防湿シートは時限爆弾?

考察
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はじめに

本日は夏型逆転結露というマニアックな話題です。文章の中に防湿シート(結露防止のために室内側に設置するビニールシート)や透湿抵抗(水蒸気の通しにくさ)という言葉が出てきます。

今回の記事の内容には日本の住宅の大半で使われている袋入りグラスウールが含まれることから、多くの住宅会社や施主が考えるべきことであると言えます。

さて、建物内部の結露は冬に合板の内側で起きると言われますが、夏には防湿シートで水蒸気がせき止められた場合に逆転結露と呼ばれる現象が起きる可能性があります。

Youtubeの松尾設計室で壁内の結露計算の動画が放映されたことで、私の提供する結露計算シートのダウンロードが大きく増えましたため、本日は結露計算について述べたいと思います。

計算ツール
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最初に申し上げておきますが、私は3地域以南で防湿シートを設置することは好ましいと思っておらず、防湿シートなしで冬季の結露と夏季の逆転結露の両方を防止すべきだと考えています。

その理由は透湿抵抗の高い防湿シートを設置した場合、温暖化が進むと夏型逆転結露の可能性が増すことと、そもそも温暖地では防湿シートを正しく施工できる大工さんは少ないと思うからです。

そういった理由から温暖地では防湿層が必要なグラスウールの採用は慎重な検討が必要ですし、さらに言えば人気の現場発泡ウレタンを採用した断熱も透湿抵抗に問題があると思っています。

ドイツでは色々な透湿抵抗の防湿シートを使い分けているようですが、日本では多くの実務者がJIS A6930適合品の防湿シートを使えば良いと思い込んでいるのではないでしょうか。

JIS A6930の防湿シートには温暖地用のA種と寒冷地用のB種があり、これを区別して使っている住宅会社はないと思いますし、防湿フィルムは透湿抵抗が高い程よいと誤解されている気がします。

また、ビニールクロスは気密コンセントボックスの設置などされておらず、そもそも結露計算には参入しませんが実質的な防湿層と考えた場合、夏型逆転結露にとってはさらに懸念が増します。

施工の観点からみると、防湿シートは薄いと破けやすくなってしまうため、厚みのある方が良いと一般的に言われますが、厚みが増せば透湿抵抗が高くなる製品もあります。

透湿抵抗は低すぎてもいけないし、高すぎてもいけない。それが計算できないのであれば、タイベックスマートなどの可変透湿シートを採用した方が良いでしょう。

なお、JISによるシートとフィルムの区別は厚さの違いにあり、プラスチック製品の場合、0.2mm未満はフィルムでそれ以上はシートと呼びますが、今回はシートで統一して記載します。

防湿シートの種類

品確法における断熱等性能等級4に準拠する、住宅性能表示制度・長期優良住宅・フラット35を利用した建物を建築する場合は、建物の構造内部に結露防止の対策をする必要があります。

https://www.flat35.com/files/300200679.pdf#page=4

グラスウールなどの繊維系断熱材および現場発泡断熱材の一部については防湿層を設けるように指示がありますが、透湿抵抗比をクリアすれば防湿層は省略が可能と書かれています。

そして、防湿層にJIS A6930適合品の透湿抵抗の高い防湿シートを使えとは書かれていませんが、通気層を省略するにはJIS A6930適合品の防湿シートを利用すれば良いと書いてあります。

建物の構造内部で室内から発生する水蒸気によって結露をしないかということは透湿抵抗比を屋根・壁・床で計算する必要がありますが、この計算をしていない住宅会社が多いと思います。

透湿抵抗比を満たせない場合は防湿シートを利用することが定められていますが、問題なのは透湿抵抗比を計算せずにとりあえず防湿シートを設置してしまう会社が後を絶たないことでしょう。

透湿抵抗比が高すぎると夏に逆転結露が起きると計算されます。温暖地では夏型逆転結露の心配はほぼないと言われてきましたが、温暖化がさらに進めば話は変わります。

防湿シートにはA種とB種があります。厚みがある方が湿気に強いと宣伝されて、厚みがあって透湿抵抗が高いB種が温暖地でも採用されているケースがあるのではないかと思います。

JIS A6930 透湿抵抗(m2・hmmHg/g) 備考
A種 170 温暖地用
B種 300 寒冷地用

温暖地で防湿シートを採用すれば、A種でも温暖化が進めば逆転結露の懸念があるのに、分厚くて施工のしやすい透湿抵抗の高いB種を採用すれば若干ですがさらに逆転結露の懸念が増えます。

一般的に利用されている袋入りグラスウールの表面にはA種の防湿シートが設置されていますから、今回の話は袋入りグラスウールを利用している大半の住宅についても同様です。

以下の結露計算では室内26℃・60%で室外38℃・60%の状況において、105ミリのグラスウールを充填断熱で利用すると透湿抵抗比が15.8と高いため防湿シートの外側で逆転結露が起きます。

これまでは最高気温は35℃程度と想定されて夏型逆転結露は発生しても一時的にすぎないと思われてきましたが、未来には温暖化がさらに進み40℃を超える外気温が想定されています。

