悪質なセールストークに騙されない家作り

考察

はじめに

家は三軒建てないと満足しないと言わています。インターネットが発達した現代であれば最初から満足できる家作りができるのではないかと考えると思いますが現実は違うようです。

その理由としては情報が多すぎるという事と、業者の巧妙なセールストーク引っかかる施主が後を絶ため、家を建てた先輩施主が発信する情報も業者のセールストークに汚染されているからです。

本日は、情報が溢れる現在において、驚くほど消費者をないがしろにした住宅業者のセールストークが氾濫している実態を説明したいと思います。

これから家を建てる方は悪質な業者のセールストークに騙されないようにお願いします。たぶん、人柄が良い人ほど業者をすぐに信じて裏切られてしまうと思いますよ。

住宅業者の抵抗の歴史

日本の家は性能が低くて30年で取り壊されると言われていますが国は何度も改善を試みています。ただ、大手ハウスメーカーや地場工務店などの抵抗にあって改善案は見送られているのです。

見送られた項目 内容
耐震性の改善(四号特例の見送り) 建築基準法では木造二階建てまでは建築確認申請において構造計算書の添付が免除されています。俗にいう四号特例が大地震での建物の倒壊を招いています。
気密性能の導入 平成11年省エネ基準では緩いながらもC値は、寒冷地は2.0cm2/m2、温暖地は5.0cm2/m2と設定されていましたが、H25年省エネ基準では消えました。
省エネ基準の義務化の見送り 2020年から省エネ基準が義務化される予定でしたが見送られました。見送られた基準は断熱等性能等級4というQ値が2.7Wというとても低いレベルです。

一条工務店は標準で耐震等級3ですし、気密性能は0.7cm2/m2以下であり、カタログのQ値は0.51Wですから上記はもの凄い低い基準だと分かりますがそれでも業界から猛反対されています。

基準を向上させた場合、役所と業者の事務的な対応増加・建設コストの増加・住み方やデザインが人それぞれことなるため画一的な基準はなじまないといった理由から見送られています。

業者が消費者の意見を代弁しているかのように見えて、実は業者は対応することが面倒なのでしょう。口では消費者のためだと言いながら消費者をないがしろにしている業者は問題です。

そして、壁内結露の予防についてはフラット35や長期優良住宅を採用しない場合は考慮されないため、しっかりとした防湿層や透湿抵抗比の計算を施主が意識する必要があります。

建築基準法の第一条には「家作りの最低限の基準」と書かれてるように、建築基準法は十分な基準ではないことはプロなら誰でも知っていて大規模地震で家が倒壊しているにも関わらずです。

上記の3点について、自社として改善に取り組んでいる住宅依頼先が本当に信頼できる住宅依頼先であり、そのうえでさらにデザインを考えたりや自然素材などの活用をすべきでしょう。

典型的な悪質セールストーク

国による住宅性能の改善には反対しておきながら、住宅業者は自社の家が売れるために無責任なセールストークを展開しています。

悪質なセールストーク 問題点
日本の風土にあった家作りが必要 冬季のヒートショックや夏季の熱中症に対応したいまの日本の風土に合った家作りになっていない。高気密高断熱住宅を施工するノウハウがないと思われます。
家作りは多様な価値観から自分にあった家作りをしましょう 自社の家の性能の低さを隠すための逃げ口上。建築基準法さえ守れば良いという認識。
外張り断熱でないと結露する 水蒸気が壁や天井をどうのように通過するかを結露計算すれば外張り断熱でなくても問題ありませんが、外張り断熱は優れた工法だと思います。ただし、5cm程度の外張り断熱では現在では高断熱住宅とは言えず中断熱住宅でしょう。
当社の建物は断熱の最高等級を取得しています 断熱等性能等級の最高は4ですが、それはQ値が2.7W程度の低い性能です。国の基準値は住宅業者の抵抗にあってかなり低い状態のままですから最高等級という言葉に惑わされないでください。
そこまでの性能はこの地域では必要ない 何を基準に言っているのかわかりませんが、温暖地においても冬季に連続暖房をするならQ値は1.6W以下が必要です。坪単価が高いのにアルミ樹脂複合サッシやグラスウールを使っているのであればボッタクリだと思います。
一条工務店と同等の光熱費の家を安く作れますよ 一条工務店の施主は家の性能が良いため逆に省エネ意識は低く、室温高めに床暖房を贅沢に使っている方が多いですから比較にならないでしょう。
床暖房が必要な家は性能が低い 一条工務店の床暖房に対抗して言っているのかも知れませんが、私は一条ハウスにおいてエアコン1台で全館冷暖房しています。空気だけ温めるエアコン暖房は床暖房より電気代は安いです。
日本の家には自然な隙間が必要で家は隙間がないと結露する 家は人造物であるため「自然な隙間」なんて存在しません。隙間があるのは施工精度が悪いということであり隙間があるから結露するのです。
窓を開けない家や自然素材を使わない家は化学物質が多くてシックハウスになる シックハウス症候群には化学物質とダニやカビがありますが、夏は窓を開けると湿度上昇してダニやカビが発生します。また一条ハウスでVOCを測定しましたがVOCは高く検出されません。自然素材を使った場合であっても針葉樹を多用するとシックハウスになります。
地場工務店は広告費を掛けないため家のグレードが高い 零細企業である地場工務店は広告費だけでなく社員の休日が少なく残業代を固定給化しているなど人件費を削っています。家が安く建てられる秘密は人件費の安いブラック企業であるからです。
建築基準法はしっかり守ります 当たり前です。建築基準法は最低限の性能であって十分な性能ではありません。他社が過剰性能だと言うようであれば良心を疑います。
家の中で自然を感じる家作りをしましょう 窓を閉めても開けても不快でない家であれば良いですが、窓を開けないと温湿度調整ができずに不快な家は熱中症やシックハウス対策ができない家だと言えます。
寒いならシャツを着てください。それでも寒いなら諦めろと。(安藤忠雄氏:住吉の長屋) 悪質なセールストークではありませんが、安藤忠雄さんの言葉です。デザイン重視の建築家の作る家は生活の場というよりは人生の修行場だと言えます。私の通勤経路にある渋谷駅は安藤さんの設計ですが迷路の様で使いにくさは半端ないです。

