グランセゾンユーザー必見!軸組工法のエアコンの位置

考察

はじめに

最近の私のブログでは他の記事よりも一条工務店の新商品グランセゾン関連の記事の閲覧が圧倒的に多いです。それだけグランセゾンのデザイン性が評価されているということなのでしょう。

私としては地価が高く建築規制の多い都市部は総二階のルールがないグランセゾン、それ以外の地価が安く土地の広い地域についてはi-seriesが合っていると思います。

グランセゾンにはさらぽか空調の設定がないことが悩ましいですが、加湿ができる新型ロスガードが採用できますし、施主が自己責任で実施することになりますが、エアコン1台全館冷房を採用すればさらぽか空調よりリーズナブルに同等の住み心地が実現できます。

私は二軒目の地場ビルダーの家でエアコン1台全館冷房に成功して以来、三軒目の家であるi-cubeにおいてはさらぽか空調を採用、四軒目の家であるi-smartでは平屋でエアコン1台全館冷房を実施しておりますが、上手に設計するとどれも同じような住み心地になります。

これから建てる新築住宅では高温多湿な日本において夏季に家中の相対湿度を60%以下にキープできない家については(言い過ぎですが)時代遅れな家になると思います。日本の建築史上に残る、通風から除湿への大転換期が正に今なのでしょう。

さらぽか空調は電気代が若干高いものの間取りを選ばないという利点がありますが、エアコン1台全館冷房の場合は最初からエアコンの位置を意識した間取りにしなければならず、間取り作りの最後にエアコンの位置を考えると間取りが大きく崩れてしまいます。

初めて家を建てる方は参考間取り図を元に間取りを考える方も多いと思いますが、大きな窓を大量に設置して風を通すようなこれまでの日本家屋の間取り図は方角ごとに窓のサイズにメリハリをつけるエアコン1台全館冷房では参考にはならないのです。

エアコン1台全館冷房についてはまとめ記事を公開していますが、それでも分からないという方も多いため、本日は説明を最小限に絞りつつ、間取り図をもとにエアコンの位置を具体的に解説します。

エアコン1台全館冷房のポイント整理

エアコン1台全館冷房の原理は家中の暖かい空気が集まる場所にエアコンを設置して、逆にエアコンからの冷たい空気を各部屋に下降させるという温度差換気(対流)なのです。

つまり、二階建ての場合はエアコンから出た冷気をすぐにサーキュレーターなどでかき混ぜてしまうと空気が温度差を失い循環しなくなります。そして、小型エアコンで家中の冷房を賄うには窓から侵入する日射熱をカットする必要があります。

やってはいけない設計

四季を通じて高気密高断熱住宅の性能を発揮させるには、冬は窓から日射を入れて夏は窓から日射を入れないことです。冬の日射角度は低いため南側以外から日射熱は取れませんから、自ずと南側以外の窓を小さく少なくする形がセオリーとなります。
間取りを作ってからエアコンの設置場所を考えるのではなく、生活動線を考えるのと同様にエアコンの設置場所は間取りを作りながら考えてください。以下はエアコン1台全館冷房の設計においてやってはいけないことです。

  1. 屋根の軒やシェードが設置されない大きな窓が設置されている
  2. 南側の隣家と距離が近いにも関わらず南側の窓が大きい
  3. 掃き出し窓や引き違い窓などの大窓を多用し過ぎてエアコンを設置する壁がない
  4. エアコンが一階に設置されていて二階に設置されていない
  5. エアコンの向きが悪く二階に設置したエアコンの冷気が一階に全部落ちてしまう
  6. 家電や人が集まり室温が上がるリビングとエアコンが離れて過ぎている
  7. エアコンの周辺が開放されておらずサーモオフをしやすい間取り
  8. エアコンの冷気が人の常駐するソファーやベッドなどに直撃している
  9. 再熱除湿付きのエアコンを設置していない(梅雨が寒い)

窓はメリハリをつける

エアコン1台全館冷房では熱中症や熱帯夜を予防するために窓を開ける通風は基本的に行わないため、これまでの日本家屋に当たり前のように設置されていた掃出し窓や腰高の引き違い窓の設置は必要最低限として、開き戸やFIX窓をカッコ良く設置してください。

小型のエアコン1台で全館冷房をするには、夏季に窓から侵入する日射熱を家の外側でカットすることが最重要です。南側の窓以外については小さく少なくそして高く設置することで「窓が少なくても明るい家」を目指してください

