はじめに
本日は一条工務店が施主の意見を元に家の工法を改良するのかしないのかということについて書きたいと思います。
現在の自宅であるi-cubeの施工を見た後に私は自分のブログに一条工務店への改良要望を記載しました(2016年12月)。
これは一条工務店本社の開発担当にお会いすることが決まり、その前に論点をまとめるために記載したものでした。この内容の大半は一条工務店の開発担当に直接申し入れています。
この改良要望については、当時はまだ私の二軒目の自宅が売却前で一条工務店の施主というよりは、地場工務店でQ1住宅を建てた施主が一条ハウスに対して感じたことを記載したものです。
さて、私の改良要望は「その他」・「断熱」・「防蟻」と三つのカテゴリーに分けて大量に記載しています。
もちろん、私の意見によって変わったのではなく一条工務店がもとから企画していたもの、私以外の多くの施主から要望のあったものなど、家作りが変化した理由は様々だと思います。
一条工務店の現場施工を初めて見てから3年半ほどの歳月が流れましたが、一条工務店はどれだけ変わったのでしょうか?
一条工務店の現場を見た感想
2010年には小屋裏エアコンに成功し、結露計算やQ値計算などを実施できるレベルにあった私ですが、その私からみても一条工務店の施工を初めて見た時は合理的すぎてビックリしました。
これまで在来工法の上棟を二回施主として見てきましたが、こんな簡単にC値1.0以下の高気密高断熱住宅が組みあがるのかと驚き、この工法を開発した人は天才なのだと思いました。
年間15棟前後の高性能な住宅を丁寧に建築する住宅会社と一条工務店の工法は発想が違います。少量を丁寧に作ることも素晴らしいことですが量産化技術は多くの人を幸せにします。
フィリピン工場で生産されたパーツや現場の施工を実際に見ると、あまりにも断熱気密施工が合理的すぎて、一条工務店の販売が独走している理由は生産技術の違いにあると思いました。
気密が取りやすい基礎断熱を使わずにシロアリに強い床断熱を採用して、年間1万棟以上の住宅でC値0.6程度の数値を叩き出す設計思想や生産管理能力はハンパではありません。
簡単にいうと、グラスウールなどの安い材料を現場で丁寧に施工するのではなく、高額なEPSやウレタン断熱材をフィリピン工場でコストダウンして生産して現場の手間を減らす思想でした。
国内では高額になってしまう板状の発泡断熱材をフィリピン工場で自社生産することで透湿抵抗比などを考慮する必要のない家作りをしている一条工務店には恐ろしさすら感じます。
現場ではそれらの高性能なパーツをジョイントするだけでC値1.0以下の家が全国で続々と誕生します。家の6面すべてにボード気密工法を採用して大幅に気密施工を簡略化していました。
一条工務店を語るなら現場を見た方が良いでしょう。通常の在来工法を知っている人は一条のイノベーション(技術革新)というにふさわしい合理的な現場の施工にビックリすると思います。
改良要望(その他)
以下の中で赤字の項目は変化があったもの、青字の項目は変化はないが早急に対応して欲しいものです。
- 一条工務店への改良要望:その他(追加)
- UFO-Eをオプション採用して欲しい
- 窓ガラスを選択させてほしい
- エロンゲートの便座を用意してほしい
- 床材にラミネートフロアを採用して欲しい
- 一条工務店への改良要望:その他(2016年8月現在)
- 太陽熱温水器を標準OP設定して欲しい
- 地中熱利用ヒートピンプを開発して欲しい
- ソーラーガレージを商品発売して欲しい
- 屋根の防水紙を透湿ルーフィングにして欲しい
- 壁の透湿防水シートに止水性を持たせて欲しい
- 窓サッシは内付けの納まりにして欲しい
- 窓の日射制御を強化して欲しい
- 防火トリプルサッシの開発+防火地域標準化
- ハニカムシェードと内窓を選択性にして欲しい
- アウトセット納まりの室内引き戸を設定して欲しい
- 浴室の排気換気扇を給気換気扇へ変更
