じめじめした梅雨真っ盛りですね。本日は我が家の日立エアコンの冷房についての考察です。
ダニやカビを発生させない方法は除湿
最近では国民の2人に1人はアレルギー疾患だということです。アレルギー疾患の多くはハウスダストの大部分を占めるダニの糞や死骸が大きな原因となります。
布団を外に干しても布団にいるダニは日射の当たらない方に移動するだけでほぼ死なないということは多くの方はご存じだと思います。
そして布団乾燥機などでダニを駆除しても部屋中にダニが住める場所はありますから、布団だけダニ対策をしても残念ながら焼け石に水になってしまうでしょう。
実は高気密高断熱住宅ではダニの駆除は非常に簡単で24時間室内の湿度を60%以下に保てばダニは乾燥によって生きられないのです。併せて低湿度な室内ではカビがほぼ発生しなくなります。
掃除も布団干しも何もしなくてもダニがいなくなるなんてズボラ生活の極みとも言えますが、その他にも湿度が低いと洗濯物が部屋干しで乾くなどのメリットがあります。
ただ、計画換気をしている限りは外部の湿った空気が室内に給気されますから24時間ずっと除湿をし続ける必要がありますし、窓を開けた換気やお風呂の換気扇を利用することは、湿った外気を計画換気換気以上に室内に取り込むことになるためむしろダニの発生を招くでしょう。
低コストに除湿をする方法
24時間、家中を除湿した状態に維持するためには電気代が心配ですよね。
除湿機を利用されても良いですが除湿量ではエアコンには敵わないことと除湿機は室内に排熱がされてしまい高気密高断熱住宅では室温が上昇してしまうため長時間の利用は難しいでしょう。
一番、コストが安く沢山除湿する方法はエアコンを利用する方法で、エアコンの冷房運転は冷たい風が出てくると共に除湿が沢山なされます。
ただし、外気温と室温の低い梅雨の時期にエアコンの冷房運転を行うと高気密高断熱住宅では室温が下がる影響でエアコンの運転が止まり除湿が十分に出来ないという現象に遭遇します。
エアコンは設定温度に室温が到達すると運転が止まって送風状態になり、これをサーモオフといいますが、エアコンのサーモオフを回避するためには様々な方法があります。
窓を開けて日射熱を取り込んだり、除湿機を冷房運転のエアコンの下で動かしたり、別々のエアコンで暖房と冷房を使う方法もあるでしょう。
エアコンの温度センサーをだますためにエアコンの温度センサーに対して熱を与える方法などもありますが、最も簡単で快適な方法は再熱除湿方式のエアコンを採用することでしょう。
再熱除湿とは
除湿された冷たい空気を再度温めることにより室温を下げずに除湿をする方式であるため電気代が高額になるというのが一般的な再熱除湿方式の説明だと思います。
エアコンの設定温度を室温と同じ温度にした場合、高くした場合、低くした場合で消費電力どのように変わるかを自分の目で見たことがある人は少ないと思います。
消費電力が多いと思われている再熱除湿機能が付いているエアコンは現在では、再熱除湿の本家の日立、三菱電機、富士通ゼネラル、コロナの一部の機種にしか搭載されていません。
これは東日本大震災後のエアコンの省エネ競争によって、除湿を軽視して室温調整に特化した省エネエアコンが各メーカーから発売されてしまった影響によります。
一条工務店はダイキンと三菱のエアコンを取り扱っていますが、再熱除湿があるエアコンは三菱のJVXシリーズのみであり、それ以外のエアコンを採用する場合は見積依頼になります。
ダイキンさんには悪いですが、高気密高断熱住宅の冷房用のエアコンにはダイキンの壁掛けエアコンは絶対にお勧めしません。ダイキンのエアコンは暖房用だと私は思います。
よく再熱除湿方式と誤解を受けるダイキンのデシクル制御によるプレミアム冷房は、弱冷房方式の除湿(ドライ)方式です。
本物の再熱除湿方式のエアコンのカタログには「一般社団法人日本冷凍空調工業会による室温の下がらない再熱方式」と記載があります。
