はじめに
私の自宅は二階建てのi-cubeでセカンドハウスは平屋のi-smartⅡです。私の場合は家作りの経験としてどうしても平屋に住んでみたかったので平屋を建てたことには満足しています。
平屋は基礎コンクリートが大きくなって建築コストが増えますが、一条工務店の場合は平屋は坪2万円のプラスと安いので平屋を選択される方も多いと思います。
そして、一般的にも最近は平屋ブームらしく窓メーカーの窓の出荷数が減っているそうです。平屋にすると二階建てよりも部屋の外壁が重なるため窓が減りますからね。
平屋は建物が低いため将来の修繕において足場の高さが低くなってコストが安くなると言われますが、二階建てよりも足場の設置面積は増えるためむしろ逆ではないかと思います。
また、平屋に住んでみてデメリットが多いなと思う時があります。平屋はメリットが多いと思っていたらそれはただの憧れや思い込みだったという件について本日は書きたいと思います。
老後の生活は間取り次第で二階建てでも可能
平屋=バリアフリーで老後は安心+階段や廊下がなくなってコンパクトになるという先入観があると思います。ただ、それはLDK一体という一般的な二階建ての間取りの場合だと思います。
以下は先日のブログで紹介した22坪の狭小二階建ての間取りですが、二階建ては階段スペースが増えると言っても階段の下にトイレを設置すれば増加するのは通常は1畳分だけです。
そして、リビングとダイニングを分離すれば二階建てでも廊下を無くすことは可能ですから、平屋にすると家がコンパクトになるという定説は間取りの切り方の問題と言えます。
コストが高い
平屋は基礎コンクリートの量が増えるためコストが増加すると一般的に言われます。また、地盤改良になった場合に地盤改良の面積が大きいためコストが増加します。
そこで、一条工務店では平屋は坪2万円がプラスになりますがこれをカットする方法はないのかなと考えました。総二階のルールがない軸組工法の商品だけの裏技です。
一条工務店では二階建ての二階の床面積の最小面積の制限はないようですから、二階に最低限のスペースを作って二階のトイレをキャンセルすれば理論上はコストカットができます。
つまり、二階に3畳程度の物置部屋や書斎だけを作るという「ほぼ平屋」という作戦です。二階建てが坪65万円であれば以下の計算になります。
一階 | 二階 | 二階トイレ取りやめ | 本体価格 | |
平屋 | 100m2 | ー | ー | 2,024万円 |
ほぼ平屋な二階建て | 90m2 | 10m2 | ▲8万円 | 1,956万円 |
同じ床面積で平屋とほぼ平屋の差額は68万円です。階段の下にトイレを入れたとしても二階建ては1畳分は損をすると考えるとほぼ平屋にしても35.5万円のメリットしかありません。
物置としてたまにしか出入りしない二階なら一条工務店の標準階段ではなく、私が行ったような施主支給の簡易階段にした場合はコストメリットがもう少し増えます。
この手段は理解が得られにくい難易度の高い稟議になると思いますのでやるのであれば営業さん設計士さんとの信頼関係のもとに自己責任で行ってください。
このコストカット金額を大きいと捉えるか小さいと捉えるかは人ぞれぞれでしょう。そして、ほぼ平屋については床面積が多きな平屋ほどメリットが出ていきます。
ほぼ平屋の建物の問題は建物のプロポーションです。二階の小部屋がポコッとでるため屋根のデザインは大屋根や片流れにしないとカッコが良くならないと思います。
瓦屋根が標準のブリアールであれば片流れのような大屋根にして二階の小部屋をデザインの中に取り入れることが出来ると思います。
見晴らしが悪い
私が平屋を建てて唯一後悔しているには二階からの眺望が得られないことです。また、二階建てであれば南側の窓を一階と二階の両方とも大きくして冬季に日射熱が稼げたという点もあります。
我が家の場合は少し離れていますが前の家があって一階からは山が良く見えないため、二階建てにして二階リビング(ダイニングは一階)にすれば良かったなと思う時があります。
家の中が丸見え?