- キッチン換気扇の強制給排同時+気密シャッター標準化、
および給気を通気層から - トイレの換気扇は高い位置に設置
- 再熱付エアコンのみを取り扱って欲しい
- 給気口(SA)の形状変更をして欲しい
- エアパスファンの設置を標準OP設定して欲しい
- 都市部向けの壁厚の薄い商品を作って欲しい
- 規格型の平屋を用意して欲しい
まず、1-1の「UFO-Eをオプション採用して欲しい」にあるUFO-Eとは簡易な免振システムのことです。i-seriesに免振装置が無かったことから検討を期待して記載したものです。
一条工務店はi-seriesについては免振装置には向かわずに、ミッドプライ・ウォールシステムを利用した耐震等級5とも言える住宅が先日発表されましたので、これは解決といって良いでしょう。
1-4の「床材にラミネートフロアを採用して欲しい」については、i-smart標準のEBシートフローリングの凹み易さの指摘ですがグランセゾンのモクリアがこの解決につながる可能性があります。
ただ、グランセゾンの設備のi-smartへの流用は、グランセゾンがあまりに人気があるため、i-seriesの生産ラインの稼働率が下がっているための措置と認識しています。
1-2の「窓ガラスを選択させてほしい」と2.7「窓の日射制御を強化して欲しい」については関連性があり、ハウスメーカーの窓の日射制御の不足を指摘したものです。
一条工務店は寒冷地は全面に日射取得量の多い断熱ガラスで温暖地は全面に日射取得量の少ない遮熱ガラスですが、温暖地でも南側だけ冬季の暖房代低減のために断熱ガラスを採用したいのです。
屋根に軒のないスッキリとしたモダンな外観の窓の大きい家を望む消費者が多いことから、オーバーヒートのクレームを考えると温暖地は全面遮熱ガラスである理由は理解できます。
窓の日射制御については施主の自己責任となる稟議で構わないため、温暖地は南側に断熱ガラスを選択させて欲しいと思います。
ただ、日射制御についてはアウターシェードを設置するための金具であるアイプレートが正式にオプションに入ったことから前進はしたなと思います。
2-8の「防火トリプルサッシの開発+防火地域標準化」については、防火トリプルサッシが開発されオプション費用は必要ではあるものの業界に衝撃を与えたと思います。
2-10「アウトセット納まりの室内引き戸を設定して欲しい」については、現状の一条ハウスではスリットスライダーなど一部の引き戸しか1マスで設置できません。
一条工務店の通常の引き戸は引き込み部分を入れて開口が2マス必要になってしまうことから一階の間取り作りでは耐力壁が不足してドアを採用するケースが増えてしまいます。
これまでは耐力が不足した場合はオプションで壁倍率2.5が取れるタイガーグラスロックが利用できましたが、今後については内壁に壁倍率5倍(?)のミッドプライウォールで対応するのでしょう。
トイレ用に限定かわかりませんが、折れ戸が採用できるようになったようですが、折れ戸の場合は開口の幅が狭いため使える場所が限られると思います。
内壁にミッドプライウォールが設置できない場所もあると思いますので、ぜひアウトセット納まりの引き戸(引き戸が壁の外側に出ているもの)をリリースして欲しいものです。
(2020年05月31追記)グランセゾンに標準でアウトセット納まりの引き戸があることが分かりました。i-seriesは不明です。
2-11「浴室の排気換気扇を給気換気扇へ変更」については、浴室を乾燥させる際に一般的には室内の空気を浴室換気扇から室外に排気しますが、これは冷暖房費のムダ使いです。
温熱の計算を知れば浴室乾燥機や浴室換気扇を使わずに室内の暖かい乾燥した空気を浴室に送り込むことが、省エネな浴室の乾燥方法であると理解ができると思います。
つまり、浴室の天井に設置する換気扇は室内から浴室に給気するための換気扇に変更して、もしサニタリーエリアで排気が必要なら脱衣所に排気換気扇を設置することが良いでしょう。
