間取りの失敗の原因の大半は窓とエアコン
「家は三軒建てないと満足しない」と言われますが、一方で現代はインターネットに情報が溢れる時代。果たして、どちらが本当なのか注文住宅を四軒建てた私が現状を分析したいと思います。
まず、ハウスメーカーの設計士さんは設計事務所の設計士さんと違って施主の意向を強く遮らないため、結果的にデッドスペースが増えたり窓の使い方が良くない家になる場合があります。
つまり、冬に床暖房で快適な一条ハウスにおいても、冬以外の季節が快適かと言われると窓の選択次第で、快適と感じる方と快適ではないと感じる方に分かれるということになるでしょう。
また、隣家の目線や日当たりといった問題が家作りに大きく影響する都市部においては、大きな掃出し窓や引き違い窓の採用は本当にそこに必要なのか注意しながら選択した方が良いでしょう。
高気密高断熱住宅が得意な設計事務所では南側以外は大きな窓は多用しないですが、一条施主においては日本家屋の風習に従って大きな掃出し窓や引き違い窓をふんだんに使う方が多いです。
大きな窓を沢山採用するとエアコンを設置するための壁が減るため、多くの方はエアコンの設置位置が良くない間取りになってしまい、エアコンの位置が良くないと不快な住み心地になります。
注文住宅であるから好きな間取りにしたいと思うことは当然ですが、一方で高気密高断熱住宅の四季折々の室温変化を知らずに好きな窓を選択すると住んでから後悔することになると思います。
今は受け付けておりませんが、以前にエアコン1台全館冷房の間取り相談をしていた際に窓のチョイスが余り良くない方が多く、日本家屋は窓の性能と共に窓の選択に課題があると感じています。
本日は間取り作りの失敗の多くの原因となっている窓を中心とした事例をご紹介しますが、家作りは難しいですから失敗は付き物です。
役に立たない参考間取り図という落とし穴
初めて家を建てる方は間取り図集を参考にされる方も多いでしょう。
一般的な間取り図は生活動線は考慮されていると思いますが、エアコンの位置は考慮されていないと思いますから、間取り図はそのまま使えるものではありません。
エアコンの位置が良くないと実際に住んでからエアコンの風が気になったり冷房病を招きますが、間取りを作成する時点において何故かエアコンの位置の考慮が漏れてしまう人が後を絶ちません。
エアコンの位置を最適な場所にした場合、参考間取り図の間取りは大きく崩れると思いますから参考間取り図は実に不完全なものであるといえます。
エアコンの位置より間取りを優先に家作りを考えたい場合はさらぽか空調などの全館空調システムを導入すべきですが予算が足りない人も多いでしょう。
多くの設計士さんについても、間取りを作ってから余った壁にエアコンを設置しているような状態であり、私は間取りにおいてエアコンの設置場所は生活動線と同等に重要であると思います。
日本家屋の間取りの最大の問題は窓が多すぎて壁が少なくなってしまうことからエアコンを設置する壁がなくなってしまうことであり、世間の間取り図集は致命的な問題を抱えています。
入居してみてエアコンの位置を失敗したと感じている施主は殆どだと思いますが、エアコンからの風がソファやベッドなどの人が常駐する場所に直撃することは窓が多い間取りでは必然なのです。
ぜひ、生活動線だけでなくエアコンの位置まで考慮した間取り作りをしてください。
小さな子供が転落しそうな高さの窓
一条工務店の場合、窓は床からの高さで設定がされていて大まかに言えば床から、+244mm、+782mm、+1238mm、+1541mmの4種類の高さがあります。
二階の窓については床から+782mmの高さの窓を選択する方が多く、建築基準法で認められてはいますが、小さな子供が誤って転落する恐れがあると思うためお勧めしません。
一階の窓においては通行人と目線を合せたくない場合は+1541mmの窓、二階については転落防止のために+1238mm以上の窓を選択すると良いと思います。
(2022/05/04加筆)一条工務店の二階の窓の高さは標準が+969mmに変更になったようです。
外から丸見えの家
隣家と窓が重なってしまった場合、透明ガラスの場合においてはカーテンやハニカムシェードを閉めっぱなしになってしまいますから、隣家と窓が重なる場合はカスミガラスをお勧めします。
また、通行人の多い道路側に設置した窓については、外からの視線を気にしてカーテンやハニカムシェードを閉めっぱなしになってしまうため、+1541mmの高い位置の窓が良いでしょう。
やはり、窓は外部からの視線にどう対応するかを良く考えて選択しないと、大きな窓を採用したメリットがなくなってしまいます。