気温が高いほどに大気が抱えることができる水蒸気量が増えるため、このように絶対湿度が高い状態が24時間絶え間なく続く環境では屋根や壁の中が一旦結露したら容易に乾かないと想定します。

温暖化を止めなければ建物が結露で腐るという将来が来る可能性があります。そう考えると平成11年省エネ基準で掲げた気密性能を含めた省エネの義務化は見送るべきではなかったと思います。

現状においても温暖地の一部の地域では夏季に38℃という外気温に到達しているため、今後は可変調湿機能のない透湿抵抗の高い防湿シートの設置は慎重に検討した方が良いと私は考えます。

さらに、柱の外に合板を設置せずに室内側に防湿シートを施工していると、外気温が35℃・65%で結露しますから、筋交い工法やきずりの場合はさらに内部結露に対して厳しい状況です。

窓をあけて室内外の水蒸気量を同じにしてしまえば壁内結露は発生しませんが、外気温が35℃の状態では暑くて窓を開けておくこともできません。

これが私の予測する防湿シートの時限爆弾問題です。恐らく誰も指摘していないのではないかと思いますが、ここまで夏の猛暑日が増えるとこれまでの考えを変える必要があるかも知れません。

防湿シートを設置すべきかどうかということは問題の本質ではなく、温暖化が進む未来において、透湿抵抗比は地域によってどの程度が適切かということを計算すべきだと思います。

私の提供する結露計算シートの右上には透湿抵抗比が表示されますので、興味がある人はどの程度の透湿抵抗比だと各地域で未来においても冬と夏の両方で結露しないのか計算してみて下さい。

世間では温暖地においても防湿シートは設置すべきという議論が多いと思いますが、それは木造住宅も外張り断熱でなければならないというような過去にあった誤解と同じなのかも知れません。

私がグラスウールを選ばない理由

グラスウールはしっかり施工すればコストパフォーマンスの良い断熱材であると言われますが、温暖地でグラスウールをしっかり施工できる住宅会社を探す方が難しいのではないでしょうか。

グラスウールを正しく施工できない住宅会社が多いことから施主との間で施工精度についてトラブルになるケースがあり、施主の想いと施工する側の認識がずれている場合があります。

冬に暖かい家を求めてる人は、温暖地では全棟気密測定をしないグラスウールを採用している住宅会社についてはトラブル回避のために選択しない方が良いのかも知れません。

新住協に加盟している会社だからといってすべての住宅会社がグラスウールの断熱を熟知しているわけではないと思いますし、結露計算や透湿抵抗比の計算ができる住宅会社は少ないでしょう。

もし、グラスウールをしっかり扱える住宅会社を探せても建築費が高額であったり、年間15棟前後の受注しかできないようであれば入居時期が遅くなるため施主は途方に暮れることでしょう。

そして、防湿シートの設置は温暖化が進むほどに夏型逆転結露を引き起こす可能性があるため、グラスウールなどの繊維系断熱材はタイベックスマート等の可変調湿シートが必要になってきます。

そうなると現状ではコスパを考えて外張り断熱を対象外とすれば、施工精度を含めて考えると現実的に選択すべき断熱材は現場発泡ウレタンだと思いますが現場発泡ウレタンにも問題があります。

現場発泡ウレタンの問題点

ローコスト系住宅では簡単に気密が取れるため現場発泡ウレタンが良く利用されています。施工手間まで考えるとグラスウール断熱材とコスト的には変わらないと言われています。

ただ、現場発泡ウレタンには、水蒸気を通しやすいA種3と水蒸気を通しにくいA種1Hがあります。

JIS A9526 特徴 備考
A種3 断熱性能は平均的・水蒸気は通しやすい 価格が安い
A種1H 断熱性能は高い・水蒸気は丁度良く通る 価格が高い

A種3はお馴染みのフォームライトSLやアクアフォームであり、A種1HはフォームライトSL-50αやアクアフォームNEOなどの上位製品です。

A種3はグラスウール断熱材ほどではないものの水蒸気を通しやすいため、省エネ基準に準拠した各種の申請をする場合は、透湿抵抗比の計算か結露計算をする必要があります。

A種3の問題点は温暖地においては冬季に外気温がマイナスになる地域では防湿シートを設置しないと壁内結露の恐れがある反面、防湿シートを設置すれば猛暑日に逆転結露を起こすことです。

また、現場発泡ウレタンを採用する多くの住宅会社はローコスト系住宅が多いため、防湿シートの設置という施工手間はローコスト系住宅の工法としてはコスト高に繋がると思います。

この問題の解決には値段は上昇しますが現場発泡ウレタンにA種1Hを採用する方法があり、A種1Hは透湿抵抗が高く防湿シートの設置が不要かつ透湿抵抗が高すぎないため逆転結露が起きません。

私の過去記事では現場発泡ウレタンのA種1Hの採用について計算をしています。

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最適な透湿抵抗比は?

