まだまだコストカットは可能です
注文住宅の依頼先の選定はご予算が最も重要だと思いますが、多くの方は候補となる複数の依頼先から出された見積もりを比較するだけで依頼先を決めてしまってないでしょうか。
実は一般にはあまり知られていないコストカット方法が沢山ありますので、設計事務所と一条工務店の両方で注文住宅を建てた私からそのノウハウをご紹介したいと思います。
そして、不幸にも家作りの依頼先の営業マンなどと相性が良くない場合は早めに交代を申し入れるのも、一生に一度の家作りでは必要なことだと思います。
また、いくら予算が少ないとは言え、冬に寒い家には住みたくないと思いますから、本日はまず冬に暖かい家の見分け方を記載し、後半からコストカット方法を記載します。
本当はここに依頼したかったけど営業マンとの相性や予算的に厳しかったという話は良く聞きますので、ぜひ希望の依頼先に家作りをお願いする後悔のない家作りの参考になればと思います。
冬に暖かい家の見分け方
家の価格が安くても冬に寒い家は嫌だと思いますから暖かい家の探し方を先にご紹介します。また、家の性能がある程度良くないとコストカットが難しくなります。
冬に寒い家を見分けることは非常に簡単です。まず、外皮(窓、壁、天井、床)の断熱性能を示すUa値が省エネ基準をクリアしていても家の暖かさを表さないということを理解しましょう。
外壁に断熱材を沢山詰め込んでも家の中には間仕切りの内壁がありますから、冬は冷たい空気が床下から内壁の中を通り抜けているような家では外皮の断熱性能は意味を成しません。
壁の上下に隙間がないことが重要であり2×4工法の家については床を張ってから壁を建てるため大丈夫ですが、軸組工法の場合は気密測定の実施か基礎断熱の採用が必要だと思います。
冬に暖かい家かどうかを見分ける方法は壁の上下の気流止めがなされているかが最重要ポイントであり、次の3点を確認すれば概ね冬に暖かい家か寒い家かの判断はつきます。
①気密測定の実施 ②枠組工法(ツーバイフォー)の採用 ③軸組工法(在来)+基礎断熱の採用、以外であれば冬に寒い家だと思ってほぼ間違いないでしょう。
簡単にいうと、日本の大手ハウスメーカーで主流である鉄骨造や軸組工法+床断熱の家は冬に寒くて夏に暑いということです。それでは各ハウスメーカーを順番に見ていきましょう。
ハウスメーカーの家の暖かさを確認してみる
ハウスメーカー | 構造 | 断熱工法 | 断熱性能 | 気密測定 |
スウェーデンハウス | 枠組 | 床断熱 | 良 | あり |
ヘーベルハウス | 鉄骨 | 床断熱 | 並 | なし |
積水ハウス | 在来 | 床断熱 | 並 | なし |
住友林業 | 在来 | 床断熱 | 並 | なし |
三井ホーム | 枠組 | 床断熱 | 並 | なし |
一条工務店 | 枠組(パネル)、在来 | 床断熱 | 超 | あり |
パナソニックホームズ | 鉄骨 | 床断熱 | 並 | なし |
セキスイハイム | 鉄骨・在来 | 基礎断熱 | 良 | あり |
ダイワハウス | 鉄骨、在来 | 床断熱 | 並 | なし |
ミサワホーム | 枠組(パネル) | 床断熱 | 並 | なし |
上記はオリコンのハウスメーカー人気ランキングトップ10です。構造や性能は商品によって異なりますが、一般的な商品を比較しています。赤字が暖かい家としてのGoodポイントです。
標準仕様で冬に暖かい家という条件で選定すると大手ハウスメーカーの中ではスウェーデンハウス、一条工務店、セキスイハイムの3社が該当すると思います。
上記3社以外では枠組工法を採用している三井ホームとミサワホームの上位の断熱性能の商品であればそれなりに暖かい家になると思います。
大手ハウスメーカーは予算的に苦しいという方は、家の暖かさで考えれはローコスト系高気密高断熱住宅において現場発泡ウレタン+基礎断熱を採用している住宅依頼先を選ぶと良いでしょう。
家作りには多様な価値観がありますが、このようなことを知ったうえで総合的に判断して住宅の依頼先を選ぶことと、何も知らないまま住宅の依頼先を選ぶことは大きな違いがあると思います。
注文住宅を660万円安く建てる方法
さて本題のコストカットについて具体的にご紹介します。
割引制度の利用
何百万円もの値引きをしているハウスメーカーがありますが、一条工務店について記載します。
一条の割引制度については、他の方がブログ等に良く書かれている内容ですので深くは記述いたしませんが、一条工務店は基本的には値引のない徹底的に平等な価格のハウスメーカーです。
知人紹介で20万円相当のオプションプレゼント、親族紹介が建物本体×1.5%、法人割引が建物本体の2~3%の割引となり、当然併用不可です。