外部からの目線が気になってカーテン等を開けられない大きな窓より、外部からの目線うまくさえぎってカーテン等を開けられる小さな窓の方が住みやすいというケースもあると思います。
吹抜けの窓を見れば分かる通り、窓は高い位置にあれば部屋が明るくなりますから各居室においても、何となく掃出し窓や引き違い窓を設置せずに、窓の高さに拘ると良いと思います。
外観上バラバラな窓
これはデザインの問題ではありますが、私はなるべく窓は同じサイズのものを選択して家の一階と二階を含めて、家中の窓は縦と横の設置場所を可能な限り揃えています。
高気密高断熱住宅の設計では南側以外の窓は小さくした方が四季を通じて室温のコントロールが行い易いため、ポツ窓と称される小窓を綺麗に配置すると外観のデザインが良くなります。
ぜひ、窓のサイズは数種類に統一して一階と二階の窓の縦と横の位置を合せると外観が良くなると思います。
冬季に窓から日射取得が出来ない家
冬は窓から日射熱を入れた方が暖房費用は下がります。ただ、都市部での狭小な土地での家作りであれば冬季に一階の窓から日射が入る家の方が珍しいと思います。
高気密高断熱住宅ではパッシブ設計という定番の考え方があって、南側の窓を最大化してそれ以外の方角の窓は少なく小さくするという考えです。
土地の狭い住宅密集地でパッシブ設計をするとなると相当に難しくて、二階リビングにする方法もありますが、日射が取れない場所の窓を小さくして熱損失を減らるという考え方もあります。
窓が大きいことは素晴らしいことではありますが、ケースバイケースだと思います。一方で冬季に日射が取れない窓であっても、景色が良い方向であれば窓を大きくして良いと思います。
窓の日除け不足な家
最近の家は屋根の軒と窓の庇がない家が大半です。このような見た目がすっきりした家は冬季以外について、窓から入った日射熱で室内がオーバーヒートしてしまいます。
南側の窓は屋根の軒や窓庇で対応できますが、それ以外の方角は窓を小さくした方が簡単に対応できます。また、一条工務店ではシェードを設置する金物が標準OPに採用されたようです。
結局、高気密高断熱住宅を快適に過ごそうとすれば、全方向の窓から入る日射を考えねばならず、これに失敗した家は外気温が上昇し始める春から熱帯夜になってしまいます。
このような知識は高気密高断熱住宅が得意な設計事務所から得られる知識であり、無料の間取り一括請求のようなもので得られる知識ではないでしょう。
朝陽と北側の日射という落とし穴
高気密高断熱住宅では窓の面積が大き過ぎると窓から入る日射熱により春から二階が熱帯夜になってしまいます。窓の総面積は床面積の20%以下に抑えた方が良いでしょう。
西日は暑いということはご存じだと思いますが、夜間の室温が高い高気密高断熱住宅では朝陽も同様であり、夏至以降は太陽が北側から回り込むため北側の窓についても問題となります。
また、朝陽や西日対策として遮熱ハニカムを採用される方がいますが効果は不十分であるということと、遮熱ハニカムを下せば部屋が暗くなるため、窓を小さくした方が良いでしょう。
必要のない窓がある家
勝手口や階段を登り切った場所にある窓、人感センサーで点灯するLED照明がある玄関ホールやトイレ等の窓など、当たり前に設置している窓は本当に必要なのかよく考えてみてください。
窓は壁よりはるかに断熱性能が劣ることと、採光に問題がなければ窓が少ない方が壁が増えてインテリアを含めた家作りがうまく行きやすいでしょう。
掃出し窓については人の出入りが必要ではない箇所で採用すると家具の配置がやりにくくなったりと弊害があります。窓の種類・サイズ・高さを含めそこに窓が本当に必要か考えましょう。
ちなみにエアコン1台全館冷房をする場合、エアコンの位置は階段を登り切った場所に通常設置される窓の位置になるため、そこは窓ではなくエアコンを設置する場所なのです。
寒さ対策としてトイレや浴室などの窓を無くす人が増えています。ただ、注文住宅ですからどうしても自然採光が欲しいという場所は窓のサイズや高さに注意して窓を設置されてはと思います。
夏にエアコンの冷気が人に直撃する間取り
掃出し窓や引き違い窓は二枚の引き戸で構成されているため横幅がどうしても大きくなってしまいます。その結果、エアコンによる冷房病が起きるのです。
え?と思うかもしれませんが、幅のある掃出し窓や引き違い窓をたくさん設置すれば壁が減ってしまうため、エアコンを設置できる壁が減ってしまいます。
ソファやベッドについては窓の前に設置される事は少なく、壁に沿って設置されることから、壁の少ない部屋を作ってしまうと、ソファやベッドの前や上にエアコンが設置されてしまうのです。
