はじめに
(画像:アットホーム)
私の昔の実家もそうでしたが、無断熱住宅で幼少の頃を過ごした人は多いのではないでしょうか?
今となってはあんな性能の悪い家にはもう二度と住みたくないと思います。お風呂なんて寒くて寒くて仕方がなかったですし、夏にトイレに長居すると汗だくになってまう家でしたから。
現在でも住宅の4割程度は無断熱住宅のようですが、断熱をしてある古い住宅についても、気密性能が低すぎて実質的には無断熱住宅と家の寒さは変わらないと思います。
マンションなどの集合住宅は戸建て住宅より暖かいと思っている人はいると思いますが、それはある意味正解で、集合住宅は最上階・一階・端の家でなければ暖かいと思います。
マンションの断熱性能は戸建て住宅より相当に低いですが、気密性能が高いため内側の部屋に住んでいれば、周りの部屋(ご家庭)が断熱層となるため内側の部屋は暖かいのです。
さらに窓をリフォーム(できれば玄関ドアも)して樹脂サッシを内側に二重窓として設置すればマンションは暖かいと思います。そして夏はエアコン1台による全館冷房も可能だと私は思います。
一方で戸建て住宅は家の六面体が外気に触れているため、断熱と気密がしっかりしていないと寒いわけですが、本日は昔の無断熱住宅がどの程度の性能であったのか計算してみました。
無断熱住宅の性能は?
東京などを含む6地域、床面積120m2の標準モデルの住宅において、以下の条件で計算してみましたが、さすがにもうこんなに断熱性能の低い新築住宅はないと思います。
部位 | 仕様 | 性能 |
天井・壁・床 | 断熱材なし | ー |
窓 | アルミ単板ガラスサッシ | 6.51W |
玄関ドア | K4 | 4.65W |
気密性能(C値) | 10 | 換気回数0.66回相当 |
換気装置 | なし | 隙間風で換気される |
寒さの厳しい1月にCOPが1のオイルヒーターなどで室温22℃全館暖房を行うと月に33万円も暖房の電気代がかかるという絶望的な状態です。まぁ、全館暖房なんてしないと思いますが。。
詳細の計算結果は以下であり、Q値9.27W・Ua値3.26Wという数値でした。もう、窓から熱が沢山逃げるとかそういう次元ではなくて、どこからでも熱が逃げています。
ただ、昔の家は窓がもっと大きい可能性があり、実際に建っている家のQ値は10W程度になっていると思います。
計算結果のExcelシートについては以下においてあります(13番目です)。
Q値が9.27Wで床面積が120.8m2ですから、室温1℃を上昇させるために1120Wが必要になります。これは6畳用の2200Wのエアコンの定格運転では2℃程度しか家全体の室温があがりません。
エアコンの最大能力まで使って暖房すればヒートポンプの特性上、霜取り運転時間が増えてしまうため、余裕をみて定格運転程度を想定して暖房負荷を考えた方が良いと私は思います。
6畳の床面積は9.9m2であり室温を20℃上昇させるには1835W(1.8kW)必要になります。無断熱住宅を想定した6畳用エアコンの定格性能が2.2kWというのは計算からみても妥当です。
9.9m2(6畳)×9.27W(Q値)×20℃(温度差)=1835W
ただ、無断熱住宅の良い点は壁内で結露しにくいという点です。建物を長持ちさせるには木材を乾燥状態に保つ必要がありますが、昔の人はそれを知っていたのでしょう。
初期の高断熱住宅では室内から排出される水蒸気の動きを考慮していなかったため、断熱がされた壁や床の中に移動した水蒸気が結露を起こしてしまったという失敗がありました。
現在においても、壁の中の水蒸気の動きを計算していない高気密高断熱住宅があるため、壁に水蒸気を入れないのか(防湿)、しっかりと水蒸気を壁から抜けさせるのか(透湿)考慮が必要です。
最先端の高気密高断熱住宅では、建物内部の結露を防止しながら乾燥しない暖かい家を実現しているため、壁内結露は過去の話と言えなくもありません。
最後に
古い家をリノベーションすることが流行っていますが、無断熱住宅に住むには覚悟が必要だと思います。断熱リフォームという手段もありますがシロアリ対策まで考えると悩ましいです。
「暖房」という言葉の中の「房」とは部屋のことですから部屋を暖めるという意味ですが、実際は気密性能の悪い家は、こたつの利用などの局所暖房=「採暖」になってしまうのです。
よって、古民家を購入した場合は部屋を暖める「暖房」は諦めて、火鉢やいろりなどで暖まる「採暖」に切り替えた方が風情があって良いと思います。
風情は有ってもお風呂でのヒートショックが起きる住宅であるため、風情があるならどんな家でも良いという訳ではないと思いますが、そこは自己責任ということで。。
さて、無断熱住宅を基準としたエアコンの畳数表示は現在の高気密高断熱住宅には過剰な性能になっていることがお分かり頂けたと思います。
家の性能が良いからエアコンは2回り小さくしようなどと考える人がいると思いますが、実はそれでも過剰な性能になっている可能性が高いです。
私は常々Q値が1.0W程度の一条ハウスにとって6畳用のエアコンは60畳用(30坪)のエアコンになると述べていますが、それは計算と実体験によって確かめているからです。
家作りは予算との闘いだと思いますが、エアコンの数を減らして、エアコンの容量を小さくすれば30~50万円程度は簡単にコストカットできると思います。
また、夏か冬しか使わないエアコンについては、省エネな最上位機種を選択しても高性能な家では元が取れないことから、私は中位機種で良いと思っています。
エアコンのお掃除機能などは必要かと聞かれますが、私のように窓を開けない生活をしていると、室内のホコリが少ないため、その場合はお掃除機能はなくても良いと思います。
本日は以上でございます。