はじめに
一条工務店の床暖房が標準設置されていながら床暖房を使わずにエアコンで全館暖房をしている我が家。超断熱の一条ハウスには床暖房は無くても快適だということを実証しています。
せっかくの装備を利用しないなんて勿体ないと考えると思いますが、私は床暖房が必要か不要かといった論点で住宅依頼先を判断することに一石を投じているわけです。
一条ハウスは断熱等の基本性能が高いためそれだけで坪単価に見合った内容なのですが、それが中々理解されずに高性能な設備が満載だから坪単価が高いと思われている事が残念でなりません。
私は二軒目の家において設計事務所+地場工務店での家作りをしていますから、圧倒的なQ値とトリプルサッシ等を標準採用している一条ハウスのコストパフォーマンスには納得しています。
そして世間で言われる床暖房のメリットデメリット論については、ちょっと違うかなーと思っていますので、本日は床暖房の本当のメリットについて書きたいと思います。
床暖房であるから室内が乾燥する訳ではない
どのような暖房方式であっても空気を温めれば膨張して相対湿度が下がります。この現象をもって床暖房やエアコン暖房は乾燥すると世間では誤って認識されています。
一方、ガスや石油ストーブを利用した場合に室内が乾燥しない理由は室内でガスや灯油を燃やせば大量に水蒸気が発生するからで、大量の水蒸気の発生は窓の結露に直結します。
以下はプロパンガスが燃焼した際の化学式ですが、プロパンガス1に対して室内では5の酸素が消費され、二酸化炭素3と水蒸気4が生まれる計算になります。
C3H8(プロパンガス1)+5O2(酸素5)=3CO2(二酸化炭素3)+4H2O(水蒸気4)
比重の問題があるので重さに換算するとプロパンガス1リットルに対して水が1.6リットル発生することになります。灯油を室内で燃やした場合も似たような結果になります。
つまり、室内でガスや石油ストーブを利用すると、室内の酸素を大量に消費して、二酸化炭素と水蒸気が大量に発生することになるのです。
これが石油ストーブを利用すると加湿がされると言われるゆえんですが、高気密住宅では使用後に窓をあけた換気が必要になってしまうため、ガスや石油ストーブの利用は推奨されないのです。
また、最近の住宅は柱の外側に合板や透湿防水シートが設置されているため、中気密と言われる程度の気密性能であっても、室内で暖房を使えば相対湿度が下がって乾燥します。
安易に加湿しない
室内の乾燥を避けたい場合であっても安易に加湿すると窓が結露してカビが発生しやすくなりますす。空気は温めると膨張して乾燥しますから、逆に言えば冷やせば室内は潤うのです。
室温(℃) | 相対湿度(%) | 絶対湿度(g/m3) |
22 | 40 | 7.8 |
18 | 51 | 7.8 |
上記の2パターンは絶対湿度は同じであることから、手っ取り早い乾燥対策は室温を少し下げて寒さ予防に服を少し着込むことです。絶対湿度計については以下を購入されると良いでしょう。
ちなみに、さらぽか空調やダイキンのうるるとさららのような屋外の空気から水分を集めて室内を加湿するデシカント方式は非常に電気代がかかりますので覚悟が必要です。
よって、一般的には窓の結露をしないように室内の絶対湿度に注意しながら、洗濯物を部屋干ししたり、必要最低限の加湿をすることをお勧めします。
計画換気0.5回/hについては夏場の揮発性化学物質への対策であることから、冬季に屋外の乾燥した空気を取り込みたくない場合は換気量を減らしても良いはずですが自己責任でお願いします。
室内が乾燥するとインフルエンザが蔓延するという定説がありますが、もしそれが本当であるなら一条工務店の施主はバタバタとインフルエンザに倒れているはずです。
しかし、実際は明白にそうなっていないことから、インフルエンザと湿度の相関関係の定説は高気密高断熱住宅の普及にしたがって、修正がなされる時代がくると思います。
床暖房は施工面積が増えない
上記画像は一条ハウスでありながら床上エアコンを設置している我が家ですが、エアコン設置のために1マス分が必要になっています(ただし、エアコン上部は棚として使っています)。
快適な暖房環境を整えるには単純に壁の上にエアコンを設置するような一般的な暖房方式ではエアコンからの温風が人の顔に直撃して不愉快な暖房方式になる可能性が高まります。
前置きが長くなりましたが、床暖房最大のメリットは暖房器具を設置するために間取りの考慮や床面積の増加が必要ないということですから、以下の表の様に設置面積まで含めて検討すべきです。
暖房方式 | 快適性 | 設置スペース費用 | 機器費用 | 合計費用 |
温水式床暖房 | ◎ | なし(床) | 30坪で60万円 | 60万円 |
床上エアコン | ○ | 33万円(1マス) | 15万円/1台 | 48万円 |
