【暴論】軸組工法廃止論

考察

はじめに

(出典:日本ツーバイフォー協会

本日は木造軸組工法は消費者をミスリードするため廃止した方が良いという飛んでもない暴論です。軸組工法を採用した方は素人の戯言だと思ってご容赦ください。

軸組工法は設計が自由でツーバイフォーは自由度が低いと言われます。ただ、両方で2軒ずつ家を建てたことがある私にはこれは誤解やセールストークを鵜呑みにした情報だと思います。

そんな状況ですから世の中ではツーバイフォー工法のイメージは良くないのかも知れません。ただ、ツーバイフォー工法は一条工務店の躍進もありシェアは着実に増えています。

ツーバイフォー工法は本当に合理的だと思います。軸組工法と違い建築基準法の省令において構造が明確に示され、耐震性・気密性に加えて壁のファイヤーストップにより耐火性も期待できます。

そしてそもそも軸組工法には種類があって全てを在来工法と呼称することはおかしいです。軸組工法の中には種類があるにもかかわらず区別されずに語られていることが誤解を加速しています。

以下のようにもっともポピュラーな軸組工法は筋交いや合板で壁を支えているため実際はツーバイ工法と同じであることから、軸組工法と呼称したほうが私は良いと思っています。

分類 工法 耐力 用途
軸組工法 貫工法 軸組(柱と梁で支える) 神社仏閣等
軸組壁工法 壁式(筋交い・合板で支える) 一般住宅
軸組ラーメン構造 軸組(柱と梁で支える) 大開口が得られる
ツーバイ工法 枠組壁工法 壁式(合板で支える) 一般住宅

軸組工法を在来工法と呼称することがありますが本来の在来工法は貫工法であり軸組壁工法は戦後の物資不足や高度成長期の中で発展した新しい工法なのに昔からある伝統工法だと誤解されています。

軸組壁工法の問題点

軸組工法は自由な設計ができると言われますが逆に言えば耐震性と気密性能がビンキリになってしまう工法であると言えます。

問題点 セールストーク 実態
構造のルールが甘い 自由な間取りの家作り 耐震性が悪い家(木造四号特例)
壁の上下に気流止めがない 風通しの良い家 気密性能が悪い家

もちろん、構造計算や気密測定をしている軸組壁工法は問題ありませんが、コストの増加は消費者のためにならないという怠慢な住宅業者が使う言い訳に利用されてしまっています。

戦後の直後に制定された建築基準法はその第一条に「最低限の基準」であると自ら掲げています。戦後の復興が終わった今でも住宅業界はこの緩い基準に浸かってしまっているようです。

大手ハウスメーカーはこの状況を打破するために高耐震の家を供給したことは評価できますが、高耐震による差別化で商売が成立してしまったため断熱気密面の性能向上は足踏みしています。

日本の家作り全般を見ると中小工務店は耐震性と断熱気密が良くない会社が多く、大手ハウスメーカーは高耐震であるものの断熱気密が得意な会社は少ないといった状態です。

この原因の根本的な要因はどこにあるのかと考えると、性能がピンキリになってしまう軸組壁工法があるからではないかと私は考えています。

グラスウールは上級者向けの断熱材と言われますが、軸組壁工法も同じではないでしょうか。

合板を採用する軸組壁工法は軸組工法とツーバイフォー工法の「良いとこ取り」なんてセールストークがありますが厳しく言えば「悪いとこ取り」ではないかと私は思います。

もちろん、新住協の鎌田先生が1980年代に新在来工法を開発して以来、合理的になってはいますが、温暖地では気流止めとグラスウールの施工がしっかりできない会社が多いと思います。

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職人さんの分業制が激しい都市部のローコスト住宅ではさらに合理的な2×6に現場発泡ウレタンと基礎断熱を組み合わせた高気密高断熱住宅にならざる得ないと私は感じています。

ツーバイフォー工法の誤解

合板を設置した家は日本の気候に合わないというのであれば近年の軸組工法の家も同じです。結露計算をせずにツーバイフォーは壁が腐るという話は訳が分からないと思います。

私が一軒目の家を建てた2000年には既に壁に構造用合板は設置されていましたし、現状の軸組壁工法の床はネダレスの剛床ですからもはやツーバイフォー工法と何が違うのでしょうか。

そして、私の二軒目の家は軸組壁工法において許容応力度計算による耐震等級3を取得しましたが、耐力壁が増えたためツーバイフォー工法の間取りと何ら変わらなかったと今では思います。

通常は家は一生に一軒しか建てない人が多いため工法の違いによる間取りの制限などは分からないと私は思います。なんとなく思い込みで言ってる人が多いのではないでしょうか。

そして一条工務店では一条ルールと言われるものが有名ですが、私は内部の造作に不自由を感じたことはあるものの構造的に不自由だと思ったことはありません。

ツーバイフォー工法においては20畳の部屋においては幅が4mの大きな窓が採用できます。事実私のセカンドハウスは16畳のリビングに幅が3.6mの大窓があります。

私はこれ以上大きな窓は必要ないと思いますし、ツーバイフォー工法は窓が小さいと言われる理由は住宅業者のセールストークを鵜呑みにしたただの誤解ではないかと思っています。

