【アンケート結果】冬における、戸建住宅の地域ごとの日当りについて

考察

はじめに

夏は日射を遮り冬は日射を取り込むというパッシブ設計が重要とは言うものの戸建住宅の日当たりについて大人数のアンケートを見たことがないなと思っていましたが、アンケートを取ってくださった方がいます。

施主 お住まい 記号
なあたンさん 6地域:南関東 A
とりさん 2地域:北海道 B
うにをさん 6地域:関西 C

お三方は何れも住宅密集地にお住まいの一条工務店の施主ですが、SNSにおける交友関係をみるとアンケート対象者はすべてが一条工務店の施主ということではないと思われます。

アンケートの設問については以下の4つの設問を実施しています。今回は1000人規模で回答数のあるアンケート結果となっています。

設問1 お住まいの、省エネ地域区分は?

設問2 お住まいの地域の、気候は?

設問3 日当たりについて(その1)

設問4 日当たりについて(その2)

アンケート結果

アンケート結果では東京や大阪などを含む比較的温暖な6地域にお住まいの方が約7割、太平洋側にお住まいの方も約7割でした。驚いたのは一階の窓まで日射が入る家が63%もあることです。

都市部の30坪程度の狭小地で家作りをしてきた私の感覚では都市部では一階の日当たりや眺望は絶望的であり、二階からも十分に日射が取れない家が多いと思っていました。

やはり、建物価格より土地代が高いような都市部ではマンションや賃貸住宅に住む人が多く、戸建てと言っても狭小な建売住宅が多く、注文住宅を建てられる人は予算的にも少数だと思います。

よって、注文住宅の施主は言い方が失礼かもしれませんが「土地が広い田舎」に住んでいる人が大半であると感じました。自然豊かな地域に住めるということはそれはそれで贅沢だと思います。

設問1 お住まいの、省エネ地域区分は? A B C 合計 割合
寒冷地(1~3地域) 133 63 9 205 12%
準寒冷地(4~5地域) 134 47 31 212 12%
温暖地(6地域) 865 240 74 1,179 69%
暖地(7~8地域) 104 16 3 123 7%
合計 1,236 366 117 1,719 100%
設問2 お住まいの地域の、気候は? A B C 合計 割合
北海道 74 50 4 128 9%
太平洋側 716 210 88 1,014 68%
日本海側 176 51 15 242 16%
中央高地 82 28 8 118 8%
合計 1,048 339 115 1,502 100%
設問3 日当たりについて(その1) A B C 合計 割合
一階の窓からしっかり日射が入る 568 194 64 826 63%
二階の窓からしっかり日射が入る 217 74 33 324 25%
時間帯によっては若干窓から日射が入る 97 18 13 128 10%
ほぼ窓から日射が入らない 21 2 1 24 2%
合計 903 288 111 1,302 100%
設問4 日当たりについて(その2) A B C 合計 割合
住宅密集地域だが、日射が十分に取得できる 441 125 46 612 50%
住宅密集地域のため、日射が十分に取得できない 68 23 12 103 8%
住宅は密集しておらず、日射が十分に取得できる 335 107 44 486 39%
住宅は密集していないが、日射が十分に取得できない 20 2 11 33 3%
合計 864 257 113 1,234 100%

アンケートのエビデンスはこちらでございます。うにをさんについてはTwitterでのアンケート結果をご覧ください。なお、とりさんについては「冬の日当たり」と限定してないとのことです。

一条工務店は日射制御よりパワープレイ

高気密高断熱住宅は気密のために窓が小さいとか引き違いや掃き出し窓がNGなどと言われますが、大半の一条ハウスの施主は逆で全方向大きな窓で引き違いと掃き出し窓を多用しています。

ある意味、現代では一般的な全方向の窓が大きい家作りであるため、一条工務店では温暖地は全面遮熱ガラスでオーバーヒートを予防していると言えます(寒冷地は全面断熱ガラスです)。

私は二軒目の家で地場工務店による高性能な家作りを経験し、方位ごとのガラスの種類を細かく選択してきたため、温暖地でも南側は断熱ガラスを選択可能にして欲しいと思っています。

ただ、年10棟前後の家作りをしているスーパー工務店とは設計思想が異なり、年1万棟以上の高性能住宅を提供するには「誰が設計しても快適性を担保する」これが一条の設計思想でしょう。