家の前に道路がある場合、平屋の問題点は通行人から家の中が見えやすいという点と近隣の二階建ての家から見下ろされるという点でしょうか。
レースカーテンを閉めっぱなしにした場合、何のために大きな窓にしたのか良く分からない状態になりますから、外からの視線が気になる場合は窓を大きくしてもメリットは少ないでしょう。
私は冬季に窓から入る日射熱を生かしつつ通行人の視線をカットしたいため、太陽熱を跳ね返さない黒いレースカーテンを利用しています。
冬季に日射熱を最大限利用したのであれば、アルミの黒いカーテンなどがあれば良いと思います。
北側の部屋の採光が難しい
なぜ、二階建てにするのかという問いに対して、土地が狭いからということと採光が取りやすいからということが言えるでしょう。
平屋の最大の問題点は北側の部屋の採光が取りにくいことでしょう。コンパクトな平屋の場合はあまり問題になりませんが床面積が多きな平屋の場合は採光が難しくなります。
平屋は東西に少し長い間取りにすると良いと思いますが、南北に長い平屋になると北側の部屋の採光が難しくなってきていしまいます。
この解決方法としては、招き屋根という屋根の一部を段違いにしてそこに窓を設置する方法がありますが、北側に片流れのようになるため太陽光パネルを設置するには不利な屋根形状です。
天窓は雨漏りの原因となりやすく夏は高い太陽高度によって日射熱が大量に入って来ますから、本当に天窓以外に採光の解決方法がない場合の最終手段だと思います。
熱損失が増える
二階建てと平屋では同じ床面積でも二階建ての方が暖房費用が安くなります。
この理由は二階建ての場合は一階の天井が二階の床となるため冬季に冷たい外気に触れる床と屋根の面積が減りますが、平屋は冷たい外気に接する屋根と床の面積が増えて熱損失が増えます。
二階建ての方が冬季に南側から日射熱を取れる可能性が高まるため、そういった意味でも二階建ての方が温熱的には有利だと言えます。
また、平屋の方でコの字型を好む人が一定数いますが、コの字の間取りは非常に温熱的には不利な間取りです。
コの字にした分だけ外壁量が増えて熱損失が増えるということと、南側をコの字にした場合は東西の壁が南側の窓に日陰を作るため南側の窓から日射熱が取れる時間が減ってしまいます。
坪庭のような発想からコの字の家を希望される人がいると思います。ただ、デメリットを分かった上でその対策をして家を建てるのであればどんな形状の家でも良いと思います。
最後に
大人気の平屋ですが、実際に平屋を建てて住んでみるとデメリットが多いと感じます。また、平屋のメリットと言われることについては平屋でなくても間取りの切り方で解決できるでしょう。
住宅会社はあの手この手で家を売ろうと平屋のメリットばかりを強調してくるため、消費者はそれを固定観念のように平屋はメリットが大きい家なんだと真に受けてしまうと思います。
平屋はデメリットが多いと情報発信する人なんて少ないと思いますが、私のように家を何軒も建てるとポジショントークや思い込みがなくなってくるというか客観的に家作りが見えてきます。
ただ、一般的なLDK一体の間取りでは平屋はバリアフリーで良いという点はその通りだと思いますし、二階の重量がない分だけ平屋は地震に強く間取りの自由が効きやすいです。
しかし、間取りの切り方の発想を変えれば、二階建てでも一階に水回りと最低限の居室スペースを配置すれば、狭小住宅の二階建てでも老後に備えた間取り作りは実現可能です。
予算に余裕がない方は老後に寝たきりになった時に備えて平屋にする必要はなくて、二階建てであっても一階に水回りと小さな居室があれば良いと思います。
土地の安い地域や親に広い土地を貰ったなどという条件でもなければ、平屋は土地代と建物費用が増えるため二階建てを建てた方が良いと思います。
平屋は単純に考えても二階部分の空間を使わないわけですから、平屋は土地の利用効率が悪く、コストパフォーマンスは非常に良くない贅沢な建物だと言えます。
人は手にしたことのない贅沢なものに憧れるものでしょう。平屋はまさにその最たるものであってメリットばかりではないという点を知って頂ければと思います。
そうはいっても、私は平屋を建てたことを後悔しているというわけではなく、いまこのムダとも言える贅沢を味わって満足しています。
本日は平屋を無条件に良いものという思い込みを無くした方が良いですよという話でした。