結露計算をまとめて出来るようにしてみた(夏型・冬型結露&天井屋根・壁・床)

考察

はじめに

久しぶりにブログを書きます。ブログは内容が細かくて書くのが面倒なので普段はインスタグラムに思ったことを書いてましたが、今回は結露計算で情報量が多いのでブログに記載します。

温暖化により懸念される住宅の構造内部の夏型結露については、一条工務店のように防湿シートを設置しない工法や純粋な外張り断熱の場合は関係のない話だと思ってください。

ただし、一条工務店においても、さらぽか空調の床冷房で設定温度を下げ過ぎると床表面が結露する可能性がありますので猛暑日に備えてエアコンを1台、共有部に設置されると良いでしょう。

さて、温暖化が進み年々暑くなる日本ですが、一方で断熱上位等級の制定が行われる状況です。いくら暖かくなったと言っても冬の暖房エネルギーの削減は資源のない日本では重要でしょう。

建物の断熱気密性能が向上したこともあり、窓の日射遮蔽などのパッシブ設計の一部を取り入れて小型のエアコン1台での全館冷房を実践している家も増えています。

電気代高騰のニュースが流れる中、太陽光発電の利用やエコキュートの昼間沸き上げにより買電を減らし、さらには蓄電池を利用して夜間を含めた電気代をほとんど払わない家も出ています。

そういった家はエアコン1~2台での24時間全館冷房で快適かつカビやダニの発生が抑制できて家事も楽ちんという生活でありながら、電気代が安いという状態になっています。

では、そんな快適な暮らしに落とし穴はないのでしょうか。快適すぎて家の外に出たくないとか外泊したくなくなるといったこともありますが、問題なのは建物構造内部の夏型結露でしょう。

結露というと冬に起きるものだと思われがちですが、夏でも草木に発生する朝露のように、住宅においてはエアコンの冷房による家の内外の温度差によって夏型結露が発生する可能性があります。

夏型結露とは冬型結露対策として室内の水蒸気が建物内部への侵入を阻止するために設置するビニールシートの部分で夏の冷房による室温低下によって外気の水蒸気が結露するという現象です。

東京などの6地域ではまだ常態化していませんが、既に絶対湿度が25g/m3にもなる日があり、防湿シートを設置している工法では室温を25℃以下にすると結露すると計算される日があります。

くれぐれも申し上げておきたいことは実際に各ご家庭で外気温や絶対湿度をみてエアコンの運用を判断して欲しいということです。現状では夏型結露の発生は少ないと思われるからです。

普及している袋入りグラスウールについては可変調湿する防湿シートを採用して発売しないと、温暖地で全館冷房を希望する施主は夏型結露を恐れて現場発泡ウレタンを選択していくと思います。

既にF式全館冷房により格安に全館冷房できる状態ではあるものの、今後の温暖化を踏まえると冬と夏の結露に余裕で耐え得る家の構成を考えるとなると施主にはハードルが高いと思います。

そこで、私が提供している結露計算シートを改良して、夏・冬と屋根天井・壁・床をまとめて計算できるようにしました(透湿抵抗を換算するオマケもついています)。

F式内部結露計算シート2.xlsx
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なお、夏型結露なんて全館冷房しているから起きるのであって、間欠運転をする個室エアコンでは起きないと思われるかも知れませんが、温暖化が進み外気の絶対湿度量が増えれば冷房の長時間稼働はどの家でも必須となるでしょう。

そして、夏はしっかりエアコンの室内機の熱交換器を冷やして連続運転しないと除湿不足になるため低湿度で快適な生活を希望するなら結露計算をすることをお勧めします。

結露計算はなぜ難しいのか?

