省エネ基準とフラット35の関係

考察

はじめに

今回は歴代の省エネ基準、固定金利の公的住宅ローンであるフラット35でお馴染みの住宅金融支援機構、そして大手ハウスメーカーが果たして来た役割についてです。

住宅の断熱性能は1970年代のオイルショック後に少しずつ少しずつ強化されてきたもので、省エネ基準や高気密高断熱住宅はここ数年で突然出てきたものではありません。

いま家を建てる人は昔の家の性能は酷かったと錯覚してしまうと思いますが住宅の高性能化は連綿と続いているものですし、40年以上前に建てた私の実家も解体の際には断熱材が確認できました。

厳しく言えば住宅の温熱環境は昔の家も酷かったし今の家も酷いとも言えるので五十歩百歩な感じがします。ただ、それでも日本の家は着実にゆっくりですが前進しています。

建築基準法が住宅の断熱を義務化していない中、戦後の日本の家作りにおいて住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)が住宅の高性能化を支えて来たことは間違いない事実だと思います。

省エネ基準は昔からある

(出典:JFEロックファイバー

オイルショックの後に制定された省エネ基準は現在で四代目になります。現状の建築基準法では断熱の義務はありませんが、昔の家は全部無断熱というのはちょっと違うと思います。

制定年 呼称 断熱等級 Q値 UA値
1980 旧省エネ基準 2 5.2
1992 新省エネ基準 3 4.2
1999 次世代省エネ基準 4 2.7
2008 (長期優良住宅)
2013 平成25年基準 4 2.7 0.87
2015 (ZEH) 0.60

(参考:ホームズ君

現在の省エネ基準は平成25年基準とも28年基準とも言われますが、1999年に制定された次世代省エネ基準と基準値は全く同じです。

むしろ、Q値からUA値に変わり換気や家の形状による熱損失が考慮されなくなり、ここまで計算を簡略化したにも関わらず省エネ基準の義務化ができない住宅業界に問題を感じます。

また、現在は省エネ等級4が最高等級となりますがかなり性能が低い基準であるため、今後恐らくZEHレベルの断熱性能が等級5として設定されると思います。

ただ、ZEHは微妙な基準で断熱材の厚みが天井・壁・床でバラバラなので工事が面倒だと思います。一方でHEAT20は同じ断熱材の厚み(天井は倍)を想定しているため工事が楽だと思います。

そして、断熱材などは大昔からあるもので日本のグラスウールの工業化は戦前の1937年頃となっており、高性能なネオマフォームですら1999年の発売と20年以上前の話です。

「最近流行りの高気密高断熱住宅」と感じる人もいると思いますがここまでくるのにどれだけの先人が苦労してきたかと思うと我々は幸せだなと思います。

フラット35の果たした役割

フラット35を借りる際には技術基準を満たす必要があります。つまり、戦後の高金利時代の中では比較的低金利で固定金利であったフラット35は良質な住宅を普及する役目を担っていたのです。

私が2000年に最初に家を建てた際は公庫(当時の住宅金融公庫、現在の住宅金融支援機構)と変動金利と併用して借りましたが、公庫仕様は地場の工務店ではオプションでした。

今となってはどの住宅会社で建ててもフラット35を借りるために追加費用を払うことはないと思いますし、大半の建売住宅でもフラット35若しくは上位のフラット35Sを借りられると思います。

以下は私が二軒目の家を建てた2010年のフラット35の住宅工事仕様書です。赤い本は木造の軸組工法用、青い本は鉄筋コンクリート造・鉄骨造の本です。当時に両方買って読みました。

以下のようにフラット35を借りるには耐震性・劣化対策・断熱などの各項目をクリアする必要があり、仕様書には施工方法や性能基準値、熱貫流率などの物性情報が記載されています。

住宅工事仕様書を見るとフラット35を借りるには最低「旧省エネ基準」に適合している必要があると記載されています。フラット35はこれ以外にも建物の耐久性など技術要件を求めています。

以下は木造住宅の工事仕様書における省エネ性能の項目ですが、表の一番右側に等級2(旧省エネ基準)が融資要件であると記載があります。

以下は鉄筋コンクリート・鉄骨造の工事仕様書です。省エネ性能の項目は基本的に木造と同じですから木造住宅以外は無断熱でも良いといった誤解はちょっと違うかなと思います。

さらに金利の安いフラット35Sを借りるには省エネ性や耐震性などの項目のうち1つを選択して通常仕様より高い基準を満たす必要があります。

ゼロ金利の時代ですから省エネ基準を義務化せずともフラット35に新たに商品を追加してG2以上でC値1.0以下の住宅は超低金利という融資条件とすれば省エネ問題は解決するかもしれません

