G1三種換気住宅の全館冷房の実例について

考察

はじめに

エアコン1台による全館冷房は一条工務店とかスーパー工務店のように断熱気密を前面に売り出している住宅会社しかできないと考える人はいると思いますが、そうではありません。

既に温暖地における高気密高断熱住宅の黎明期である2000年頃から現在のZEHの断熱性能ぐらいのソーラーサーキットの家の施主たちがエアコン1台での全館冷房に取り組んでいました。

確かに、暑い盛夏になれば断熱気密性能の違いによって電気代は変わってきますが、超高断熱でなければ全館冷房ができない訳ではありません。熱中症予防としても検討されると良いでしょう。

また、全熱交換換気扇を利用すると除湿に有利ですが、熱交換のない三種換気だから相対湿度が60%以下にならないというわけではなく、エアコンの特性を理解して運転すれば可能です。

先日はミサワ施主の全館冷房の状況をご紹介しました。私は現在は一条工務店の施主ですが、空調に国境はないと思いますから自己責任となりますがどの住宅会社の施主のご相談でも歓迎します。

ミサワホーム施主の全館冷房の実例について
はじめに 私が提唱する家中の除湿を目的としたエアコンを利用した全館冷房については一条工務店の施主や高気密高断熱住宅を得意とする地場工務店の施主の取り組みが多いと思います。 今回、大手ハウスメーカーのミサワホーム施主であるシモダエミリ...

さて、本日は東海地方のパワービルダーで建てたG1相当の性能で延床43坪という大きな家の全館冷房の実例についてご紹介いたします。38℃を超える連日の猛暑日の中での実例です。

施主のえいたさんにはご了解いただきありがとうございます。えいたさんはエスプレッソマシンをお持ちでラテアートをされる素敵な方です。家もカフェ風のすごくお洒落なお家だと思います。

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住宅概要

クラシスホームという東海地方のデザインに優れた規模の大きな住宅会社です。建物の価格は抑えつつも建物の構造をみるとコストの中でよく考えているなと感じる良い住宅会社だと思います。

クラシスホーム | 愛知・名古屋をはじめとする東海4県の注文住宅ビルダー
クラシスホーム(CLASIS HOME)は、東海4県で施工棟数No.1を誇る注文住宅ビルダーです。ハウスメーカー、工務店、設計事務、それぞれの良さを取り入れた性能・コスト・デザインの総合力で、他の会社には真似できない家づくりをしています。愛知県内9ヶ所(名古屋市緑区、長久手市、春日井市、豊田市、津島市、岡崎市、半田市、...

標準性能がZEHレベルでオプションで現場発泡ウレタンの高気密仕様があり、加圧注入材の利用、耐震等級3(許容応力度計算をしているか不明ですが施工事例には基礎梁がある)でした。

吹き抜け含めて43坪(約142m2)
6地域:東海地方
天井断熱材 : ロックウール 155mm(0.038W)
壁断熱材 : ロックウール 90mm(0.038W)
床断熱材 : ネオマジュピー 45mm(0.020W)
窓 : リクシル サーモスL(2.33W)
C値不明:1.2~1.5(住宅会社のホームページのサンプリング情報)
Q値1.87W、UA値0.57W(ZEH仕様から窓を少し絞ったG1相当の性能)
エアコン:14畳用(吹き抜け二階に設置)

※カッコ内の数値等は私が追記をさせて頂いてます。

猛暑日における施主からの情報

2020年の夏の情報ですが、ポイントは「設定は22℃風量3/5でつけっぱなし。」という部分でしょう。さすがに省エネ運転の風量最弱では消費電力が少なすぎて猛暑日には厳しいでしょうね。

私は猛暑日など室内が暑い日には扇風機か補助冷房をご利用くださいと申し上げていますが、メインエアコンの風量を上げる方法もあります(混乱するのであまり申し上げていません)。

家が43坪と大きいため猛暑日の消費電力は18kW/日ということで27円/kW計算なら月に14,580円となりますが、ずっと猛暑日ではありませんから許容できるコストではないでしょうか。

【全館冷房】

この1週間、最高気温が38℃越えの毎日でしたが2階エアコン1台での全館冷房に成功しました!😄
吹抜けのおかげもあり1,2階の温度差も殆どありません。

エアコンは14帖用のもので吹抜け含めて85帖(43坪)を冷房してます。
設定は22℃風量3/5でつけっぱなし。
断熱性能はHEAT20のG1グレード。

消費電力は最高気温39℃の日で平均750Wぐらい。
1日に18kWhぐらいエアコンで使用してしまいますね。
やはり高気密高断熱住宅の倍ぐらいの電力は使ってしまいますね😅

pic1は今日の21時頃の温湿度。
お風呂や料理の後で1日で一番室温が高くなる時間です!
pic2,3は一番暑かったこの1週間のリビングの温湿度。
pic4,5は1ヶ月間のリビングの温湿度。

 

猛暑日における室内の温湿度の状況です。

 

一週間の室温変化です。

 

一週間の湿度変化です。お風呂や料理の際は湿度が上昇しますがそれでもMAX60%です。

冷房負荷を計算してみました

アメダスの計測で2020年における最高気温38.2℃を観測した名古屋の8月16日の温湿度を基準に計算をしました。

以下の画像の夏季条件の中の青色のセルに瞬間的に必要なエアコンの能力は7.2kWと計算されています。その下のピンクのセルは8.6kWと計算されていますがこれは安全率を加味した容量です。

14畳用エアコンの最大能力は4.5kW程度ですから、7.2kWの必要能力に対してCOPが相当に伸びていると想定され冷房の性能は場合によってはカタログの倍ぐらいでることが分かっています。