私は2010年に二軒目の家を建てる際に結露計算を学びましたが、最初は???でした。そんなまったくの初心者であった私ですので皆さんの気持ちはわかるつもりです。

結露計算は家の内外の温度と絶対湿度に対して建材の断熱性能と水蒸気の通しやすさによって計算される温度勾配と湿度勾配によってどの建材の部分で結露をするか判定するものです。

結露計算のEXCELシートは、住宅性能評価・表示協会や断熱材メーカーなどから無償で提供されていますが、それでも自力で結露計算をしている施主なんてあまり見たことないですよね。

施主が結露計算をする場合、何が難しいかというと計算の前に言葉や単位がなんのこっちゃで分からないことですよね。この段階で早くも結露計算をする気力がまったく起きないと思います。

テラやギガといった大きな単位ならPCのディスクやスマホの通信容量などで馴染みがあると思いますが、小さな単位である、n(ナノ)とかμ(マイクロ)とか言われても分からないですよね。

そして、無償で提供されている結露計算シートは建材などの物性データが少なく、自分が検討したい建材のデータを足さないといけないので、これが素人には難しいわけです。

公的機関は特定の商品名の建材を登録できないと思いますし、断熱材メーカーは他社製品を登録しないので、無償で配られている結露計算シートは比較したい建材が登録されていないと思います。

断熱材などの建材メーカーのカタログをみると、透湿率・透湿抵抗・透湿抵抗値など呪文のような言葉が並んでいて、気圧の単位も2個あるのでほとんどの人が結露計算に挫折することでしょう。

規格通りの建材の性能数値は省エネ基準解説書やフラット35の工事仕様書にありますが、建材に対して断熱性と透湿性が別のページに記載してあるので初心者が1つにまとめるのは大変です。

さらに、冬型の結露計算をするだけで大変なのに夏型結露もあり、壁だけでなく、天井屋根と床まで結露計算をするとなると絶望的ですよね。

そこで今回、私が提供している結露計算ツールでは一般的な建材を大幅に追加して、夏・冬と屋根天井・壁・床の結露計算をまとめてEXCELの1シートで計算出来るようにしました。

透湿抵抗の換算

建材の水蒸気の通しやすさは透湿率といって透湿率の逆数(1÷透湿率)は水蒸気の通しにくさである透湿抵抗になります。透湿性と透湿抵抗は裏と表の関係で逆数にすると意味が反対になります。

そして、結露計算においては透湿抵抗値の単位が新旧の2個存在していて、古くからある建材はカタログでは古い方の単位しか掲載されていないケースがあって非常に困ったことになります。

これは気圧の単位の変更によるものですが、古い単位の水銀柱ミリメートル(m2・h・mmHg/g)と現在の基準単位であるパスカル(m2・s・Pa/ng)があって、二つは換算が可能です。

m2・h・mmHg/gは1m2当たり1時間に1グラムの水蒸気を通すための気圧を表し、Hgは水銀の元素記号です。m2・s・Pa/ngも同様に1m2当たり1秒に1ナノグラムの水蒸気を通すための気圧です。

透湿抵抗値の単位をみて拒絶反応を示している方も既にいると思いますが、お天気の単位はヘクトパスカル(1hPa=100Pa)ですし、水銀柱ミリメートルは血圧計の単位として利用されています。

水銀柱計では密閉したガラス管の中の水銀が必ず76cm(760mm)の高さを示すことから1大気圧は760m2・h・mmHg/gと定義されており、パスカル(1大気圧=1013.25hPa)と換算できます。

これまで私が結露計算において旧単位を利用していた理由は、 ツールの修正が面倒  旧単位は数値が大きいので分かりやすいからでしたが、いい加減に国際単位に変更しなければと思ってました。

今回、私の結露計算ツールを新単位に変更するにあたり、新単位は小数点以下が多くて分かり難いため、私の計算シートでは透湿抵抗値についてナノグラム(ng)を1000倍(10の3乗)してマイクログラム(μg)として表現しています

建材メーカーにおいても同様にナノグラム表記では小数点以下が多くなって分かりにくいため、m2・s・Pa/ng×10^-3(10のマイナス3乗=1000で割る=μg)と表現しているケースがあります。

それでは、以下のスタイロフォームなどのXPS1種b断熱材で単位の違いを見てみましょう。

水銀柱ミリメートル パスカル・
ナノグラム
パスカル・
マイクログラム
m2・h・mmHg/g m2・s・Pa/ng m2・s・Pa/μg
断熱材厚み 25mm 25mm 25mm
透湿係数(25mm) 0.0696 145
透湿率 3.6250 0.0017
透湿抵抗 0.2759 574.713
透湿抵抗値 14.37 0.0069 6.9

