はじめに
昔は高気密高断熱住宅を建てる人なんてスペックマニアな人だけでしたが、現在は一条工務店の販売棟数増加もあって幅広い人が高気密高断熱住宅を建てるようになっています。
一条施主は理系が多いなんて話も過去のことで、現在はスペックや計算に興味がない人も多いのではないかと思います。
私はこれは非常に良いことだと思います。施主が難しいことを知らなくても快適で省エネな家が建てられるように日本もなったということだからです。
ただ、高気密高断熱住宅に興味が無いのか施主の住み心地のレポートがあれ?となっている場合がありますから、本日はそれはちがうんじゃない?という話をしたいと思います。
窓の網戸は標準にすべき?
結論から言えば、窓から入る日射熱をカットする設計をした人は網戸は不要、窓から日射熱がたくさん入る家は室温が上昇することから室温調整のために窓を開けるため網戸は必要になります。
春から秋にかけては窓を開けて換気する人と窓を閉めて家中を除湿する人がいますが目的はどちらも同じで家の中に湿気を貯めないようにしているのです。
ただ、効果という点でいうと以下のように窓を閉めて除湿をした方が効果的です。
手段 | 建物の気密性能 | カビ抑制効果 | 防虫効果 | 部屋干し | 掃除の頻度 |
①窓を開けて換気する | 低気密 | △ | × | △ | 多い |
②窓を閉めて除湿する | 高気密 | ○ | ○ | ○ | 少ない |
さらぽか空調やエアコン1台による全館冷房によって家中を24時間除湿している我が家ではダニの発生や衣類害虫による被害を見た事がありません。
網戸を設置するかどうかはお好みで良いと思いますが、私の自宅のi-cubeとセカンドハウスのi-smartは、共に一箇所も窓に網戸は付いていません。
ロスガードがあるから窓は開けなくて良い?
一条工務店の営業さんがしばしばロスガードについて説明する際に、ロスガードがあるから窓に網戸は不要だというフレーズがあるようですが、これは半分正解で半分間違いだと思います。
換気のために窓を開ける必要はないという意味では正解ですが、室温調整のために窓をあける必要はないかと言われると、家の設計方法次第です。
これまでの日本家屋の家作りを踏襲している方は家の全方向の窓が大きい傾向にあると思いますが、その場合は室内に日射熱が籠るため冷房を使わない春と秋は窓を開けて換気をしないと暑くてたまりません。
換気のために窓を開ける必要はないけれど、日射制御をしていない窓が多用されている家においては室温調整のために窓を開ける必要が出てくるでしょう。
床暖房は乾燥する?
これも生活次第です。空気は温めると膨張して結果的に水蒸気の割合が減ることから暖かい部屋はエアコンを利用しても床暖房を利用しても乾燥状態になります。
つまり、湿度を高めるには加湿する方法と室温を下げる方法があるということになります。
湿度を上昇させる方法 | メリット | デメリット |
①加湿する | 簡単に湿度が上昇する | 加湿し過ぎると窓が結露する |
②室温を下げる | 省エネかつ窓の結露が減らせる | 体感温度が下がる |
一条施主は室温が24℃前後の高めの方も多いようですから、室温が高ければ余計に乾燥します。ただし室温を下げると足元を流れるコールドドラフトが気になり快適性が下がります。
室温を下げて相対湿度を上昇させるには冬季に冷え込む玄関等から発生するコールドドラフトを抑えるという設計が必要になってきます
コールドドラフトを抑えるには、設計時に玄関ホールに床暖房のヘッダーボックスを設置する方法とエアコンを玄関に向けて設置する方法、そして温暖地においても玄関土間の床暖房はオプション設置(たしか5万円)できます。
さらぽか空調にエアコンは必要ない?
これも設計次第です。窓に日射制御ができていないと、窓から入る日射熱によって室温が上昇してしまい、床冷房では対応できなくなってしまいます。
しかし、だからといって全部屋にエアコンを設置する必要はありません。二階の階段ホール等に6畳用のエアコンを1台補助冷房として設置すれば良いでしょう。
さらぽか空調にはエアコンが必要というと、各部屋にエアコンをつける必要があると誤解する人がいますが、そうではありません。
i-seriesの方が気密性能が良い?
パネル工法のi-series(i-smart/i-cube)の方が軸組工法のセゾンなどより、気密性能が良いという話をしばしば施主がしていますが、私はその事例をみたことがありません。
グランセゾンを含めて夢の家仕様についても合板に断熱材が設置されたものを壁に嵌めていくため、i-seriesと同じくボード気密工法です。よって、特段気密性能に差はないと思います。
なお、C値は低いほど良いですが、C値が0.1等になったからといって光熱費に大きな変化が出る訳ではありません。有識者の間ではC値は1.0以下であれば良いという意見が多いです。
浴室乾燥機は必要?
梅雨時期に洗濯物の部屋干しをする人や冬季に浴室を温めたい方に人気のあるオプションです。
ただし、MAX社の浴室乾燥機の消費電力をみると暖房モードでも乾燥モードでも2000W(2kW)程度で一日3時間利用した場合、24時間エアコンを運転した電気代と変わらないことになります。
乾燥方式 | 電気代(月額) |
①浴室乾燥機 | 2kW×3時間×30日×@27円=4,860円 |
②エアコン除湿 | 0.25kW×24時間×30日×@27円=4,860円 |
小型のエアコン1台で家中を除湿するには間取りに工夫が必要であることから、浴室乾燥機の採用はコスト高ではあるものの間取りに影響を与えない浴室の乾燥方法であると言えます。
なお、我が家は梅雨から秋まで家中を除湿しているため、洗濯物は四季を通じて部屋干しているためベランダはありませんし、お風呂のくん煙剤、押し入れの除湿剤や防虫剤も購入してません。
窓の日射制御をしていない!
