はじめに
タイトルの過小とはUa値を悪く評価しているのではないかという意味です。通常の性能偽装とは本来の性能より良く評価することですが本日は逆に悪く評価しているのではないかという話です。
一条ハウスのカタログのQ値計算方法には問題があるのではないかと私は疑っています。モデルケースの詳細な計算方法は開示されていないものの特に換気部分に違和感を覚えます。
ただ、0.51WというQ値が絶対に出ないとは言い切れません。計算上では建築基準法における最低窓面積を確保しながら坪数を大きくしていくと不可能ではありませんでした。
どのハウスメーカーもQ値の計算は自社に非常に有利な計算をしているため、実際に建つ家は窓が大きく家の形に凸凹がありますからカタログ値の1.5倍程度のQ値と考えた方が良いでしょう。
そして、一条工務店の断熱性能計算において、おかしいと思うのはQ値だけでなくUa値もです。これはむしろ悪く見せているように感じます。
断熱材の経年劣化について
ウレタン断熱材は25年後に断熱性能が81%に劣化するとされています。ただ、工場生産のウレタンは表面にスキン層があるため、同じウレタンのFPパネルは経年劣化を否定しています。
ただ、断熱材の経年劣化については壁内結露の評価に対して考慮すべきであって、Q値やUa値の計算は建設当初の性能で行います。ここを誤解している人が多いです。
以下は旭化成のネオマフォームが経年劣化に対する性能をアピールしているものですが、ウレタンは25年後に81%まで性能が落ちると記載されています。
(出典:旭化成)
なお、ネオマフォームは私の二軒目の家で付加断熱に採用しましたが、断熱材の中で最高の性能を誇る一方で、水に濡れると酸性を示して接触しているビスが錆びるという問題があります。
断熱材が雨に濡れることなんてめったにないと思いますが、この対策としてメッキがしてあるパネリードビスという専用のビスを用います。
ネオマフォームの対抗馬となるフェノバボードは雨に濡れても酸性を示さないことから、現在はフェノバボードがさかんに利用されていますが、どっちも変わらないと思います。
一条工務店のウレタンやEPS断熱材はフィリピンの工場で内製していなければ分厚く施工するには高額すぎるものです。よって、コストを含めて完璧な断熱材は存在しないと私は思います。
カタログ値の壁の熱貫流率0.20Wはおかしい
一条工務店のホームページには過去には壁の熱貫流率は0.135Wであると記載されていましたが、現在では壁の熱貫流率は0.20Wに悪化しています。
以下のようにウレタン断熱材の熱伝導率を0.02Wとした場合、壁の平均熱貫流率は0.135Wと計算されます。この計算は省エネルギー基準解説書にある正規の計算方法です。
壁の熱貫流率については仮にウレタンの経年劣化を81%を加味しても熱貫流率は0.161Wまでしか落ちません。また、経年劣化は結露計算に用いるもので初期の断熱性能の評価に用いません。
カタログ値の壁の熱貫流率0.20Wを逆算してみた
カタログ値にあるi-seriesの壁の熱貫流率0.20Wを逆算すると、ウレタン断熱材の熱伝導率が0.033Wということになってしまいます。
0.033Wの熱貫流率とは一条のEPS断熱材並みだということになります。
うーん、こんなことはありえないと思います。
カタログのUa値0.25Wは過小評価?
Q値やUa値を計算したことがある人にはわかると思いますが、外気に接していない床は温度差係数である0.7を掛けます(緩和される)。
つまり、一条ハウスの各部位の熱貫流率から考えると窓を相当に大きくしないかぎりUa値はカタログの0.25Wよりもっと低くなって当然です。
部位 | 構成 | 熱貫流率 |
天井 | ウレタン235mm | 0.129W |
壁(付加断熱) | ウレタン190mm | 0.135W |
床 | ウレタン140mm | 0.145W(0.207W×0.7) |
窓 | トリプルサッシ+ハニカム | 0.6W |
上記の各部位に面積を掛けて平均値としたものがUa値です。HEAT20のG3の寒冷地仕様は0.20Wですが、一条の各部位の熱貫流率は窓以外は0.20W以下ですから軽くクリアするはずです。
レベルの高くないZEH基準が世間では高性能住宅扱いですから、HEAT20のG3を簡単にクリアできると言っても、あまり一般の人にピンとこないからあえて言わないのかもしれません。
なにをどう計算したら0.25Wという高いUa値になるのか私にはわかりません。ハニカムシェードを計算に参入しなくてもトリプルサッシのU値は0.8Wなので、それも関係ないはず。。
最後に
自動車やエアコンのカタログ値の燃費も実際とは異なります。Q値やUa値についても、あくまでハウスメーカーの参考値としての掲示ですが可能なかぎり現実に近づけて欲しいと思います。
ただ、i-seriesのUa値0.25Wについては過小報告となっていると思われますが、なぜあえて悪くUa値を掲示しているのか分かりません。
間違った推測だと思いますが、i-seriesには現在も裏メニューがあって、期間限定商品かもしれませんが、ウレタンではなくEPS断熱材にした若干お安いモデルがあると聞いたことがあります。
確かに断熱材をEPSに変えるとi-seriesのUa値は0.25Wになりますが、そんな馬鹿な。。
はたまた、Ua値が良すぎると住宅業界内で一条工務店たたきが起きるため、それを防止するためにUa値を過小報告しているのか、なんて邪推をしてしまいます。
高気密高断熱住宅が得意な設計事務所はUa値よりQ値を使うと思いますし、Ua値を用いる他のハウスメーカーのUa値は相手にならないため競争しても意味がないと判断しての過小報告なのか。。
つまりは、Ua値という指標を良く見せても一条工務店からみて旨味がないということなんでしょうか??
本日は以上でございます。