乾太くん付けますか?それとも再熱除湿エアコン付けますか?

考察

はじめに

私が提唱しているエアコン1台を使った全館冷房は効果が複数あるからなのか、意味や目的が理解されにくいと思っています。全館冷房の主目的は家中を除湿して家事を楽にすることです。

全館冷房でエアコンを1台にするか?各部屋にエアコンを設置するか?といったエアコンの台数を何台にするかという話は本質的ではなく、エアコンの台数は結果でしかありません。

そこで、二階の階段ホールに設置する再熱除湿エアコンは梅雨に家中を除湿して洗濯物を乾燥させるため、人気のガス乾燥機である「乾太くん」と比較した方が分かりやすいと思いました。

ガス衣類乾燥機 乾太くん
ガスのチカラで、洗濯物がわずか1時間で乾く。繊維が根元から立ち上がり、ふんわり仕上がる。家事の負担を減らして、毎日の暮らしの質を高めます。

再熱エアコンの必要性についてはエアコンが高額であるため必要ないという話になりやすいですが、階段ホールの再熱エアコンは「エアコンではなく衣類乾燥機」だと思えばどうでしょうか

最初に申し上げておきますが、乾太くんを否定するものではまったくありません。ライフスタイルによっては乾太くんは非常に良い商品だと思っています。

ただ、「乾太くん」を推奨する住宅会社がその導入メリットを説明する際に、夏季に家中の相対湿度を60%以下するノウハウを持っているかいないかで推奨理由が大きく変わってくると思います。

そして、高性能な新居に入居する前に現自宅で全館冷房のテストをしている人の情報をみると、よほど気密性が悪い家でなければ小型エアコン1台で家中を除湿することは可能なようです。

マンションでもエアコン1台での全館冷房が可能とのことですから、平屋でも二階建てでもエアコンの設置位置と運転ノウハウさえあればエアコン1台で家中を除湿することはできます。

さて、「乾太くん」も「エアコン全館冷房」も洗濯物を外に干さないという目的は一緒であるため、本日はエアコン全館冷房を冷房とは分離して「乾燥機」として考察したいと思います。

使い勝手の比較

最近はゲリラ豪雨も多く洗濯物の天日干しには注意が必要です。ただ、洗濯物の部屋干しの場合は天気の悪い日や梅雨においては生乾きが発生しやすいと思います。

バルコニーなどへの天日干しはお日様の匂い(実は汗や脂肪が太陽光で分解された匂い)を好む人がいるとは言えども、天気と時間を気にしながら洗濯物を干して畳む家事は重労働だと思います。

以下の比較はあくまで私の想像ですがバルコニーへの天日干しと比較して、青字は乾太くんのメリット、赤字はエアコン全館冷房のメリットとしています。

項目 ベランダ天日干し 乾太くん エアコン全館冷房
洗濯時の天気や時間 左右される 左右されない 左右されない
洗濯物を干す手間 ある なし ある
洗濯物を畳む手間 ある ある 無くせる
花粉などの付着 ある なし なし
梅雨の生乾き ある なし なし
布団干し 必要若しくはふとん乾燥機利用 必要若しくはふとん乾燥機利用 不要
洗濯物の乾燥時間 天気次第 5kgの洗濯物を約52分。 6時間程度。厚手はもう少しかかる。
洗濯物の仕上がり お日様の匂い。 ほっかほか。ふっくら。 生乾き臭はしない。
洗濯物の傷み 日焼けする 縮む、シワになる なし
ダニ ダニは殺せない。 ダニを殺せる。 そもそも家中にダニがいない。
カビ カビの発生は抑制できない。 カビの発生は抑制できない。 家中のカビの発生を抑制できる。

使い勝手をみると乾太くんは非常にいいなと思います。特にスポーツをやっている育ちざかりのお子さんが多いご家庭ではユニフォームなどを短時間に乾燥できる乾太くんは重宝するでしょう。

一方、エアコン全館冷房では洗濯物の短時間での乾燥は難しいものの厚手の洗濯物でなければ夜に洗濯して朝には乾いています。

お客様に見えないようにランドリールームを設けて洗濯物を干したまま畳まずに利用するという方式やオールハンガー収納といってハンガーに最初から干して畳まないという方式も可能です。

洗濯物を外に干す・畳むという家事をしないことがサボりであると捉える人はまだまだいると思いますが、令和の家作りではもう洗濯物は外に干さなくても畳まなくても良いのではないでしょうか。

洗濯機は洗って脱水するだけなら消費電力は少ないため、わざわざ深夜時間帯の電気代が安い時間帯まで待って洗濯する必要はないと思いますから深夜になる前に洗濯をされると良いでしょう。

家中を除湿することのメリットとしては布団を干さなくて良くなるということです。夏でも家中がカラッとしているため汗っかきの人でも起床したら布団はめくりあげておけば乾燥します。

また、全館冷房中の一条施主が某ダニ取り器の商品モニターを依頼されたがダニが全くおらず困ったそうです。カビやダニは湿度が低いと繁殖できないため布団を干す必要がなくなるのです。

企業では働き方改善と言われる中、洗濯や布団干しという家事に関してはライフスタイルの問題や天日干しを好む人が多いため、なかなか合理的にならないなと感じます。

歴史を見れば洗濯は手洗いから自動洗濯機に変わっています。ただ、家作りやライフスタイルは何となくの前例踏襲によって家事の効率化をズボラや手抜きと思う人が未だ多いのかも知れません。

