住宅のUA値は計算しなくても大体分かる!

考察

はじめに

本日はUA値は計算しなくても概算ならすぐに分かりますよという話です。まぁUA値は目安なので何となく分かれば良い程度のものですから興味のない方はスルーしてください。

本来は施主がUA値などを気にせずに自由に楽しく家作りをできれば良いのですが、大半の日本の家は新築住宅でも冬に寒いためプロに家作りを任せる事が難しい現状があります。

さて、木造住宅の柱の太さは一般的には4種類しかありません。軸組工法の3.5寸(105mm)と4寸柱(120mm)、そして枠組壁工法の2×4(89mm)と2×6(140mm)の4種類です。

省エネ計算で利用される標準モデルの間取り+三種換気で考えた場合、構造材の太さ×窓の性能をみれば、その住宅がZEHレベルなのかHEAT20のG1かG2なのかすぐに分かります。

省エネ基準の確認

東京・名古屋・大阪・広島・福岡など大都市圏の地域区分は6地域です。つまり、日本の省エネを考えるなら人口が集中している6地域についてもっと考えるべきなのです。

簡単に言えば6地域で冬季に日当たりが良い家はZEHやG1程度でも良く、日当たりが悪い家はG2にすると良いでしょう。G3については60年以上住む場合か住み心地に拘る場合は良いでしょう。

地域区分 1 2 3 4 5 6 7 8
① 省エネ法(H28基準) 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87
② ZEH 0.40 0.50 0.60 0.60 0.60
③ HEAT20 G1 0.34 0.38 0.46 0.48 0.56 0.56
G2 0.28 0.34 0.46 0.46
G3 0.20 0.23 0.26 0.26

日本の人口の7割は温暖地の都市部にあるにも関わらず、6地域は温暖地であるという固定観念をもとに高気密高断熱住宅は必要ないといった話が繰り返されています。

冬の北海道の住宅の方が6地域の室温より高いというおかしな逆転現象が起きていることからも温暖地の住宅は断熱不足になっている家が大半であることは明らかです。

暑い寒いの感じ方は個人ごとに違うため大半の人に当てはまるという意味であれば、入居済みの施主は温度計を示して室温の話をしないと空中戦になって無意味なものとなってしまいます。

私は多くの人に当てはまるという意味ではWHOが強く推奨する家中の室温18℃以上が妥当であると思いますし18℃でも少し寒いと感じますから室温は21℃以上は欲しいですね。

HEAT20の設定は階段式で分かりやすい

以下の計算結果を見ると3.5寸柱(105mm)でグラスウール16Kを天井壁床に105mm充填するとUA値はZEHの0.60W、天井断熱材を105mmの倍にすればG1の0.56Wと一致します。

ロジックを知っていれば省エネ基準を覚えるのは実はすごい簡単です。実際に自分でUA値を計算をすると各省エネ基準の数値に対してピッタリと計算結果が一致するので面白いですよ。

そして、ZEHについては微妙な設定になっていて、天井の断熱が薄いと夏の屋根面への断熱が不足することからZEHの家は天井の断熱を厚くして代わりに床の断熱材の厚みを減らしています。

3.5寸柱のHEAT20のG1の家に樹脂のペアサッシを採用したとして計算するとG2のUA値である0.46Wとピッタリ一致します。

性能 3.5寸 3.5寸 4寸 2×4 2×6
天井断熱 HGW16K(0.038) 105mm 210mm 240mm 178mm 280mm
壁充填断熱 HGW16K(0.038) 105mm 105mm 120mm 89mm 140mm
壁外張断熱 XPS-B-3b(0.028)
床断熱 HGW16K(0.038) 105mm 105mm 120mm 89mm 140mm
土間断熱 XPS-B-3b(0.028) 50mm 50mm 50mm 50mm 50mm
アルミ樹脂複合
玄関ドアK2.0
UA値 0.60 0.56 0.53 0.62 0.50
Q値 2.01 1.91 1.82 2.07 1.76
APW330
玄関ドアK1.5
UA値 0.46 0.43 0.52 0.41
Q値 1.66 1.57 1.81 1.51
APW430
玄関ドアK1.5
UA値 0.43 0.39 0.49 0.37
Q値 1.56 1.47 1.72 1.41
ネオマ付加50mm UA値 0.31 0.29 0.33 0.28
Q値 1.24 1.20 1.30 1.16
天井3倍
床2倍
UA値 0.27 0.26 0.29 0.25
Q値 1.14 1.11 1.19 1.09

