ハニカムシェードの下を少し開けるってどうなの?

考察

はじめに

本日は冬になると必ず一条施主の間で話題となるハニカムシェードの結露の話です。

全商品ではありませんが一条工務店の窓にはハニカムシェードという断熱スクリーンがついています。新住協も断熱スクリーンを推奨していた時期(今も?)があったのでポピュラーですよね。

一条工務店のハニカムシェード(以下、ハニカム)には全閉すると結露する可能性があると記載されておりますが、開けたら断熱効果が下がるのではないか?と疑問に思うでしょう。

そして、寒冷地の施主と加湿をたっぷりしたい施主はハニカム少し開けないと窓が結露するからどうしたらいいの?と試行錯誤していると思います。

また、先日にグランセゾンに入居された方のライブ中継で窓を見せて頂きたのですが、グランセゾンは断熱スクリーンの両サイドに断熱レールがないタイプなんですね。

ということで、本日はハニカムの下を少し開けた場合と断熱レールがない場合などについて計算から考察してみたいと思います。

断熱スクリーンの性質

一般的にはセイキ社のハニカム・サーモスクリーンが有名だと思いますが結構高額なんですよね。一条工務店はアメリカから特許を買い取ってフィリピンの工場で作っているみたいです。

先日、2個並んでいる窓にデータロガーを設置して、ハニカムを下げている窓とハニカムを上げてる窓の窓際の絶対湿度を測りましたが結果は同じでした。

ハニカムは不織布で出来ているため水蒸気はツーツーに通っているようでした。つまり、空気はあまり通さずに断熱効果は発揮するけど水蒸気は移動しているということです。

この「断熱すれども防湿せず」というハニカムの性質が窓の結露問題を引き起こしています。窓をコロナマスカーなどでしっかり塞いで水蒸気を窓に入れないようにすれば結露しないはずです。

ハニカムの素材がビニールなら防湿層となって良いのではないかと思うことがありますが、開閉可能な状態で水蒸気が動かないほどに密閉できるのか良く分かりません。

断熱レールの性能は?

セイキ社のサイトに断熱スクリーンと窓を組み合わせた熱貫流率の資料があります。これは私が二軒目の家で内窓を付けた際に窓の熱貫流率を計算する際に参考にしたサイトです。

ただ、情報が10年前から変わってないようで、窓が2.33Wのアルミ樹脂複合サッシまでしかありません(最近のアルプラはもう少し性能が上がっていると思います)。

(出典:セイキ社

上記の※2は(財)建材試験センター実験参考値を基に算出した試算値ということですが、断熱スクリーンを設置した場合、断熱レールがある場合とない場合の熱貫流率が記載されています。

ここからハニカム単体の熱貫流率を逆算すると断熱レールなしの場合は4.0W、レールありの場合は3.3Wであり、17.5%の断熱性能の差と計算されますのでそれをもとに計算を続けます。

ただ、ハニカムの断熱レールのあるなしを家全体で考えればグランセゾンではQ値が1.19Wから1.21Wに増える程度の話です。

どうすれば窓は結露しないの?

窓の結露について良くある説明は室内25℃湿度50%の場合、重量絶対湿度10グラムの露点温度13.9℃で2.9Wのペアサッシは外気温4℃まで結露しないというものです。

私が無償で提供している結露計算ツールはこのJISの計算をしているだけです。ただ、JISの計算は室温と絶対湿度の設定が高いため室内を22℃40%(絶対湿度7.8g/m3)として計算します。

ダブルハニカムシェードを全閉した場合の窓が結露する外気温を計算してみます。露点温度の記載については、部分結露/全面結露という意味です。

サッシ ハニカムあり ハニカムなし
区分 U値 断熱レールあり 断熱レールなし
トリプル樹脂サッシ 0.80W ▲5℃/▲16℃ ▲7℃/▲19℃ 結露せず
ペア樹脂サッシ 1.72W 4℃/▲4℃ 3℃/▲6℃ ▲14℃/▲39℃
ペアアルミ樹脂複合サッシ 2.33W 6℃/▲1℃ 5℃/▲2℃ ▲19℃/▲37℃

窓の部分結露については窓枠は断熱性能が弱いため結露しやすいのと、アルミスペーサーを採用している窓が結露しやすくなるので樹脂スペーサーがお勧めです。

さて、計算結果からいうと、断熱性能の高いハニカムは寒冷地での運用が非常に難しいことがわかります。一方でハニカムの下を10cmでも開ければ空気が動いて結露は防止できるでしょう。

まぁサッシが部分結露しても日中に乾く程度なら問題ないですが、ふき取るような量の結露だと面倒ですよね。

アルミ樹脂複合サッシは結露すると言われますがそれは室温が低い場合であり、室温15℃60%(絶対湿度7.7g/m3)の室内では外気が0℃で窓が部分結露すると計算されます。

ハニカムなしのトリプルサッシは室温22℃で相対湿度40%ではまったく結露しませんが、相対湿度を60%にした途端に窓の部分結露が▲21℃から発生すると計算されました。

外気温が▲5℃以下になる寒冷地の住宅ではハニカム全閉で結露をまったくさせないというのは難しいです。結露をさせたくなければ加湿をしないかハニカムの下を開けるしかありません。