高性能住宅を超低金利にすれば消費者には家作りの選択の自由がありながらも、多くの人が高性能住宅に誘導され、ある種の公共事業として民間経済が拡大してGDPを押し上げるはずです。

商品のネーミングはアイデア発案者の私をもじってフラット35Fでお願いします(笑)

以下は参考までに過去の住宅仕様書です。戦後まもなく発足した住宅金融公庫は建築基準法の基準の低さを補う形で重要な役割を果たしてきたと思います。

過去の住宅工事仕様書 | 一般財団法人 住宅金融普及協会
住宅金融普及協会が平成22年度までに発行した木造住宅工事仕様書、枠組壁工法住宅工事仕様書及び鉄筋コンクリート造等住宅工事仕様書を次のとおり公開しています。

現在の注文住宅は長期優良住宅に建物が標準で適合しているかを消費者は住宅の品質を図る目安にしていると思いますから現状のフラット35の技術基準は建売住宅のためにあると言えます。

笑い話で、2000年に私が公庫を借りる際に住宅会社の人に「そこまで必要ないのでは?」と言われましたが、2010年に長期優良住宅の認定を取ろうしたときにも同じことを言われました。

こうやって日本の家はお決まりのギャグ(セールストーク)と共に高性能化してきました。

大手ハウスメーカーはフラット35がお得

大手ハウスメーカーは当然ですがフラット35の仕様に標準対応していると思います。そしてフラット35を安い金利と融資手数料で借りることができように専用のローン子会社等を持っています。

以下は参考までに主なハウスメーカーのローン子会社をご紹介します。低額な金利や融資手数料は実質の値引きとなりますが経営体力のある企業は早くからローン子会社を持っているようです。

ハウスメーカー ローン会社 設立年
積水ハウス
大和ハウス工業
住友林業
積水化学工業
日本住宅ローン 2003年
ミサワホーム ホームファーストファイナンス 2014年
旭化成ホームズ 旭化成ホームズフィナンシャル 2004年
三井ホーム 三井ホームリンケージ 1987年
一条工務店 一条住宅ローン 2014年

大手ハウスメーカーで家を建てると展示場でローンの申し込みと決済ができる点が楽です。また、融資手数料の割引キャンペーンなどもありますからネットローン最安より安いと思います。

そして、大手ハウスメーカーは公庫やフラット35の基準を過去から標準で満たしているはずであり、大手ハウスメーカーの家が相当な過去においても無断熱だなんてことはあり得ないでしょう。

大手ハウスメーカーは高耐震の家であると共に、常に標準で歴代の省エネ基準に対応したフラット35の借り入れのできる家作りをして住宅性能の底上げをしてきたことは間違いないでしょう。

ただ、大手ハウスメーカーは当初は高耐震で優良な住宅を低価格で生産するために工業化したはずですが、現在では高価格帯となり庶民の手が出しずらくなってしまっています。

企業ですから成長していく過程で高付加価値を求めるのは当然ですが、誰かが高性能で安い家を提供していって欲しいですね。

最後に

住宅ローンを借りる際に変動金利か固定金利の返済額のみで判断される方が多いと思いますが、フラット35の技術基準を建物が満たしているか確認されると良いでしょう。

特に中小工務店で家を建てる際にはフラット35を借りるか長期優良住宅の認定を取らないと壁内結露の元となる透湿抵抗比が無視された施工になってしまう可能性があります。

典型的な例として人気の断熱材である現場発泡ウレタンのA種3は少し寒冷な地域では防湿層を設置せずに結露計算をすると結露判定がでます。このことはフラット35が昔から指摘しています。

高性能な現場発泡ウレタンA種1Hを使えばかなりの寒冷地でない限り防湿層がなくても結露しないことが結露計算から分かりますが、これはグラスウールを採用するプロが言わない事実です。

UA値などの断熱性能のみで建物の性能を判断しないためにも、フラット35を借りるか長期優良住宅の認定を取って、高耐久な家作りを併せて実施されることをお勧めします。

また家作りで余力のある人はフラット35の工事仕様書を一読されると良いでしょう。ネットの噂話の大半はポジショントークを起源としたポエムですから専門書を読むと真実が分かります。

ある程度の規模のハウスメーカーや地場の高性能な工務店においては長期優良住宅は余裕でクリアしていると思いますがローコスト住宅の中にはまだ標準でクリアできない会社もあるでしょう。

フラット35や長期優良住宅の技術基準を当たり前に満たしている住宅会社からみると今回の記事は非常にレベルの低い話だと思いますが、現状ではまだまだ色々な住宅会社があると思います。

 

本日は以上でございます。

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