔の家は隙間だらけでしたら開放型のストーブやガスコンロで調理しても窓が結露しない場合もあったと思いますが、高気密高断熱住宅の中ではそうはいきません。
窓が常態的に結露すれば窓回りにカビが発生することから高気密高断熱住宅では冬季の過剰な加湿と窓のカビの発生は表と裏の関係になってしまいます。
ガスが不完全燃焼した場合を含めて、高気密高断熱住宅はガスコンロを使った場合はしっかりと換気をした方が良いと思いますが、空調費用がムダになってしまうというデメリットがあります。
ちなみに、IHコンロの場合は法的にはレンジフードの設置は義務付けられていませんから、香りの強い料理をしたとき以外はキッチン換気扇を動かさない方が空調費用の節約になります。
給湯方式ごとのCO2排出量とコストを計算してみた
10年前に作った給湯方式ごとの省エネ計算シートを見直してみましたが、結論としては10年前と変わらずオール電化が有利でした。計算がややこしいため参考程度にご覧ください。
10年間のランニングコストと機器代を合わせて、エコキュートと比較した場合、都市ガスを使ったガス給湯のエコジョーズならコスト的に許容できそうです。
各家庭の給湯量は省エネ基準の想定通り年間25.2GJ(一次エネルギー)として計算していますが、冬季は家の暖かさによって給湯量は変わると思います。
また、プロパンガスは火力は強いものの、400円/m3程度が平均相場であり高額です。プロパンガスは価格を上乗せされている場合が多く、公共料金ではないため値引き交渉が可能です。
CO2排出量まで含めるとオール電化は良いとは言えませんが太陽光パネルを搭載して自家消費を増やすことでCO2排出量を減らすことができます。
ただ、電気の一次エネルギー換算係数が2.71のままで良いのか再考すべきだと思います。原発の発電が減っているため発電効率が悪化しているのであれば太陽光の自家消費を増やすべきでしょう。
エネルギー交換率の高い太陽熱温水器が全ての給湯が賄えるのであれば最も省エネですが、エコキュートを昼間に太陽光パネルの余剰発電で稼働させるとなると存在感が薄くなってきます。
電気は発電と送電のロスでもともとの燃料の3分の1程度しか家庭にエネルギーを供給できません。一方、ガスを各家庭で利用して発電に利用すればロスがほとんどなくなります。
ガス発電機にヒートポンプを組み合わせた商品はありますが、多くは企業用であり家庭用の機器は高額なため故障した際の更新費用が高すぎて現実的な選択肢とは思えません。
地球温暖化や省エネ問題を捉えた時に家庭用として低コストに小型化されたガスヒートポンプ(GHP)は夢の技術だと思いますが、まだまだ実現と普及までに時間がかかるでしょう。
給湯費用の計算内容に関しては以下を参照してください。
最後に
高性能な家に太陽光パネルを搭載して自家消費すれば非常にコストメリットがあるという話は本音を言えばナイショにしておきたいところです。
ガス事業者はこの話を広告宣伝費を使って躍起になってもみ消そうとすると思いますから多くの人はそのセールストークに流されてしまうと思いますが、事実は事実です。
日本全体に高性能な家が広まってしまうとエネルギーの料金体系が変わってしまうと思うため、このテクニックは使えなくなりますが、環境問題を考えるとそうなった方が良いでしょうね。
さて、電気とガスの併用が災害対策や電気代の高騰のリスク分散になるかというとあまり関係ないと思います。これはガス会社のセールストークがもとになっているのではないでしょうか。
ガス併用はランニングコスト的には空調費用や基本料金が電気とガスで二重発生するなどコスト的にはあまりお得でないという事は知っておいて損はないでしょう。
ただ、ガス給湯はシャワーの圧力が強いですし、ガスの調理がどうしても好きだというのであれば、ガスを併用しても良いと思います。
本日は以上でございます。