壁の透湿抵抗比は以下のように規定されています。透湿抵抗比とは簡単にいうと柱の外側に設置される合板を境として内側と外側の水蒸気の通しやすさの比率ことです。

温暖地の壁の透湿抵抗比は2となりますが、この比率が高くなると冬季の壁内結露に強い反面、夏季の逆転結露を起こしやすくなります。

一般的な防湿シート+グラスウール断熱材+合板の組み合わせでは透湿抵抗比は9程度と高く、温暖地では5前後が冬季も夏季も壁内結露を起こさない透湿抵抗比のようです。

以下のように、防湿シートなし+A種1H+ダイライトの構成では冬季に外気が▲7.5℃・70%の状態でも壁内結露はしません。つまり、最寒冷地以外では防湿シートが不要な構成ということです。

この構成では透湿抵抗比は5.6であり、夏季にも逆転結露がまったく起きないことから、冬季に外気温がマイナス20℃等になる最寒冷地を除いて望ましい透湿抵抗比だと私は考えます。

ただし、A種1Hの現場発泡ウレタンを用いても可変調湿シートを用いても夏季は室外から水蒸気が侵入しやすくなることから、室内の全館除湿については考慮が必要だと思います。

最後に

本日は世間を不安にさせるつもりで記事を書いている訳ではありませんが、もしこのまま地球温暖化が進めば家作りの発想を変えなくていけないかも知れないという警鐘だと思って下さい。

温暖化防止のために平成11年の省エネ基準の当初には緩いながらも気密を含めた家の性能の向上を模索しましたが結局は義務化を断念しています。このツケは未来の国民が払うのかも知れません。

そして、温暖地ではコスパに優れ施工の簡単な現場発泡ウレタンA種H+ダイライトなどの透湿抵抗比の低い面材という工法が浸透していった方が良いと思いますが世間の認知は低いと思います。

また、透湿抵抗については各地域において昨今の猛暑日の連発を考慮した上で、冬型と夏型の結露に対してどの程度の透湿抵抗比が最適であるかと述べている住宅情報は見た事がありません。

グラスウールは正しく施工すればコスパ最強の断熱材だと言っても、温暖地で正しく施工できる大工さんを探す方が難しいため初めて家を建てる人は断熱材を慎重に検討した方が良いでしょう。

ただ、現場発泡ウレタンは好き嫌いが分かれます。柱などにウレタンがくっ付いてしまうため、将来に家を解体した際に木材がリサイクルできないということを良しと思わない人もいます。

しかし、リサイクルの懸念を理由に現場発泡ウレタンを否定した場合、結局は施工の難しいグラスウールの利用しつづけることになり、住宅の高気密高断熱住宅化が遅れることになるでしょう。

将来は現場発泡ウレタンを木材から剥離する薬品処理技術などが生まれる可能性もあるため、初めて家を建てる人には防湿シートなし+A種1Hの現場発泡ウレタン+透湿系面材をお勧めします。

私がなぜ防湿シートの施工を嫌がるかというと、国民の健康のために高気密高断熱住宅を普及させると考えれば、大工さんに断熱気密を任せていること自体が間違いではないかと思うからです。

正直に言えば、温暖地の住宅会社や大工さんに気密や防湿なんて言っても浸透するまでに何十年もかかると思いますから気密と防湿は現場発泡ウレタンの施工業者に任せた方が良いと思います。

高気密高断熱住宅の普及において、大工さんの断熱気密の知識を向上しようとしていると私は感じますが、大工さんは木工事のプロであって断熱気密のプロではありません。

人口の多い温暖地では建築の各工程は分業制になっているため大工さんに断熱気密の工事を期待すること自体に無理があり、木工事と断熱気密工事は切り離さないとお互いに不幸だと思います。

気密については屋根断熱(現場発泡ウレタン)、壁は柱の外側に設置する面材、基礎断熱が簡単だと思いますが、基礎断熱はシロアリリスクが床断熱よりも高くなるという懸念があります。

ただ、私は基礎気密床断熱工法という混合したものができないかと妄想していて、壁のボード気密工法と似た発想で、床については気密防湿層と断熱層を分離して考えても良いと思っています。

これは素人考えではありますが、気密は基礎断熱で取るが断熱は床という方式です。無論、床下の換気は必要ですし、排気口の前にエアコンの室外機を設置して熱回収したいところです。

私の二軒目に建てた家の工務店さんの標準工法が三種換気+基礎断熱で床ガラリから床下に給気して基礎部分からファンで排気をする方式で床下を温めていたため、この発想が思い浮かびました。

さて、冬に暖かい家を見分ける方法は簡単でUA値を見て判断するよりも、基礎断熱+現場発泡ウレタンを採用している住宅会社の家を選んだ方が確実に冬は暖かいと思います。

今後、記事にしますがグラスウール+床断熱+在来工法+気密測定をしない家は設計上のUA値が良くても気流止めが不十分で、断熱材が性能を発揮できずに寒い家になる可能性があります。

なお、一条ハウスは防湿シートを設置せずに発泡系板状断熱材を採用していることから透湿抵抗比が高すぎず丁度良いため、どんなに温暖化しても夏型逆転結露は起きないと計算されます。

 

本日は以上でございます。

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