ここが変だよ、ローコスト系高気密高断熱住宅

考察

はじめに

高気密高断熱住宅の普及を願う私としては一条工務店に限らず、ローコスト系の高気密高断熱住宅で全館冷暖房を目指している施主を見ていると応援したくなります。

一方で大手ハウスメーカーの家は耐震性は高いものの、高坪単価であるにも関わらず全館暖房が標準で出来ないなど価格と家の性能が釣り合っていないと感じています。

現在は一条工務店の施主である私の二軒目の家は設計事務所+地場工務店で建築した軸組工法によるローコスト系のエアコン全館冷暖房の高気密高断熱住宅でした。

ただ、当時の私はローコストながら透湿抵抗まで考慮した家づくりなどをしていましたから、現在のローコスト系のハウスメーカーを見ていると、ここがまだまだだなと思うところがあります。

本日は一条工務店とローコスト系住宅を比較検討している方に向けて、確認ポイントをご紹介します。

ノボパンはやめよう

ノボパンとは家の柱の外側に耐震性を補強するために設置する合板です。

ローコスト系住宅では定番となっている現場発泡ウレタンには種類があって、水蒸気を良く通す連続気泡のA種3と水蒸気を通しにくい独立気泡のA種1があります。

A種3は広く利用されているアクアフォームやフォームライトSLのことで、柱の外側に設置される耐力面材に水蒸気を通しにくいノボパンや構造材合板を使うと壁内結露が懸念されます。

ローコスト系住宅においても室内側に防湿フィルムを設置している真面目な会社はありますが、あまり一般的ではなく防湿フィルムの施工が得意でない住宅会社もあるでしょう。

クロスが防湿層だと主張する会社もありますが、透湿抵抗が高くてもクロスのようなリフォーム時に撤去されてしまうものは結露計算では認められないため施主の自己責任での判断となります。

この解消方法として、耐力面材にダイライトやモイスなどの透湿する面材を設置して現場発泡ウレタンはA種1を使うことで、透湿抵抗比が安全でありながら防湿フィルムが不要となります。

A種1は独立気泡の割合が多いため水蒸気が通りにくいですが、同様にアイシネンは実態として独立気泡ですから水蒸気は通しにくいですが熱伝導率は0.038Wと高いためコスパが難点です。

ローコストに高い壁倍率を取ろうとしてノボパンを採用しているのだと思いますが、現場発泡ウレタンを利用するなら脱ノボパン+脱A種3を検討して欲しいと思います。

どうしてもノボパンを使いたいなら防湿フィルムを設置するか、充填断熱にウレタンやフェノールフォームなどの透湿抵抗が高い板状断熱材を利用すべきですが、コストが高くなります。

耐震等級3相当?

ローコスト系にも耐震等級3や長期優良住宅に標準対応という住宅会社が増えてきました。どちらを申請するにおいても構造計算(許容応力度計算)が必要になります。

ただ、構造計算や長期優良住宅の申請は費用が追加でかかることから、実際には構造計算までしない耐震等級3相当の家の人が多いと思います。

壁量計算では壁倍率は5倍までしか算入できませんし、石膏ボードなどの雑壁も算入できませんから、実際の建物の壁倍率よりも低く壁倍率を見積りそれに合わせた接合金物を選定している場合があります。

接合部を強化せずに壁倍率だけを上げてしまうと地震で揺れた際に壁が変形せずに突っ張るため、土台を破損して壁が引き抜けてしまうという問題がおきます。

やはり、壁量計算止まりではなく金物を含めた許容応力度計算をすることが良いと思いますが、構造計算を外注している場合は費用が高額に設定されているため実態として構造計算を求めない施主が多いと思います。

このように耐震等級3と耐震等級3相当の住宅は全く違うということを理解しておいた方が良いと思います。初めて家を建てる方は壁倍率5と聞くと安心する思いますがそれはセールストークです。