ダイキンのデシクル制御はサーモオフになりにくく除湿が継続できると謳ってますが、エアコン1台での全館冷房が求める除湿量には足りないです。
この理由として室温を重視した省エネ性を追求したため、電子制御により熱交換器を低い温度にできなくなってしまい除湿量が稼げないエアコンになってしまったということだと思います。
エアコン1台全館冷房を行うには、高い気密性能の住宅に一時間に1リットル程度の除湿ができるエアコンを用意して二階のホールなどの広い場所にエアコンを設置すれば良いのです。
再熱除湿の電気代の常識
一般的には東京電力の冷房方式の比較資料が盛んに引用され、再熱除湿は電気代が高いと理解されていると思いますが、これを実際に測定して確かめている人は少ないと思います。
また、私が行っているエアコン1台全館冷房ではこの資料をどう解釈しているか述べたいと思います。
上記の画像の吹き出し口の温度はその通りだと思います。
ただ、私が行っている全館冷房ではエアコンの設定温度は23℃前後、風量最弱、風向き下を基本としていて、ここでいう風量最弱とは上記の弱冷房除湿に該当します。
少ない消費電力で除湿量を増やすにはエアコンを通過する室内の暖かい空気の量を絞り、設定温度を低くすることが必要になりますが、除湿量が増えるれば室温は下がりにくくなります。
エアコンのエネルギーを室温低下よりも湿度低下に振り向けることが弱冷房方式の特徴ですから、これをトコトン突き詰めていけば除湿量が増えて室温が下がりにくくなるわけです。
私は除湿量が足りないエアコンの場合はエアコンに後付けのフィルターを設置してエアコンを通過する空気量を減らすことで除湿量を増やすことを実践しています。
風向きを下にしているのはエアコンの周辺が冷えて設定温度に到達してサーモオフが起きないようにしていますがエアコン周辺が大きく解放されている場合は風向きが下である必要はありません。
私の提唱している全館冷房では弱冷房除湿と再熱除湿を利用しますので、一番左側の冷房運転は使いません。
冷房と弱冷房の違いは簡単に言えば風量の差で、大風量で部屋を冷やす必要があるのはエアコンを必要な時だけ利用する間欠冷房であり、24時間除湿するには連続運転が必要です。
高気密高断熱住宅では少ない冷房エネルギーで室温が下がるため、上記の大風量の冷房運転では家の中が冷え過ぎてしまいますから、弱冷房を24時間連続することで除湿を維持します。
東電資料の計算条件は22.86kWh/円であり、単純計算では以下のような冷房費用になり、一般的には再熱除湿が高額と理解されていると思いますが、これは運転方法次第です。
冷房 24時間×30日×11.0円/h=7,920円/月
弱冷房除湿 24時間×30日×4.1円/h=2,952円/月
再熱除湿 24時間×30日×14.9円/h=10,728円/月
繰り返し述べますが、私の提唱しているエアコン1台全館冷房は人から離れた場所に設置したエアコンで24時間弱冷房方式を行うことで冷房病を予防することを基本としています。
上記の弱冷房除湿はまさに1日20リットルを達成している状態です。この除湿量があれば一般的な住宅のサイズでれば室内の相対湿度が60%未満となりカビやダニが防止できます。
ただ、エアコンの設定温度が27℃と高い場合などは、室温は下がると思いますが、サーモオフになる時間が長いため除湿が足りない状態になります。
一条工務店から入居時に頂ける温湿度計は湿度が10%程度低く計測される傾向にあると思いますから、ぜひ他の湿度計を購入されて比較されると良いでしょう。
実際のエアコンの運転
前置きが長くなりましたが、本題の再熱除湿運転の電気代についてです。
私は実践や測定に基づかない意見は誤解を招くと思っています。その理由として試したみたら事前の想像と現実が全然違うということが良くあるからです。