私には、エアコンからの冷気の直撃をわざわざ人が常駐するソファで受けているという風に見えていて、エアコンによる冷房病とは間取りの問題であってエアコンが悪いのではありません。
夏に一階が涼しくて二階が暑い家
高気密高断熱住宅は室温が均一化するというのは誤解で暖かい空気が上昇するため、冬季は一階の熱が二階に上昇して室温が均一化しますが、夏はそうなりません。
エアコンを二階に設置しなかった場合、一階のエアコンから出る冷気は重たくて上昇せず、窓から入った日射熱は二階に上昇して、一階は涼しいけど二階は暑いという家になってしまいます。
一条ハウスほどの性能であれば小型のエアコン1台で家中が涼しくなりますが、多くの一条施主はなぜか一階だけにエアコンを設置してしまうようです。
私はさらぽか空調を採用した場合であっても、猛暑日に備えた補助冷房として二階の吹き抜けや階段ホールにエアコン設置をお勧めしています。
冬に冷気が発生する寒い家
全館床暖房の一条工務店では吹抜けがあっても寒くないと言われます。ただし、悪い条件が重なると一条ハウスにおいても冬に寒さを感じる家になります。
それは床暖房が入らない場所が重なるケースで、スケルトンのオープンステア階段は下部に床暖房が設置されるため問題ないですが、ボックス階段やシステム収納の下には床暖房が設置されません。
また、玄関土間については寒冷地を除き床暖房が設置されないことと、玄関ドアや窓は壁と比較すると断熱性が劣るため玄関ホールは室温が下がりやすい状態にあります。
玄関ドアについては断熱性能がピンからキリまであるため最高性能のものを選択してください。一条工務店の場合は現在では標準で三協アルミのプロノーバのガラス無しが最高性能だと思います。
トリプルサッシであっても壁の断熱性能の5分の1程度ですから、上記のような床暖房が設置されない場所とボックス階段、玄関土間、大きな窓などが重なると冷気を感じる家になります。
冷気が発生する場所が重なる場合は床暖房の配管が集中するヘッダーボックスを配置したり、補助暖房としてのエアコンの風が冷気に当たるように設置すると良いでしょう。
デッドスペースが多い家
私は一条施主の間取り相談をした際に感じたことは、予算が少ないと仰るにも関わらずデッドスペースが多かったということです。
そして、デッドスペースが多いため建築費用が増大してオプションをつけるお金がないと仰っている方がいて、間取りが迷子になり過ぎていて困っている方も多かったです。
一条施主の定番とも言えるリビングの吹抜けにオープンステア階段を外壁側に設置した間取りは二階の廊下が長くなることから予算が苦しい方は階段を内壁側に設置すると二階の廊下が減ります。
廊下がムダなスペースかどうかは予算次第ですから、ご予算に合わせてご検討ください。
リビング直結のトイレ
家族やお客様がいるリビングにトイレを近設される間取りの方がいます。これは音の観点から後で非常に後悔することになると思います。
私は最低、リビングとトイレの間にドア2枚は必要で可能であれば3枚のドアは間に挟みたいと思っています。やはり、トイレの位置はリビングから遠く離れた場所が良いと思います。
ダニやカビが発生する家
本件は何度も記事にしているため、本日は多くを記載しません。湿度を低く抑えた家は掃除洗濯といった家事が非常に簡単になることから、さらぽか空調かエアコンによる除湿を推奨します。
湿度を低く保つことで、シックハウスの原因となるダニアレルギーの予防につながります。
最後に
本日ご紹介した以外にも家作りの失敗事例は沢山ありますが、まずは大きな失敗から改善していった方が良いと思いますのでご紹介しました。
一条工務店で家を建てる場合、床暖房とさらぽか空調を採用すれば後は窓についてしっかり考えれば、相当に快適な家になると思います。
最近の家作りでは間取りやインテリア以外にも高気密高断熱への対応が必要不可欠ですから、昔に比べて家作りの難易度は上がっていると言えます。
そういった意味で、私は一条工務店のような完成度の高い量産型の高気密高断熱住宅で窓に拘って間取りを考えれば、初めて家を建てる方にとって家作りの失敗が少ないと考えています。
ただ、量産型の高気密高断熱住宅では従来の日本家屋の延長でエアコンの利用を減らした窓の大きい風通しをする間取りを考える人が多く、猛暑日が連発する現代にそぐわない面があります。
また、間取り無料一括請求サービスというものがありますが、私は従来の日本家屋の延長で高気密高断熱住宅を考えると必ず失敗すると思っていますので、ご利用しないことを強くお勧めします。
今後に家作りをされる方は日本の冬季の寒冷乾燥に加えて夏季の高温多湿で猛暑日が連発する気候と高気密高断熱住宅の特性を理解して一軒目からハイレベルな家作りを目指していってください。
本日は以上でございます。