はじめに
私は自分が建てたことがない住宅会社は正確な情報を持っていないためブログには余り書いてませんが、本日は高気密高断熱住宅のトップランナーであるウェルネストホームの記事です。
ラクジュさん、松尾設計室など住宅系Youtubeが盛り上がってきているため、ウェルネストホームの存在については避けては通れないと思った次第です。
ウェルネストホームは名古屋を本社として、年間100棟を超える家を全国で建てている工務店と言われるジャンルの中では日本で最高峰の家作りをしていると思います。
創業者の早田さんは家業の左官職人出身という異色の経歴で日本エネルギーパス協会を立ち上げた温熱の鬼と言える人で、Youtubeで家作りに対する熱い想いを語っています。
ただ、ウェルネストホームは一条工務店より坪単価でいうと10万円以上は高いと言われていることから、多くの人が買えるような家ではありません。
私はエアコン1台による全館冷房の相談を一条工務店以外の方からも受けている関係でウェルネストホームの施主からも相談がきたことがあります。
最初にウェルネストホームの図面を拝見した時は、どこの住宅会社か知らずに見たのですが、見た瞬間に高気密高断熱住宅として美しいと感じました。
窓に外付けブラインドがあって、家は真四角に近い形で外壁が凸凹していない形状でした。私を含めて温熱を計算する人にはこれが非常に美しい建物の姿に見えると思います。
ウェルネストホームのスペック
本社と東海地区ホームページに加えて創業者の早田さんのYoutubeから情報を拾い、標準モデルの間取り(今回は桁上断熱として)で性能を計算した場合、以下のスペックになりました。
指標 | 意味 | ウェルネストホーム | 一条工務店 i-series |
UA値 | 断熱性能(小さい方が良い) | 0.22W | 0.20W |
Q値 | 断熱性能(小さい方が良い) | 0.79W | 0.75W |
ηAC値 | 夏季日射取得量(小さい方が良い) | 0.54 | 0.81 |
ηAH値 | 冬季日射取得量(大きい方が良い) | 4.08 | 2.60 |
UA値やQ値といった断熱性能だけでみると一条工務店の方が性能が良いことになりますが、夏季日射取得量の少なさと冬季の日射取得量の多さについてウェルネストホームは相当に優れています。
計算内容の詳細を知りたい方は以下をご覧ください。16番目です。
蓄熱性のために屋根と壁の充填断熱はセルロースファイバー、外壁の外張り断熱は耐火性を重視してロックウールを採用しているため見た目のスペックは一条工務店とあまり変わりません。
セルロースファイバーやロックウールはそれほど断熱性能の良い断熱材ではないため厚みが必要ですが、蓄熱性や防火性など温熱の現れない良さがあります。
ただ、ウェルネストホームの良いところは窓の冬の日射取得量の多さで、一条工務店は日射熱取得についてはまだまだ改良が必要だと思います。
窓ガラス(Low-E) | 窓の日射遮蔽 | |
ウェルネストホーム(想定) | 北側は遮熱、他は断熱 | 外付けブラインド |
一条工務店(寒冷地) | 全面が断熱ガラス | 内付けハニカムシェード |
一条工務店(温暖地) | 全面が遮熱ガラス | 内付けハニカムシェード |
私は小型エアコン1台で全館冷房したい施主には、南側以外の窓は少なく小さくして南側の窓は大きくとって二階は屋根の軒を出し、一階の窓はシェードを設置してくださいと言っています。
そうすれば、夏季については窓から侵入する日射熱が相当にカットできますから夏季は問題ありませんが、一方で温暖地の冬季は遮熱ガラスによって日射熱がしっかり取れない状態です。
一条工務店は年間1万棟以上の家を供給していることから、設計が安全側になっていて温暖地では屋根に軒があろうが窓の日射遮蔽をしていようが関係なく一律に遮熱ガラスになってしまいます。
これはオーバーヒートによるクレームを減らそうということだと思いますが、一条ハウスの施主は全方向の窓が大きい傾向にあるため、逆に冷房を使わない春はオーバーヒートを招いています。
この対策として一条工務店は新型のロスガードにバイパス換気機能を追加しましたが、根本対策は窓の日射制御にあるため、冬季の日射取得量の増大、夏季の日射取得量の減少をして欲しいです。