床下エアコン | ○ | 33万円(1マス) | 15万円/1台 | 48万円 |
全館空調システム | ◎ | ?(小屋裏・床下) | 200万円 | 200万円 |
各部屋エアコン | × | なし(壁上) | 60万円/4部屋 | 60万円 |
パネルヒーター | ○ | ?(各窓の下) | 100万円 | 100万円以上 |
蓄熱暖房機 | △ | ?(複数台) | 200万円 | 200万円以上 |
暖房用のエアコンとしては一般的な壁上へのエアコン設置でも構いませんが、人にエアコンの温風が当たらないように間取りを作ると、床面積が増えてしまうと思います。
つまり、一条の床暖房は更新費用を含めてエアコンを各部屋に設置した場合とコスト的な差はなく、一般的な壁上設置のエアコンの様にエアコンの風が人に当たることのない快適な装備です。
もちろん床暖房の設備の更新費用はかかりますが、床暖房の温水パイプは50年以上持つと言われているため、床暖房の維持費はエアコンと同じ程度の維持費になると思います。
一条の床暖房の設置コストは坪単価にある程度は含まれているという考え方もできますが、24時間全館暖房を行うには温暖地においてQ値が1.6W以下(ZEH程度)の住宅性能が必要です。
仮に地場工務店や設計事務所でQ値が1.6W以下の住宅を建築した場合、建築費用が増加するため、一条工務店の坪単価に床暖房の設置コストが含まれているとは一概に言えません。
ましてや、i-seriesのカタログのQ値は0.51Wと圧倒的であるため、地場工務店が床暖房抜きでも一条工務店と同じコストでは建築できないと言われています。
床暖房は燃費が悪い?
床面積が100m2の住宅において、冬季の平均外気温5℃の場合、室内が20℃にするには以下のような月の電気代(電力単価27円/kWh)になります。
Q値 | 機器 | COP | 消費電力(kWh) | 電気代(円/月) |
1.0W (i-series) |
温水式床暖房 | 4.2 | 257 | 6,939円 |
高性能エアコン | 6.0 | 180 | 4,860円 | |
3.0W (一般住宅) |
温水式床暖房 | 4.2 | 771 | 20,817円 |
高性能エアコン | 6.0 | 540 | 14,580円 |
上記をみても、大手ハウスメーカーに多い断熱等性能等級4(カタログQ値2.7W、実質3.0W程度)程度の性能では、24時間全館暖房をするには性能不足であることが分かります。
もちろん、気密性能が悪い場合はさらに電気代が増えますから、C値が1.0以下の住宅を建てることが全館暖房を行うには必須となります。
ただ、一条施主は建物の性能が良いことを理由に室温を22℃~24℃程度まで上げている人が多いと思いますから、一条施主の電気代は上記よりは高いでしょう。
私が床暖房ではなくエアコン暖房をしている理由は上記のように電気代に差があることを知っているからです。そして、コールドドラフトを意識したエアコンの配置をしています。
床暖房の快適さは私も知っていますが、エアコン暖房でも設置場所さえよければ床暖房に近しい快適性が得られますが、エアコン設置スペースの床面積増加が必要な場合は建築費用が増えます。
私の場合は昔から高気密高断熱住宅を見てきたので、カナダから来たR2000住宅に設置されていた床上エアコンやそれに続く床下エアコンの方に床暖房より親しみが湧きます。
まぁ、一条施主=床暖房と決めつけられるのが嫌だという気持ちも若干あり、高気密高断熱住宅の全館暖房の歴史を知ったうえで暖房方式の議論がなされるべきだと思います。
最後に
一条施主でありながら床暖房を使っていない私は床暖房の有無で住宅依頼先を決める事は良くないと考えています。家は耐震性と気密性能を含めた耐久性が重要だと思っています。
全館暖房を行うには断熱性能が最低ZEH程度はないと電気代がかかってしまいますから、坪単価の高騰している一条ハウスをもって安いと取るか高いと取るか意見が分かれるでしょう。
全館暖房を求めないのであれば一条工務店を検討しない方が良いと思いますが、これから新築で家を建てるに当たって全館冷暖房を装備しないということは勿体ないと思います。
コストパフォーマンスの考え方は人それぞれですが、いまはオシャレでも性能が低く全館冷暖房ができない家は家族の中で世代が変わる30年後には子供によって建て替えられてしまうと思います。
もし自分であれば30年も前に親が建てた古くて冬に寒くて夏に暑い家があった場合、それは引き継がずに、家を売り払うか解体して新しい家を建てます。
一条ハウスは床暖房やロスガードの維持費がかかるといっても、家の建て替え費用に比べたら非常に安いものですから、何をもってコストパフォーマンスを捉えるべきか悩ましいところです。
本日は以上でございます。