紹介を受けずに展示場に行くと割引対象とならないケースがあるため、事前に紹介を受けることがポイントです。その他には工場見学での抽選会とキャンペーンによる平等な値引は存在します。
なお、一条ハウスを二軒建てた私は工場見学時の抽選会では二回とも二等、二軒目の家は親族割引の扱いでした。もうちょっと割り引いて欲しかったですが、それが一条工務店です。
土地の仲介手数料を無くす
これまで私は3回住宅用の土地を購入しましたが、すべて売り主物件であるため土地の仲介手数料を支払ったことがありません。仲介手数料は通常は土地価格×3%+6万円です。
私の二軒目の土地は坪100万円であったため、逆にいうと予算不足で仲介手数料なんて支払えない状態でしたが、どうしても良い土地の場合は仲介手数料を支払ってでも欲しいですよね。
さて、売り主物件の新しい土地を探すには不動産屋さんを経由せずに、地元で土地を開発・分譲している会社の情報をこまめに確認することです。最近ではネットで直接土地を販売されています。
忙しくて土地探しができない方は住宅依頼先に仲介手数料なしの土地を探してもらいましょう。住宅依頼先は建物を建てて欲しいため、基本的には無料で土地を探してくれます。
土地へアクセスする道路が狭いと建築時に運搬費用が増加する場合があります。一条工務店の枠組工法では3.5tトラックが通れない狭い道幅だと建築NGか特別運搬費が発生します。
地盤改良の必要のない土地を手に入れたいものですが、都市部では購入前に地盤調査を了承してくれない売り主が多いため難しいかも知れません。
ただ、地形からある程度は地盤が分かるため、地盤サポートマップなどを見てから土地を検討されると良いでしょう。概ね、海や川が近くにある低地は地盤が緩い傾向にあります。
また、擁壁や崖がある土地については、擁壁の再構築費用や建築制限が掛かる場合があります。なるべく平坦でアクセスする道路が広い土地を求めることがコスト削減への近道です。
坪数を減らす
初めて家を建てる方は「20畳のリビング」等に拘ると思いますが、住んでみると広さは余り必要ない事に気づくと思いますし、小さな家で20畳のリビングに拘ると家全体の間取りが歪みます。
予算が苦しい方は廊下などのデッドスペースを減らしましょう。「階段は家のおへそ」という言葉があって二階の中心部分に階段が登ってくるように間取りを考えると二階の廊下が減ります。
一条施主でよく見かける、スケルトンのオープステア階段を外壁側に設置している間取りは二階の廊下が長くなってしまいますから、階段は内壁側に設置した方が1坪程度の坪数が減ります。
次にリビング・ダイニングの坪数削減についてです。みすぼらしくなく、リビングとダイニングを一体の空間にすれば、リビング・ダイニングの坪数を減らせます。
ダイニングテーブルからもテレビが見えるようにすれば、ダイニングをリビングに取り込んでリビング部分を2坪減らすことが可能です。
予算が苦しい方は、収納については一条工務店の場合、坪単価で計算される居室部分の収納は必要最低限として、低価格な小屋裏収納を採用すると良いでしょう。
上記を全て実施すれば、3坪程度のコストダウンは可能だと思います。
また、一条工務店においては、i-smart等の枠組工法は積算ルールによって平屋と床面積の大きな家はコストパフォーマンスが良いですが、コンパクトハウスでは割高になる場合があります。
その場合は設計の自由度が高いセゾンやブリアールなどの軸組工法をご検討ください。断熱性能は枠組工法に劣るとは言え、他社と比較すれば性能の良さは遥かに上です。
建物を小さくすると固定資産税等の税金が減るといったメリットもありますが今回は割愛します。
エアコンの台数を減らす
高気密高断熱住宅では大きなエアコンの採用はむしろ省エネ性が悪化します。一条ハウスの場合、10畳用(2.8kW)以上のエアコンはまず必要ありません。
性能の低い家では、リビングに20畳用のエアコン(30万円と想定)+各部屋に小型エアコン(4台×10万円と想定)となると思いますが、高性能な家では家中で2台のエアコンで足ります。
高性能な家では2階の階段ホールに小型の再熱除湿付きのエアコンを設置すれば全館冷房が可能となります。1階には猛暑日に備えた補助冷房として小型エアコンの1台の設置をお勧めします。
実は一条ハウスは6畳用のエアコンが2台あれば全館冷暖房が可能ですが間取り作りが難しくなりますから、床暖房やさらぽか空調は誰にでも快適な住環境を提供する装置と考えるべきでしょう。
エアコン1台全館冷房については、予算がない方は居室への通気にエアパスファンというものを設置しなくてもドアを5センチ程度開けておけば、各部屋は涼しくなります。