一方で断熱レールがない窓の方が熱が若干逃げるため窓の温度が上がり結露し難くなるという計算結果となりました。今後、実際に計算通りになるのか知りたいところです。

ハニカムは断熱性能が高すぎて窓が結露してしまうので寒冷地では運用が難しいですが、Q値やUA値を良くするにはすごい効果があります。

では、どうすれば良いのかというと内窓を設置する方法が良いと思いますが、内窓は開き戸以外は気密性能を上げることが難しいため、掃出し窓や引き違い窓の結露対策には向いてないのです。

先日、らくじゅの本橋さんが「窓塞ぎの術」という動画を上げていました。ご本人も言ってましたがこれは結露する可能性があると思います。防湿処理が甘ければ結露するでしょう。

『【もう買っちゃった家のリカバリーの方法って?④】イラない窓を壁に変える!!窓塞ぎの術!!ラクジュ』
こんにちは!ラクジュの本橋です。 今日の動画は、大変な大作です!!疲れました!! 忍法、窓塞ぎの術!!リカバリー方法の劇薬、イラな窓をなくしてしまえ!!てな感…

窓の表面温度は違うの?

コールドドラフトの原因ともなる窓の表面温度は住み心地に大きく影響します。外気が0℃で室温22℃の場合、各窓の表面温度を計算してみました。

サッシ ハニカムあり ハニカムなし
区分 U値 断熱レールあり 断熱レールなし
トリプル樹脂サッシ 0.80W 20.8℃ 20.7℃ 20.1℃
ペア樹脂サッシ 1.72W 20.3℃ 20.1℃ 17.8℃
ペアアルミ樹脂複合サッシ 2.33W 20.1℃ 19.8℃ 16.4℃

室温はWHOが推奨する18℃以上は欲しいところですが、輻射暖房で実現しようとすればハニカムが設置されていないとトリプルサッシ以外は窓の表面温度が18℃を切ってしまいます。

ハニカムを上げて空気が対流してしまえば結露は防止できても断熱効果は減るでしょう。ハニカムを上げるとQ値がトリプルサッシで6%ほどペアサッシで14%ほど悪化する計算になりました。

ただ、ハニカムを全開しなければハニカムの表面温度は窓ガラスより高いためハニカムを少し開ける行為はコールドドラフトがなければ住み心地の面からは意味があると思います。

なお、サッシの材質にアルミを使っているから悪いという訳ではなく断熱性能がよければサッシはなんでもかまいません。アルミを使いながらも高性能なサッシも出てくるかもしれませんね。

窓は景色をみることもできますし日射熱の集熱器でもありますから、家の立地や日当たりなどによって色々な判断があってしかるべきで、何でも断熱が優先というわけではないでしょう。

ただ、大きな窓を採用する場合は高性能な窓を採用すると住み心地と共存することができます。

最後に

ハニカムは寒冷地や加湿をたくさん行いたい住宅では扱いの難しい設備です。

そして、サッシはトリプル・ペア・アルミ樹脂複合など沢山の種類がありますが、私は予算があれば温暖地においてもトリプルサッシをお勧めします。特に冷え込む大きな窓にはお勧めです。

その理由は結露に強く表面温度が高いため窓際のコールドドラフトが発生しにくいという住み心地を考慮してのことです。コールドドラフトを殺さないと室温が高くても暖かく感じないですよね。

また、部屋が寒くて床が冷たいのに床材を無垢にすれば床暖房はいらないなんて話はおかしいと思いますね。まずは省エネにしっかり居室を18℃以上に暖房できる家を設計すべきでしょう。

昔の家は家全体が寒いため窓などから発生するコールドドラフトに気が付かないのですが、室温が高い家に住むとたかだか数℃の温度差しかない冷気の流れに気が付くと思います。

コストだけを考えて単純に暖房エネルギー収支を考えれば窓枠が薄いアルミ樹脂複合サッシとトリプルサッシは変わらないという計算がありますが、夜間の窓際は4℃近く温度が違います。

もちろん、暖房器具を効果的に配置して補うことができれば窓の表面温度が18℃以下でも構いませんが、壁や天井と温度差があると窓の方向がなんだか寒いという感じがするでしょう。

多くの人が高性能な窓を望めば、将来的にはトリプルサッシの価格が下がるという量産効果が期待できると思います。将来、自分の子供が家を建てる時代には普及していて欲しいものです。

ただ、コスト的にトリプルサッシの採用は厳しいという方もいると思いますから無理はしなくて良いと思いますが、政府や自治体がトリプルサッシに補助金をつけてくれないかと思いますね。

さて、本題のハニカムを少し開けるという行為については暖房エネルギーが少し上がるものの窓ガラス表面温度よりハニカムの表面温度が高いため住み心地という点では意味があると思います。

冷輻射という言葉がありますが、あれば表面温度が低い場所から暖かさが得られない現象です。

そして、グランセゾンのように断熱レールがない場合、熱が少し逃げるため窓の温度が上がって逆に窓が結露しにくくなるという計算結果でした。

どこまで加湿して良いのか窓の結露についてはこちらの計算ツールを使えばおおよそ分かりますので興味のある人は使ってみてください(窓用のシートをご利用ください)。

計算ツール
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室温をしっかり上げないとすぐに窓が結露しますから暖房代をケチれば窓が結露します。ただし、室温を上げると乾燥しますから、そこで加湿するかしないかは非常に判断が難しいです。

我が家は室温21℃40%程度で加湿しなくても問題がないのでハニカムを全閉しても窓は結露しませんが、たくさん加湿をしたい人は一条の注意書き通りにハニカムの下をあけると良いでしょう。

 

本日は以上でございます。

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