  1. 南側の屋根の軒は標準の最大まで伸ばす(80cm程度)
  2. 南側の下屋のない一階の窓にはアイプレート等を設置して日除け対策をする
  3. 南側以外の窓は小さく少なく、採光のために高く設置する

冬季において一階の窓については南側の隣家と12メートル、二階の窓については隣家と6メートル離れていないと日射が窓から十分に取れません。住宅密集地においては冬季に一階の窓から日射を得ることは難しく、景色が見れない窓であれば小さくした方が良いでしょう。

トイレや浴室の窓については最小限で良いと思いますし、東西の窓はもちろん北側の窓ですら夏至から太陽が回り込んできます。とにかく夏に窓から日射が入らないように必要のない窓は削減して採光のための窓は高い位置に配置してください。

私は掃き出し窓や引き違い窓などの和風の窓が多用されている家はあまりカッコよいと思いません。南側には大きな窓を設置してそれ以外の方角は小さな窓を縦横バランスよく揃えて設置することでカッコ良い外観になると思います。

エアコンのサイズ

エアコン1台全館冷房と称していますが、猛暑日や冬季の補助暖房を兼ねて、サブエアコンは用意した方が良いと思います。冷気は上昇しないため、二階建ての場合は二階にエアコンを設置してください。エアコンのサイズは以下を参照してください。

大型のエアコンを使わない理由は機器代が高くなる事と、小型エアコンの方が省エネ性に優れるからです。再熱除湿機能については日立・三菱・富士通ゼネラル・コロナの4社しか搭載しておらず、一条工務店のオプション設定品では三菱のJXVシリーズが該当です。

室内外の気温差の大きい冬季と違って、夏季の全館冷房についてはi-seriesと夢の家仕様ではそれほど電気代は変わらないと思います。大切なのは窓から入る日射熱を窓の外側でカットできるかどうかです。ハニカムシェードを下げるだけでは日射熱は防げません。

二階建ての場合は二階のメインエアコンは再熱除湿付きのエアコンを設置して、一階のエアコンはRAYエアコンでも何でもかまいません。ただし、エアコンからの冷気がソファやベッド等の人に直撃しない位置にエアコンを設置してください。

エアコンは設定温度に到達すると除湿を止めて送風運転になる単純な機械ですから、二階建てでも平屋でもエアコンの周辺が冷えないように開放された空間にエアコンを設置するということは同じです。

エアコンは1台~2台で全館冷房が可能ですが、念のため各部屋にはエアコンの予備穴とコンセントを設置してください。

エアコンの位置(二階建て)

二階建ての場合、エアコンの冷気は上昇しないため、エアコンの設置場所は二階になります。エアコン1台で全館冷房が可能となるかどうかは二階のエアコンからリビングが離れていないことが条件となります。

  1. 再熱除湿付きのエアコンを二階の階段ホールや吹き抜けに設置する
  2. 上記エアコンは一階と二階に均等に冷気を落とせる位置に設置する
  3. リビングから二階のエアコンまでの距離が長いと人や家電の集まるリビングが暑くなる
  4. 念のため一階にサブエアコンを設置する(常時利用が想定されない場合はRAYでもなんでも良い)

エアコンの位置(平屋)

平屋の場合はリビングへのエアコン設置が基本となりますが冷気が人に直撃しない位置にエアコンを設置します。また、エアコンからの冷気が各部屋に届くようにエアコンは居室に通じる廊下に向けて設置することが必要となるでしょう。

  1. 再熱除湿付きのエアコンをリビング等の開放された人に冷気が直撃しない場所に設置する
  2. 上記エアコンは居室に通じる廊下に向けて設置する
  3. 念のためエアコンの下にサーキュレーターを設置するためのコンセントを設置する
  4. 床面積が広い場合はサブエアコンを設置する(常時利用が想定されない場合はRAYでもなんでも良い)

各部屋のエアコンの位置

各部屋へのエアコン設置は基本的に不要ですが、念のためエアコンの予備穴とコンセントを設けてください。エアコンの設置位置はエアコンからの冷気がベッド等に直撃しないようにドアに向けて設置してください。

これまでの日本家屋の間取りでは設置に2マス必要な掃き出し窓や引き違い窓が多数設置されてきたことからエアコンを設置する壁が取れなかったため、1マスで設置可能な開き戸を基本的に採用することをお勧めします。