そのためにコストの安いフィリピンの工場で高断熱住宅のパーツを作り、誰が設計しても誰が住んでも省エネで快適になる換気や暖房設備、太陽光パネルや蓄電池を製造しているのでしょう。

私はエアコン暖房ですが、低温水式の全館床暖房という通常の住宅では見られない設備についても、間取りに左右されずに家の中の温度ムラを防止するというパワープレイだと思います。

家の中の温度差2℃でもクレームを招きかねないのに、一条工務店のように年間1万棟を超える家を建てるハウスメーカーがエアコン暖房を採用することはリスクが高いと思います。

2℃前後の温度差でもクレームを招く
 高断熱住宅に設置された全館空調での温熱トラブル事例と、空調ダクトにほこりやカビ、表面結露が発生した事例を紹介する。ダクトの不具合は室内の空気質汚染や木材の劣化につながるので軽視できない。

最近ではスーパー工務店でも太陽光発電の搭載を推奨していますが、一条では太陽光パネルは20万円/kW以下で30年程度利用できる蓄電池の1台目は7.04kWで20万円程度の価格とのことです。

蓄電池を搭載した一条ハウスでは基本料金が無料の電力会社と契約して、エコキュートを昼間の太陽光で沸かすと、夏に24時間エアコンを使ってもほぼ買電が必要ない家もあります。

設備の故障を考えると設備に頼らない家作りが良いと私は思いますが、一方で脱炭素やエネルギー災害対策として考えると、太陽光発電や蓄電池の採用は好ましいと言えます。

個人的には地場工務店の作るパッシブ設計やエアコンを活用した設備費を抑えた家作りが好みですが、「量産しない良い家」のままでは脱炭素や省エネへの貢献は限定的になるでしょう。

また、6地域で南側の窓が大きい住宅の場合、遮熱ガラスでも日中は無暖房になる家もあって、ガラスの種類が選択できないハウスメーカーでもパッシブ設計は有効です。

まずは、南側は屋根の軒を伸ばしてを窓を最大化して、それ以外の窓は少なく小さくされると良いでしょう。ただ、南側以外でも景色が良い方向は窓を大きくした方が良いと私は思います。

パッシブ設計を行った上で、ある程度の断熱気密性能がありエアコンを一階のリビングと二階の階段ホールなど設置すれば、全館冷暖房が常識的な電気代で収まる家になると思います。

最後に

今回のアンケートでは当初は日射が取れていない家が多いのではないかと想定していました。「家の建物配置に注意しよう」、「パッシブ設計は重要」と言いたかったのです。

そして、一条工務店は温暖地は全面遮熱ガラスで寒冷地は全面断熱ガラスであるため、温暖地でも南面は断熱ガラスを選択させてほしいということも言いたかったのです。

ただ、全員ではないものの注文住宅を建てる人の多くが温暖地の土地の広い地域に住んでいて、一階まで日当たりが良いと答えていた結果には戸惑いました。

これはパッシブ設計の重要性が住宅会社や施主に広く伝わった結果なのか、そもそも土地が広くて建物配置やパッシブ設計を意識する必要がなかったのか。

うがった見方をすると、パッシブ設計という言葉自体が一種のセールストークであって、実際は日当たりが良い家が大半なのに初めて家を建てる施主が不安に陥っていただけなのでしょうか。

日当り君を使えば無料で家の日当たりがだいたい分かりますし、施主もパッシブ設計の知識を身に着けて来たため、もはやパッシブ設計は当たり前のことになりつつあるのかも知れません。

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さて、蓄熱量が少ない木造住宅では日射取得率の良いガラスで南側の窓を最大化すれば冬でもオーバーヒートしてしまいますから、日射取得を最大化することが正解なのか考えさせられます。

以下のように南側に広範囲な土間床を設けて蓄熱をすれば良いのかもしれませんが、高額な電動式の外付けブラインドや土地の広さと予算、そして設計者の高度な技量が必要だと思います。

伊達の家 完成「前」 2
温室土間という新らたなコンセプトによってプランニングされた伊達の家。窓の大きい超高断熱住宅は厳寒期以外はオーバーヒートすることは良く知られている。しかし伊達の家はオーバーヒートを故意にさせる(30度前後)。そのためオーバーヒートさせる空間は

本日は「パッシブ設計の勧め」という内容のつもりでしたが日当たりの良い家が多く、この先は断熱の強化と蓄熱に進むべきか、太陽光発電と蓄電池を採用すべきか悩ましいと思いました。

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