現状では一条ハウスがそうなっていないため、私は浴室に向けて扇風機で室内の乾燥した空気を送り込んでいます。浴室換気扇はまったく利用しておらずムダになっています。
2-14「再熱付エアコンのみを取り扱って欲しい」については、再熱エアコンのみという状況ではないですが、エアコンのラインナップに三菱の再熱エアコンであるJXVシリーズが入りました。
再熱機能のないエアコンは冬用で再熱のあるエアコンは夏用だと思った方が良いでしょう。一条ハウスではエアコンは各階に1台あれば良いのですが、これがなかなか理解されない状況です。
2-16「エアパスファンの設置を標準OP設定して欲しい」については、オプションに正式に入ったという情報もありますが、確認が取れていません。
(2020年05月31追記)エアパスファンは標準設定はされていないようです。ただ、複数の局所換気扇がオプションに追加されているためこの利用方法が不明なところです。
テレワークが進むと家の中のドアを全部開放することが難しくなるため、書斎などのエアコンのない空間を涼しくするためにエアパスファンの重要性が増すと思います。
2-17「都市部向けの壁厚の薄い商品を作って欲しい」については、グランセゾンがそれに該当するとおもいました。i-seriesは壁厚が19センチもあるため都市部では建築が難しいです。
改良要望(断熱)
断熱に関しては以下の6点の改良要望を記載しました。
- 玄関土間(立ち上がり部分が無断熱)
- ユニットバス下の基礎断熱(底盤が無断熱)
- 天井断熱(ダクト部分の切り欠き)
- 壁断熱(配線部分の切り欠き)
- 床断熱(大引き下の断熱欠損)
- 開口部の断熱性能(玄関ドアの性能)
1「玄関土間(立ち上がり部分が無断熱)」と2「ユニットバス下の基礎断熱(底盤が無断熱)」についてはまだ改良されていないと思います。
一条工務店は力業が得意であるため、家全体の性能アップには積極的ですが細かい部分の断熱欠損の対応は後回しのようです。ただ、この考えは正しいと私は思います。
玄関とユニットバス下の熱損失は家全体の熱損失からみて大した影響はないことは計算から分かりますが、私はこれに満足ができず多額の費用をかけてマル秘の施工をしています。
3と4の天井と壁ではダクトや配線によって断熱材が削られている部分があります。別にこれはこれで良くて、もう少し隙間なく充填してねという程度の話です。
5「床断熱(大引き下の断熱欠損)」についてはi-seriesについては改良されました。大引きは2×4材のままに、その下に5センチのウレタンの付加断熱が設置されました。
6「開口部の断熱性能(玄関ドアの性能)」については、プロノーバという1.2Wの玄関ドアが採用されました。これは2016年の段階で一条の開発担当が検討していると仰ってました。
一条ハウスの細かな断熱欠損については大騒ぎするような問題ではありませんが、悪条件が重なると冬季にコールドドラフトを招きます。
皆さんに知って欲しいことは、トリプルサッシといえども断熱性能は壁の3分の1程度しかありません。多くの人は大きな窓を設置したいと思いますが注意が必要だということです。
たとえば、床暖房の入らないボックス階段やシステム収納などと、断熱の弱い玄関や大きな窓がが近い距離に設置された場合は、冬季に冷気を感じるようになります。
一条工務店の営業さんは家の性能が良いのでどんな間取りにしても冬は寒くないですよと言うかも知れませんが、一条ハウスの性能を過信せずに間取りを作られることをお勧めします。
改良要望(防蟻)
世間では防蟻ってなに?という感覚だと思いますが、私は防蟻(シロアリ対策)には非常に意見を持っているため、防蟻性能の高い一条ハウスにさえも不満を感じています。
- 一条工務店への改良要望:防蟻(追加)
- 通気層のカンザイシロアリ対策
- 一条工務店への改良要望:防蟻(2016年12月現在)
- 基礎コンクリート底盤の配管(基礎立ち上がりから配管)
- 基礎コンクリート立上りの打継(止水板の設置)
- 基礎外周の化粧モルタル(減額オプション)