一方で大手ハウスメーカーは最初から性能評価による耐震等級3の取得と長期優良住宅の申請が低価格で設定されていますから、多くの人は当たり前に申請していると思います。

遮熱材はいらない

見よう見まねで高気密高断熱住宅をやっている住宅会社でありがちなのが、透湿防水シートにタイベックシルバーなどの遮熱材を利用していることです。

断熱材が設置されている訳ですから、考えれば遮熱材があっても損ではないけれど効果はあまりないと分かると思いますが、遮熱材の効果を熱弁している住宅会社もあります。

無断熱の屋根に遮熱塗料を塗るというのであれば理解できますが、遮熱材は断熱材と異なり熱を保温できませんから、基本的には断熱材を厚くする方が有利です。

私は遮熱材をアピールしている住宅会社を見ると、初めて家を建てる人にはアピールになると思うけど、少し家作りを知っている人には住宅会社の知識力を疑われてしまうと思います。

フラット35を使おう

私は透湿抵抗をまったく考慮していない家作りは良くないと考えていて、透湿抵抗比の審査のあるフラット35の利用か長期優良住宅の申請をした方が良いと思っています。

大手ハウスメーカーはグループにフラット35を扱う関連会社を持っているため事務手数料がタダ同然の格安に設定されています。これって結構なコストダウンになります。

銀行に行かなくても住宅展示場でフラット35の借入や決済ができることから、大手ハウスメーカーでの家作りにおいてはフラット35の利用は多いと思います。

銀行の変動金利の利用が悪いという訳ではありませんが、銀行の住宅ローンは家の性能が審査されないため、その場合は長期優良住宅を申請した方が良いと思います。

エアコン全館冷暖房できるの?

各地で施工されている床下エアコン、小屋裏エアコン、階間エアコンなどを見ていると楽しくなりますね。

一条ハウスで床暖房を使っていない私が床暖房の利点を説明するのは違和感がありますが、格安なエアコン暖房と床暖房を比較した場合、床暖房は間取りを問わないという事と床下エアコンのように設置スペース分の床面積が増加しないという利点は認めて良いと思います。

さて、年間数十棟までを建てる小規模住宅会社であればエアコン全館冷暖房の設計を行い、その快適さを保証できるかもしれません。カリスマ社長などがすべての家の設計に関与できるからです。

ただ、企業規模が大きくなると保証という大きな問題を前にして冷暖房をシステム化せざる得ない状況になるでしょう。

年間数十棟規模の販売棟数であれば壁掛けエアコンを使った全館空調の対応ができると思いますが、それ以上の販売棟数となれば住み心地を保証できる空調システムが必要になってきます。

年間1万棟を超える販売数をエアコン全館冷暖房で誰が設計しても快適にするなんて不可能ですから、一条工務店の床暖房とさらぽか空調はシステムとしての存在意義は大きいと思います。

空調の腕自慢をしている設計士さんよ、1万棟の空調を壁掛けエアコンによる全館冷暖房で面倒見切れるのかよく考えて頂きたい。

エアコン全館冷暖房と全館空調システムは住宅販売規模に応じた役割が違うと言えますが、問題なのは多くの地場工務店がエアコン全館冷暖房のノウハウを持っていないことです。

エアコン全館暖房は簡単です。熱は上昇するため家の低い位置にエアコンがあれば良いだけですが、エアコン全館冷房は難易度が上がります。

冬に暖かい家を考えることは簡単ですが夏にエアコン1台で家中の相対湿度を60%以下に保てる設計ができる設計士さんがどれだけ日本にいるのか心もとない状況です。

果たして、エアコン全館冷暖房の住み心地まで「保証」できるローコスト系住宅会社がどこまであるのでしょうか。

基礎一体打ちいいね!

ローコスト系住宅においてもベタ基礎の底盤と立ち上がりを一体打設している会社があります。防水や防蟻に有効ですから非常に関心しますね。

ただ、全国的に基礎コンクリートの一体打ちができる基礎屋さんは多くないため、基礎コンクリートを外断熱にしない限りは何が何でも基礎一体打ちに拘らなくて良いと思います。

ちなみに私は一条工務店で家を建てる時に基礎一体打ちを希望しましたが実施できる業者さんがなかったため、基礎コンクリートに城東テクノのキソ止水プレートを入れています。

家の大きさによりますがエアコンを架台に乗せて、キソ止水プレートを設置して基礎コンクリートの水抜き穴を無くせば、なんちゃって対水害住宅になります。

ホウ酸処理いいね!

