グランセゾンとは
一条工務店から8年ぶりに発売された新商品「グランセゾン」。これまでi-smartが販売の多数を占めていましたが、セゾンから発展する形で非常にお洒落な商品が登場したと思いました。
まだ、未確認情報は多いもののインターネットに出回る情報を元に評価をしてみましたが、結論から言うと温暖地での生涯コストはi-smartよりグランセゾンの方が若干安いと思います。
現在は愛知県の展示場のみでグランセゾンの実物を見れますが、今後展示場は増えていくようです。現在、Instagramではグランセゾン祭りが広がりつつあります。
グランセゾンと検索すると鳥取県は大山の地ビールが出てきますが、最近の投稿では一条工務店の新商品グランセゾンを検討している方たちで賑わっています。
これまで好き嫌いが分かれていた一条工務店の外観デザイン・内装についてグランセゾンは大幅に改善されたと思いますが、ここまでニーズに対して当てにくるとは思いませんでした。
Instagramにおいては外観とインテリアについて良い意味でヤバイという評価が多く、恐らく断熱性能が最優先ではない方はi-smartよりグランセゾンを選択されると思います。
i-smartなどの枠組工法では一条ルールと言われる設計ルールが頻繁に批評されていますが、グランセゾンは設計の自由度が高い軸組工法であることも評価のポイントでしょう。
天井高さについては標準で一階は2650mm、二階は2500mmとのことですが、建築規制の強い市街地でネックとなる天井高さについては、総二階ではなく二階を小さくすると良いでしょう。
キッチン等の住宅設備は新たにグレイスシリーズという住設が設定され、フローリングについてもモクリアという2Pの幅広で木目調のフローリングが設定されています。
インテリアにおいては、ハイドア・デザインルーバー・書斎ユニットなど新しいお洒落な装備が採用されていて、セゾンの落ち着いたイメージを残しつつかなりお洒落に進化しています。
断熱についてはセゾン等と同じEPSの充填断熱、坪単価についてはi-smartより高い価格設定になっていますが、グランセゾンをお得に建てるにはどうすれば良いかを考えてみましょう。
グランセゾンとi-smartの概要比較
床面積は不明ですがインターネット上には坪単価では、i-smartが670,000円の時にグランセゾンが695,000円という情報がありました。
そうなると断熱性能は劣りますが、建物本体ではハイドロテクトタイルと高天井が標準のグランセゾンはi-smartより実質8,000円安いということになります。
項目 | グランセゾン | i-smartⅡ |
工法 | 軸組工法 | 枠組壁工法(2×6) |
断熱方法(壁) | EPS 120mm 内断熱 | ウレタン 190mm 内外断熱 |
高天井 | 標準 一階2650mm、二階2500mm |
OP 20,000円/坪 一階のみ2600mm |
ハイドロテクトタイル | 標準 | OP 13,000円/坪 |
さらぽか空調 | 設定なし | OP 15,000円/坪 |
全館床暖房 | 標準 | 標準 |
トリプルサッシ | 標準 | 標準 |
ハニカムシェード | 標準? | 標準 |
ハイドア | 標準(一階のみ?) | 設定なし |
スリットスライダー | 設定なし | 標準(一箇所) |
オープンステア階段 | 標準? | 標準 |
フローリング | モクリア | EBシートフローリング |
さらぽか空調がグランセゾンでは選択できないことがネックと言えますが、施主の自己責任においてエアコン1台全館冷房を検討すれば空調設備のコストはむしろ下がります。
i-smartは、平屋と床面積の広い家でない場合は総二階の積算ルールがあるためムダな吹抜けやバルコニーが増えて割高になる場合があります。
一見してグランセゾンの方が坪単価の設定が高いですが、枠組工法と違い総二階のルールがない軸組工法は吹抜けを大きく設けなければ、実質的にはi-smartよりコストが安く収まると思います。
これは以前から私が申し上げていますが、ツーバイフォー工法の一条ルールと総二階の積算ルールが一条工務店のすべての商品に当てはまる訳ではなく、世間では非常に誤解されています。
また、グランセゾンとi-smartで採用できるパラペット屋根は防水がFRPだとすれば10年置きのメンテナンスが発生するため、コスト的にはお勧めしません。
断熱性能とコストパフォーマンス
カタログのQ値はグランセゾンはセゾンと同じだとすれば0.98W、i-smartⅡは0.51Wとなりますが、実際に建つ家は形が真四角ではないことから外皮量が増えてQ値が悪化します。
