通気層とは
(出典:一条工務店)
現在の住宅は基本的に外壁通気層工法といって、柱と外装材との間に空気の通り道(通気層)があります。柱などの構造材が乾燥していることが建物の耐久性には非常に重要です。
上記の画像のように縦に設置されている胴縁(どうぶち)と言われる木材を柱と外装材の間に挟むことによって、空気の通り道を作っている工法が通気工法であり現在では一般的です。
ただし、胴縁には一般的な縦胴縁の他に横胴縁があり、モルタル仕上げの場合はエアパッセージシートなどの胴縁の代わりとなる通気部材があります。
通気層があることによって、室内で発生した水蒸気が壁の中でとどまらずに屋外に排出されますが、昔の様な通気層のないモルタル外壁の家は構造材が結露によって腐りやすいと言えます。
もちろん、建材の水蒸気の通り易さを計算して通気層がなくても水蒸気が屋外に排出できるのであれば問題ありませんが、地場の設計事務所や工務店では結露計算はしていないでしょう。
雨漏りについては、瑕疵担保責任にて10年間の保証がされるようになりましたが、雨漏りよりも怖いとされる結露による建物腐朽については保証対象外です。
ただし、一条工務店ではありませんが、最近ネットで建築風景の画像を見ていると通気層の施工に疑問があるケースが何件が見られました。私の杞憂であれば良いのですが。。
通気層の設置義務はない
(出典:国土技術政策研究所)
上記はフラット35でお馴染みの住宅金融支援機構の技術基準における通気層の設置基準です。窓回りの通気確保と胴縁と胴縁の間には隙間を設けるように指示しています。
日本の家作りは建築基準法に細かい規定がないことが根本的な問題であり、建物の腐朽を防止する通気工法については設置義務がないため施工不良かどうかを問うこと自体が難しいでしょう。
なぜ、建築基準法にこんなにも不備があるかというと、昔の家には断熱材が設置されていなかったため、通気層がなくても壁内結露しなかったからだと言えるでしょう。
時代遅れな建築基準法の不備を住宅金融支援機構の技術基準が補ってきた訳ですが、フラット35を借りない人や長期優良住宅を申請しない人には通気層の設置義務がありません。
外装材にサイディングを採用した場合はメーカー保証の条件から通気層が設置されますが、旭化成のパワーボード等のサイディング以外の外装材の場合は通気層の設置は求められないでしょう。
しかし、ただ通気胴縁が設置されていれば良いという訳ではなく、通気胴縁が正しく設置されていなければなりません。特に縦に設置した胴縁よりも横に設置した胴縁では注意が必要です。
横胴縁は要注意
外装材を縦張りすると通気胴縁が横になります。外装材の縦張りは縦の継ぎ目に水切りを設置してコーキング部位を減らす場合に有効ですが横胴縁は通気性が劣るため施工には注意が必要です。
フラット35の技術基準には「横胴縁の場合は胴縁端部及び長さ1,820㎜内外に30㎜程度の通気の空きを設ける」とあります。
しかし、ネットでみる画像では横胴縁を使っているにも関わらず、胴縁が隙間なく連続してしまってる画像をいくつも見受けます。
横胴縁を連続させる場合は胴縁を削ったり穴を開けるなどの通気加工をした胴縁を利用する必要がありますが、通気加工がされている胴縁を利用している様子は見受けられません。
(出典:ダイアロン)
通気加工のない横胴縁を隙間なく連続施工した場合、水蒸気の排出ができないことから壁内結露を招いて長期的には構造材が腐る可能性が高いと思います。
現場発泡ウレタンが通気層をつぶす
ローコスト系の住宅において柱の外に耐力面材(構造用合板など)を設置していないケースがあります。柱の外側に設置した透湿防水シートに現場発泡ウレタンを吹き付けて通気層をつぶしてしまう事例があります。
このような少し考えれば分かるようなことが現場では起きているのです。
透湿防水シートが通気層をふさいでしまう
通常は胴縁の室内側には防水用の透湿防水シートというものが設置されます。
透湿防水シートが余りが適切にカットされずに残り、シートがめくれあがって通気層をふさいでいる場合があります。
屋根断熱に通気層がない場合がある
現場発泡ウレタンを屋根の断熱に用いる場合に、通常は野地板の下に段ボール製の通気材を入れてからウレタンを吹きますが、屋根の野地板に直接ウレタンを吹いてしまう住宅会社があります。
野地板への断熱材吹き付けは透湿抵抗からみて断熱材を通過した水蒸気が野地板でせき止められてしまうため、将来に屋根が腐り落ちると思います。
最後に
住宅会社がどんなに丁寧に施工しているつもりでも勘違いや知らないということはあると思いますから、施工に興味がある方は住宅金融支援機構の技術基準書を一読すると良いでしょう。
フラットの技術基準書は大型書店やAmazonなどで売ってます。私は一条工務店で家を建てる時には技術基準書を持ち込んで断熱に関する稟議について設計士さんに説明をしたりしました。
ガチに家作りを学びたい方はIBECの省エネ基準解説書とフラットの技術基準書を購入されることをお勧めします。専門書ですが家作りに興味があれば楽しく読めると思いますよ。
さて、雨漏りは一時の出来事とも言えますが、壁内の結露は冬季の間ずっと発生していますから、これが日本家屋が腐りやすく30年程度で取り壊されるという原因なのです。
各地の大地震において全壊した住宅のほとんどに建物の腐朽とシロアリによる被害があったようですから、建物の腐朽に繋がる結露を防止する通気層は非常に重要だと言えます。
本日は以上でございます。