アーバンルーフとは
アーバンルーフとは一条工務店オプションのアルミ庇(ひさし)のことであり、一般的には玄関や勝手口のポーチの屋根として採用するようですが、私は窓庇としても採用しています。
アーバンルーフを窓庇として利用した場合はシェードやカーテンと違って外の景色が見えるということがアーバンルーフの利点です。
ただ、私以外に窓庇としてアーバンルーフを使っている人がいないのではないかと思えるほど、インターネットで検索した画像はほぼ全て玄関か勝手口のポーチの屋根としての採用のようです。
施工面積に入らない
アーバンルーフは出幅(出寸法)については50センチと90センチのものがあって建築基準法に関しても床面積に入りません。値段は出幅が異なっても一緒で、横幅によって価格は変わりますが、概ね1か所10万円程度でした。
多くの方は玄関ポーチには雨除けとして上部にバルコニーか二方向を壁とした屋根を設置していると思います。この場合は坪単価の半額ですから、30万円/坪程度はします。
玄関を家の中に凹ませて、三方向壁にするプランもよく見かけますが、この場合は坪単価満額になるためこれはぜいたくなプランですね。
一条工務店としては10万円のオプションはかなり高額な部類ですが、玄関上にバルコニーを設けると坪単価の半分掛かりますし、建築面積が増えずに玄関や勝手口のポーチに雨除けとなる屋根を付けられるとあって、アーバンルーフは敷地が狭い方などに採用されているのではないでしょうか。
我が家も土地が狭いため玄関庇として90センチ出幅のものを採用すると共に、南側の大きい窓の日除けのために庇として使用しています。
アーバンルーフは総二階の部分にしか付けられない
平屋の玄関にも設置できますが、二階建ての場合は上部がバルコニーなどの場合は下地がないためアーバンルーフは付けられないようです(我が家は2016年8月の着工承諾)。
未確認ですが、三協アルミの「アクセント玄関ひさし」のOEM商品なのかも知れませんが三協アルミ社のカタログには積雪50cm以上の地域には設置しないでくださいと記載があります。
窓庇(ひさし)として利用できる
一条工務店の施主は窓に日除けをする人が少ないようで私は高気密高断熱住宅として普通の庇の使い方をしていると思ってましたが、一条施主の中では珍しい使い方になっているようです。
一般的な庇なら3万円程度だと思いますが、一条工務店のアーバンルーフは作りがしっかりしていることもあって10万円程度と高額です。
南側の1つの大窓の日除けに10万円も出すよりは、手軽に窓を開けて換気するために家全体の網戸代に10万円を出費する人の方が多いのかも知れません。
ただ、網戸を設置しても不在時に窓を閉めている時に日射熱が家の中に蓄えられてしまいますから、窓には日射を遮るものが必要です。
アーバンルーフ以外の固定的な日除けとなるとバルコニーを窓の上に設置する方法がありますが、一階の南側のすべての窓の上部にバルコニーを設置するとコストが掛かってしまいます。
予算が苦しい方については網戸を設置せずに窓の外側にアイプレートを設置してシェードをかけると良いと思いますが、シェードは台風等の強風時は外す必要があります。
二階の南側の窓は屋根の軒を伸ばして日影を作ると良いと思います。標準では80cm弱は出せると思いますから、それで二階の南側の窓の日除けとしては十分です。
屋根の軒や庇は南側の窓の日射制御しかできません。東西は斜めに日射が入ってくるため、窓を小さくするか、大窓の場合は窓の外にシェードを設置すると良いでしょう。
太陽の日射角度は季節によって変わる
東京では夏至(6月20日ごろ)の日射角度が78.4°と最も高くなり、真上から日射が入るように感じますが、朝夕は北側の窓にも日射が入ります。
そして、冬至は31.6°(12月21日ごろ)、春分(3月20日ごろ)と秋分(9月20日ごろ)の日射角度は55°となり、季節に合わせた窓の日射制御が必要です。
冬季は日射を窓から室内に入れれば暖房負荷が減ります。一方で温暖地のQ値の良い家は外気温の上がる5月以降は窓から日射を沢山取り入れてしまうと、春から熱帯夜になってしまいます。
屋根の軒や庇はこの面倒な日射取得のコントロールを自動的に行ってくれ、丁度良い出幅だと、冬季は日射を取り込み、春から夏は日射を遮る優れものです。
日射角度は緯度が高い地域ほど斜めに日射が入りますから、一条工務店が断熱ガラスを採用している冷涼な北海道と北東北においても室内環境は日射の影響は大きく受けるでしょう。
庇の出幅は窓の高さの3割が目安