いかがでしょう?XPS断熱材の透湿抵抗値は旧単位では14.37でしたが、新単位では0.0069と非常に数が小さいので数値の意味として大きいのか小さいのかイメージしにくいと思います。

よって、私の計算シートでは新単位を1000倍して6.9と表現しています。6.9を0.48で割ると旧単位の14.37になりますから、新単位は旧単位の半分弱の数値と考えると分かりやすいでしょう。

なぜ、0.48なのかというと、旧単位(m2・h・mmHg/g)を新単位(m2・s・Pa/ng)に換算するに当たり、重さについてはナノグラム(ng)とグラム(g)、時間については秒(s)と時間(h)、気圧についてはがPaとmmHgを換算します。

重さはngをgにするには10の9乗、時間はhをsにするには3600秒(1時間)で割って、気圧については標準気圧の1013hPa=760mmHg(0.75)なのですが、1hpaは100Paである点に注意です。

結果的に、10^9÷3600×(0.75÷100)=2084.1628となり、この計算結果の逆数(1÷2084.1628)は0.00048となります。

ただ、0.00048だと普段使いとして電卓で叩くには面倒ですから、1000倍(10^3)してナノグラム(10^9)をマイクログラムに(10^6)変換して0.48としました。

よって、XPS断熱材の透湿抵抗値は、旧単位の14.37 ✕ 0.48= 新単位では6.9となり、新単位の6.9 ÷ 0.48 = 旧単位では14.37となることから、これなら数値の大小が分かりやすと思います。

以下の画像のように、m2・h・mmHg/gやm2・s・Pa/ngといった難しく見える透湿抵抗値の単位は1つずつの記号を分解して意味を考えて換算していくと実はシンプルな内容なのです。

ちなみに、透湿係数ng/(m2・s・Pa)という単位があるのですが、JIS A 9511に規定されている実験方法による測定結果のようで、25mm厚さの断熱材が利用される前提になっています。

例えば、145ng/(m2・s・Pa)という透湿係数が示されている場合は断熱材の厚み単位がmなので1000で割って25(0.025をかけても同じ)をかけて、逆数を取ると透湿抵抗になります。

詳しく知りたい方は以下のように色々なパターンで建材カタログの透湿に関わる物性データを換算出来るようにしてありますので、私の計算シートの単位換算をご利用ください。

建材の物性データ

これまで、私の計算ツールでは自分が検討してきた建材の物性データを中心に記載していましたが、今回はフラット35の資料などから一般的な規格の建材を追加しました。

併せて面材については透湿抵抗のかなり低いタイガーのEXボードを加えるなど、一般に流通している建材と将来有望な建材を加えており、あと10年はこの計算ツールは使えると思います。

長年、家作りをみていて悲しいのは価格が高い建材は廃盤になっていくという事実です。国産材の木質系断熱材であるウッドファイバーは昨年、事業撤退となりましたよね。

他にも面材で透湿抵抗の低かったケナボードは既になく、木質で透湿する屋根野地板であるルーフブレスボードや木質外張り断熱用の透湿面材であるイーストボードも生産中止となっています。

このような状況では価格の高いセルロースファイバーなどの普及は難しいと思います。入居してしまえば目に見えなくなる構造面においては自然素材系の建材は絶滅状態です。

そして、家の内装の表面だけ見た目は自然素材を使っていても中身は工業化された構造で建設されている家を建てている住宅会社が自然や伝統を語ることには非常に違和感を覚えます。

断熱材においては安価ではあるものの水蒸気を通しやすいグラスウールと現場発泡ウレタンを中心に今後も展開していくと思いますが、それが家作りを難しくしているとも言えます。

高機能だけど高価格な製品はすべて廃盤になっていく。そして、扱いにくい安い建材を美化する理論が構築され、建材同士の叩き合いに消費者が巻き込まれる。これが建築業界でしょうか。

