はじめに
世間では布基礎は工事費用が安くてベタ基礎は頑丈だけど工事費用が高いと言われていますが本当でしょうか?
(出典:一条工務店)
上記は一条工務店標準の布基礎ですが、標準の基礎工事が世間的に頑丈と思われているベタ基礎でないことは「家は性能」の一条工務店らしからぬと違和感を感じている方も多いと思います。
布基礎は鉄骨造など重量がある建物に用いられます。コンクリートは圧縮に強いため基礎を高くした方が幅を広くしなくて済むため、鉄骨系のハウスメーカーは布基礎である必要があります。
布基礎もベタ基礎も施工がしっかりしていればどちらでも良いと世間で言われますが、その説明は少し違うと思います。基礎工事は以下のようにコストや手間が異なるため住宅会社のポリシーを表しているとおもいます。
基礎の種類 | 強度・価格 | コンクリート打設回数 |
独立基礎(非住宅用) | ☆ | 1回 |
ベタ基礎(地中梁なし) | ☆☆ | 3回 |
布基礎(連続基礎) | ☆☆☆☆ | 4回(又は3回) |
ベタ基礎(地中梁あり) | ☆☆☆☆ | 3回 |
ベタ基礎ダブル配筋 | ☆☆☆☆☆ | 3回 |
建売やローコスト系住宅が地中梁のないベタ基礎を採用している理由はコストが安いからです。
ベタ基礎の場合、コンクリートをミキサー車で運んでくる回数を考えると、捨てコン+ベース+立上りの三回のコンクリートの打設工事が必要になります。
布基礎の場合、捨てコン+フーチング(底の部分)+立上り+防湿用土間コンクリートで4回のコンクリート打設が必要になるため布基礎の方が通常はコストが高いのです。
ローコスト系のハウスメーカーがベタ基礎の方が高コストであるにも関わらず当社は頑丈なベタ基礎を採用していますとアピールしていますが、これはウソです。
コストカットを目的として鉄筋量の少ないベタ基礎を採用しているだけであり、説明している営業マンも意味が分かってないと思います。
恐らく住宅には基本的に使われない独立基礎を布基礎だと誤解してベタ基礎は頑丈だと思っているのだと思いますが、住宅用の布基礎は連続基礎と言ってより高額な工事費がかかるものです。
連続基礎とは?
布基礎であれベタ基礎であれ、以下のように基礎の立上りが連続していなければ構造的に正しくないことになり、開口部が大きい場合は地面の中に地中梁(基礎梁)を設けます。
以下は建売などで見られるコストの安いベタ基礎です。基礎の立上りが連続していないため構造的に成り立っていません。
(出典:一級建築士事務所 サトウ工務店)
なぜ、このような手抜きをされた基礎が施工されるかと言えば、建築基準法では設計士が手掛ける木造二階建てまでの住宅に関して構造計算書の添付が免除されるためです。
JIOの配筋検査においても構造計算書がそもそも添付されていない図面をチェックするだけであることから、このような基礎工事がまかり通っている現状です。
以下は私の三軒目の家となるi-cubeのベタ基礎のコンクリート打設前の様子ですが、地面の凹んでいる部分は地中梁が設置される場所です。つまり、連続基礎であるということです。
以下はスウェーデンハウスのお施主さんの画像をお借りしたものですが、布基礎の場合もフーチングがちゃんと連続していることがわかります。こういう布基礎は価格の高い基礎です。
なぜ一条工務店のベタ基礎はオプションなのか?
一条工務店では布基礎を標準としていますが、一条工務店のベタ基礎は鉄筋の量が多いため施工の手間も増えてベタ基礎の方が高額になってしまうのだと思います。
一般的にはベタ基礎の方が地盤面からのシロアリの侵入を防止できると言われていますが、一条工務店の場合は布基礎でもシロアリ対策をしっかり行っています。
ただ、私はもし布基礎だと判定されてもシロアリ対策として念には念を入れてベタ基礎に変更していると思います。ここは施主のお好みで判断されると良いでしょう。
一条工務店は地盤調査結果の判定が厳しいと言われていて、布基礎になることはほぼなく、ほとんどの場合において、ベタ基礎か地盤改良になると思います。
軽量な木造二階建ての場合は強度的な理由から布基礎である必要はなく、ベタ基礎は地盤の弱い土地に対して建物の不同沈下を防止するための措置です。
ローコスト系住宅のようにベタ基礎を標準にした方が良いと考える人も多いと思いますが、規格の高いベタ基礎を標準仕様にすれば坪単価が上がると思います。
布基礎の方がコストが高い場合も
前述のように鉄骨系の大手ハウスメーカーは重量がある建物を支えるために布基礎を採用していますが、布基礎はコンクリートの打設回数が多いことから工事費用は高額になります。
そこで大手ハウスメーカーではフーチングと立上りの一体打設を行いコストダウンを図っています。
(出典:積水ハウス)
積水ハウスではフーチング部分が丸みを帯びていてますが、これはECOカルフォームと呼ばれる生物分解される使い捨ての型枠を利用してフーチングと立上りコンクリートを1回で打設しています。
通常は捨てコン+フーチング+立上り+防湿コンクリートの4回のコンクリート打設が必要ですが、これを3回に減らすことでコストダウンをしています。
また、積水ハウスの基礎はコンクリートの型枠に専用のシートを設置して模様を作りデザイン基礎と称していますが、これはコストダウンのために化粧モルタルの施工を省略しているのでしょう。
最後に
世間の常識では布基礎よりベタ基礎の方が高額であるが頑丈であるとか、布基礎もベタ基礎もしっかり施工すれば問題ないといった情報が多いと思いますが、常識はほぼすべてが間違いです。
同じベタ基礎でも規格の低いものから規格の高いものまであるため、どのレベルの基礎かを考慮せずに一括りに布基礎だとかベタ基礎だと考えるとハウスメーカーに騙されてしまうでしょう。
地盤はもとより基礎工事がしっかりしていなければ上物が頑丈であっても意味がないですが、住宅会社を見分ける際に基礎コンクリートに連続基礎を採用しているかを確認すると良いでしょう。
施主が大地震は来ないと想定して基礎コンクリートにリーズナブルな仕様を選択するのであれば理解できますが、住宅のプロが施主に説明もせずに安い基礎を施工するのは問題だと思います。
基礎工事は住宅建築の中でもっともコストがかかる部分ですから、住宅会社の家作りへの姿勢が一番現れる場所であると言えます。
本日は以上でございます。