例えば、一階が東西南北が8マスの真四角の住宅があったとします。二階は以下のようにi-smartは総二階のルールから吹抜け8畳、グランセゾンは下屋(一階の屋根)と想定して計算します。
吹抜or下屋 4×4マス |
居室 4×4マス |
居室 4×4マス |
居室 4×4マス |
上記では、外壁面積はどちらも変わりませんが、家の気積(空気の量)が若干、グランセゾンが減りますが、それはあまり冷暖房費に影響しません。
ただ、グランセゾンは総二階のルールがないため、下屋の部分は施工面積が減ってコストカットになりますから、吹抜けを設けなければ同じ床面積の場合、グランセゾンが安くなります。
超断熱のi-smartと高断熱のグランセゾンでは初期投資とランニング費用がどうなるのかを現実的な条件で計算してみました。
グランセゾンの熱損失を減らすために窓の面積は床面積に対して13%と非常に少ない設定にしていますが、グランセゾンはイメージ画像を見ると南側以外は窓が少ない印象を受けます。
項目 | グランセゾン | i-smartⅡ+OP | i-smartⅡ |
坪単価 | 695,000円 | 703,000円 | 670,000円 |
施工面積 | 92.75m2 | 99.375m2 | 99.375m2 |
建物価格 | 19,474,697円 | 21,105,929円 | 20,115,181円 |
Q値 | 1.32W | 0.74W | 0.74W |
Ua値 | 0.36W | 0.20W | 0.20W |
暖房費(1月度) | 9,794円 | 4,474円 | 4,474円 |
暖房費(年間) | 39,176円 | 17,896円 | 17,896円 |
暖房費(30年) | 1,175,280円 | 536,880円 | 536,880円 |
建物価格+暖房費30年分 | 20,649,977円 | 21,642,809円 | 20,652,061 |
損益分岐点 | ー | 76年 | 30年 |
上記のi-smartⅡ+OPとはハイドロテクトタイルと高天井のオプションを追加したものです。
同じ床面積の場合、吹抜けを設けなければグランセゾンの方が建築費用が安くなるため、i-smartの光熱費が安いとしてもノーマルのi-smartと30年の支払総額は変わらない結果となりました。
ただし、上記は一般的なi-smartユーザーとグランセゾンユーザーの比較であり、私のような基本料金のない電力プランを利用した強烈な電気代の削減を行うにはi-seriesの超断熱が必要です。
冷房費用の比較についてはここまでハイレベルな断熱性能の比較では余り差が出ないため割愛しますが、どちらの商品においても窓から入る日射熱を減らさないと冷房費用が増加します。
Q値や光熱費などの細かい計算をご覧になりたい方は私が作成したQ値の計算シートにグランセゾンのシートを追加しておきましたので、宜しければご覧ください。
最後に
グランセゾンの断熱性能はi-smartには劣るものの世間の高気密高断熱住宅からみれば、かなり上位グループに属します。
高気密高断熱住宅の指標として北海道では、省エネ基準のQ値が1.6W・国内トップレベルのHEAT20G3ではQ値が0.95W程度ですから、グランセゾンは十分な性能です。
ただ、一条工務店は北海道では軸組工法は現在販売していないと思います。その他の寒冷地では光熱費を考えるとi-seriesをお勧めしますが、温暖地ではお好みで選ばれると良いでしょう。
平屋と床面積の大きい家はi-seriesの積算ルールは有利に働きますが、小さな二階建ての場合は軸組工法の積算ルールの方がコストが下がると思います。そしてコストカットはまだまだ可能です。
また、i-seriesの壁の厚さや総二階のルールは地価の高い都市部の建築規制が強い地域では非常にネックになっていましたから、そういった意味でもグランセゾンの発売は福音となるでしょう。
グランセゾンの暖房費用を下げたい方は熱損失の大きい窓の面積を減らしましょう。具体的には南側の窓は大きくしてそれ以外の方角の窓を少なく小さくして採光のために窓は高く設置します。
私はグランセゾンのようなお洒落な家に掃出し窓や引き違い窓などの和風の窓は余り似合わないと思っていて、開き戸やFIXの窓をセンス良く配置するとさらにお洒落な家になると思います。
間取り作りの失敗が起きる原因の多くは窓にあると思いますので、ぜひ窓の選択には注意をしてください。
そして、さらぽか空調の設定がグランセゾンにはないため、ダニやカビの発生しない快適な夏を過ごしたい方はエアコン1台全館冷房をご検討してください。
本日は以上でございます。