エアコンの顕熱比とCOPを計算してみた

考察

はじめに

エアコン1台で全館冷房という話をするとそんな馬鹿なと思う人が世間の大半だと思いますが、エアコン1台で全館冷房をしている人たちの間でもエアコンの運転方法とサイズは意見が別れます。

200Vの14畳用のエアコンが省エネであるという意見と100Vの小型エアコン(6~10畳用)が省エネであるという意見に分かれますが、エアコンの運転方法によってもエアコン選びは変わります。

本日は私が行っているエアコンの風量を絞るF式全館冷房について実測データをもとに説明をしたいと思います。通常は風量を絞ると除湿される割合は増えるが効率は下がるといわれています。

しかし、小型エアコンのほうが定格運転付近でのCOPの落ち込みが少ないという新潟大学の研究があることから、エアコンはカタログ値だけでは省エネ性を判断できないと私は思っています。

家庭用エアコンは室内機の熱交換器が1つしかないためエアコンの冷房エネルギー全体を100%とすれば、温度(顕熱)除去と湿度(潜熱)除去に使われるエネルギーの合計は100%になります。

エアコンの冷房エネルギーの内、70%を顕熱除去に利用すれば、温度を下げる顕熱比は70%ということになり、湿度を下げる潜熱比は30%ということになります。

一般的にはエアコンの顕熱比は60~70%と言われていますから、湿度の除去は40~30%という割合になり、必要な除湿量まで計算して最適なエアコン容量を選定すると良いでしょう。

顕熱比はエアコンの吸い込み口と吹き出し口の温湿度が分かれば計算できます。COPについてはさらにエアコンの消費電力と風速が分かれば求めることができます。

私が無償で公開しているF式計算シートの中でエアコンのサイズを計算するシートがありますが、エアコンの顕熱比と実測のCOPを計算できるように改良いたしました。

計算ツール
F式(私ことフエッピー式)の各計算ツールは無償でドドーンとご提供します。その代わりサポートはございませんので自己責任でご利用ください。また、告知なく修正しますので、ご利用の際は最新版をダウンロードしてご利用ください。 ダウンロードを行...

数値の検証はしておりますが、素人の計算ですから参考までということでお願いします。将来、私よりもっと計算能力が高い施主が登場してすべてを解明してくれることを期待しています。

顕熱比はエアコンの吸い込み口と吹き出し口の温湿度差で求めることができるため、風速は顕熱比に関係ありません。顕熱比を求めるにはエアコンにスイッチボットを2個設置すれば可能です。

そして、COPについてはエアコンを通過する風量に関して、エアコン吹き出し口の寸法をメジャーで測ることになるため正確性には若干懸念があることから参考値という理解でお願いします。

本日は地場工務店で素敵な家を建てた、しいたけさんという最近入居したばかりの施主が行っているF式全館冷房を採用した小屋裏エアコンの事例をもとに顕熱比とCOPを計算してみます。

F式全館冷房の顕熱比

結論から言うと、F式の顕熱比は世間でよく言われる70%を下回り、除湿側にエネルギーを振った運転になるようです。

8月23日 8月25日 8月26日
風量 最弱 最弱
外気 33.6℃/63% 29.6℃/70% 33.4℃/59%
一階リビング 25.5℃/59% 26.2℃/55% 25.4℃/52%
エアコン吸い込み口 23.1℃/65% 22.9℃/64% 22.3℃/61%
エアコン吹き出し口 11.9℃/84% 11.5℃/84% 10.1℃/89%
顕熱比 51% 52% 58%
消費電力 293W 351W 394W
COP(風速1.5m/sの場合) 5.20 4.32 3.69
COP(風速2.5m/sの場合) 8.67 7.20 6.16

今後、さらに正確な測定をしていく必要があるため、今回はあくまで参考値として傾向を把握するという内容ですが、やはり風量を増やすと顕熱比があがるようです。

上記の計算内訳は以下となります。また、温湿度の情報はしいたけさんのTwitterに掲載されているものとなり、日立の再熱除湿8畳用の小屋裏エアコン1台で冷房運転をした事例です。

 

 

 

しいたけさんは間取りが決まった後に途中からF式に取り組んでおり、小屋裏の室温が低いですが、タイベックスマートを採用して屋根断熱の夏型結露対策をされています。

以下のようにファンをまったく利用しない冷気の自然落下方式であり、サーモオフを防止するために小屋裏点検口から暖気を上昇させるDIYで作成したプラダンの煙突の設置をしています。

本来、煙突の位置はエアコンの真下か後ろ側が好ましいと思いますが、間取りの関係でエアコンの下が居室であることから、ホールの位置に小屋裏点検口および煙突を設置しています。

最後に

エアコンの風量によって顕熱比が変化することは既にわかっています。また、F式はエアコンの上にフィルターやタオルを置いて風量を絞ると誤解されていますが、それはあくまで裏技です。

基本的には梅雨時期など室内が寒い時は再熱除湿運転や除湿機併用の運転を推奨しております。ただ、消費電力を下げたいという方において裏技を使っているということになります。

また、エアコンで除湿をする際に風量を絞り顕熱比を下げた方が良いのか、風量を上げて顕熱比が上がってもCOPと消費電力を増やすことで除湿量を増やしたら良いのか非常に悩ましい論点です。

これはどちらも正解であり利用する時期の問題だと思います。梅雨時期など冷房負荷が低い時期に消費電力を下げながら室温低下を抑制して除湿をしたい場合は風量を絞るとよいでしょう。

一方でエアコンに負荷のかかる盛夏においては、風量を上げてCOPを伸ばしながら除湿量を増やすという考えになると思います。実際にF式でも盛夏には風量を増やす人はいます。

F式は風量を常に絞っているというわけではありませんが、梅雨時期に相対湿度を60%以下に落とすということを基本としているため、風量を絞る運転からスタートしているだけです。

一方で、設定温度が25℃で風量自動といった運転では室温が低い時期ではエアコンがサーモオフしやすく、室温の上昇する盛夏は除湿ができるものの梅雨に除湿不足になりやすいと思います。

サーモオフしやすい小屋裏エアコンの事例をみていると梅雨時期に居室の相対湿度が60%を超えている事例がありますが、F式では入居初年度からコツを掴めば60%を切れるようです。

そして、高性能な新居に入居する前のボロアパート(言い方失礼)でのF式の練習運転でもしっかりと除湿ができている事例も報告されています。以下はF式利用施主のツイートです。

x.com

F式はこれまでのエアコン運転の常識と異なるためなぜそんなに顕熱比が低く除湿ができるのかと理解に苦しむと思いますが、施主の報告や計算から事実は明らかになりつつあると思います。

私が一条工務店の施主であることが誤解の原因なのかわかりませんが、F式全館冷房は超高断熱住宅だけのものではなく、三種換気やZEH~G3の断熱性能の家まで幅広く採用されています。

そして、F式の運転はだれでも取り入れることができるため、まだF式を試したことがないという方でも、もっと除湿をしたいと思うのであれば試してみる価値はあると思います。

スイッチボットが2個あれば顕熱比を測定できます。そして、風速計とワットチェッカーがあればCOPが実測できます。今後、さらに施主たちによってエアコンの謎が解明されていくでしょう。

コストを含めて色々な個別冷房・全館冷房方式がありますが、良い部分は参考にして誰にでも簡単に快適な生活が提供されるようになればいいなと思います。

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