高気密高断熱住宅にとって、冬以外は窓から侵入する日射熱をカットすることは最重要項目ですが、一条ハウスでは屋根の軒がない家を見かけます。
軒は温暖地で80cm、寒冷地で50cm程度出した方が良いと思いますし、一階の窓にはシェードを設置するためのアイプレートを設置するか、我が家のように窓庇としてアーバンルーフを設置すると良いでしょう。
エアコンのサイズがデカイ!
リビングが20畳の場合、余裕を見て24畳用を設置してしまう人もいますし、高気密高断熱住宅だから小さくても大丈夫だといって14畳用を設置する人もいます。
どちらも間違いです。そんな大きなエアコンは一条ハウスに必要ありません。以下が計算から求められるエアコンの必要性能であり、小型のエアコンを設置すればコストダウンができます。
一階と二階に各1台の小型エアコンがあれば大丈夫で、部屋毎にエアコンを設置しなくても冷暖房が可能です。エアコンにはお掃除機能や何とかセンサーといった機能は必要ありません。
一条ハウスの床暖房については将来にかかる修繕費を心配される方がいますがエアコンの設置台数を減らせば、エアコンを各部屋に設置している家より修繕費は安いと思います。
冬の室温あげすぎ!
一条施主におかれては室温24℃といった人を見かけます。
確かに、アパートから引っ越してきた方にとっては室温24℃の全館床暖房でもアパート時代よりも光熱費が安いため、電気代よりも快適性を追いかける人が多いようです。
最近、居室は24℃で浴室は26℃が快適だと主張する設計事務所も表れていて、ある程度の省エネを達成した後は快適性に進むという方針の住宅会社も出てきています。
昔の高気密高断熱住宅では居室は20℃で寝室は18℃が快適と言われてきましたが、人間の快適温度は年間を通じて24℃前後であると思いますからこの説はありかもしれません。
足元が24℃あればコールドドラフト対策をしなくても寒くないと思いますから、ある意味これはこれでありですが、断熱性能が相当に良くないと省エネに反してしまいます。
私の頭が古いのかもしれませんが、コールドドラフト対策をして室温を下げて相対湿度を上げるという方法が省エネと快適性の両立だと思ってきましたが、今後は24℃の室温と加湿を行う快適性重視の住み方が浸透するのかもしれません。
加湿は必要ない?
一条工務店から入居時に支給される湿度計はすべてではありませんが、湿度が低く表示される場合が多いと感じています。
この湿度計をみて乾燥していると思い込み加湿し過ぎてしまう人がいますが、加湿し過ぎれば窓が結露してしまいます。
また、人間は24℃などの快適温度付近であると湿度が低くても湿度が高いと感じるなど、非常に人間の湿度に対する感覚はいい加減だと思います。
現在ではロスガードに無給水加湿機能である「うるケア」が搭載されていますから、今後はさらに窓の結露が心配なところです。
我が家は特に加湿をせずに洗濯物を部屋干ししているだけですが、湿度が低いとインフルエンザが流行すると言うのであれば一条工務店の施主はインフルエンザでバタバタと倒れるはずですがそうはなっていません。
私は高気密高断熱住宅に住むことで体調が良くなり免疫力が向上するため、室内が乾燥していてもインフルエンザに罹りにくくなるのではないかと思っています。
私は加湿をしない高気密高断熱住宅に10年以上住んでいますが、必ずしも室内の乾燥とインフルエンザの流行には相関関係がないと考えています。
電気代高すぎ!
上記は私の二軒目の家でエアコンによる全館冷暖房を実施していた際の太陽光パネルなし・オール電化の電気代(107,942円/年)です。電化上手プランなので現在の電力プランより多少安いです。
太陽光パネルなしで、冬季にエアコンを24時間運転して1月の電気代は12,605円でしたが、温暖地の一条工務店の施主においては月に2万円を超えるような方をお見受けします。
一条ハウスの圧倒的なQ値の割には電気代が高いと思いますが、この理由として床暖房よりエアコンの方がより省エネ性能が3割程度上であることと、一条施主は室温が高めを好むこと、そして家電が古いのではないかと思います。
まぁ、一条施主は電気代をゴリゴリに下げることよりも快適性を重視する方が多いですから、電気代が安いことが良いと思うかは人それぞれですが、もう少し省エネをしてはと思います。
また、太陽光パネルを10kW以上載せている方は基本料金が高い可能性がありますので、電力会社の契約を見直すことをお勧めします。
最後に
年間1万棟以上販売している一条工務店ですから、その施主は高気密高断熱住宅にマニアックな人ばかりではありません。
しかし、それだけ幅広い客層が一条工務店で家を建てているということは、高気密高断熱住宅の普及を期待する私にとってはとても良いことだと思います。
ただ、高気密高断熱住宅の性能発揮について興味のある方は私の家作りのノウハウがつまった電子書籍をお求めください。一条工務店以外を検討している方にもお読み頂ける内容になっています。
本日は以上でございます。