東京と大阪はどっちが夏に暑いの?

考察

はじめに

新住協の鎌田先生の書籍をみると、東京と比べて関西の夏は暑く夜間もエアコンの運転が必要だと書かれていますが、夏の夜に常時エアコンが必要なのはもはや関西だけではないと思います。

長年関東に住んできた私としては関東の夏もかなり暑いため関東の夜間もエアコンが必要だと思っていますし、近年は北海道においても夏の夜間にエアコンが必要ではないかと感じています。

私は「地域に応じた家作り」という言葉はかなり厄介だと思っていて、住宅会社によってはそれらしいデータを示しつつ、かなり適当なことを言っていると感じることがあります。

ということで本日は「東京」と「大阪」、「札幌」と「那覇」を比較して、夏のエアコンの必要性について検討してみたいと思います。

気象庁のアメダスのデータを用いますが、一回にダウンロードできるデータ量が限られているため、2021年5月15日~9月30日までの1時間ごとのデータとします。

気象庁|過去の気象データ・ダウンロード
気象庁が提供するページです

「外気温」、「絶対湿度(g/m3)」、「全熱(kJ/kg)」3つの指標を使いますが、全熱の計算は1時間ごとの現地の気圧(hPa)から重量絶対湿度(g/kg)を求めて計算しています。

1時間おきのデータを用いる理由は1日の平均気温と平均相対湿度から絶対湿度を計算すると1時間間隔の絶対湿度とはかなり異なった数値となってしまうためです。

今回は2021年という単年度での考察であることから、長期的なデータを利用する学者の方々とは意見が異なる可能性がありますが、気候変動が激しい近年の考察だと思ってください。

計算結果は以下に保存しておりますので興味があるかたは御覧ください。

気象データ比較.xlsx
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外気温の比較

東京と大阪の外気温を比較すると大阪のほうが暑いため、定説とおりの結果です。ただ、暑さ指数(WBGT)では反射する日射を考慮した温度になるため外気温だけでは体感温度はわかりません。

 

札幌と那覇を比較すると真夏はむしろ札幌のほうが暑い日があることが分かり、北海道ではフェーン現象やヒートアイランド現象によりかなり暑くなるためエアコンが必要だとわかります。

寒冷地は夜に窓をあけると寒くて風邪をひくし、高断熱住宅は窓を閉めると暑いという現象が起きやすいため、寒冷地には室温安定のために再熱エアコンがあると便利だと思います。

絶対湿度の比較

最近は施主においても「みはりん坊W」を利用する人が増えてきて、絶対湿度が手軽に確認できるようになりました。

25℃・60%の絶対湿度は約14グラムですから窓を開けて快適なのはここまでですが、窓を閉めると生活排湿による湿度上昇があるため私は外気が12グラムを超えたら窓を閉めて除湿をします。

 

絶対湿度で東京と大阪を比較すると東京の方が絶対湿度が高い時期があり、絶対湿度が25g/m3を超えてくると可変調湿しない防湿シートでは計算上は壁内結露が発生しやすくなります。

 

沖縄は5月においても絶対湿度が20グラムを超えています。北海道においては窓を開けると寒いけど絶対湿度が14グラムを超えている時期があるため除湿が必要でしょう。

北海道はカラッとしていると想像する人が多いと思いますが、実際の気温は温暖地より低いけれど絶対湿度はそれなりに多い時期があるのでエアコンによる除湿は必要でしょう。

また、寒冷な地域ほど夏の室温が低いためエアコンに再熱除湿があると便利ですが、夏も日射熱を窓から取得できるように寒冷地の日射遮蔽は軒よりスダレの方が合っていると思います。

なお、再熱除湿の消費電力が大きいという話は、ワットチェッカーで実測すると冷房の1.2倍程度でした。ただ、中には再熱の設定温度が高くてヒーターの消費電力を食っている人がいます。

室温が上昇する真夏に再熱は利用しませんから再熱と冷房の消費電力の比較はセーターとコートのどちらが温かいかと言っているようなもので、使う時期が違うので比較の意味がないと思います。

私自身は再熱除湿を使わずに全館冷房ができますが、人には住み心地の良い再熱エアコンを勧めます。二階のエアコンを小さくすれば再熱エアコンにしてもコスト増は知れているからです。

全熱の比較

全熱(エンタルピー)とは、空気が抱えている温度(顕熱)と湿度(潜熱)の熱の全てを足したもので、一種換気でよく採用される温度と湿度を回収する全熱交換換気扇の全熱のことです。

今回の記事で言いたかったことは「気温」や「絶対湿度」よりも「全熱」を比較した方が地域ごとの夏の暑さが理解しやすいのではないかということです(単位は空気1kg当たりの熱量です)。

外気の全熱を観察していると、関東の梅雨では全熱が70を超えて晴れ間が続くと梅雨明け宣言が出る傾向にあるため、私は空気の中の全熱が70を超えた状態が真夏であると考えてます。

 

東京と大阪を比較するとピーク時の全熱では東京のほうが高い結果になります。

 

那覇はずっと全熱が高いことがわかりますが、札幌においても7月中旬~8月上旬まで全熱が70前後にあるため、1か月弱の期間はしっかりと「夏」があることがわかります。

最後に

東京と大阪のどちらが夏は暑いかということについて、直近の全熱でみれば東京のほうが暑いという結果でした。まぁ、どっちもかなり暑いので比較の意味が無いとも言えます。

また、北海道はエアコンが不要であるというのは過去の話であり、現在の北海道には1か月弱の期間は夏がしっかりと存在していることがデータからも分かります。

日本人は窓を開けることを好みますが、風向きを予測して涼を得る設計の方がギャンブルであると思いますから、私は何千万円もかける家作りではエアコンの利用が優先だと思っています。

間取りを作ってからエアコン設置場所を考えるケースが多いと思いますが、全方向の窓を大きく取ると壁が少ない間取りになり、残った壁にソファーやベッドとエアコンが並んでしまうでしょう。

そうなると、ソファーやベッドにいる人にエアコンの冷気が直撃して冷房病になるという悪循環が起きて「エアコン嫌い」というエアコンが悪者になるというおかしな話になってしまいます。

エアコンは人から離れた場所に設置しないと冷房病になる人がいますし、性能の上がっている最近の家では6畳用のエアコンを6畳の部屋に設置すると寒くて仕方がないです。

日本全国、夏の夜にはエアコンが必要ですが、エアコンは人から離れた場所に設置したほうが良いと思いますから最初からエアコンの位置を意識しながら間取りを作ると良いと思いますよ。

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