施工面を考えれば天井壁床の断熱材の種類を変えるのは面倒でしょうからHEAT20のG1ではすべてグラスウール16Kの105mmで天井面においては二枚重ねで施工しているという構成です。

つまり、HEAT20のG1は最も施工方法が明快でポピュラーな建材の組み合わせという意味であり、3.5寸の柱+105mmのグラスウール16K+アルミ樹脂複合サッシという構成です。

大手ハウスメーカーを含めて大半の木造住宅のUA値が金太郎飴のように0.56W付近に出現する理由は最もポピュラーな構成を採用しているからという事が分かると思います。

また、窓の面積が大きい場合はZEHがクリアできないケースもあるでしょうからその場合はサッシを高性能なものに変えて対応していると思います。

G3については土地が広ければ壁をグラスウール300mm断熱にするなどで対応できますが、地価の高い土地の狭い都市部などでは高額なネオマフォームのような断熱材が必要になりますね。

ちなみに玄関ドアは面積が小さいため高性能化してもUA値にあまり影響しませんが、玄関はコールドドラフトの発生ポイントですから玄関ドアは高性能にすることをお勧めします。

トリプルサッシよりペアサッシを採用すべき?

マニアな人はご存じと思いますが付加断熱をしない場合、2×6は材が太いため断熱材を厚く充填できることからペアサッシでもトリプルサッシを採用した軸組工法の家と同等の性能になります。

仕様 付加断熱 サッシ 窓ガラス Q値 UA値 1月電気代
3.5寸柱 なし APW430 南側断熱+他遮熱 1.56 0.43 8,362円
2×6 なし APW330 南側断熱+他遮熱 1.51 0.41 8,188円

むしろ2×6の家にペアサッシのほうが日射取得量が多いため3.5寸柱のトリプルサッシの家より暖房の電気代が有利です。付加断熱なしの場合は2×6コスパ最強説はその通りだと私も思います。

この論点は昔からありますが、単純にコストや数値比較だけを鵜呑みにするとミスリードになると私は思っています。

入居すれば分かりますが夜間や天気の悪い日は窓際が寒くなるため住み心地を重視するのであればコストはかかりますがトリプルサッシを採用した方が私は良いと思っています。

逆にコストを重視してペアサッシを採用する場合は窓際が冷えないようにエアコンの設置方法などを工夫してコールドドラフトを抑制する必要があるでしょう。

省エネ計算からは家の住み心地は分からないため数値は大事にしつつも数値だけでは判断できないということだと思います。

最後に

本日はZEHやHEAT20の基準数値には意味がありますよという話でした。

住宅の断熱性能基準はプラモデルのように柱の太さ+窓の性能の組み合わせでG1やG2などの、どの基準値の性能にするか簡単にチョイスできるようになっています。

木造住宅の柱の太さは通常は4種類しかないですし、グラスウール断熱材と現場発泡ウレタンは性能がほぼ一緒ですから大半の家の性能は計算をしなくても凡その性能が分かると思います。

本来は素人が省エネ計算なんてする必要はありませんが、消費者の中で誰かが計算をしないと住宅業界が言っていることが本当がどうか分からないため誰かが計算する必要があるでしょう。

プロの設計者は他社の誹謗中傷になってしまうことから他社のUA値を計算するなんてことは基本的にはしないため、消費者が色々な住宅の省エネ計算をしないと水掛け論になってしまいます。

住宅業界が流布する省エネに関するセールストークは殆どがポジショントークであり大半はウソだと私には分かりますが、これは計算ができない人には見抜けないので困ったものです。

計算すればこんなにも簡単に分かることが、なぜ世間では省エネ基準を義務化をすれば施主のコスト増加なんていう風に無限ループで語られてるのか、、住宅業界の闇は深いと思いますね。

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早くこんなにも消費者にとって不透明な住宅業界は変わって欲しいと思います。施主は家の性能なんて考えずに家族にとっての生活の豊かさを考える家作りに専念して欲しいですね。

難しいことは考えずに家作りはプロに任せようと言いたいところですが、現状では任せられるプロが少なすぎると私は思っています。

UA値の計算などに興味があるかたは計算ツールを公開していますのでチャレンジしてみてください。今回は21番です。

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本日は以上でございます。

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