ただ、設計時には安全率を加味してCOPを10とかでは計算できないため、二階のメインエアコンの容量不足に備えて一階にも補助冷房としてエアコンがあったほうが良いでしょう。

さらに改良されています

お施主のえいたさんは2021年の今年は二酸化炭素計を購入されて換気量を絞り除湿を安定させています。換気量を絞れば外から侵入してくる水蒸気の量が減らせますので除湿がしやすいです。

換気量を絞る際は自己責任となりますが二酸化炭素計を購入されて実施されるとよいでしょう。ただ、家中の除湿をすれば水蒸気が含む臭い等が室外に排出されるという換気効果が生まれます。

梅雨を含めた夏季に家中の除湿をせずに新建材はカビが生えるからといって漆喰や珪藻土をお勧めするような古い住宅会社はしっかりと空気質を計測してから情報発信をして欲しいものです。

また、梅雨時期は冷房運転で除湿をすると室温が下がってしまうため、フィルターを増やしたり、一階のエアコンを暖房運転したり、除湿機を利用、再熱除湿機能を使う等の回避方法があります。

お久しぶりです。

今年もやってます、F式全館冷房😄
全館冷房始めて1ヶ月程たちました。

嫁が「26℃以上は暑い!23℃以下は寒い」というので我が家はだいぶ快適設定運転です。

我が家の梅雨時期のエアコン運転は2Fエアコンで冷房、1Fエアコンで暖房。
2Fエアコンで24時間除湿をしながら雨の日などで室温が上がらない日は1Fエアコンの暖房で室温低下を防いでいます。

吹抜けのあるオープンな間取りということでこれで上手くいってます。

二酸化炭素濃度計も購入してみて換気量も調整してみました。
換気量を減らしてから湿度の安定感がハンパない😲

湿度50%前後でいつでも部屋干しOK👍お風呂のピンクカビも発生なし👍

HEAT20G1、C値そこそこ、3種換気のスペックでも全館冷房は可能です😊

三種換気の全館冷房事例

三種換気でのエアコン1台での事例については新潟の高名なオーブルデザインで修行されたエスネルデザインが三種換気での全館冷房を公開していますので、ご紹介いたします。

【秘訣】『夏期の冷房のコツ。』全館空調の家の「就寝時の個室の冷房」 - 住宅設計エスネルデザイン
ゆうです^ ^ 今年の夏も暑い日が多かったですね。 超高断熱・全館空調のエスネルは、どのような冷房のコツがあるのでしょうか。 一番難しいのが『就寝時の個室』です。 全館空調の家の夏期の冷房運転のコツをまとめます。 &nb

簡単にいうと、二階のホールに給気口とエアコンを設置して、各部屋には個別に20m3/h程度の排気換気扇を設置して階段ホールの冷気をドアのアンダーカットから引き込んでいるのでしょう。

私ならファンの音を消すためにクローゼットの中の壁の上部に排気換気扇を設置すると思います。

さて、素人考えですが私が想定するもっともコストの安い全館冷暖房の方法は、暖房については一階に人に風を当てないリビングエアコンで、冷房は二階の階段ホールエアコンです。

基礎断熱か床断熱かという論点についてもアメリカカンザイシロアリのことまで含めて考えると基礎で気密をとって床で断熱する工法が良いと思っています(床下空気循環の考慮は必要)。

床下エアコンと小屋裏エアコンについては空調設計がやり易い反面、冷暖房費用が増えるという問題がありますから、天井や桁上断熱と床断熱についても簡単な空調方式が見つかるといいですね。

最後に

誤解を招かないように申し上げておきますが私は建物の高気密高断熱化に賛成の立場です。特に冬はUA値やC値が良いと省エネに贅沢な暖房ができて室内の表面温度が高く体感は非常に快適です。

ただ、住宅の超高性能化はコスト回収が長期間になっていきますから、家づくりにお金をかけられない・かけたくないという人は、施主が家づくりと住み方を工夫するという道もあるでしょう。

冬に暖かくて夏に涼しい家を求める人は多いと思います。ただ、これまで大手ハウスメーカーが提供する全館空調システムやダイキンのデシカなど200~300万円もするシステムが主流でした。

ここ10年ぐらいの間に高性能住宅を謳う地場工務店が家庭用のエアコン1~2台で全館冷暖房を実現する方式が知られてきて、省エネで冬に暖かくて夏に涼しい家が身近になってきました。

ただ、スーパー工務店を中心に高断熱化や高耐久化が進み、60年住んで生涯コストが最も安い家というコンセプトが浸透してきたことから、家づくりの初期費用の高価格化が進んでいます。

また、住宅会社の中には断熱気密での差別化に限界を感じてなのか、内装に自然素材を推奨したり造園などを併せて提供してさらに高付加価値路線を採用する住宅会社もあります。

中には貧乏人は来るなと言わんばかりの勘違いしたクセの強い設計者や住宅会社がいますが施主が家づくりを勉強すれば、謙虚さを失ったプロに頭を下げてまで家を依頼する必要はなくなります。

施主がパッシブ設計やエアコンの運転の勉強をすればZEHやG1の家においてもエアコン1~2台で全館冷房が可能であることは実例からわかっています。吹き抜けがなくても可能です。

ただ、その場合は窓の日射遮蔽を特に注意して、屋根や外壁の色に日射を反射する白系の色を選択するなど、お金をかけなくても室温上昇を抑える手段を併せて検討されると良いでしょう。

エアコン全館冷房は自己責任ですから、失敗したらどうするのか?やめておけ、プロに任せろという人がいると思いますが、お金があるならプロに任せてお金で解決すればよいと私も思います。

私は古くからの施主であるためエアコン1台での空調が先輩施主の挑戦を経て生まれてきた経緯を見てきましたので、全館冷房は住宅会社の差別化には利用して欲しくないと思っています。

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