住宅は地面から1mの高さまで防腐防蟻処理をする必要があり、建築現場では地面に近い柱や壁に薬品が塗られている光景をみると思います。

ただ、最近はシックハウス防止のために大手ハウスメーカーを含めて5年程度しか効果がない薬品を塗布していて5年毎に壁を開いて塗布することができないという時限爆弾を抱えています。

一条工務店では加圧注入材を使った防蟻防腐処理をしていますが、ローコスト系住宅の中にはホウ酸を利用した処理をしている会社があります。

ホウ酸処理はスウェーデンハウスも採用していて海外では広く利用されている処理方法ですから、これは非常に良いと思います。

結局、ローコスト系ではなくなる

最初は見よう見まねで高気密高断熱住宅を販売していたローコスト系高気密高断熱住宅においても、技術が確立して企業が成熟してくると、高級志向に走ると思います。

どんな商売でも販売数を追いかけた次は単価の向上を目指してしまうため、ローコスト系の魅力がなくなってしまいます。これがビジネスモデルが崩壊してしまう要因でしょう。

食品業界で良くある事例として鳴り物入りで入ってきたクリスピー・クリーム・ドーナツやいきなりステーキのように出店し過ぎれば希少価値を失って失速します。

全国展開して高価格帯に移行すれば失速することは目に見えていますから、ローコスト系高気密高断熱住宅は初心を忘れずにローコストのまま必要以上に拡大せずに地域会社でいて欲しいものです。

住宅は大手ハウスメーカーで建てる割合は3割程度ですから地域密着型でも商売は成立すると思いますが、大抵の会社は販売棟数が伸びると全国展開してしまうのですよね。

一条工務店は中堅の坪単価から結局は高坪単価のハウスメーカーに移行しました。どんな住宅会社においても、販売数が増えて有名になれば高坪単価に移行してしまうでしょう。

単純に高価格帯に移行すれば販売数が落ち込んでいくと思いますが一条工務店はローコスト系とは争わずに8社会に所属する大手ハウスメーカーの顧客を奪う戦略にシフトしていると思います。

最後に

ローコスト住宅は耐震等級3や長期優良住宅に標準対応するなどレベルが上がってきていると思いますが、実際は追加コストを嫌って施主が申請しないことが前提になっている気がします。

住宅ローンの借入についても固定金利のフラット35は使わない前提であると思いますから、ザルの建築基準法以外はすべての審査がなされない住宅になってしまいます。

また、販売棟数が増えてくると従業員が増えて人材のレベルが低下してしまうため、商品力を高めようとすると思います。

そうなると、付加断熱に手を出し、一種換気や全館空調でトリプルサッシといった形で一条工務店のようになってしまい、ローコスト系住宅ではなくなって存在意義がなくなってしまいます。

温暖地での標準商品はQ値が1.9W程度のZEH並みのソコソコな性能として窓の日射制御とエアコンを最大限活用したローコストな家作りをすべきでしょう。

ローコスト系はローコストのままでいて欲しいと私は思います。ただ、構造計算(許容応力度計算)と気密測定の実施、そして透湿抵抗の考慮まではして欲しいと思います。

現在は一条工務店の施主である私ですが、コスト的に一条工務店を諦めた方に自信を持ってお勧めできる全国展開しているローコスト系のハウスメーカーはないと思っています。

構造計算と気密測定の費用を施主からしっかり取れるだけの魅力がない会社は淘汰されていってしまうと思いますし、そろそろQ値やUa値そして結露計算が自前でできないと苦しいでしょうね。

惜しい!と思う中堅の住宅会社はありますが、透湿抵抗の検討がイマイチなんですよ。ノボパンはやめようと言いたい。もう一歩の改良をぜひ頑張って欲しいと思います。

そして、どの住宅依頼先で建てる場合においても、間取りのデッドスペースをしっかり減らし、その他にもコストダウンをしっかり検討してから住宅依頼先を選定してください。住宅会社から出された見積もりを比較しているだけでは選択を誤ると思いますよ。

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本日は以上でございます。

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