確かにラーメン構造よりは大きな窓は採用できないものの、極端に大きな窓を希望しなかぎりツーバイフォー工法においても十分に大きな窓は採用できます。

軸組工法を得意とする大工さんが多いことから軸組工法はオープン工法と言われますが、逆にツーバイフォー協会はツーバイフォー工法こそオープン工法であると言ってます。

私はツーバイフォー工法の方が規格がはっきりしたオープン工法だと思いますが、軸組工法を得意とする大工さんが多いことから軸組工法はオープン工法だと言っているのだと思います。

大開口が欲しい人は

(出典:SE構法

私は室内に壁を残し陰影を出す壁式工法の方が好みですが、大きな窓を採用したいという人はしっかりと構造計算されたラーメン構造(ドイツ語の額縁という意味)の住宅が良いと思います。

ラーメン構造においては鉄骨造は断熱気密が得意ではない傾向にあるため、窓が大きく冬に暖かい家を期待する人は木造かRC外断熱のラーメン構造を選択すると良いと思います。

木造のラーメン構造は大手ハウスメーカーでは積水ハウスや住友林業などが提供していますし、中小工務店においてもSE構法といった工法を採用している工務店もあります。

ただし、ラーメン構造は専用部材と構造計算が必要であるためかなり高額になるでしょう。

ラーメン構造を採用したがプライバシーや家具の配置のために壁が沢山あるという家も少ないないかも知れません。これってラーメン構造である必要があるのかな?という間取りもあるでしょう。

軸組工法の問題点はラーメン構造のコスト増加を嫌って構造計算せずに耐震性の低い軸組壁工法を提供する住宅会社が大半であることです。

しっかりと構造計算された自由な間取りと構造計算されていない自由な間取りとはまったく違うと思います。

深刻な職人不足

建築業界は深刻な人手不足に直面しています。建設現場で1から組み立てる工法ではこの先は立ち行かなくなっていくことは明らかです。

私は一条工務店で家を二軒建てましたが実際に建築過程を見ているとパネル工法による合理的な家作りに恐怖すら覚えました。こんな簡単にC値が1.0以下の家ができるのかと驚きました。

そして軸組壁工法のハウスメーカーであった一条工務店が、2×6に付加断熱を採用した商品を発売したことはオーナー企業の経営のスピード感や決断力を感じました。

大手ハウスメーカーと同じで良い家を多くの人に提供したいと願うなら工場生産の工法に誰でもたどり着くと思います。

軸組工法ではプレカット工場というものがあり、中小工務店も利用していると思います。ただ、プレカットだけの工場生産では建築現場の職人不足は解消しないでしょう。

それならいっその事、軸組壁工法をやめて工場生産のしやすいツーバイフォー工法(パネル工法)に舵を切らなければ、この先の中小工務店ほど職人不足で立ち行かなくなってしまうと思います。

これまでの軸組工法は日本の気候の合った自由な間取りができる工法であるとアピールしてきましたが、このセールストークは軸組工法を採用している自分たちの首を絞めていくでしょう。

日本の住宅業界は決断が必要な時期に来ているのではないでしょうか。

最後に

軸組壁工法であっても構造計算と気密測定がされていれば何ら問題ないと思いますが、現場での手作り工程の多い軸組工法を実施している住宅業者は職人不足から事業の先行きが懸念されます。

軸組工法の品質のバラつきや職人不足の加速を考えると、住宅会社にはラーメン構造とツーバイフォー工法(パネル工法含む)いずれかにして欲しいと私は思っています。

一条工務店の軸組工法がラーメン構造化して超大開口を採用すれば他社に影響が出るかも知れませんね。そういった意味から一条工務店の軸組工法の進化を期待したいところです。

大開口に拘る高額な住宅会社はラーメン構造に舵を切れば良いと思いますし、そうでない住宅会社はツーバイフォー工法に舵を切る必要があるのではないでしょうか。

間取りを標準モデルで計算すれば、2×6は窓を樹脂ペアサッシにすればトリプルサッシを採用しなくてもHEAT20のG2の性能を超えますからコスパ最強と言えるでしょう。

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これまでツーバイフォー工法を批評してきた住宅会社はなかなかツーバイフォー工法に舵を切れないと思いますが食わず嫌いということもあると思います。

現在、アメリカ・中国を中心に在宅勤務の拡大に伴う住宅需要が増加していて木材の価格が高騰していることから、ウッドショックと言われる深刻な木材不足が起きています。

このような事を踏まえて日本の森林活用という観点からも太い構造材を利用する軸組工法よりも細い構造材を利用するツーバイフォー工法に利点があると私は思います。

また、林業の山林は会計上は資産とされます。ただし、上場企業においてセグメント利益が出なくなれば減損会計が適用されて山林という資産は一気に巨額損失に代わる可能性があります。

壁が多い家は嫌だというのであれば最近はパネリードXのような接合金物・ボルトに代わる構造用ビスがありますから合板を廃止したツーバイラーメン構造といった工法もできるのかもしれません。

しかし、どんなにツーバイフォー工法に利点があると言ってもそうそう簡単に軸組壁工法を捨てられるものではないと思いますけどね。

本日は以上でございます。

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