以上のように住宅業者のセールストークは自社の家を売るために住人の生活や住宅の性能を疎かにして、都合の良い価値観で共感を得ようとするものですから騙されないでください。

ちなみに私は一条工務店のすべてを高く評価している訳ではなくて、値段が下がるなら床暖房やロスガードは外したかったのですが値段が下がらないので外しませんでした。

また、ローコスト系の住宅会社においても耐震等級3と気密測定を標準とするなど、努力している企業はありますから、高性能=高坪単価という訳ではありません。

最近は自然素材の活用や空間デザインを重視する建築家においても高気密化や高耐震の家作りをしていますから、全ての価値観が高いレベルで共存している事例もあります。

住宅業界の本当の闇

しばしば、住宅業界の闇といった情報を見ますが本当の闇はそのようなことではなく、赤信号を全員で渡っているような問題です。大手ハウスメーカーでも問題のある施工を実施しています。

(出典:エコパウダー社

上記画像は地面から1メートルの範囲で実施される防蟻処理で、大手ハウスメーカーでも利用されている農薬系の薬品では5年間しか効果がありません。壁の中は再施工できないため将来どうするのでしょうか?このような問題が本当の住宅の闇なのです。

本当の闇 問題点 対応
まもり住まい保険では雨漏りは10年保証されるが壁内結露は保証されない 壁内結露はフラット35や長期優良住宅等を利用しないと計算されない。ノボパンなどの透湿抵抗値の高いボードを防湿層なしで設置している業者がいる。 結露計算は省エネ基準義務化の中で計算対象とすべき。
木造住宅四号特例 木造二階建てまでは建築確認申請において構造計算書の添付が必要ありません。実際に構造計算するとかなり耐震性が低い家があるようです。 構造計算の義務化をすべき。全棟に実施されるまもりすまい保険では耐震性の瑕疵は10年保証であるが地震保険ではない。
熱中症に対応できていない 高気密高断熱化と共に窓の日射制御やエアコンの利用が総合的に考えられていない。暑ければ窓をあければ良い程度の発想しかできていない。 平均日射熱取得率(ηA値)をより強化して義務化すべき。
断熱性能が低い 断熱等最高等級4はUa値0.87W(Q値2.7W)程度の非常に低レベル。 Ua値は家の凸凹や換気の熱損失が考慮されていないため、Q値計算や燃費計算を義務化をすべき。
気密測定がない 壁の気流止めがない高断熱化は意味がない。高気密化しないと壁内が結露する。 気密測定の義務化をすべき。ヒートショック対策は高断熱化だけでは効果が低い。
農薬系の防蟻処理 大手ハウスメーカーでも土台や柱には5年しか持たない薬品を塗布している業者が多い。 加圧注入方式かホウ酸処理をすべき。
シロアリ対策が不十分 シロアリは湿気を好むという都市伝説が横行しているが、実際は間違いであり玄関ポーチや外構との接点からシロアリに侵入されている。 シロアリの侵入路を塞ぐ
シックハウス対策 化学物質のみを争点としていて、シックハウス症候群の大半であるカビやダニ対策がなされていない。 住宅を高気密化して湿度を60%以下に抑えることでカビやダニは発生しない。
性能向上の義務化に反対する建築業界 日本の家は30年で建替えられ震度7の地震で倒壊しているにも関わらず、耐震性・耐久性の向上に建築業界は反発している。 耐震性や耐久性を疎かにしている住宅会社は消費者が市場から退場させるべき。特に零細工務店や空間デザイナー系の設計士は耐震性や耐久性の知識がない。
欠陥住宅が発生する構造 設計自体の性能不足と施工不良の両方について考える必要があります。 性能不足についてはデザイナー系の建築家など建築基準法を順守する程度の家作りをしている場合があります。施工不良は大手ハウスメーカーの下請け酷使や零細企業である地場工務店の休みの少なさや人件費の安さなどの問題があります。
大工不足・後継者問題 零細企業である設計事務所や地場工務店においては深刻な問題。 家のパーツの工場生産化や外国人労働者の導入など一条工務店のような体制が必要。一方で地場工務店には大学の建築家を卒業した後継者が増えるなど改善も見られる。