また、未確認ですがグランセゾンの室内ドアではi-seriesのスリットスライダーのように1マスの開口で設置できるアウトセット納まり(壁から飛び出した)の引き戸があるようですから、ドアよりも引き戸の方が各部屋への冷気の取り込みを調整しやすいです。

エアコンの設置場所(二階建て編)

グランセゾンのベースとなっている一条工務店のセゾンの間取りをお借りしてエアコンの位置を説明します。総二階のルールがない軸組工法らしく下屋(一階の屋根)がある図面になっています。図面の赤い四角の場所がエアコンの場所です。

セゾン|性能を追求する住宅メーカー【一条工務店】
一条工務店のセゾン紹介ぺージ。格調高いヨーロピアンスタイルのデザインと素材にこだわった、本物志向の本格木造注文住宅、セゾンをご紹介します。省エネ8冠・創エネ5冠。累積約20万棟の建築実績。性能を追求する住宅メーカー、一条工務店です。

今回はコストカットのために吹抜けのある総二階の間取りではなく階段を経由したエアコン1台全館冷房を想定しています。i-seriesのように総二階にする必要がない軸組工法は吹抜けを設けた総二階にしなければ施工面積を減らすことができます。

二階建てにおけるエアコン1台全館冷房に向いてない間取りとしては、吹抜けか階段がリビングから遠い間取りと言えます。二階のエアコンが一階の人が集まるリビングから遠い場合リビングの室温が上昇するため一階リビングの補助エアコンを稼働する時間が長くなります。

間取りを変えられない場合は最初から二台のエアコン運転に方針を変えた方が良いと思いますが、その際においても二階のエアコンは再熱除湿機能付きの除湿メインのエアコンとします。

間取り①

37坪の住宅です。吹抜けがなく一階の間取りをみると階段がリビングから離れていますからこのような間取りの場合は、リビングの室温が上昇しやすいためサブエアコンの稼働をある程度は前提としてエアコンの設置を考えた方が良いでしょう。

ただ、窓の日射制御をしっかり行えば、恐らく猛暑日でなければ一台のエアコンで全館冷房できると思いますので、まずは二階の階段を登った場所にエアコンを設置すべきでしょう。

二階のエアコンはトイレのドアと干渉していますが、その辺は適宜間取りを変えてください。ポイントとして二階のエアコンは二階の部屋全体と一階に半分ずつ冷気を落とせる位置にあることです。

ただ、猛暑日に備えて一階には床暖房に標準でついてくるRAYエアコンをリビングに設置すると良いでしょう。その際にはエアコンをソファの方向へ向けないようにお願いします。

間取り②

二階のエアコンは二階と一階に均等に冷気を落とせる場所に設置します。一階のサブエアコンについては冷気が人が常駐するソファの方向に向かないように設置します。

間取り③

上記は二階の階段から降りてきた冷気が一階のリビングに向いてないためエアコン1台全館冷房に向いてない間取りと言えます。二階のエアコンについてはベランダ側でも問題なくむしろ室外機が設置しやすいと言えます。

二階の階段からの降りてきた冷気はサーキュレーター等で攪拌してしまうと温度差を失い空気が動かなくなるため、冷気は廊下や階段の床に垂れ流しますが、この階段の向きでは人や家電が集まり室温が上昇するリビングに冷気が優先的に流れません。

このような間取りの場合は最初から一階のサブエアコンを稼働することを前提にした方がよいため、その場合は一階のエアコンについても再熱除湿機能の付いたエアコンをお勧めします。

エアコンの設置場所(平屋編)

平屋の間取りについては一条工務店のWebの間取り集になかったため、申し訳ありませんが住友林業さんの平屋の間取り集が充実していたためそれを拝借して説明します。

住友林業の平屋 GRAND LIFE(グランドライフ)|木造注文住宅・戸建の住友林業
住友林業【公式】理想をかなえる、 平屋の暮らし「GRAND LIFE」。ワンフロアで完結する暮らしの心地良さや、庭とつながる憧れのライフスタイルを始めてみませんか。住友林業では平屋の魅力を、外観や間取りなど実例を交えて解説いたします。

平屋については基本的にリビングにエアコンが設置されると思いますが、エアコンからの冷気が人に直撃せずに各部屋へ通じる廊下に向かうようにエアコンを設置してください。また、平屋の窓の日射制御については以下をご覧下さい。

内覧会♯13 シェード
はじめに 入居して1年近くになりますが内覧会をサボっていてまだ我が家のご紹介が終わっておりません。 そして、本日は屋外のご紹介となります。屋外を紹介するときは外覧会と言われてたりしますが、内覧会とは限定した人にお見せすることなので、...