再熱除湿の消費電力が高いというデータが独り歩きしていますが、高気密高断熱住宅ではデータがそのまま適用できるのかどうかを実際に測った人は少ないでしょう。
今回はi-seriesⅡに設置した2018年製の日立の8畳用の再熱除湿エアコンにて計測しています。本当は6畳用のエアコンが良かったのですが寒冷地エアコン最上位機種は8畳用が最小容量でした。
日立のエアコンの再熱除湿は状況によって、冷房・再熱除湿・暖房と切り替わるため、他メーカーの再熱除湿とは挙動が異なるでしょう。
また、どなたか一条施主に普及している三菱のJVXの消費電力と吹き出し口の絶対湿度がどこまで下がるかを測ってみてくれないかなと思います。
測定にあたって
ワットチェッカーという消費電力を測る機器を使っていますが、瞬間的な撮影内容であり実際のエアコンの消費電力は動いてますので参考までにご覧ください。
また、ワットチェッカーで消費電力を測りたいという方については、エアコンには利用しないでくださいと注意書きがある商品は使わないでください。
通常のワットチェッカーは1500Wまでで、小型エアコンを24時間使っている場合は壊れることはないと思いますが、大きな負荷をかけるとワットチェッカーが壊れます。
100Vの平行プラグのワットチェッカーは市場に出回っているものの、エアコンの中でも平行型プラグだけではないため、よく確認してからご購入してください。
また、200V用のワットチェッカーとなるとプラグの種類を含めて相当に製品が限られてきます。
海外製の安い200Vのワットチェッカーについては、私は電気工事士の資格を持っているので変換プラグの作成して利用していますが、資格がない方は簡単な作業ではありますが、危険ですので行わないようにお願いします。
再熱除湿 24℃設定 湿度60% 消費電力350W 吹き出し32.6℃
上記は室温を20℃に下げてから再熱除湿を24℃設定での運転ですが、エアコンの吹き出し口の温度は32.6℃で実際に吹き出し口の前に立つと温風のように感じます。
消費電力は350Wと多く絶対湿度が14.2グラムと除湿がされていない暖房運転であることが分かります。日立エアコンの再熱除湿は設定温度を高くすると暖房に切り替わることが分かります。
再熱除湿 10℃設定 湿度60% 消費電力334W 吹き出し13.7℃
吹き出し口の温度は8グラム、温度は13.7℃と強烈に乾燥した冷気が出ています。先の東京電力の資料における冷房運転に該当し、高気密高断熱住宅では家中がキンキンに冷えてしまいます。
こんな運転は絶対にしないので参考までのテストですが、日立のエアコンはしっかり湿度が下がることがわかります。
再熱除湿 22℃設定 湿度60% 消費電力210W 吹き出し18.7℃
室温と同じにした再熱除湿の設定温度にしました。吹き出しの絶対湿度が10.4グラムとしっかり除湿ができています。
消費電力はエアコンのコンプレッサーが稼働しているときは200W~250W程度ですが、設定した湿度になると消費電力が落ちるため、常時200W前後というわけでもありません。
エアコン1台で全館冷房を行うにはエアコン吹き出し口の絶対湿度が12グラム以下になっていれば可能だと思いますが、10グラムを切れるエアコンの実力があれば安心です。
設定温度が22℃の再熱除湿は部屋が冷え過ぎない状態であり、単純計算ではありますが電気代を東電の資料と比較すると再熱除湿の電気代にかなりの相違があることが分かります。
東電資料 24時間×30日×14.9円/h=10,728円/月
実測 0.25kW×24時間×30日×22.86kWh/円=4,115円/月(単純計算)
東電の資料では平成14年の実験であることと住宅の性能が記載されていないため、なんとも比較のしようがありませんが、月に4千円なら許容できる電気代だと思います。
ただし、日立の再熱方式は設定温度を室温近くにして湿度を60%に設定しておけば、湿度が60%を超えた時にだけエアコンが稼働するため、消費電力は常時発生していない状態でした。