上記のように、住宅業者のセールストークと住宅業界の本当の闇は裏と表で対応しています。つまり、セールストークとは本当の闇をすり替えるためのものだったのです。

本当の住宅の闇とは住宅業者が都合よく作った話を施主が信じてしまうことです。科学物質が籠るから、自然素材を多用して家は気密化してはならないといった馬鹿げた作り話が典型的です。

新建材を利用した住宅に入ると目がチカチカするという人がいますが化学物質の測定値が示されたものを見た事がないです。また、本当の化学物質過敏症の方は天然素材にも反応してしまいます。

住宅業者の作り話に施主がまんまと騙されてしまうことが本当の住宅の闇であり、一旦、業者のセールストークに洗脳されてしまえば住宅の本当の闇が見えなくなります。

一方で、なぜこんな事が理解できないかいうと、これまでの日本家屋における窓の大きな開放感を良しとする文化と高性能な家作りを統合して考えることができる人が少ないという点が問題です。

つまり、家作りは難しいことが多すぎて初めて家作りをする人が全部まとめて考えることが出来ないという事であり、何軒も家を建てる人がいなければ深く検討する事ができないのでしょう。

家作りの多様な価値観というクセ者

家作りには多用な価値観があるため、それらをどれだけ高いレベルで共存させるかが重要ですが、情報が溢れる現代では情報が多すぎて処理できずにむしろ偏った判断をする人が多いと思います。

家作りには以下のようなコスト・性能・デザイン・感性等の価値観があると思いますが、これらは対立概念ではないため、早とちりせずにどれだけ高いレベルで共存させるかが重要です

コスト 感性
デザイン 性能

ただ、性能の中は実際は多用で、私は省エネ性・耐震性・耐久性と分けて考えた方が良いと思いますし、耐震性と耐久性を十分にクリアしてから様々な価値観で家を建てる必要があるでしょう。

コスト 感性
デザイン 省エネ性
耐震性 耐久性

耐震性は構造計算による耐震等級でわかりますし、耐久性は幅が広いですが雨仕舞、シロアリ対策、壁内結露の計算ということを重視すれば良いと思います。

私は大手ハウスメーカーにおいてもシロアリ対策と壁内結露の対策はほとんど実施されていないと感じます。大手ハウスメーカーは耐震性とインテリア以外はまったく優れてないと思います。

家の空間デザインやインテリアはとても重要なことですが、まずは耐震性と耐久性を十分にクリアしてから考えないと、日本の家は30年で建て替えられる状態から脱出できないでしょう。

最後に

日本の家は熱中症やヒートショックが起きる殺人住宅だと言われています。また、地震国でありながら震度7で倒壊する家が後を絶ちません。

家の空間デザインやインテリアは大切です。しかし、家は家族の生活を守ることが第一で、それを疎かにして豊かな生活とは言えないでしょう。大地震が来るまでは精神的に豊かな暮らしではまずいと思います。

ただ、多くの方は家作りの準備期間が短くて住宅の歴史まで理解することは難しいと思いますから、業者の耳障りの良いセールストークに惑わされると思います。

これは注文住宅を四軒建てて、色々な家作りを見てきた私だからこそ言えることかも知れませんが、一軒目から家作りの答えが見つかるほど家作りは簡単ではないということです。

30年で建て替えられる家は子供に引き継げず、子供の経済的な豊かさを奪うことになりかねません。ぜひ、住宅の耐震性と耐久性は子供の経済的な豊かさを意味しているとお考え下さい。

家作りでは予算の問題が一番のネックだと思いますが、これから家を建てる方には予算の制限のある中で特定の価値観に偏ることなく全ての価値観を高いレベルで実現することを期待します。

本日は以上でございます。

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