結露計算をしていると自然素材が表面的な利用に留まっていることが分かりますし、国産材や蓄熱できるインシュレーションボードが増えて欲しいものですが理想に過ぎない考えでしょうか。

消費者が目に見えない範囲は安い建材を求めるのであれば、グラスウール等の安価だけど結露に対する扱いが難しい建材が残り、それが家作りを難しくしているとも言えます。

結露計算方法について

新しい計算シートは一通り計算結果は確認しましたが、かなりの範囲を修正したので皆さんが利用されるにおいては古い方の計算シートも併用して確認をお願いできれば助かります。

ご覧のように、屋根天井・壁・床の夏型・冬型結露計算が一度に行えます。使い方については本日は細かく説明いたしませんが、旧バージョンと基本的には同じとなります。

また、以下の画像のように除外フラグという項目に何か文字を入力すると、透湿抵抗値の計算から外せるようになっています。ビニールクロスや可変調湿シートなどにご利用ください。

初期値の外気は東京を想定した夏は平均最高気温+平均相対湿度、冬は最低平均気温+平均相対湿度で計算していますが、現状では多くの建物は結露しないと計算されます。

ただし、外気の絶対湿度が25g/m3にもなると、断熱材によっては壁だけでなく屋根天井も結露する計算結果となっているので、UA値やC値だけでなく結露計算も確認されると良いでしょう。

一度に色々と計算できるので便利ですが、計算してみて例えばグラスウールなどの繊維系の桁上断熱は夏型結露には弱いとか、防湿シートを設置すると冬型結露に強いなといった印象です。

皆さんも色々と計算をしてみてください。

最後に

断熱上位等級に合わせて断熱性能を上げてきている高気密高断熱にまだ慣れていない住宅会社で家作りを検討する際は、夏型結露・冬型結露の両方に注意した方が良いと思います。

また、寒冷地仕様の天井や床まで防湿シートを設置した家をそのまま温暖地に持ってくる場合は結露計算をした方が良いと私は思います。結露計算は壁だけでなく屋根天井・床も必要です。

家作りでは断熱材メーカーが主導しているのかわかりませんが、住宅会社においても自社が利用する断熱材を褒めて他社が利用する断熱材の欠点を説明するケースがあると思います。

結露計算を示さずに、もしくは偏った条件で計算しているケースについて、結露計算をしてみると、言ってることのほとんどが正しくないと分かります。

自社にとって都合の良い部分だけ切り取って他社にとって都合の悪い部分だけを紹介している場合、他社の都合の良い部分を言わないことはウソにはならないのでしょうか。

例えば、現場発泡ウレタンは少し寒い地域では冬型結露するから防湿シートが必須という情報については、防湿シートを設置したくないから現場発泡ウレタンを選択した人にはショックですよね。

ただ、防湿シートを設置せずに耐力面材をダイライトなどの透湿する面材にすれば水蒸気が抜けやすくなるということはあまり紹介されません。これは情報操作とは言わないのでしょうか。

また、防湿シートを設置した場合、温暖地では夏型結露の可能性が高まるため、冬型結露だけを考えて「現場発泡ウレタンは防湿シートは必須」といった情報はミスリードだと思います。

逆もまたしかりで、グラスウールはカビが生える(実際は空気中のススなどである)といって、施工がしっかりしていなかった時代の事例を未だに取り上げる人もいますよね。

家作りは専門知識が広範に必要な業界ですから、作り手と住まい手(消費者)の間に圧倒的な情報格差が起きる不透明なレモン市場だと言えるでしょう。

こういった情報格差を埋めることがこれまで難しかったと思いますが温湿度と絶対湿度および消費電力のデータロガーが安価に手に入る時代になったことから情報格差が埋まっていくと思います。

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スイッチボット(SwitchBot)

施主の中には物理の計算能力が住宅会社よりはるかに高い人がいると思いますから、これまで信じられてきた建材メーカーや住宅会社が流す間違ったセールストークは是正されていくでしょう。

施主はどこまで家作りの勉強をすべきか悩ましいですが、消費者は自分の身は自分で守るしかないのではないかと私は思いますので、ぜひ結露計算をされたい方はチャレンジしてみてください。

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