- 基礎断熱材の防蟻
- 基礎コンクリートのアンカーボルト
- 玄関土間と玄関ポーチの接続
- 犬走の縁切り
- 通気口の防虫網(目の細かいもの)
防蟻に関しては興味がある方が少ないと思いますので説明は割愛します。上記は私が一条工務店に施工を変更してもらった項目を含みますが高気密高断熱住宅として非常に重要なポイントです。
ホウ酸や加圧注入された木材を使ってるとかそういう初歩的な話ではなくて、防蟻は施主が外構を含めて考える部分が多く、これはハウスメーカー任せではなく施主が自分で考えてください。
通常、ハウスメーカーの補償は建物本体までであって、施主が別発注した外構によってシロアリ被害が発生した場合は責任の所在が非常に難しくなります。
よくある事象として、基礎コンクリートの打ち継ぎ部分に土を被せて花壇などを設置してしまう人が後を絶たないため私はシロアリ対策については施主は良く勉強して欲しいと思います。
特に駐車場や犬走の土間を基礎コンクリートにつなげてしまう外構が一般的ですが、基礎コンクリートにシロアリが寄ってくる可能性を低下させる「縁切り」が防蟻の基本です。
最後に
一条工務店は施主の改良要望に耳を傾けるかという件については、対応していない部分と想定以上に対応した部分に分かれましたが、一条工務店は着実に進化していると感じます。
ハウスメーカーは標準施工になっているものは愚直に施工しますが、それ以外のものについての臨機応変の対応は苦手です。
よって、私は現場の施工に無理がないような標準施工の改良を要望しているつもりであり、これは一条工務店、ひいては日本の家作りの発展を願ってのことです。
また2016年の当時からみると、Instagramで盛んにオシャレな家作りの情報を発信する一条工務店の施主の影響を受けて、一条工務店自体がオシャレに相当に力を入れたなと思いました。
一条アプリの導入によってスマホから消耗品の購入や太陽光の発電量確認、メンテナンスの依頼など画期的な進化を遂げましたが最近では一条アプリから打ち合わせ中の図面が見れるそうですね。
この三年半の間に、防火トリプルサッシ・耐水害住宅・激安な蓄電池による電力革命、無給水加湿のロスガードうるケア、二倍耐震等級住宅など、一条工務店の家の性能は相当に進化しています。
そして、窓については今後トリプルサッシ以上のものを一条工務店はリリースしてくると私は想定しています。トリプルサッシ+ハニカムシェード+気密内窓が現実的な案だと思います。
現在、改良要望に加えるとすれば、グランセゾンの登場によるパラペット屋根のFRP防水の問題だと思います。スカイプロムナードなどの金属防水の採用を期待したいところです。
一条工務店側からすれば補償および延長補償でFRPの対応はするということかも知れませんが、メンテナンスが増えれば一条工務店自体も忙しくなってしまうので得策ではないと思います。
また、多くの施主の要望としては、窓の網戸を標準化すべきという意見も多いと思いますが、私はオプションのままで良いと思っています。
風通しのためには対角の窓や各階1つの窓を開ければ良いため、全部の窓を開ける必要はなく、将来の網戸の張替えコストを考えると全部の窓への網戸設置は施主のコスト増になります。
網戸はフィルターと同じで掃除をしなければ汚れやカビ菌が溜まりますが、網戸にカビが生えたまま窓を開けて通風しているご家庭については網戸を掃除した方が良いと思いますよ。
このように施主からの要望は多種多様だと思いますが、一条ハウスは施主のニーズを吸収しながら着実に進化していると感じています。
そして、一条工務店は坪単価が上昇していますが、一般的にみると恐ろしいほど凄い設備をこの坪単価の上昇で吸収している点は評価して良いでしょう。
やはり、60年以上住むのであればコストパフォーマンス最強は一条工務店だと思います。HEAT20のG2を大きく上回る住宅性能は子供や孫の代になって大きな経済効果をもたらすことでしょう。
本日は以上でございます。