冬季の日射取得量を表すηAH値は日当たりが凄く良いという条件で比較するとウェルネストホームの4.08は平均して室温を9.7℃室温を上昇させますが一条工務店の家は6.5℃の上昇に留まります。
少量生産のウェルネストホームと大量生産の一条工務店は家作りの使命は違うものの、一条工務店はせめて南側のみは温暖地でも断熱ガラスを選択できるようにして欲しいものです。
ウェルネストホームの採用するセルロースファイバー断熱材の蓄熱量については、計算ができないため正確なことはわかりませんが、温湿度の急激な変化を緩和する役割があると思います。
冬季の湿度は方式がよく分かりませんウェルネストホームは50%程度を保てるとのことです。一条工務店の新型ロスガードは水道管直結の無給水加湿機能があるためここは大差がないでしょう。
最後に
ウェルネストホームという高気密高断熱住宅業界でのトップの性能がどの程度のものかお分かり頂けたと思います。断熱気密以外に日射の制御をしている点が一条工務店と違います。
一方で、年間1万棟以上を販売していて全国どこでもウェルネストホームと同等の断熱性能の住宅を提供している一条工務店の存在意義は別の意味で凄いものがあります。
私は日本のごく一部の人に提供される特別な住宅よりも、多くの人がヒートショックや熱中症から開放される家を良しとしているため、一条工務店の方を評価しています。
ウェルネストホームで心配な部分は財務状況です。創業者の早田さんもベンチャー企業で黒字が沢山出ている企業ではないと言っています。あまりにも積極的な家作りには危なさを感じますね。
旭化成ホームズとの資本提携については鉄骨住宅とのコラボには違和感を感じましたが、今後は外装にヘーベル板(ALC)と断熱材にネオマフォームを利用していくのでしょうね。
気密シートにはタイベックスマートを採用されているようなので、どんな温湿度でも冬季も夏季も壁内結露はしない計算になりますからさすがですね。
ちなみに私は二軒目の家の外壁に光触媒のセルフクリーニング塗装をしたヘーベル板を採用しましたが、ALCは透湿性が高いため北側はコケが生えるので注意して欲しいと思います。
さて、ウェルネストホームのような尖がった会社がなければ日本の家作りは進まないため、創業者の早田さんはそういった十字架を背負う気持ちで前に進んでいるのだと思います。
一方で、大手ハウスメーカーを動かさなければ日本の家作りは変わらないため、私も微力ながら大手ハウスメーカー施主の立場で日本に高気密高断熱住宅を普及させるという使命を感じています。
私はそもそも早田さんなどの考える家作りを良しとする側にいた人間ですが、それだけでは日本の家作りは変わらないと思って一条工務店の施主になった人間です。
一条工務店の施主の大きなネット上のコミュニティと高気密高断熱住宅のトップランナーという両面からの情報発信によって日本の家作りは変わっていくのではないかと私は思っています。
一条工務店は設計を問わず高性能な家の性能や設備といった力業で快適な家作りをするためパッシブ設計がまだ苦手ですが、全国で圧倒的な性能が手ごろな価格で手に入ることは事実です。
よって、私は現状ではパッシブ設計やエアコン1台による冷房計画については一条工務店という大きな施主のコミュニティで情報を共有して施主が対策をすれば良いと思っています。
私がInstagramでの施主との交流を通じて感じたことは意外と施主はパッシブ設計に抵抗がなく、特にInstagramを利用する人は若い人が多いため従来の通風する家作りに囚われていないようです。
私の自宅のi-cubeは温暖地にあり、セカンドハウスのi-smertは寒冷地にあるため、窓ガラスの違いによる室内の温度差は良く分かります。セカンドハウスは冬季にオーバーヒートするほどです。
私の二軒目の家では南面はLow-Eを使わずに日射取得量の最大化を目指してただのペアガラスを採用しましたが、夜間や天気が悪い日は冷気を感じるので窓ガラスはLow-Eが良いと思います。
一条工務店には施主の自己責任で良いので、温暖地でも断熱Low-Eガラスの選択ができるようになって欲しいものです。
これから一条工務店で家を建てる人は窓ガラスの話の前に冬季に日射熱が沢山とれる場所に家を配置して、日射の当たる南側の窓から沢山の日射熱を取って暖房代を下げるように検討してください。
本日は以上でございます。