コストの比較

乾太くんを利用して洗濯物を乾かせば天日干しするためのバルコニーや部屋干し用のランドリールームを設置せずコストを削減できるから乾太くんは採用はお勧めだといった話を最近聞きます。

それでは、乾太くんと再熱除湿エアコンの比較してみましょう。計算条件として乾太くんは一日に2回利用する想定です。

項目 乾太くん 再熱除湿エアコン
初期設置費用(10年更新) 60万円(20万円×3回) 45万円(15万円×3回)
バルコニー削減 ▲20万円程度 ▲20万円程度
ランドリールーム 不要 +70万円(1坪70万円想定)
各部屋エアコン(10年更新) 必要 ▲45万円(5万×3台×3回)
設備費用合計(30年) 60万円 50万円
都市ガス(5kg乾燥) 2400円/月(1回40円程度)
プロパンガス(5kg乾燥) 3780円/月(1回63円程度)
24時間全館冷房の電気代 4000円~5000円/月
冷房費用 4000円~5000円/月 なし
ランニング費用合計/月 6400円~8780円 4000円~5000円/月

設備費用については初期と10年更新を含めて30年で計算すると乾太くんとエアコン1台での全館冷房を前提とした場合、再熱除湿エアコンを設置した方が若干安いと思います。

乾太くんはシンプルな構造であるため10年以上使えるという情報もありますから設備費用に関してはそれほど変わらないのかなと思います。

ただ、全館冷房において、洗濯物を乾かすランドリールームをわざわざ設けずに空いている部屋や脱衣所や浴室で洗濯物を乾かしている場合は全館冷房の方が設備費用は非常に安くなります。

ランニングコストに関しては乾太くんを導入した場合は各部屋の冷房が必要になるため家中をエアコン1台で全館冷房する方式の方が安くなりますが、この冷房代はどの家でも発生するものです。

ただ、全館冷房はエアコンを1台にすることが目的ではないため、サブエアコンを稼働させる人もいるとすれば、この比較がどの家庭にも当てはまるとは限りません。

地域によっては深夜電力単価が上昇してオール電化割引のメリットが減っています。また、太陽光発電を自家消費している場合は基本料金のない新電力に変更した方が得になるケースがあります。

オール電化かガス併用かに拘る必要はないと思いますが、太陽光発電を自家消費されている家はガス併用よりオール電化の方が有利となるため乾太くんより再熱除湿エアコンの導入がお得です。

余談ですが、乾太くんを設置する際はオプションにある排気口からの空気の流入を防止する逆流防止のダンパーを設置した方が良いようですね。

最後に

天気や時間に左右される洗濯という家事を改善することは重要だと思います。そういった意味で乾太くんは全館冷房におけるエアコンの難しい操作などが不要な非常に良い製品であると思います。

一方で乾太くんがあったとしてもお風呂を含めた家中のカビやダニを抑制できる訳ではありませんから、全館を除湿することのメリットから比べると乾太くんのメリットは限定的だとも言えます。

乾太くんについては難しいエアコンの操作が苦手な人や、育ち盛りのお子さんがたくさんいて大量の洗濯物を短時間で乾かす必要がある家では重宝すると思います。

そして、予算があればですが家中の除湿と乾太くんの両方を採用できたら最強ですね。

施主は好みのライフスタイルやフィーリングに合わせた設備の選択をすれば良いと思いますが、乾太くんをお勧めする住宅会社の推奨理由はよく確認した方が良いと思います。

つまり、住宅依頼先を探す際には、洗濯物の乾燥以外にも様々なメリットがある「家中の相対湿度を60%以下にするノウハウ」があるかないかも1つの目安ではないかと思うのです。

高気密高断熱住宅を希望される場合、住宅依頼先の選定基準として「C値1.0以下を保証できますか?」という質問も良いと思いますが、「梅雨を含めて夏季に家中の相対湿度を60%以下に維持するノウハウをお持ちですか?」と聞いたほうが住宅会社の力量が分かるでしょう。

一条工務店ではi-seriesにおいて「さらぽか空調」という坪1.5万円のオプション設備がありますが相対湿度を40%台にまで落とせる超絶快適設備ですから洗濯物は部屋干しで余裕で乾きます。

ただ、一般的には簡単な操作で除湿までできる全館空調設備は150万円~300万円程度しますから、これまで庶民にとって家中の除湿は無縁でしたが、エアコン1台で実現することは可能です。

そして、家中の相対湿度を60%以下にするノウハウがあった上で乾太くんを施主のライフスタイルに合わせて提案しているのであればその住宅会社は非常に優れていると思います。

慣れればエアコン1台で家中の室温を下げるだけであれば簡単です。ただし、エアコンをサーモオフさせずに家中を除湿し続けることは少しだけノウハウが必要です。

私はすでに10年以上前から三軒の家で小屋裏・階段ホール・平屋でのエアコン1台による全館冷房を実践しています。情報はブログでオープンにしていますのでどなたでも参考にしてください。

そして、家中を除湿するノウハウを持っている住宅依頼先はまだ少ないと思いますから、それに囚われるぐらいなら自分で空調を勉強するか操作が簡単な乾太くんの導入が良いと思いますよ。

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