性能の良い家は間取りを上手に考えることで、エアコンの台数が一般的な家庭よりも減らせることから、エアコン機器代の初期費用と10年置きの買い替えのランニング費用を大幅削減できます。
なお、一条ハウスにおいてエアコン1台全館冷房を計画して間取りがうまく行かずに廊下の面積が増えるようであれば建物価格が上昇するため、さらぽか空調を採用した方が良いと思います。
バルコニーを設置しない
上記のようにエアコン1台全館冷房やさらぽか空調を採用した家は洗濯物が完全に部屋の中で乾きます。布団についてもシーツの交換は必要ですが布団自体は外に干す必要がなくなります。
家中の湿度が低い家は洗濯物を乾かすためのサンルーム(むしろ梅雨は洗濯物が乾かない)や浴室の乾燥機は不要であり、洗濯頻度が少ない家庭では洗濯機の乾燥機能は必要ありません。
一条工務店の場合、バルコニーについては坪単価の半額ですが、多くの方は4マス程度のバルコニーを設置していると思いますから32.5万円がコストカットできます。
玄関上に2マスのバルコニーの設置している方が多いですが、アルミ庇であるアーバンルーフ(約10万円)に変更すると6.25万円のコストカットになります。
また、バルコニーを設置しない最大のメリットは10年程度置きに必要なFRP防水のメンテナンス費用が不要となることで、バルコニーはメンテナンスを怠ると雨漏りする可能性が高い場所です。
バルコニーを設置しなければ初期費用で約39万円のコストカットが可能となり、10年置きのメンテナンス費用からも開放されます。
網戸を設置しない
一条工務店の場合は窓の網戸はオプションです。
しかし、一条施主においては網戸が必要という人と窓を開けないから網戸は不要という人に意見が分かれます。これは家ごとに窓からどれぐらい日射を取り入れているかで異なってきます。
高気密高断熱住宅では夏は西日だけでなく朝陽や北側からの日射でも家が暑くなります。私は南側以外の窓は小さく少なくして採光を取るために窓は高く設置することをお勧めしています。
大きくした南側の窓には屋根の軒を80cm程度にすれば二階の窓の日除けとなり、一階の窓には窓庇かアイプレートなどのシェードを設置する金物を設計時点から計画されると良いでしょう。
室内側に設置されるハニカムシェード(遮熱タイプでも)やカーテンでは日射熱を防ぐには足りないため、日射熱は家の外側でカットしてください。
私は二軒目の家で高気密高断熱住宅を初めて建てた際は網戸を設置しましたが、窓の日除けとエアコン1台で全館冷房したこともあって、春と秋を含め年間を通じて窓を全く開けなくなりました。
高気密高断熱住宅では季節ごとに窓から入る日射熱を考えた家作りをしないと春から熱帯夜になります。窓を開けたいという方については、網戸は必要最低限で良いと思います。
お掃除ロボットを買わない
窓を全く開けない全館冷暖房の家では、ホコリが少ないことからお掃除が楽になります。私もお掃除ロボットを持っていますが最近はモップスリッパで掃除しているため使わなくなりました。
お掃除ロボットの必要性については人それぞれではありますが、家中の相対湿度を60%以下に保てばダニやカビが発生しなくなるため、布団乾燥機やレイコップは不要になります。
こちらについては10万円のコストカットとして計算します。
小屋裏にテレビのアンテナを設置する
光テレビを導入した場合はBS放送分まで視聴料を請求される可能性があります。ただ、強電波地域では、屋根や外壁にアンテナを設置しなくても、室内アンテナでテレビが映ることがあります。
私の四軒目となるi-smartでは2000円の室内ペーパーアンテナで家中のテレビを映すことが可能でした。アンテナ設置費用は8万円前後しますから室内アンテナは検討の価値ありだと思います。
また、入居してからテレビ端子の位置を間違えたと感じている方についても室内アンテナに挑戦する価値があると思いますよ。
水道光熱費を削減する
電気代については太陽光発電を採用するかという話の前に家の性能が大きく影響しますが、光熱費が安い家は初期投資が高いという論点もあります。
通常、アパートから高気密高断熱住宅に引っ越すと家が倍以上広くなっているのに、光熱費は同じぐらいという話を聞きます。
ただ、一条施主はある程度の省エネが確保できれば家の快適性を求めるようなので、一条施主の電気代を見ていると家の性能ほど光熱費が安くないと感じます。
光熱費のことを考えるとオール電化がお勧めです。電気とガスの併用は基本料金が二重になるということと、プロパンガスはコストが高くかつ大半が高額に請求されていると思います。