弱冷房除湿 21℃設定 風量最弱 風向き下 消費電力106W
おまけで弱冷房方式の状態です。23℃の冷房運転ではサーモオフしてしまったため、21℃まで設定温度をさげましたが、吹き出し口の絶対湿度が9.4グラムと十分に除湿がされています。
ただ、吹き出し口の温度は12.1℃と低いためこれでは室内が冷えすぎてしまいますので、再熱除湿に切りかえるか、服を着こむ必要があります。
消費電力は104Wと非常に少なく、この100W前後の消費電力の状態を私は全館冷房の魔界と称していますが、ワットチェッカーがないとここまでのコントロールはできないでしょう。
記録をみると私が二代目の家の時の盛夏の8月における全館冷房のエアコンの消費電力は115Wでした。これは再熱除湿が付いていた時代のダイキンエアコンを使っていました。
エアコンの消費電力が夜間は100Wを前後で安定し、日中は200Wを超え、平均して160W程度になる状態であり、私がエアコンの運転を突き詰めていった結果です。
最後に
寒冷地に建つ四代目として初めて本格的にエアコンで除湿をしましたが、標高が高いということなのか、外気の絶対湿度が高くなる時期が温暖地よりも遅かったです。
そして、標高が高いため梅雨時期の外気温が低いことから冷房運転による除湿では部屋が冷えすぎてしまい、再熱除湿機能がエアコンにないと住み心地が悪化する結果となりました。
再熱除湿の電気代は弱冷房よりも多いことは間違いないです。また、再熱除湿は冷房した空気を室温近くまで温める方式ですからエアコンの設定温度を高くすると消費電力が増えるようです。
ただし、日立のエアコンで再熱除湿を使って分かったことは、室温に近い設定温度であれば湿度が上昇した際に弱冷房運転並みの消費電力で間欠運転がされるため消費電力は少なかったです。
また、現在の住宅やエアコンの性能を考慮すると、一般論として頻繁に引用されている東京電力の資料が古いため再熱除湿の電気代の高いというイメージが独り歩きしている感があります。
梅雨時期における高気密高断熱住宅では現状では以下のような冷房費用になると思いますが、再熱除湿の金額は東電のシュミレーションの冷房運転の電気代7,920円/月より低いと想定されます。
弱冷房 150W×24時間×30日×@28=3,024円/月
再熱除湿 300W×24時間×30日×@28=6,048円/月
さらぽか空調 600W×24時間×30日×@28=12,096円/月
梅雨のじめじめとした洗濯物が乾かない季節に月6,000円の電気代で洗濯や掃除などの家事が楽になるとすればこれを高いと判断するか安いと判断するかは人それぞれだと思います。
また、一条施主は冬の床暖房の運転をみても省エネはほどほどで快適志向の方も多いと思いますから、弱冷房運転で室内が寒くなるぐらいなら躊躇なく再熱除湿を利用されることでしょう。
さらぽか空調やエアコン1台全館冷房を行っている家では夏の熱帯夜という現象が室内では分からなくなり冷房病からも解放されるため夏バテがなくなるので元気に仕事や学業に勤しめます。
電気代が安いか高いかというのは快適性や健康との兼ね合いになりますが、夏バテとダニやカビを予防するコストとしてはさらぽかやエアコン全館冷房の費用は安いと思います。
そして、世間の情報に惑わされることなくご自分の手で消費電力を測り、住宅の性能に応じた温度と湿度のコントロール方法を学べば、もっと電気代を下げることができるでしょう。
これから家を建てる方は家を建てる前に測定機器を購入されて現自宅で色々なことを測定してみると良いと思います。何千万円もかける家作りから見れば測定機器はそんなに高額ではありません。
その少しの出費を出し惜しんで、住み方や家作りの判断を間違ってしまったら、後で悔やんでも悔やみきれないかもしれませんよ。
本日は以上でございます。