高気密高断熱住宅は窓の日除けが住み心地を左右すると言っても過言ではないでしょう。少しの日射熱で家が温まる高性能な家ですから冬以外は窓から熱を入れると住み心地が悪くなります。
上記の画像の一条工務店の2445の開き窓は、高さは1364mm(45×30.3cm)、窓枠は上下ともに90mm、アーバンルーフから窓までの距離は190ミリでした。
日影の角度は表計算ソフトのエクセルでは以下の式で簡単に計算できますから、この窓の条件で計算すると、日影を作る「角度A」の部分の角度は71°と計算されます。
=ATAN(h=窓の高さ/庇の出幅)*180/PI()
上図のように、庇を取り付けた場所から窓ガラスの下端までの距離の30%が適正な庇の出幅だと言われています。こちらの計算に関しては、F式日射取得判定シートにありますので、興味のある方はご利用ください。
さて、アーバンルーフの出幅に関しては50cmと90cmの二種類のみですが、あまり出幅が多いと冬季の日射取得が減ってしまいますが、出幅が足りないと春から室内が日射熱でオーバーヒートしてしまいます。
アーバンルーフは二種類しかないため、出幅に悩んだ時は90cmを選択した方が良いでしょう。
理由として温暖地は遮熱ガラスであるため、室内外の温度差が大きい冬季の日射取得による室温上昇はあまり期待できない反面、中間期以降は少しの日射熱でも室内が暑くなるからです。
こちらの、太陽高度検索サイトによると、我が家の本日12時の日射角度は70.23°でしたので、ほぼ計算した71.1°と同じ数値であり、もう窓から日射は入らなくなりました。
”http://keisan.casio.jp/has10/SpecExec.cgi?id=system/2006/1185781259″高気密高断熱住宅は窓から侵入する日射を遮らないと春からオーバーヒートして、窓を開け閉めしないと暑くて過ごし難くなる訳ですが、窓を開けると防犯上の問題も出てくるでしょう。
花粉症の方は窓を開けるとつらいと思いますが、現在花粉症ではない方もいつ発症するか分からないため「窓を閉めても快適に過ごせる家」に設計しておくと良いでしょう。
遮熱ガラスでも暑い
一条工務店では、南東北以南は窓に遮熱ガラスを採用しています。さらに断熱レール付きのハニカムシェードを採用していますから、陽当たりの良い大窓でなければ日射熱をしのげるでしょう。
我が家の東側の窓は遮熱ガラスにハニカムシェードを閉めていても熱がジワジワと室内に入ってきています。ただ、我が家は東西の窓が小さいのでそれほど室温を上昇させません。
そして、大きな窓はハニカムシェードをしていても室温を上昇させると思いますが、大きな窓は見晴らしも良いため、日中はハニカムシェードを開けてしまう家が多いのではないでしょうか。
眺望や解放感を優先すると窓から侵入する日射熱に悩まされることになりますから、眺望や解放感の面からもハニカムシェードが付いている南側の窓にはアーバンルーフは効果的だと思います。
高気密高断熱住宅はエアコンなしで過ごせると誤解している人がいますがそれは無理だと思います。Q値が良くなるほどに、日射熱がちょっと侵入するだけで室温が上昇してしまうからです。
もちろん、Q値が良ければ冷房を少し入れれば家が冷えるため、Q値が良いに越したことはないのですが、なるべく窓の日射を窓の外で遮らないと、室温の上下動が大きくなって住み心地が悪くなってしまいます。
最後に
Q値が良くなる程に窓の日射制御の重要性が増します。一条工務店では特大サイズの大窓がオプションになったようでこれによりオーバーヒートする住宅が減ると思いますが、同時に大窓を付けたい人のためにもっと廉価な窓庇を用意して欲しいものです。
大窓は開放感を与えるため、商品戦略からは外せないと思いますが、「家は性能」の一条工務店ですから、高気密高断熱住宅の基本に戻って、窓の日射コントロールを取入れて欲しいです。
私は1年を通じて窓を開けないため網戸は付けていませんが、網戸が必要かという話は高気密高断熱住宅ではよく話題になります。
網戸はお好みで付けても良いと思いますが、その前に大窓の外側に日除けを付けると室温が下がって窓を開ける機会が少なくなると思います。
これから高気密高断熱住宅を設計する方で、窓にスダレやシェードを季節ごとに脱着するのが大変だと思う方は南以外の窓は小さくして、南側の大窓には庇を設置すると良いでしょう。
そして、温暖地の梅雨以降は窓の日除けだけでは室温上昇が抑えられなくなり、エアコンなしでは室内の相対湿度が常時60%を超えて蒸し暑くなりますから全館冷房で家中を除湿すると快適です。
本日は以上でございます。