一般家庭の場合、光熱費は年間20万円前後が平均のようですが、一般的な高気密高断熱住宅なら半分、Q値1.0W以下の家で基本料金のない電力プランを選択すればさらに減らせると思います。
また、水道代は自治体によって最大8倍も差があります。同じ都道府県でも市町村によって水道代は異なるため土地を検討する際には確認されると良いと思います。
冬に寒い家は給湯量が増えることから光熱費と水道代の両方が増えます。実際は30年で300万円以上の水道光熱費の差が出ると思いますから、高性能な家を建てた方が良いでしょう。
ただし、性能の良い家は建物価格が高くなることと、水道光熱費については住み方が影響することから今回のコストカットの計算には含めないこととします。
その他
一条工務店のi-seriesにおいて予算が苦しい方が人気オプションのハイドロテクトタイルを採用せず標準のボーダータイルを採用される方がいます。
非常に良いと思いますが、北側の外壁に将来コケが生える可能性があるため北側に陽が当たるように真南に家を建てないか湿気の出るロスガードの排気口を北側以外に設置すると良いでしょう。
私は二軒目の家において真南に向けて家を建てて、一種全熱交換換気扇の排気口を北側に設けた結果、北側に設置した換気装置の排気口の周辺の外壁にコケが発生してしまいました。
家は真南に向けた方が窓の日射制御はやり易いですが、「家は巽(東南)に向かって建てる」という言葉があり、家全体の日当たりを考えると真南に向けて家を建てることが良いとは限りません。
また、建物の登記を自分でやることで20万円程度のコストが浮かせることが出来ますが、融資を受ける銀行が許可しない場合があることと、建物を登記する際の配置図の作成が難しいです。
今回はこちらについてコストカットに含めません。
まとめ
土地代1000万円+坪65万円の30坪の家を建てると想定した場合、最大で以下のコストカットが可能だと思います。維持費用については30年間で考えます。
項目 | 初期費用 | 維持費用 | 合計 |
知人紹介の利用 | 20万円 | 20万円 | |
土地仲介手数料の削減 | 36万円 | 36万円 | |
坪数の削減(3坪) | 195万円 | 195万円 | |
エアコン台数削減 | 50万円 | 150万円 | 200万円 |
バルコニーを設置しない | 39万円 | 30万円 | 69万円 |
網戸を設置しない | 10万円 | 20万円 | 30万円 |
お掃除ロボットを買わない | 10万円 | 30万円 | 40万円 |
小屋裏にアンテナ設置 | 8万円 | 62万円 | 70万円 |
合計 | 368万円 | 292万円 | 660万円 |
あくまで最大660万円ということですが、光熱費の抑制については今回の計算に入れていないため実際にコストカットが可能な最大金額は1000万円程度だと想定されます。
また、さらぽか空調やエアコン1台全館冷房を採用した家は家の中の相対湿度を60%以下に維持すれば、カビやダニそして収納の中の害虫の発生を抑制できるため掃除の時間が激減します。
湿度の低い家は防虫や防カビの細かい生活消耗品を買わなくて良くなることと、掃除の削減時間をコストに換算した場合、得られる削減効果は合計で1000万円を優に超えるでしょう。
そして、残念ながら今はお洒落れでも冬に寒い家はこれまでの日本家屋と同様に家族内の世代が変わる時に合わせて30年程度で建て替えられることになると思います。
最後に
今回ご紹介したコストカットの方法は一般的には認知されていないと思います。しかし、私のように注文住宅や高気密高断熱住宅を何軒も建てると分かってくることもあります。
家作りは最終的には相当に予算オーバーしている方が多いと思いますから、施主の予算がないという言葉は本当なのかウソなのかよくわからない面があります。
また、設計事務所とハウスメーカーで家を建てる場合の相違は、設計事務所で建てる場合はコストカットは設計士さんが率先して考えてくれる反面、設計士さんの意見が強い場合があります。
逆にハウスメーカーではクレーム回避の意味を含めて施主の要望を優先した結果、デッドスペースが増えて建築総額が増加しやすく、窓が大きい場合はオーバーヒートしやすい家になるでしょう。
ただ、最近の一条施主では南側以外の窓を必要以上に大きくせずバルコニーを設置しない、設計事務所が作る高気密高断熱住宅のような家づくりをしている方が増えているようです。
私は希望の住宅依頼先に家づくりを頼みたいけど予算的に無理だと諦めている方や、希望の依頼先を選んだけどオプションや家具をギリギリまで削っている方を見かけた時に心が痛みます。
もし、本日の記事がそのような方の救いになれたらうれしいです。
本日は以上でございます。