はじめに
ハウスメーカーが公表するQ値については各社のモデルプランに基づいているため、家の形や窓のサイズなどがハウスメーカーに有利な計算条件になり過ぎている面があります。
一方で、床面積が同じでも家の形が凸凹していると外壁量が増えるため熱損失は増加しますが、Ua値は外壁量が増えた分を分母も分子にも加算しているため実際に建つ家の熱損失を表しません。
Q値はハウスメーカーに有利に計算されているし、Ua値は家の形状により増減する熱損失と換気の熱損失を考慮していないため、消費者は何を信じれば良いのでしょうか?
一条工務店の圧倒的なQ値やUa値を相手に戦っている住宅会社は一条工務店の計算はおかしいとネット上で疑問を投げかけていますが、それなら標準モデルで計算すればわかることです。
私は不毛な議論や噂話で施主が家作りの判断を間違わないように、Q値とUa値の計算シートや壁内結露を計算するシートを無償提供していますので、興味のある方はご利用ください。
今回の記事に合わせて、床面積などの設定を標準モデルに変えておきました。
標準モデルとは?
標準モデルとは国土交通省が省エネ計算の上で設定した標準的な家の間取りのことです。
利用させていただく間取りは以下の「温暖地版自立循環型住宅へのガイドライン」を元とした、YKKAPさんのサイトから借用させて頂きます。
□設計諸元
敷地面積
210.00㎡(63.5坪)
建築面積
69.55㎡(21.0坪)
床面積
2階:52.19㎡
1階:67.89㎡
合計:120.08㎡(36.3坪)
窓面積
28.71㎡
窓面積/延べ面積
23.91%
(窓面積は玄関・勝手口扉を除く)
家族構成 夫婦2人+子供2人
*温暖地モデル
窓については一条工務店の窓サイズを使って計算していますが、窓面積が28.71m2とのことなので、小窓のサイズを調整して窓面積を標準モデルと合わせています。
また、標準モデルには出窓がありますがこれは通常の窓として計算します。
計算結果
標準モデルでの計算結果は以下となります。
Q値 | Ua値 | |||
カタログ値 | 標準モデル | カタログ値 | 標準モデル | |
i-series | 0.51W | 0.75W | 0.25W | 0.20W |
夢の家 I-HEAD構法 | 0.98W | 1.18W | ? | 0.36W |
以下はi-series(i-smart/i-cube)の標準モデルでの計算の明細となります。
以下はグランセゾンを含む、夢の家 I-HEAD構法の標準モデルでの計算の明細となります。
Q値は真四角の総二階の家で良い結果がでるため標準モデルでは悪化します。一方で、Ua値は家の形に影響されにくいため標準モデルに近い値が計算されています。
自動車やエアコンの燃費についてもカタログ値と実際は異なりますが、Q値についても家の形や窓の面積でカタログ値から変わるため、カタログ値の1.2~1.5倍程度だと思えば良いでしょう。
ただ、一条工務店の場合はカタログのUa値の数値が標準モデルより悪いという不思議な現象がおきていて、どのような計算をしているのか不明です。
標準モデルでは窓の面積が床面積に対して23.91%あり、高気密高断熱住宅のセオリーからみると若干窓が大きいと思います。
一般的には高気密高断熱住宅は床面積に対して20%以下の窓面積が推奨されており、私の三軒目のi-cubeと四軒目のi-smartは共に窓面積は15%程度です。
最後に
数値を計算せずに高気密高断熱住宅を考察することは難しいと思います。ハウスメーカーに都合の良いことだけが書いてあるカタログの情報を一生懸命に比較しても真実は見えてきません。
これまで一般の施主では数値の計算ができなくて色々な情報に施主が振り回されていたと思いますが、私はこれに終止符を打ちたいと思います。
さて、次回は大手ハウスメーカーのQ値とUa値を計算してみたいと思います。