間取り①

エアコンはソファの上ではなく、テレビの上に設置することでソファに座る人への冷気の直撃を防止します。施主のWeb内覧会を拝見するとソファの上にエアコンが設置されている事例が大半ではないかと思います。

これには理由があって、窓を目いっぱい大きくすると家具やエアコンを設置するための壁が減ってしまうため、ソファの上にエアコンが設置される確率が高くなるからです。これは窓が大きい日本家屋が抱える問題で冷房病の発生原因は窓が大きいからと言えます。

間取り②

この間取りはエアコン1台全館冷房に向いてない事例です。エアコンを設置するに適した壁がリビングにないという事と、居室がリビングを挟んで分散しているため、このような間取りの場合はさらぽか空調でないと全館冷房は難しいです。

間取り③

これもエアコン1台全館冷房に向いてない間取りです。テレビとソファーをひっくり返してリビングの右下の壁にキッチン方向に向けてエアコンを設置すれば全館冷房が可能となるでしょう。コの字の家は工夫しないと全館冷房は難しいです。

現自宅で全館冷房を試してみよう

エアコンの位置が分からないという方は現自宅にあるエアコンを使ってエアコンからどんな風に冷気が出てくるのか分かれば間取り作りの参考になると思います。

まだ残暑の季節ですから実験に間に合うかもしれません。まずは以下のみはりん坊Wを2個買ってください。

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エー・アンド・デイ(A&D)

エアコン1台全館冷房の運転は非常に簡単です。

  1. みはりん坊Wをエアコンの吹き出し口と離れたリビング等に設置
  2. 家中のドアを全部あける
  3. エアコンの風向きは真下、風量は最低にする
  4. エアコンを冷房運転で23℃設定で運転する
  5. 吹き出し口のみはりん坊Wの絶対湿度が12グラム/m3未満をキープしているか確認する
  6. リビングの相対湿度が60%以下であることを確認する

4において12グラム以上であれば設定温度を下げます。5においてリビングの相対湿度が60%以下であれば室温はお好みですからエアコンの設定温度を上げてください。エアコンの設定温度は22℃~25℃の間になると思います。

なぜ、設定温度が27℃等でないかというとエアコンの熱交換器を冷やして除湿量を稼いでいるからです。何千万円もする家作りですから、机の上で考えているだけでなく、まずは現自宅でエアコンという機械の動作を理解しましょう。

最後に

上記の他に各部屋に冷気を送りこむためのエアパスファンの設置が必要になりますが、エアパスファンの設置まで出来なかったとしても、二階の階段ホールにエアコンがあるだけで、梅雨に洗濯物が部屋干しで乾くなどメリットは十分にあります。

私はこれまで3軒の高気密高断熱住宅にてエアコン1台全館冷房に成功していますし、私のブログ等をみて成功している人も増えていますから、本日の記事を見ればきっとうまく行くと思います。

仮にエアコン1台全館冷房が完璧に計画できないとしても、エアコンの予備穴とコンセントを事前に設置しておけば、もし失敗した場合にはエアコンを後から各部屋に設置すれば良いだけです。

階段ホールや廊下にエアコンを設置したり、6畳~10畳程度のエアコン1台で家中を冷房できるなんて信じられないと考えると思いますが、窓の日射制御さえしっかりできていれば実現可能であることは証明済みです。

太陽光パネルを乗せずに24時間連続運転した場合、盛夏の電気代については、さらぽか空調はカタログの通り10,800円/月程度、エアコン1台全館冷房については4,000円/月前後ですが、再熱除湿を極力利用せずに室温高めに冷房運転すれば3000円/月程度でしょう。

この記事の内容が理解できた方は詳細に記載してある以下の記事をご覧ください。

エアコン1台全館冷房(除湿)
この記事は長文であるため5ページに分割されています。 エアコン1台全館冷房とは? 一条工務店のi-seriesには、さらぽか空調という全館冷房システムがオプションで用意されています。さらぽか空調はエアコン全館冷房のように間取りの考慮が必...

本日は以上でございます。

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