家のメンテナンス費用を抑えるには
一般的には屋根の防水機能は30年程度継続し、外壁やバルコニーなどのFRPの防水機能は10年程度でメンテナンスが必要と言われています。
ただ、外観を綺麗に保つという意味では、サイディング外壁やスレート屋根などは汚れやコケが発生するため10年でメンテナンスする必要があると言えます。
一条工務店は外壁にハイドロテクトタイルを採用した場合は30年間メンテナンスフリーを謳っていますから、コストや外観の維持という面から非常にお得な装備だと思います。
(出典:一条工務店)
ただ、最近は一条工務店の坪単価が上昇していることもあって、ハイドロテクトタイルを採用せずに標準のボーダータイルを採用する方もいますが、私はこの考えに賛成です。
なぜかというと、ハイドロテクトタイルは外観の問題でありハイドロテクトタイルが雨漏りを防止している訳ではないからです。
単に外壁にハイドロテクトタイルを採用することが建物の長寿命化に繋がるかというと、家の長寿命化には屋根の形状と外壁の組み合わせの要素が大きいと思います。
雨漏りしにくい屋根の形は?
(出典:suumo)
外壁の性能を考慮せずに屋根だけで雨漏りの可能性を考えた場合、一般的な屋根においては以下の順で雨漏りに強い屋根形状となると思います。
- 切妻屋根(きりつま)
- 寄棟屋根(よせむね)
- 片流れ屋根(かたながれ)
- 陸屋根(りくやね:フラット屋根のこと)
昔のように軒が長くて建物外壁に当たる雨を緩和してくれるという屋根形状がもっとも雨漏りに強い屋根形状だと言えます。
ただし、上記の防水の優位性は屋根から伸びる軒が建物の外壁の雨よけとなっている場合であって、切妻屋根であっても流行りの軒ゼロ住宅ではまったく壁に当たる雨は防げません。
私が建てた三軒目のi-cubeと四軒目のi-smartⅡについては片流れ屋根であり、これは壁の防水性能が屋根と同程度の時間(30年間)であることを考慮して判断しました。
屋根については重たい瓦屋根は地震の時に不利になることと寒冷地では凍害の恐れがありますが、一条工務店の屋根一体太陽光パネルは非常に軽量でメンテナンスフリーな屋根と言えます。
また、北海道のような豪雪地帯では平らな無落雪屋根を採用していますが、雨漏りの危険性は高い形状であっても、雪下ろしが不要なことを優先しています。
このように屋根については地域の事情や家の性能およびコスト的な問題があることから外壁とのバランスがメンテナンス費用を考える上で重要だと言えます。
天窓は雨漏りの危険性が高い
一条工務店のホームページにも天窓を設置した外観の家があります。正直にいうと高気密高断熱住宅で天窓を設置するのはナンセンスなのでその画像は誤解を招くため削除して欲しいです。
四季の日射角度の推移を考えれば高気密高断熱住宅では天窓は非常に厄介な存在になることは明らかで、冬季に日射が入らず、夏季に日射が大量に入ってくる存在であるからです。
(出典:モノタロウ)
高気密高断熱住宅が専門の設計者であれば普通は天窓は使わないと思いますが、採光上やむを得ないという場合もあるでしょう。
そして、天窓の最大の問題点は雨漏にあります。考えれば当然で雨よけのない屋根に窓を設置する訳ですから天窓と雨漏りはセットのような関係になってしまいます。
天窓はゴムパッキンだけで防水をしていて、天窓の周囲には水切りがありますが泥やゴミが溜まれば水切りが埋まってしまって排水先がなくなってしまい屋根の雨漏りに繋がってしまいます。
天窓には採光や換気における排気口になるといったメリットがありますが、実際に住んでみると雨漏りが不安であることと、まぶしすぎるとか暑いといった感想があるようです。
まぁ、天窓を採用するのであれば、スウェーデンハウスの木製サッシと同様に雰囲気を味わうためのメンテナンスはそれなりに必要だということでしょう。
採光不足の場合は招き屋根がお勧め
屋根の形が変えられなくて、採光基準を満たせない場合には、天窓をやむを得ず設置することは仕方がないと思います。
特に床面積の広い平屋の場合は北側の部屋まで採光が取りにくいという問題が発生しますが、これは以下のように屋根の形を招き屋根という形状に変えることで回避することができます。
(出典:suumo)
上記は屋根の軒をずらして小窓を設置しています。窓は高い場所にあると小さくても部屋が明るくなるため、天窓(トップライト)より高窓(ハイサイドライト)がお勧めです。
私は家の南側には日除けのある大窓を設置することをお勧めしていますが、小窓であればどの方向でも日射取得量が少ないため日除けはなくても良いでしょう。
招き屋根を採用しない場合においても、南側以外の窓は小さく少なくそして高く設置することがお勧めで、LED電球の電気代は少ないためリビング以外の採光に関しては最低限で良いと思います。
雨漏りに関してはどの屋根形状でも発生する可能性はありますが、外壁の防水機能に注意しながら総合的に判断されると良いでしょう。
ハイドロテクトタイルでない場合の注意点
i-series標準のボーダータイルを採用する場合、二点の注意点があります。
- ロスガードの排気口を真北に設置しない
- 可能であれば家を真南に向けて建てない
私の二軒目の家では換気装置の排気口が真北に設置されていたため、室内から排出される水蒸気によって北側の外壁で慢性的にコケが発生していました。
この教訓から冬季に陽の当らない真北の壁に換気装置の排出口を設置するには外壁に特殊な処理が必要だと思いました。
ただ、ハイドロテクトタイルを採用した三軒目のi-cubeは間取りの上で北側にロスガード(さらぽか)の排気口が設置されてしまいましたが、今のところコケは生えていません。
本来は室内の水蒸気が排出されている換気装置の排気口については冬季に日が当たる場所への設置をお勧めします。具体的には真北に設置しないということです。
「家は巽(たつみ:東南)に向かって建てるべし」という言葉があります。真南に向かって家を建てることが一般的ですが、北側の部屋の採光を考えると必ずしも真南が最善とは言えません。
同様に北側外壁のコケに悩まされるのであれば家を真南に向けて建てないという選択肢もありますが、北側外壁のコケは日当たりだけでなく壁内結露の防止が重要になります。
最後に
世間に溢れる家作りの情報はハウスメーカーから出されたものをメリット・デメリット論で仕分けしているだけの情報が大半だと思いますから、もう一歩進んで検討されると良いと思います。
家を所有すればメンテナンス費用が発生しますが、雨漏り対策のような致命的なメンテナンスが10年置きに発生する家は味がある家なのか欠陥のある家なのか価値観が分かれるところです。
建物の腐朽やシロアリの侵入でさえも受け入れて自然を感じる家を建てたいということであれば良いですが、そこまで達観した家作りをしたいと私は思いません。
そして、雨漏り以上に建物を傷める事象としては、壁内の結露であり雨漏りは一時的な天気によって発生しますが、壁内の結露は長時間にわたって発生し建物を腐らせます。
外観がオシャレな新築住宅でも建築後数年で北側の壁の通気層に沿って黒ずんでいる家(壁内結露でカビが発生)を見かける度に30年で建て替えられる家が今も建てられていると感じます。
家作りが現場任せになっている住宅依頼先の場合は現場の知識不足によって壁内結露が発生する場合があります。新築住宅の壁内結露の深刻な現状については別の回に書きたいと思います。
本日は以上でございます。